「おはしも」と避難先

学校や保育の現場では、数年前から避難訓練時に子ども達と「「お・は・し・も」を守りましょう」という約束をしているようです。
「お」は「押さない」
「は」は「走らない」
「し」は「しゃべらない」
「も」は「もどらない」
避難する際にとても大切なことがわかりやすく端的に書かれています。
人を押せば将棋倒しになってけが人が出るかもしれませんし、走れば転んで怪我するかもしれない。
しゃべっていると逃げる速度が遅くなってしまいますし、せっかく助かったのに「まだ大丈夫」や「もう収まった」と判断して戻り、災害に巻き込まれてしまった人のなんと多いことか。
この標語、子ども達だけでなく地域の大人達にも普及していけばいいなと感じます。
ところで、避難訓練はどこまで逃げる訓練をしているのでしょうか。
学校では校庭まで避難して全員を点呼することになっていることが多いようですが、校庭が全ての災害に対して安全かどうかの検証がされているかどうか、私にはどうにも疑問です。
火事の避難訓練では校庭まで逃げて点呼で終了でも大丈夫かもしれませんが、他の災害に備えるためにはもう一歩先まで訓練しておく必要がありそうです。
具体的には「確実に安全だと判断できる場所まで逃げること」。
洪水や地震、津波、竜巻など、災害によって避難すべき安全な場所は変わります。
それぞれの想定で安全な場所を決め、そこに避難する訓練まではやっておくこと。
そして「なぜその避難行動をするのか」ということを徹底して教えておくこと。
そうでないといざ本番のとき、高手に逃げなければいけない洪水で校庭に逃げ出すという妙なことになってしまいます。
避難する先の判断と悲観開始の決断、それに避難指示はあらかじめ判断基準を決めておき、校庭の次の避難先までとりあえずきちんと避難すること。
仮にそこまでのことが必要なかったとしても、それは結果論で安全を確保することを最優先に行動しないといけません.
せっかく素敵な約束をしているので、安全で的確な避難が出来るような訓練までしておきたいものですね。

避難所の機能あれこれ

 「災害が発生しそうなときは避難所に避難してください」というのはよく聞きます。
 行政や自主防災組織では避難するような事態に備えて避難訓練を行っているわけですが、そもそも「避難所」って何でしょうか?
 前に避難所と避難場所と福祉避難所の違いについて触れたことがありますが、もう一度避難所の定義を確認してみます。
 防災白書では「指定避難所とは、災害の危険性があり避難した住民等を災害の危険性がなくなるまで必要な期間滞在させ、または災害により家に戻れなくなった住民等を一時的に滞在させることを目的とした施設」となっています。
 これによると、避難所というのは「災害の危険性が無くなるまでの間、または自宅を復旧させるまでの間滞在するところ」という風に読み取れますが、実際のところ、災害が発生した後、指定避難所には3つの機能が備わることになります。

1)生活の拠点
2)物資やサービスの提供を行うところ
3)情報のあつまるところ

今回はこの3つについてちょっとだけ整理してみたいと思います。

1)生活の拠点

 指定避難所本来の目的である「避難が必要な間滞在する場所」としての機能です。
 ただの「場所・空間貸し」というところもあれば寝具や食料品等を備蓄してあり「行けばとりあえずの生活が出来る状態」のところもあり、指定避難所の生活環境というのは基準もなくまちまちなのが現状です。
 一般的にはその地域の住民が主体的に動いているところほど備えが手厚く、行政が主体的に動いているところほどそうでもないというところが多いような印象を受けます。
 口の悪い方は「収容所」という言い方もするようですが、ここにいれば光熱水費がタダでさまざまな物資も集まってくるため、長期化して避難者が減り空間が使えるようになってくるとそのまま避難所に居座ってしまう人もいるようです。
 生活の拠点として使う場合には、どうなったら撤収するのかということをあらかじめ決めておいた方がよさそうです。

