古い神社は避難所です

 もしあなたの周りに古い神社があったとしたら、そこはさまざまな災害からあなたを守ってくれる場所になるかもしれません。
 工事などで神社が移転した場合を除くと、古くから神社がある場所は周囲に比べて安全な場所にあるはずです。
 というのも、神社のご神体ががけ崩れで埋もれたり水害で流されたりした後、二度と同じ事態にならないように、多くの場合それらの被害に遭わなかった場所に神社が移転しています。
 その結果、古い神社は周りで一番安全な場所に動いていき、被害のない場所に鎮座したのです。
 そういう経緯から、氏神様を祭る神社は、少し前の時代までは避難所の性格も持っていました。いざというときに安全に逃げ込めるように、参道の掃除は欠かさなかったですし、避難所のような公共性のある建物だからこそ、建て替え時には周辺の家々に寄付が回ってきていたのです。
 太平洋戦争のあとの政教分離と、無神論の広がり等に伴って、多くの神社が宮司も氏子もおらずに朽ち果てていっている現状ですが、避難所と考えて、そういった場所の整備をするのもありなのかなと思います。
 宗教的なあれこれは置いておいて、もしあなたのいる場所が安全な避難場所や避難所から遠いのであれば、近くの古い神社を選択肢にしてもいいのではないでしょうか。
 ちなみに、古くても合祀などで移転している場合もありますので、事前にハザードマップなどで安全かどうかは確認しておいてくださいね。

我が家のBCPを作ろう

 防災用語として割と定着した感じのあるBCP、事業継続化計画といわれますが、何か不測の事態が起きた時にでも事業を継続できるような段取りを可視化しておくものです。
 学校や施設、企業などで作っているはずですが、行政や業者の作ったひな型に文字を入れて、内容の確認も検証もせずに備えていますというところが山ほどあります。
 実態に即していないBCPはいざというときに助けにならず、逆に邪魔になることが多いのですが、今回はそれに対する文句を言いたいわけではありません。
 今回は、おうち版のBCPを作ってみないかというお話です。
 おうち版BCP、一時期FCP(ファミリー・コンティニュー・プラン「家族継続化計画」)と呼ぶ人もいましたが、結局定着していないようなのでおうち版BCPとしてここでは説明をします。
 内容は「誰がどこにいるのか?」「どこにいるときにはどこへ避難するのか?」「災害が落ち着いたら、どこで合流するのか?」「連絡手段はどうするか?」「収入はどのようにするか?」など、被災しても家族が安心して避難し、災害後、日常生活を取り戻すまでに必要な段取りをきちんと決めておくことです。
 これを作ることによって、いざというときに自分がどこへ避難するのかや他の人がどこに避難するのか、どうやって連絡を取り合うのか、どこで家族がまた一緒になるのかといった、災害後に問題になる部分が解決できます。
 家族と普段から生活している場合には、災害発生時にどうしても自分以外の家族が気になるものです。
 子どものいるおうちだと、子どもを引き取りに学校などに出向くということがあるかもしれませんが、迎えに行く人や迎えを待っている人が被災するかもしれません。
 でも、もしも災害発生時に子どもがどこかへ避難することを決めているのであれば、子どもはそれに従って避難しますし、危険を冒して迎えにいかなくても、状況が落ち着いてから避難先に迎えにでかけてもいいのです。
 BCPと避難計画が決定的に違うのは、避難計画は避難完了までが目的であるのに対して、BCPは避難完了後、日常生活を取り戻すまでの手順を作っておくことが目的であることです。
 作る時には、ご家族みんなであれこれ話しながら作ってください。そうすることで、参加した人は自分のこととして受け止めることができ、いざというときにもきちんと行動をしてくれます。
 我が家のBCP、作るのは結構大変ですが、ご家族の行動範囲や活動内容、生活習慣を再確認することができるので、作った後は悩んだり迷ったりする必要がかなり減ります。
 作ることが難しいなと感じたら、BCPについて書かれた書物を調べたり、BCPを取り扱っている業者などに相談してみてもいいと思います。
 当研究所でもお手伝いできますので、興味のある方がおられたらご連絡をください。
 我が家のBCP、作ってみてくださいね。

