逃げるべきか逃げないべきか

災害の原因はいろいろとありますが、その原因によって避難すべき場合と、自宅でやり過ごした方が安全な場合とがあります。
あなたはお住まいの場所やお仕事の場所がどのような災害の危険性があって、避難した方が良いか、するとすればどこに避難するのか、またはその場で待機している方が安全が確保できるのかを検討していますか。
いきなりやってくる地震の場合は、建物補強と落下物防止くらいしか事前対策はできませんが、他の災害は事前にどの災害で避難しないといけないのか、避難先はどこで、どうやって避難するのか、そして避難開始のタイミングはどうするのかを決めることができます。
また、逆に避難した方が危険な場合には、家にじっとしている場合も出てきます。あるいは、逃げ遅れた場合には自宅のどこが一番安全なのか、それも確認しておかないといけません。
行政機関が出す避難の呼びかけは地区・地域という面で発表されますが、実際に避難すべきかどうかは、あなたのいる場所の環境や条件によって異なってきますので、事前に地域の特徴を確認して、どのようにすべきかを決めておいた方が安心です。
逃げるかどうかがわからなければ、その先の準備がうまくできずに、実態とあわない状態になってしまいます。
まずはあなたのいる場所がどの災害に弱いのか、そしてどんな条件になったら避難しないといけないのか、そのことをしっかりと確認しておいて下さいね。

その資機材は使えるか?

 非常用備蓄品として、集会所や公民館といった避難所になり得る施設にはさまざまな資機材が準備されていることも多いです。
 仮設トイレや段ボールベッド、仕切りやテントといったアイテムは、備え付けているだけではあまり意味がありません。実際に使ってみて、使い方を覚えておかなければ、便利なものであっても役には立たないのではないでしょうか。
 以前に避難所で、本来はパーテーションとして使われるはずの段ボールが避難者の敷物代わりになっていたという笑い話のような光景を見たことがありますが、これもその段ボールがなんなのかが運営者側にわからなかったため、敷物代わりに使われてしまったようです。
 もっとも、寒い時期にはパーテーションよりも床からの寒気を遮断するための道具として使った方がよいという見方がありますので、一概に悪いとも言えません。
 余談になってしまいましたが、備え付けてある資機材は、避難者や運営者が存在を知らなければないのと同じですし、使い方を知らなければやっぱりないのと同じです。
 また、資機材を使うために必要なものが欠落している場合があります。
 とある避難所予定の施設では、停電に備えてステンレス製のかまどが用意されていましたが、肝心の薪と鍋は備え付けてありませんでした。
 近所から持ってくる想定なのかもしれませんが、使うための資機材は一通り揃えておいた方が、いざというときに困らないのではないかと考えます。
 こんな例はたくさんありますが、せっかく準備する資機材ですので、避難者や運営者もそれがどんな道具でどうやって使うのかについて、できれば実際に使ってみて使い方を知っておいて欲しいと思います。

施設の避難計画はできていますか?

平成29年6月19日の『水防法』等の改正により、浸水想定区域などに所在する要配慮者利用施設の所有者または管理者に対し、避難確保計画の作成及び避難訓練の実施が義務となりました。
要配慮者と聞くと老人や障害者が思いつきますが、乳幼児もここに含まれるため、老人ホームや障害者福祉施設だけではなく、幼稚園や保育園、こども園も避難確保計画の策定と避難訓練の実施が義務化されています。
4月18日付けの読売新聞1面には、浸水想定区域にある幼稚園や保育園、こども園の2割が避難確保計画未策定となっているという記事がありました。
その理由は「施設側の人員不足や義務化されているという意識が薄い」と記事には書いてありましたが、行政側も人員不足やコロナ禍で立ち入り検査ができず指導が難しいようです。
正直なところ、未策定の数字が思ったよりも少ないなと感じました。
実際のところ、避難確保計画では避難の発動条件が施設管理者の判断に一任されているものも多く、誰が見ても避難と判断できる避難条件が決定されていないものは策定しているとはいえないと思っています。
また、避難開始から避難完了までは定めていても、避難先でどのように過ごすのかや、どのようになったら避難を解除するのかについても、明確に決めているところは少ないと思っています。
避難確保計画はピンからキリまでありますが、災害対策に関心のある人が作っているかどうか、そして管理者や所有者がどれくらい真剣に災害対策を考えているのかによって出来上がりの質が相当違っています。
現在は計画があればいいということで、かなり適当に作っているところも多いと思いますが、大規模災害が起きるたびに要配慮者利用施設で死者やけが人がでる現状を考えると、もっと真剣に取り組むことと、防災に通じた人と一緒に考えるなどして、生きた避難確保計画を策定し、生きた避難訓練をし、本番ではだれも死なないようにしてほしいなと思います。
 