2)物資やサービスの提供を行うところ

 物資集積地から被災者には、避難所を経由して物資の受け渡しを行います。また、医療や看護といったさまざまなサービスもここが拠点になることが多いです。
 この場合、物資やサービスはその地域に対して提供されているもので、決してその避難所のために提供されているものでは無いということを認識しておかないといけません。
 大規模災害になると、近傍だけではなく隣県や他の市町村の被災者が「受け取りやすい」ということで小さな指定避難所に物資を受け取りに来るケースがあります。被災者に対する物資ということで配布は問題ないですが、各避難所は必要数を報告して提供を受けているため、あまり域外の人が増えると本来受け取るべき被災者に物資が届かないという状態が起きうるので、そこは検討が必要です。
 また、医療や看護、移動ATMの設置や巡回相談など、個別に巡回できないサービスはこの避難所の一角で実施される場合が多いです。

3)情報の集まるところ

 さまざまな機関が発信する情報や尋ね人など、災害時には避難所がもっとも住民に近い情報の集積地になります。
 指定避難所には出入り口などの目立つところに情報掲示板が設置されますが、提供される情報量があまりに多いため整理して掲示しないと何が起きているのかわからなくなることも多いです。
 避難所によっては、避難者で壁新聞を作って最新の情報を載せておくといったこともされていたようです。
 災害時には、避難所に情報を提供すれば住民に情報は周知されているという認識がされることが多いので、指定避難所に避難していない人は自分でそこまでは情報を見に行くしかありません。
 「知らなかった」という話にはなりませんので、充分に気を付けてください。

 良かれ悪しかれ、指定避難所はさまざまなものが集まる拠点として機能します。
 もし大規模災害が起きて指定避難所が機能を始めたなら、避難所に頼らなくてもいい場合でも定期的に覗いてみることをお勧めします。

チェーン規制導入

 山陰地方を始めとする早朝から始まった大雪は峠を越えたようですが、久しぶりに集中的に山間部を始めとする場所では雪が積もっているようですので、雪道を走行される方はどうぞ気をつけてください。
 ところで、今年の冬から「冬用タイヤ規制」に加えて「チェーン規制」が作られました。
 全国で13区間が指定され、近くの浜田道の「大朝IC~旭IC間」が該当しています。また、県内では島根県と広島県を結ぶ国道54号線の赤名峠も該当しているようです。
 この「チェーン規制区間」では「大雪特別警報や大雪に関する緊急発表が行われるような降雪時」にはスタッドレスタイヤでは駄目でタイヤチェーン装着者のみが通行可能になるとのことで、道路交通情報などでも言い回しを変えるといった話も聞きました。また、高速道ではそこまで厳しくないという話もありますが、念のためにタイヤチェーンは用意しておく方がよさそうです。

チェーン規制区間を示す看板
国土交通省の報道発表資料から抜粋


 ところで、あなたは車のタイヤチェーンをきちんと巻くことができますか?
 過去、チェーンを着用した車が、そのチェーンによって損傷を受けるケースがかなり出ているようです。
 原因は、チェーンの装着方法。
 指定されたとおりの装着ができていなかったため、チェーンがタイヤハウス内で跳ね回ってあちこちダメージを受けてしまうようです。
 事前に一度装着練習をしておけば防げたトラブルですね。
 また、制限速度以上の速度で走ったために切れてしまったというケースもあるようですので、 チェーンをつけたらいつも以上に慎重に運転した方がいいですよね。
 ところで、今回の規制にあわせて私も久しぶりにゴム製のタイヤチェーンを買いました。
 で、練習でつけてみようとしたら車のタイヤよりもタイヤチェーンの方が小さいのですね。どうやらサイズを間違えて買ってしまったらしく、数字が覚えられない自分に思わず苦笑い。
 今回は事前に練習しようとしたからそれがわかりましたが、いざ本番のときにそうなっていたらと思うとぞっとします。
 タイヤチェーンを準備する、そしてシーズン前には一度取付の練習をしてみる。
 たったそれだけでたくさんの事故が防げます。
 シーズン前の習慣にしたいものですね。

暑さ寒さをしのぐ方法

災害は季節を選んでくれません。
春や秋であれば凌ぎやすいかもしれませんが、真冬や真夏でも災害は発生します。
そして避難した先では、暑さ寒さに悩まされることになります。
暑さと寒さを和らげる方法、いくつか提案してみたいと思います。

1.寒さを和らげるには?

