子どもの避難の格好について考える

 地震が起きると、建物や地面から埃や土煙が舞い上がってきます。
 ただの埃や土煙ならいいのですが、その中にはさまざまな有害物質も混じっています。
 この埃や土煙の舞い上がる高さはおよそ1mくらいなので、小さな子はこのもやもやの中を突っ切って避難することになります。
 その結果、目や鼻、口やのどなどの粘膜にダメージを受けることも起きるようなので、 避難するときには火災の時と同じように、鼻と口を袖口で覆い、なるべく浅い息で移動するようにします。
 粘膜のダメージの他に、埃や土煙をなるべく吸い込まないようにすることで後の体調不良をなるべく防ぐためでもありますので、可能であれば避難時に使い捨てマスクを着用させ、あるならば水泳用のゴーグルを着用しておくと粘膜が守りやすくなります。
また、その手の埃や土煙は身体につかないに越したことはありませんので、使い捨てのビニール製ポンチョや雨合羽などで身体を覆うようにすると、より一層安全だと思われます。

ポンチョタイプはリュックサックごと覆えるのでザックカバーがないときは便利です。

 このビニール製ポンチョや雨合羽はある程度の放射線対策にも使えますので、放射能性のものが降ってくる可能性があると判断される場合には、用意しておくことをお勧めします。
 そして、足下は運動靴か上履きといった履きやすく脱げにくいものを選びます。長靴は少し動きにくいのが難点なのと、万一水が入ったときに歩けなくなるのでお勧めしません。もし水の中を逃げるようなことが起きた場合には、足下はマリンシューズが一番安全です。ただ、靴底が柔らかくて弱いですので、水の中の尖ったものを踏まないように注意する必要があります。
 あと、頭の防護用にヘルメット、または帽子もお忘れ無く。

子どもの指導者は防災対策を知っておこう

 保育園、幼稚園、学童保育、小学校、中学校、高校、塾その他、子どもと関わりのあるお仕事は非常に多いと思いますが、その人達が自分のところの防災対策を把握しているかご存じですか?
 「防災訓練をやっていますから大丈夫です」というお答えを聞くことも多いのですが、その頻度は「子どもが小さくなるほど回数が多い」傾向があります。
 保育園や幼稚園では大抵1ヶ月から2ヶ月に1回程度はされていることが多いようですが、これが小学校に上がると年に2回程度、多いところでも年4回程度になり、中学校で年1回、高校や塾だとまったくしていないところも見受けられます。
 子ども達は災害対応でどのように教えられているかというと「指導者の指示に従うこと」で「自分で判断せよ」ではありませんから、指導者は災害対策の指示が出来るレベルが要求されているのです。
 子ども達を預かっている場所の地形や危険、避難先やその後がきちんと整理されているでしょうか?
 子ども達にきちんと指導ができますか?
 災害対策で指導者が迷っている暇は残念ながらありません。その後がどうなるにしても、何らかの判断を常に求められるのです。
 過去から現在に至るまで「災害は不可抗力」として指導者の罪が問われたことはありませんが、今後災害が頻発するようになると「職務怠慢」で罪に問われるようになるかもしれません。
 そうならないためには、少なくとも子どもを預かっている間に発生した災害については適切に対応できるだけの能力を身につけておく必要があります。
 あなたのところの防災対策は大丈夫ですか?

【活動報告】保育園の避難訓練に参加しました

先日、防災研修で押しかけ講師をさせていただいている保育園様の避難訓練の様子を見学させていただくことができました。
 この保育園では月に一度避難訓練を実施しており、今回の想定は「地震+火事」でした。

子ども達の手はしっかりと頭と首をカバーしているダンゴムシです。

 「地震です」の園内放送を聞くと、子ども達が一斉に部屋の中央部に集まって「ダンゴムシのポーズ」を取り、クラスによっては防災ずきんも被ってじっとしていました。

 その後「火災発生」の園内放送と同時に鳴り響く非常ベル。
 子ども達はさっと立ち上がると騒ぎもわめきもふざけもせずに粛々と列を組んで非常経路に従って避難をし、赤ちゃん組はおんぶ&お散歩車で避難を行い、訓練開始から避難完了までわずか5分で安全圏に避難が完了していました。