おうちテントで避難訓練

 ゴールデンウィークに入りましたが、お休みの方、お仕事の方、それぞれだと思います。前半は天気が割とよいとのことなので、外のイベントに参加する方も多いのではないでしょうか。
 ただ、後半は天気が悪くなり、ところによっては大しけになるという予報が出ていますので、外あそびが難しい日もありそうです。
 もしもお手元に自立型のテントがあるなら、それを使って家の中でおうちキャンプをやってみてはいかがでしょうか。
 手持ちのキャンプ用品を使って、家にいながら家の道具は基本的に使わない、屋内でのキャンプ体験です。
 電気やガス、水道、トイレなどは、その気になればいつでも普段の生活に戻すことができますし、その気になれば手持ちのキャンプ用品だけで家の中でのキャンプ生活を体験することもできます。
 子どもさんがいれば、多くの場合は大喜びして楽しんでくれると思いますので、お出かけが難しい方でも、おうちレジャーとしてやってみたらどうでしょうか。
 実は、これは災害時の避難訓練にもなっています。
 雨漏りや窓ガラスなどの飛散、物の散乱などで自宅では普通の生活ができない場合でも、テントがあればちょっとした片付けさえできればそのまま家を避難所として使うことができます。
 平時にいろいろと試しておけば、災害時にも慌てずに自宅にそのまま住み続けることも可能になるのです。
発災後の避難所は、その地域の人がすべて避難してきた場合にとても全員を収容することはできません。ましてや、快適な環境などは得ようもありません。
 テントやちょっとしたおうちキャンプを重ねていれば、いざというときでも家や庭などで避難生活をすることができますし、避難所に避難しても、敷地やその周りでのテント生活がさほど抵抗なくできると思います。
「おうちテントで避難訓練」
 面倒も難しくもなく、簡単にできてかなり効果のある楽しい訓練。あなたも一度試してみませんか。

【活動報告】よつばキッズスクールの避難訓練を見学しました

 民間学童に限らず、児童の集まる施設では避難訓練を行うこととなっていますが、今回は益田市の民間学童保育であるよつばキッズスクール様の避難訓練を見学し、そのうえで避難についてのお話をしました。
 初期消火と避難では、まずは避難、火が小さかったり、消火できる余力があれば消火作業を行うことになりますが、よつばキッズスクールの避難訓練では、実際に学童保育の先生が初期消火の対応訓練もされています。
 子供たちは初期消火中に屋外へ避難し、なるべく出火現場からは離れる行動をとります。
 家庭用の火災報知機の警報音を聞いた子供たちはきょとんとする子も多かったですが、先生の「火事だ!」という声で一斉に避難を開始。避難する児童の中には口元に袖口を当て姿勢を低くして素早く移動する子も見られ、かと思えばなかなか避難しない子もいて行動に差が出ていました。
 訓練後のお話の中では、学校と家庭用の火災報知機の音の違いや、とにかくどこでもいいから出口から出て屋外へ逃げることを説明しました。
 子どもからは「避難するときには履き替えなくてもいいのか?」という質問も出され、履き替えずにそのまま避難することをお願いしました。
 実際の訓練の通りに本番でも行動すると思われますので、できれば訓練でも素足や上履きのまま外へ避難することも必要なのかなと感じました。
 また、子どもが火災を発見した時に周りに大人がいない場合も最近では多くなってきていますので、子ども達でも初期消火できる、または火を出さないための教育についても考えていった方がいいのかなという気がしました。
 今回、避難訓練について快く見学を許可くださいましたよつばキッズスクール様と、そこに通っている児童の皆様にこころから感謝いたします。