 寒さを和らげるには、冷やさないことです。
 つまり、体温をいかに逃がさないかがポイントで、風に当たらないことと身体から熱を逃がさないかを意識するようにします。
 風に当たらないようにするだけで体感温度は随分と変わります。風に当たると熱と水分を持って行かれますのでなるべく風の当たらないところにいるようにします。
 また、温度は空気の層により決まりますので、体温を維持するためには身体の面積の広い部分の保温を行えばよいということになります。
例えば、どんな薄着でも重ね着するとそこに空気の層が出来ます。これを上手に使うと、厚手の服よりもしっかりとした保温ができます。
 また、体の胴体部に新聞紙を重ねて巻くという方法もあります。これは新聞紙の間に空気の層ができて保温効果が期待できるからです。もちろん梱包材に使われているぷちぷちのついたシートなども有効です。
 使い捨てカイロがある場合には、大きな血管が流れているところを温めることで身体全体が暖まります。
 例えば首の根元、みぞおち、背中の肩甲骨の間、太股などです。
 もしも温かいものが飲食できるのであれば、ほうじ茶やお湯など温かいものを少量ずつ飲むようにします。
 発汗作用のあるものは一時的にかなり暖まりますが、そのあと汗をかいて冷えるので避けた方が無難です。
 緑茶やコーヒーなどカフェインを含む飲み物は利尿作用があります。排泄物はかなりの熱を身体から奪うので、できるだけ飲むのは避けるようにします。

2.暑さを乗り切るには?

 直射日光をさけて風の流れるところを探すのが一番です。
 屋外でも、つば広帽子や長袖シャツなど肌を直接日光に当てないような通気性のよい服を着ます。
 水が確保できるなら、手のひらや足の裏を冷やすことで体温を下げることができます。
 もし保冷剤や冷感スカーフなどが使えるなら、首元や脇の下を冷やすことで、身体全体の体温を下げることが可能です。
 また、暑いときには汗をかきますので、水分の補給は必須です。
 スポーツドリンクや経口補水液などが推奨されています。
 私自身は塩分や糖分のことがありますのでスポーツドリンクよりも水+塩飴をお勧めしますが、この辺りは好みになりますので平時に自分に合う水分補給の方法を見つけておきましょう。
 寒さ対策でも触れましたが、緑茶やコーヒーなど、カフェインを含むものは利尿作用があるので摂っても水分補給にはなりません。

 せっかく災害から生き延びても、暑さや寒さで死んでしまってはなんにもなりません。
 風と体温を意識して、可能な限り自分の快適な環境を維持できるように心掛けましょう。