脇目も振らず粛々と避難行動をしている子ども達。みんな真剣です。

 小学校や中学校ではもう少し賑やかでドタバタした感じになるのですが、この静けさはすごいなと思い、訓練終了後に園の先生にお話を伺いました。
 それによると「4月に子ども達が入れ替わってすぐの訓練では泣いたり騒いだりすることがありますが、この時期だともう普通に避難ができます」とのこと。
 以前に研修させていただいたことを元にして津波からの避難訓練も実施されたそうで、避難開始から高手の避難所までの避難が17分だったことも伺い、かなり素早いなと感心しました。
 普段から訓練することで避難という行為に慣れることができ、その結果として安全を確保することができるということを教えていただきました。
 後日、見た内容について修正点があれば教えて欲しいということでしたので、また気づいた部分をお話しさせていただこうと思っていますが、災害時に保育園での死傷者が少ないという理由がちょっとだけわかったような気がしました。
 惜しむらくは、これだけしっかりとした訓練が日常に組み込まれている保育園から小学校に行くと、途端に訓練回数も内容も貧弱なものになること。
 どのように働きかければうまくいくのだろうかと、少々考えさせられる体験でした。貴重な経験をさせていただいたすみれ保育園の園長先生を始めとする先生方に厚くお礼申し上げます。

「おはしも」と避難先

学校や保育の現場では、数年前から避難訓練時に子ども達と「「お・は・し・も」を守りましょう」という約束をしているようです。
「お」は「押さない」
「は」は「走らない」
「し」は「しゃべらない」
「も」は「もどらない」
避難する際にとても大切なことがわかりやすく端的に書かれています。
人を押せば将棋倒しになってけが人が出るかもしれませんし、走れば転んで怪我するかもしれない。
しゃべっていると逃げる速度が遅くなってしまいますし、せっかく助かったのに「まだ大丈夫」や「もう収まった」と判断して戻り、災害に巻き込まれてしまった人のなんと多いことか。
この標語、子ども達だけでなく地域の大人達にも普及していけばいいなと感じます。
ところで、避難訓練はどこまで逃げる訓練をしているのでしょうか。
学校では校庭まで避難して全員を点呼することになっていることが多いようですが、校庭が全ての災害に対して安全かどうかの検証がされているかどうか、私にはどうにも疑問です。
火事の避難訓練では校庭まで逃げて点呼で終了でも大丈夫かもしれませんが、他の災害に備えるためにはもう一歩先まで訓練しておく必要がありそうです。
具体的には「確実に安全だと判断できる場所まで逃げること」。
洪水や地震、津波、竜巻など、災害によって避難すべき安全な場所は変わります。
それぞれの想定で安全な場所を決め、そこに避難する訓練まではやっておくこと。
そして「なぜその避難行動をするのか」ということを徹底して教えておくこと。
そうでないといざ本番のとき、高手に逃げなければいけない洪水で校庭に逃げ出すという妙なことになってしまいます。
避難する先の判断と悲観開始の決断、それに避難指示はあらかじめ判断基準を決めておき、校庭の次の避難先までとりあえずきちんと避難すること。
仮にそこまでのことが必要なかったとしても、それは結果論で安全を確保することを最優先に行動しないといけません.
せっかく素敵な約束をしているので、安全で的確な避難が出来るような訓練までしておきたいものですね。

おんぶと抱っことベビーカー

災害でいざ避難というとき、小さな子をどうやって移動させるかということは割と悩む部分です。
「おんぶ」「抱っこ」「ベビーカー」が3大避難方法のようですが、どれも一長一短です。
今回はおんぶとだっことベビーカーでの避難について考えてみます。

1)おんぶ

避難させるときにもっとも楽で危険が少ないのはおんぶです。
背中に背負っているので、背負っている人の重心があまり狂わず、両手も空いて素早く移動ができるからです。
ただ、最近の小さな子はおんぶされ慣れていないせいか、おんぶ紐で背負うと仰け反ってしまうようで、「避難時のおんぶは危険」としているところもあるようです。
そういえば、抱っこやベビーカーはよく見ますが、おんぶで移動している親子はあまり見なくなったような気がします。
でも、非常時におんぶができるとさまざまなメリットがあります。
食事の準備や家事をするとき、おんぶ慣れさせておくと、いざというときに役に立ちそうです。
また、背中が使えないので、非常持出用防災セットはウエストポーチやベストにセットすることになり、さほどたくさんの資材は持てないのが欠点です。

2)抱っこ

避難時には手だけで抱っこして移動すると衝撃や振動などにより子どもを落としてしまう危険性がありますので、必ず大人の身体に固定する道具を使います。
抱っこひもやスリングといったものを使って移動することになりますが、なにぶん重心が前にあるためおんぶほど軽快に動くことはできません。
また、片手は固定具を支えなければいけませんので原則両手を空けるということも無理です。
ただ、首の据わらない新生児になるべく負担を掛けずに輸送する方法はこれが一番だと思います。
また抱っこで避難する場合、非常持出用防災セットをリュックサックで背負えるのがメリットと言えます。
おんぶ慣れしている子どもが少ないことを考えると、抱っこで避難所まで移動できるような訓練をしていた方がいいかもしれません。