大人の訓練、子どもの訓練

 防災活動の一環として、避難訓練などの支援をすることがあります。
 支援というのは、避難訓練のタイムスケジュールや訓練時の状況作成、訓練後の講評などさまざまですが、このうちで、一番喜ばれないのが訓練講評です。
 講評をするにあたっては、人の命を守るべき仕事のある人には厳しく、自分の命を守ればいい人はそれなりに見ていくのですが、どんなに頑張ったとしても、必ず一つや二つの修正点、改善点は発生します。それを指摘して改善や修正方法を提案するのですが、これを「あら探し」と感じる人もいて、非常にやりにくいことがあります。
 大人だけや子供だけの訓練はそれでも比較的楽なのですが、大人と子供が入り混じった訓練になると、途端に大人が傍観者になって参加している子どもたちの講評を始めてしまいます。
 そういった人は、たいてい自分の訓練が満足にできていない方なので、どうしても辛口の評価になってしまい、後で怒られることもしばしば。
 大人と子供が入り混じった避難訓練では、大人は子どもの講評ではなく、安全を確保するための誘導をしてほしいのですが、なぜか大人が指示を出し、子どもがそれに従って全員死亡の評価になったりするので、本当に難しいなと思います。
 大人であれ子供であれ、自分の命を守るのは最終的には自分でしかできません。他人に命を預けてはならないのです。
 本当は防災訓練でそういったことを徹底したいのですが、大人は指示慣れ、子どもは指示待ちになってしまっている場合が多いので、普段の生活を変えなければ、災害時に助かる人を増やすことは難しいのかもしれないなと思うことがあります。
 大人だけ、子どもだけの訓練ではこういったことは発生しないので、混ざったときにどうやって生き残るすべを身に着けてもらうのか。
 これができたとき、東日本大震災で子供達の避難が大人も救ったような状況が作れるのにと、少しだけ歯がゆい思いもしています。
 どのようにしたら大人も子供も一緒になって助かることができるのか、試行錯誤は続きます。

防災散歩のススメ

 新しい生活環境になった人も多いと思いますが、住み始めた地域のハザードマップは確認しましたか。
 地域によってはすでにハザードマップを配られなくなっているところもあるようですが、国土地理院の重ねるハザードなどを利用して、住んでいる地域のハザードはしっかりと確認しておいてください。
 そして、お休みの時にでもハザードマップを持って実際に地域を歩く防災散歩をしてみてください。ハザードマップを見ながら歩いてみると、ハザードマップを見ているだけではよくわからないことがたくさんわかります。
 また、歩いてみると安全な場所や危険な場所が案外たくさんあることに気づくと思います。
 ついでに地域の特性や地形などもわかりますから、時間を見つけては防災散歩をやってみることをお勧めします。

国土地理院「重ねるハザード」

避難所にいかない避難

 大規模災害が起きると、行政の準備している避難所はほぼ確実に避難者でパンクします。
 そうなると避難所難民が発生してしまうわけですが、どこの避難所もパンクしているので避難先がない人が必ず出てきます。
 そう考えると、避難所に避難しない避難方法を考えておかないと、自分の身を守ることができないということになりますので、平時にしっかりと考えておくようにしてください。
 一番いいのは、自宅が避難先になることです。水没する場所にないこと、台風や地震に耐えられる構造であることなどが要件になりますが、自宅から出なくて済むのであればそれが一番落ち着くし、安心できる避難先だと思います。避難所に配られる食料品や日用品は自宅避難者も受け取ることができますので、生活環境を考えると、自宅が一番だということになると思います。
 次に、予測できる災害に限りますが、被災予想地域から出てしまうことです。被災予想地域から出てしまえば、とりあえず自分の命を守ることはできます。小旅行にしてしまえば、災害から避難しながら楽しむこともできるのではないでしょうか。
 あとは、安全な場所にいる親せきや家族の家を頼るか、知り合いのいるところに行くか、別荘や別邸を用意するかといったところですが、ここ最近の避難所の考え方は、避難所にしか避難先がない人が避難所に入るという設定に変わってきています。
 あなたが災害時に避難しなければいけない場所に住んでいるとしたら、避難所以外に避難する先を準備しておいた方がいいと思います。
 そして、何よりも早めに避難を開始することです。
 避難が空振りしたからといっても、誰も責めも笑いもしません。もし空振りしても「何もなくてよかったね」といえるだけの心の余裕も持てるといいですね。

安全な場所?