高齢者などの要支援者ほど事前訓練をしっかりしておこう

 最近あちらこちらで自主防災組織の立ち上げが進められています。
 地域のことは地域で行うという前提の自主防災組織が編成されると、まずはその地域の避難についての計画や訓練がされるようになります。
 その避難計画や避難訓練、避難所運営訓練には、いったいどんな人の参加が予定されているでしょうか。
 多くの場合は自治会役員や地域の元気な人達が中心だと思いますが、高齢者や障害者といった支援の必要な方もちゃんと参加していますか?
 自主防災組織が作る避難計画書では、多くの場合「避難準備・高齢者避難開始情報」が発令された段階で、高齢者や障害者と言った要支援者を最初に避難所に移動させることになっているからです。
 つまり、避難所に一番最初に避難してくるのは要支援者の方々であり、恐らく一番長い時間避難所にいることになる方々なわけです。
 この最初に避難してくるはずの人達も訓練にきちんと参加していますか?
 「寝たきりだから」とか「足が悪いから」とか、「人が多いところへいくと何が起きるかわからないから」といって、要支援者が参加を拒んだり、参加を見送ったりしていませんか?
 でも、要支援者が実際に参加しないとどんな支援や準備が必要なのかわかりません。
 やってみたら、設備や資機材の関係でその要支援者がその避難所では受け入れることができないということもあるでしょう。
 それは実際にやってみないとわからないことなのです。
 要支援者によっては「家以外は病院でないと無理」という方がいるかもしれません。 そんな人は、ちゃんと非常時に病院に収容してもらえる手はずを整えているか、受け入れてもらえない場合はどのタイミングでどこへ移動させるのかを決めているか確認しておかないといけません。
 また、避難してくる要支援者の人たちは、ちゃんと持出用防災セットを準備して持ってくることができるでしょうか?
 彼らが身一つで避難してきた場合、食料や寝具といった物資の準備は避難所に備わっていますか?
 準備できていない場合、どこから誰がいつまでに用意するのか、きちんと取り決めてありますか?
 また、避難所内を安全に移動したり、トイレを使ったりすることができますか?
 食事や寝ることが問題なくできますか?
 それらはやっぱり実際にやってみないと分からない部分なのです。
 いざというとき、助かろうと思って避難してきたが、自分が生きるために必要なものが何も無い避難所で死ぬことになってしまったというのでは悲しすぎます。
 立場の弱い要支援者の人たちほど事前訓練が必要だと言うことを、自主防災組織の方は基本的な事項としておいてほしいなと思います。

 余談ではありますが要支援者の方は生活弱者でもあるので、行政の人間が一緒に参加することで地域に隠れている、本来行わないといけないさまざまな支援ニーズを掘り起こすことも可能になります。
 行政、特に福祉関係の方が参加してもらえれば、要支援者が避難所に避難できない場合の受け入れ先の問題も考えてもらえると思いますので、避難計画を作るときや避難訓練をするときには、防災関係だけで無く、福祉関係の部署にも声をかけてみてください。

天井が落ちてくる?!

建物の中の落下物と聞くと、どんなイメージがありますか?
照明器具、高いところに置かれた本や食器、テレビや窓ガラス、いろんなものが浮かぶと思います。
その中に「天井」が落ちてくるという意識があったでしょうか?
一般家屋ではあまり問題にならないのですが、施設では天井そのものが危険ではないかという認識が持たれています。

1.天井が問題になっている理由
天井のうち、「吊り天井」と呼ばれる構造のものが問題になっています。

吊り天井内部
吊り天井内部。石膏ボードをビスやクリップで支えています。

「吊り天井」とは本来の天井から下がったワイヤやシャフトに下げられた鉄骨にビスやクリップで別の天井が作られているもので「安価で音の遮断や断熱、防炎効果」ができ、天井裏の配線などを隠すことができることからあちこちの施設で採用されています。

ここに使われている主な素材は石膏ボードでは7kg/㎡程度、ロックウールでは4.9kg/㎡と重量のあるものです。
地震や経年劣化によりこの天井素材と鉄骨を止めるビスやクリップが外れ、素材が落下することにより事故が発生するもので、東日本大震災では東京の九段会館で2名の方が亡くなっています。

天井用石膏ボード
天井用石膏ボード。持ってみると結構重いです。

建物の耐震基準では、柱や梁は倒れたり落ちたりしないことが絶対的な要件になっていますが、天井は内装物とされ、とくに基準がありませんでした。
平成28年に建築基準法が改正され、初めて吊り天井の強度や構造について決められましたが、それまでに建てられた建物については「増改築時に基準として適用すること」という取り扱いになっています。
2.解決する方法
一番手っ取り早いのは、吊り天井を撤去してしまうことです。構造物が無くなれば問題は解決します。

天井用ワイヤメッシュ
石膏ボード落下対策のワイヤメッシュ

とはいえ、防音防炎断熱をここまで安価にできる代替素材もありませんので、その機能が必要な場合には落下防止対策をする必要があります。
石膏ボードの下にネットやメッシュワイヤーを置くことで、破壊されたときに大きな破片がいきなり落ちることは防げます。
また、軽量化された代替品も出ているようですので、それらに置き換えていくのも一つの方法です。