3)ベビーカー

一度に複数の子どもを移動させるときには、ほぼ唯一の手段がベビーカーです。
親も非常持出用防災セットを背負って移動することができ、ベビーカーによっては子どもの資材を載せることも可能です。
ただ、タイヤの半径以上の障害を越えることができないことやベビーカーを押すことで両手がふさがってしまうことが難点だといえます。
また、大量の避難民がいる都会地では、ベビーカーが邪魔者扱いされて破壊される場合も考えておかなければいけません。
避難した先ではベビーカーを子どもの居場所として使うことが出来るので、それもメリットと言えるでしょう。

小さな子どもが大勢いる保育園では輸送用のお散歩車・避難車や多人数用乳母車を使って一気に避難所まで輸送するという方法を取られることが多いですが、これらの運搬車はいずれも車輪の径が大きく少々の障害物は乗り越えられるようになっています。
どの方法も良いところ悪いところがありますので、あなたとあなたの住んでいる地域の実態にあわせて準備しておくことをお勧めします。

リュックサックについて考える

防災セットの準備の中でよく「リュックサック」に触れていますが、なぜだかわかりますか?
リュックサックを使う「理由」は、「両手が空くこと」と「動きを妨げないこと」それに「防災セットが入ること」「ある程度の重さでも持って移動できること」です。
例えば、手提げカバンや肩掛けカバンに非常持出用防災セットを入れてすぐに走れるかというと、かなり難しいと思います。
でも、身体にしっかりと固定できれば、走るのはそんなに難しくありません。
ようは荷物を入れて両手が空いて、自分の動きが妨げられなければよいのです。
そうすると、背負子やボディーバック、普段使いの肩掛けかばんでも、紐やテープなどで身体に固定できれば使えそうだという判断ができます。
子どもを抱えて移動するのであれば、必要なものを詰め込んだベストやヒップバックでも問題ないでしょう。
ここであえてリュックサックを勧めているのは「誰でも使い方を知っていて準備や装備に手間がかからず、たくさんの荷物を入れて運べる道具」だから。
また、リュックサックは大小さまざまなものが市販されていますので、自分にぴったりのものを選ぶことが可能です。
お勧めのメーカーを聞かれることもあるのですが、いろいろなメーカーのものを試してみて一番自分にしっくりくるものがお勧め品です。
その上で、縫い目がしっかりとしているかどうか確認してください。
そして、肩紐の幅が太くて、できればクッションの入っているものにすると長時間背負っていても痛くなりません。
また、背中が当たる部分にはパット、腰と胸に留め具がついているものだと、よりしっかりと身体に固定ができるので楽に移動ができます。
非常持出用防災セットを詰め込むときには、軽いものを下、重たいものを上にして詰めていきます。
着替えや毛布は底に、水や食料品などは上に詰め込みます。左右のバランスを気にして詰め込んでください。
恐らくは一番の重量物となる水は、大きなボトル1本ではなく500ミリリットルのボトル数本にわけると詰め込みやすくなります。
また背中側には新聞紙や敷物を詰めておくと、荷物のでこぼこが気になりません。
この状態で背負ってみると、驚くくらい軽いことに気づくと思います。
試しに、次は重たいものを下、軽いものを上で詰め直して背負ってみてください。
同じ重量のはずなのに、今度は恐ろしく重たく感じると思います。
背負うものに関しては、重心が高い方が自分の体の重心との誤差が少なくなるため軽く感じるのです。
この中には生活用品のストックが入っていて、モノがなくなるたびに入れ替えをするはずですから、いろいろと中を組み替えてみて背負ってみて、自分が一番軽いと思う詰め方を見つけてください。

まず身を守る習慣をつけよう

本日18時10分頃、熊本地方を中心とする震度6強程度の地震が起きたようです。
地震の起きた地域での被害が軽いことを祈っております。

ところで、その時間、我が家では明日からの仕事や保育園への登園に備えて、ちょっと早めの晩ご飯を用意している最中でした。
普段ついているラジオから緊急地震速報の不協和音の警報音が響くなか、子ども達がどうするのかを見ていましたが、
うちの子ども達は三人とも慌てず騒がず、テーブルの下に潜り込むと、そこでダンゴムシのポーズを取って揺れに 備えていました。
結局、我が家のある場所では揺れを感じることも無く無事だったのですが、ラジオから各地の震度の速報値が読み上げられるまで、ぴくりともせずにじーっとしていた子ども達の姿を見て、毎日ちょっとずつでも災害に対する備えについて話していてよかったなと心底思ったものです。