 地震が起きると、「安全な場所に避難しましょう」ということがよく言われますが、この安全な場所というのは、具体的にはどんなイメージを持っていますか。
 こういった質問をすると、案外と大人の人は考え込んでしまうことが多く、逆に子どもはいろいろと答えを考えてくれます。
 これは大人は100%安全かどうかで考え、子どもは「ここよりも安全な場所」という視点で考えるからだと思っています。
実は、日本には地震が起きた時に100%安全な場所は存在しないと考えていいと思います。相対的に安全な場所と危険な場所はありますし、絶対危険な場所も存在しますが、安全確実な場所を考えてしまうと、答えが出てこないのではないかと思います。
 質問に回答する子供たちのように、その場所で比較的安全なエリアはどこかということを探す視点はとても重要で、普段から見慣れていないと見つけることは難しいと思います。比較的安全なエリアで、自分の身を守るための格好をしっかりととることができれば、怪我をすることはほとんどないと思いますので、その場のどこなら安全だろうという視点が自然にできるように、普段から意識しておくといいと思います。
 ちなみに、大人と子供で地域の安全点検をすると、子どもの方が危険なものや危険な場所を良く知っていることがわかります。同じところを普段歩いていても、大人は割と漫然としていることが多いのかなとも思います。
 地震がきた時には、訓練とは違って誰もあなたにどうすればいいのかの指示はくれません。自分で自分の身を守れるように、目線や訓練をしておきたいですね。

避難訓練

 避難訓練は少なくとも年に1回はやることになっているところが多いと思いますが、あなたは参加していますか。
 自治会や地区の避難訓練ではそうでもないのですが、学校や施設等の避難訓練だと、なぜか偉い人ほど参加しないという光景が見られます。
 例えば施設長や園長、校長や、担任の先生も参加せずに指示を出していることもよく見られる風景です。
 自分が目を光らせて全員を訓練に参加させるという考え方はいいと思うのですが、実際に自分もやらないと、本番では怪我したり、避難し損ねたり、場合によっては死んでしまったりすることも考えられますので、できる限り当事者として訓練に参加してほしいと思います。
 訓練参加者は、言われることではなく行動を見ています。
 偉い人が真剣にやれば、それは訓練参加者にもしっかりと伝わるので、きちんとした中身の濃い訓練になります。
 訓練の講評は、講評担当の人を毎回ランダムで選んでしてもらうか、当研究所のような防災の専門家に依頼すれば済む話なので、偉いからと傍観者にならずにしっかりと訓練に参加してください。
 新年度に入って、これから避難訓練を行うところも多いと思います。
 毎年同じような訓練になるかもしれませんが、その場所にあった知見を取り入れて行う訓練なら、必ず本番で役に立ちますから、訓練を目的にするのではなく、訓練によって得られる成果を目的に取り組んでほしいなと思います。

まずは身の安全を確保する

机の下でダンゴムシ
机の下でダンゴムシはお約束です

 防災の普及啓発をやっていると、災害に対してどんな備えをしたらいいのかと聞かれることがよくあります。
 災害に対してどんな備えをするのか、という問いに対する回答は結構難しくて、人によってさまざまな回答をすると思いますし、恐らくはどの回答も間違っていないと思います。
 筆者なら、まずは自分の身の安全を確保するための方法を身に着けることを推奨します。どんな備えでも、本人が死んでしまったら何の役にも立ちません。まずは自分の安全確保が最優先になるからです。
 安全確保とは、物理的安全、精神的安全、身体的安全になると思っていますが、災害発生時にはまず身体的安全を確保することが優先であり、そのための方法を学ぶことが必要です。
 東日本大震災の時に流行った「津波てんでんこ」は、まずはそれぞれが自分の安全を確保するための言葉です。地震に対する備え、準備、対策、水害や台風、津波に対する情報収集、準備、対策をしっかりと行っていくことが大切になると考えています。
 そして、そのための訓練は怠らないようにしてください。
 訓練はうそをつきません。
 身の安全を確保するための行動は、普段から意識していなければ行うことは難しいですので、物理的な備えを行うのと同時に、想定される被害に対して安全確保をするための訓練も、しっかりと行うようにしてください。