いずれにしても、施設では天井の落ちる可能性があると言うことを頭の中において行動することが必要なようです。

通電火災を防ごう

地震が起きると、電力会社は被災した一帯の送電を止めます。
発災後、電柱や電気施設の確認をした上で通電を再開するわけですが、この時、地震で壊れた電化製品や断線した電気コードがショートしたり、電気ストーブなどの暖房器具が倒れてきた洗濯物や本など可燃物と接触したりして火災が起きることがあります。
これを通電火災と呼びますが、1995年の阪神淡路大震災で起きた出火はこの通電火災が原因とされているものが数多くあります。
また、東日本大震災でも、発生した火災の6割が通電によるものとされ、中には避難所として使われていた施設も、通電火災により閉鎖になったケースもあります。
電力会社でも対応は進めていて、2016年4月の熊本地震では通電火災は0件となっています。
これは通電前に通電予定箇所を広報して回ったり、倒壊した家屋への引き込み線を撤去することにより達成できたものです。
とはいえ、規模が大きくなったり被災範囲が広範囲になってしまった場合には、全ての場所に電力会社が対応できるとは限りません。
そのため、自衛手段として配電盤を「感震ブレーカー付き」にしておきましょう。
感震ブレーカーと言ってもさまざまな種類があり、配電盤内に感震装置を内蔵しているものや設定した揺れが起きた段階でボールやバネの力によりにブレーカーのスイッチを切るするものなど、いろいろあります。


GV-SB1 リンテック21 感震ブレーカーアダプター【簡易タイプ】 YAMORI(ヤモリ)



簡易型感震ブレーカー「スイッチ断ボール3」 SWB03


感震ブレーカーはその名の通り地震に対して有効な電源切断装置ですが、他の災害では機能しません。
そして、地震以外の災害時でもブレーカーで電気を遮断しなくてはいけないことは変わりません。
ただ、いきなり来る地震ではブレーカーによる電気遮断のことを忘れがち。
そのため、自分の財産を守るためにも、周囲を燃やさないためにも、感震ブレーカーを設置するようにしましょう。
また、当たり前ですが普段から電気ストーブやファンヒーターの周りには可燃物を置かない、使っていない電化製品はプラグを抜いておくといったことも意識しておくようにします。
東京消防庁の調査では、東京消防庁管内で発生したストーブ火災のうち、電気ストーブによるものが実に7割を占めていたそうです。
災害時だけでなく、普段からも火災を出さないように意識したいものですね。

り災証明書・被災証明書の使い道

災害が発生すると、地元自治体に申請することでり災証明書や被災証明書がもらえます。
これは「被災しました」という証明書なんですが、この証明書、何に使うのかご存じですか?
今回はり災証明書使い道について確認してみます。

1)準備

り災証明書の申請に限りませんが、被災した建物、家財用品その他、自分が持っていて被災したものの写真は全て角度を変え複数枚写真を撮っておきましょう。
写真があると、り災証明書の申請だけでなく、地震保険などで手続きする際にも重要な資料となります。

2)り災証明書・被災証明書の発行手続き

「り災証明書」は建物が被災したとき、「被災証明書」は建物以外で被災したときに発行されるものですが、自治体によっては全ての被災証明を「り災証明書」にしている場合もありますので、窓口で何が罹災したのかを説明して必要な証明書の手続きを行ってください。
なお、り災証明書の発行手続きについては以前触れたことがありましたので、そちらも参考にしてください。

3)り災証明書・被災証明書が必要なもの

行政などで行う各種減免手続きに必要となります。
減免手続きとは「こんな被害を受けたから○○を支払うことを減額して(免除して)」というもので、例えば「各種税金」「国民健康保険」があります。
また、災害関連の「見舞金や助成金」を受ける場合にもこの証明書が必要となります。
住宅ローンなどローン関係は、り災証明書を提出することで金融機関ほかの貸付条件が変更になる場合があるようです。
また大規模災害の指定をNHKがした場合には、このり災証明書他の書類を揃えて提出することで、受信料の減免がある場合もあるようです。
自治体以外の手続きについては、発生した災害によりその都度適用される場合とそうでない場合があるようですので詳しくはそれぞれが発信する情報を確認するしかなさそうです。