机の下でダンゴムシ
机の下でダンゴムシはお約束です


 とりあえず、揺れないことを子ども達に伝えると、もぞもぞと机の下から出てきて、ほっとしたような表情を浮かべていました。
 落ち着いた後、彼らにどうして机の下に潜ったんだと尋ねたら、一番上の子が「僕は揺れるのは嫌なんだ」。
 二番目と三番目は、それぞれに「上の子が机の下に潜ったから」と返事をしてくれました。
 一番上の子は、狭くて転がらない場所を無意識に選んでいたようです。
 そして、下の二人は、上の子の動きを見て自分たちも同じような行動をしてくれました。
 晩ご飯を食べながら、
「学校では窓ガラスや天井についたあれこれが落ちてくるから、必ず机の下に潜ること」
「建物の耐震補強はされているから、揺れてもとりあえずは崩れないから、慌てないこと」
について説明しました。
「ものが落ちてこないように押さえていればいいんじゃないの?」
と一番下の子の質問には、
「震度5以上では、人が押さえて支えるのは無理。潰されてしまうから、押さえないでものが落ちてこない場所に逃げること」
「外にいる場合はどうするの?」
という質問もあったので、
「転がらないようにその場でしゃがむこと。ただし、ものが上から降ってこない場所であることを必ず確認すること」
と、私に分かる範囲の怪我をしないための方法を話しました。
 その後で、もしも明日大きな地震が起きたら、どこに逃げるかという話になりました。
 家に一人で冬休みの一番上の子は「僕は公民館に逃げる」と考えながら言うので、公民館までの経路は古い家屋が多く、大きな地震では半分以上が倒壊するのでは無いかということと、避難先は問題ないので、安全を確保してから避難すること、そしてどこへ避難するのかというメモを残しておくことを確認し、 家族で約束をしました。
 一番上の子は、避難用品をどうするか考えていたようでしたが、普段山に遊びに行くときの装備をあらかじめ準備しておくこと、そして、なによりも一番に護るべきは自分の命であることを改めて話すことができました。
 毎日少しだけでも災害対策の話をすることで、いざというときに家族みんなが、お互いにどこでどんな動きをしているのかがわかること。
 そうすることで、どこにいるのかわからないという不安と、状況がわからない中、二次災害を覚悟しながら捜索をしなければいけないという危険を冒さなくてもすむ。
これが人的被害を小さくする一番の方法なのかなと、しみじみと考えました。

お薬手帳は必須の持ち物です

自分が飲んでいる薬。
災害時にどのように調達するか考えたことがありますか?

お薬手帳の表紙
お薬手帳で命を守ろう

薬の必要な持病をお持ちの人や小学生までの子どものいる方は、避難用の持出セット、
あるいは普段持ち歩く自分の荷物の中に、お薬手帳を入れておきましょう。
災害が発生したとき、自分のかかりつけの医院や診療所、薬局が無事である保証はありません。
もし持病を持っている場合、薬が切れたら死活問題ということにもなりますし、
小さなお子さんの場合、薬の合う合わないが非常に重要な問題になってきます。
災害で被災し、避難生活を続けていると、その間にはDMATを初めとする災害支援の医療チームが 被災地に入ってきて、避難所を回って医療支援をしてくれます。
 でも、自分のことを全く知らない医者に対して、短時間で正確に自分の病気や症状、どんな薬を使っ ていたかを完璧に説明できる人なんて殆どいないのではないでしょうか?
 その時、自分に必要な薬を得るための最良の手段となるのがこのお薬手帳なのです。
 この手帳には、いつどんな診療科からどのような薬がどれだけ、何日分出たのかがきちんと記録されています。
 診察する医師は、このお薬手帳の記録を元にして病気を推察し、薬を処方することが可能になるのです。
 また、飲んだ薬の履歴を見ると、副作用のあったものや効かなかったものなども分かることがあるため、
 短い診療時間で適切に診断し、薬を処方することが可能になります。
 毎日飲まないといけない薬のある人は、お薬手帳を持ち歩き、いざというときに使えるようにしておきましょう。
 また、お薬手帳の中のどんな薬をもらったか書かれた部分を、スマホやタブレットで写真を撮ってクラウドサービスに預けておいたり、コピーを取って、そのコピーを避難用の持出セットに入れておくのも手です。
 自分や子どもの身を守る大切な一つの方法として、お薬手帳を忘れないようにしましょう。
 なお、ご存じだとは思いますが、お薬手帳は一人に一冊です。
 医療機関ごと、薬局ごとに一冊ずつ作るのではありませんので、もし万一、そのような使い方をしているのであれば、大至急一冊にまとめるのをおすすめします。