4)り災証明書・被災証明書が必要ないもの

行政への手続きではないものは殆どの場合不要です。
代表的なものが「地震保険」。これは各保険会社の規定で支払われるものなのでり災証明書があってもなくても、独自に判定が行われます。
建物だけでなく家財も対象となる場合がありますので、加入している保険会社に状況を説明し、写真や現物などで確認をしてもらうことになります。
火災保険や生命保険についても、り災証明書や被災証明書は原則として不要です。

証明書の申請は手間がかかる上に時間もかかります。
そのため、自分がなんのためにそれを取得するのかについてよく考え、優先順位をつけて手続きを行うようにしましょう。
また、り災証明書の申請受付は自治体により差はありますが受付期間が決まっています。手続きを忘れると、本来受けられるはずの行政関係の各種申請ができなくなりますので、忘れずに手続きをするようにしてください。

自分がやるべきことと他人に任せることを決めておく

 災害が発生すると、災害対応で自治体や企業は通常の仕事とは異なる仕事が極端に増えます。
 そして災害が収まると、あちこちから来てくれる応援部隊や手伝ってくれるボランティアが復旧や復興に携わってくれることになります。
 人手が増えるのはありがたいことなのですが、その時に支援を受ける側が「自分たちでないと出来ない仕事」と「任せても大丈夫な仕事」の整理をしておかないと、せっかく来てくれた人達が遊んでしまう上に自分たちの仕事は増える一方という事態になってしまいます。
 平時に仕事の整理をしておくことで、支援してくれる人達に効率よく仕事がしてもらえ、自分たちも自分たちにしか出来ない仕事に集中できるというメリットを生むことができるのです。
 仕事の整理は「災害時・災害後になにをしなくてはいけないのかという仕事の洗い出し」と「自分たちでないと出来ないこと」「自分たちがやった方が効率がいいこと」「他の人に任せても大丈夫なこと」「他の人に任せた方が効率がいいこと」にわけて考えます。
 そして、任せる部分はマニュアルを作ってそれを見ればできるようにしておくこと、そして、任せるべき相手が決まっているのならその相手を交えて事前に練習をしておいたほうがよいでしょう。
 自治体の場合だと、例えば罹災証明書はその自治体の職員でないと基本は作成ができません。また、方言の強い地域では応援部隊が電話の内容を理解できない事態も発生しうるでしょうから、それらも被災自治体職員がやったほうが効率的かもしれません。
 逆に避難所の運営や物資の備蓄と配布、資機材の手配といった部分はマニュアルの整備と手順さえ決めておけば、自分たちでやらずに誰かにお任せした方が効率がいい場合が多いです。
 企業だと、会社の根幹に関わる部分は他人任せにできないとしても、インフラの復旧やお得意様先の機材の修理や更新手続き、物資の供給などは協力関係にある他社にお願いすることはできるはずです。
 物資の備蓄や配布といった作業は、普段から作業になれている運送屋さんやホームセンター等に任せた方がうまくいくでしょうし、被災者の安否確認は地元の自治会に任せるのも手です。
 「どこでだれに何をいつ任せるのか」を決めておいてお互いに了解していると、いざ災害が発生したときにさまざまなことが自動で動くことになり、自分たちはやらないといけないことに専念できます。
 いかに自動で物事が動くのかという仕組み作りをしておくことで、さまざまな人的・物的資源を上手に使うことができるのです。
 これは個人でも同じで、被災した後一人で被災家屋を片付けるのはかなり困難ですので、知り合いやボランティアにお片付けを手伝ってもらうのに、どこまで何をお願いするのかをあらかじめ決めておくと、入ってもらったときにすぐに作業にかかることが可能になり、復旧が早く行えます。
 仕事自体を何も情報無しで「丸投げ」では困ります信用をなくします。かといって、全部抱え込んだら精神的に持ちません。
 ポイントを押さえて、任せられる部分は全て応援部隊やボランティアにお任せしてしまう。
 そのことで、いち早い復旧と精神的な落ち着きを取り戻すことが可能です。
 破滅的な大災害で無い限り支援は必ず入ってきますので、受け入れるための準備を怠りなくしておきましょう。
 また、自治体や企業の場合、支援をしてくれる相手との支援協定を結んでおくことも大切です。

プレート境界型地震と活断層型地震

今話題の南海トラフ地震ですが東日本大震災と同じプレート境界型地震で、確率的には30年以内に起きると言われているようです。
わかっているのは確実に起きるということだけで、それがいつかは誰にもわからないというのが今の状態です。
そして、南海トラフ地震が騒がれている中、2018年は島根県西部地震、大阪北部地震、胆振東部地震など大きな地震が続きました。
こちらは活断層型地震でいずれも予測されていなかったところで起こりました。
今回はこのプレート境界型地震と活断層型地震について整理してみたいと思います。

1)プレート境界型地震の起こる原因

日本は4つの大陸プレートがぶつかる場所に存在しており、これらのプレートの動きによって日本では地震がよく起きます。
このうち、太平洋プレートとフィリピン海プレートが北アメリカプレートとユーラシアプレートに潜り込んでおり、この境界部分で潜った地面が壊れたり元に戻ろうとしたりすることで地震が発生します。
これがプレート境界型地震と呼ばれるものですが、海底で起きるためこの時の反動が海に伝わり大きな津波も起こることがあります。
特に太平洋プレートとフィリピン海プレートは動きが活発なため、地震が発生する周期は数十年から数百年と割と短く、規模の大小はあれ確実に起きることがわかっています。
また、北アメリカプレートとユーラシアプレートの境でも衝突が起きているのですが、お互いに押されている力がさほど強くないため、そこまで頻繁に大きな地震が起きるところまでは行かないようです。

プレート境界型地震のイメージ図

2)活断層型地震の起こる原因

これらのプレートが互いに押し付けあうことで陸地のあちこちには歪みが生じます。その歪みに耐えられなくなったことにより発生するのが活断層型地震です。
十万年以内に動いた形跡のある活断層帯には名前が付いていますが国内だけで約2000カ所あり、まだ見つかっていない活断層もあることから日本国内のどこで起きてもおかしくないとされている地震です。
割合表層で起きることが多いことも特徴です。

3)地震の規模と被害の起き方

プレート境界型の地震は一般的に巨大です。激しい揺れが数分間続き、かつ数十年から数百年という短い期間で再発するものが多いようです。
日本の場合は海底で起きることが殆どのため、直接的な揺れよりもそれに付随する津波の方が危険かもしれません。
対して活断層型の地震はプレート境界型ほどの強さと揺れる時間の長さはなく、発生する間隔もかなり長いのが特徴です。
活断層型は「正断層」「逆断層」「横ずれ断層」の3つのパターンがあり、日本列島ができた経緯によるものか、フォッサマグナから東では「正断層」「逆断層」タイプが、西では「横ずれ断層」が多いようです。
「正断層」「逆断層」はその場で上下にずれるため、局地的に激しい揺れと被害がでます。
また「横ずれ断層」は理論的にはどこまでも伸びることが可能なので、一定方向に向けて被害が拡がる傾向があります。

断層の動きは東と西でかなり違うようです。

4)どこまで予測できるか

プレート境界型地震の場合は震源からある程度距離があるため、緊急地震速報が有効です。
また、発生する間隔が数十年から数百年ごとのため、誤差は生じますが起こる時期の予測もある程度は可能です。
ただ、深々度で発生したプレート崩壊による地震は予測が難しく、緊急地震速報が鳴る前に揺れ始めることが多いです。
活断層型地震は表層で起きることが多いため、震源直上周囲では緊急地震速報が鳴る前に揺れ始めることが殆どです。
また、再発する間隔が数十年から数十万年とまちまちなため、次にいつ起きるかは誰にもわかりません。

日本に住んでいる以上、どこに住んでいても地震に遭う確率は0%ではありません。
そして、予測できない地震がどこで起きてもおかしくない以上、備えも必要だということなのでしょうね。