子どもと要支援者の避難先

被災地の避難所で生活しなければならなくなった場合、子どもと要支援者の方の取り扱いについては少し注意が必要です。
大規模災害で被災すると、被災地の衛生状態や医療体制は崩壊、または限定された対応しかできなくなりますので、いざというときの支援体制には非常に不安が残ります。
また、子どもの生活環境についてもかなり劣悪になります。常に見知らぬ人がいますので落ち着きませんし、何が起きても避難所の避難者に目の敵にされてしまうことが多いです。
いろいろと考えてみると、子どもと要支援者の方については被災地外に一時的に疎開した方がよいのではないかという結論に、今のところはなっています。
ただ、広域的に知り合いがいる方や医療機関同士の相互支援協定が結ばれていたりすればいいのですが、そうでない場合には疎開させるといっても受け入れ先の問題が出てきます。
そういった部分で、行政機関同士の連携が必要になってくるのかなと考えています。
大規模災害が発生しても、被災地の人は被災地で生活しなければならないという妙な前提条件があるような気がしますが、被災地の人が被災地外へ疎開しても全然問題ありませんし、子どもや要支援者といった配慮のいる人達が普段の生活に困らない場所に行っているという安心感は、復旧を早める効果があるのではないかとも思います。
原子力災害では問答無用で被災区域外へ避難をさせられてしまいますが、普通の自然災害でも、そういった対象になる人は被災地域外に移動させて、被災地の負担を少しでも減らすようにした方がいいのではないかと考えています。
ああ

段取り8分な災害対策

 昨日も書きましたが、「災害対策=特別なこと」としてしまうと、対策は長続きしません。
 あくまでも日常生活の延長線上で考えていかないと無理が来ます。
 そして、災害対策は決して難しいことではありません。日々の生活の中で、ちょっとした意識を持てばいいのです。
 災害対策とは「災害が起きた後、日常生活の質をいかに落とさなくてもすむようにしておくか」という準備ですから、住んでいる地域や今いる場所がどのような災害に弱いのかを知り、それに対する備えをしておけばよいのです。
 例えば、山のてっぺんに住んでいる人が浸水被害や津波の心配をしてもあまり意味がありませんし、平地に住んでいる人が土砂災害のことを気にしても自分の生死には直接の影響は少ないです。
 あなたがいる場所にあわせた対策をとることが、災害後の生活の質を落とさなくてもすむ一番の方策なのです。
 災害に弱いからといって、いま住んでいるところを変えるのは難しいかもしれませんが、引っ越しや家を買うときなどは、土地の形や周囲の状況といったものをしっかり確認しておくだけで、災害時に避難しなくてはいけない状況を減らすことができます。
 また、建物がしっかりとした耐震化がしてあれば、地震後に慌てて避難所に駆け込まなくてもすみますから、家を買う際にはそこもしっかりと検討しておいてください。
 普段からの生活の質を落とさないという点では、避難所へ避難するよりも自宅で過ごせる方がいいはずですので、まずは住むところが安全出ることが必要です。
 そして、食事、水分、排泄がきちんと確保されていること。
 特に排泄は絶対に我慢ができませんので、トイレの排水が無理だというときにどうやってトイレを確保するのかについてはしっかりと決めておかなければいけません。
 仮設トイレを作るのか、トイレの排泄部分だけを仮設化するのか、それとも使えるトイレを事前に調べておくのか。
 そういった決めごとをきちんと定めておくと、災害のショックで頭が回らないときにでもトラブルの回避はできます。
 最近の災害は多種多様なものが起きているので、そのときにどのようなことに困ったのかはさまざまな事例が今ご覧のインターネットなどにもたくさん出ています。
そういった事例を見て、自分のところの対応がきちんとできているかを確認しておくようにしてください。
 災害対策も段取り8分です。訓練していないことはできませんし、準備していないものはありません。
 仮設トイレや段ボールベッド、物資の配給訓練などさまざまな訓練はされていると思いますが、その訓練に使っている資材についても、きちんと使えるものを準備しておくようにしてください。

日常の延長の災害対策

 災害対策というと身構えてしまいがちですが、その目的は「日常生活を守ること」です。
 普段の生活を守るための対策を行うので、日常生活の延長として考えるといいのではないでしょうか。
 乾物や缶詰など、長期保存できるものを日々の食事のメニューに組み込んだり、風呂の水を貯めておいたり、カバンに水の入った水筒を入れておいたりといった、ちょっとした気遣いがあなたにとっての立派な防災になります。
 無理に災害対応用の特別なものを準備するのではなく、普段の生活の中で備えをしていかないと、特別にしてしまうといつかは忘れて存在しないのと同じ状態になってしまいます。
 日常生活、例えば電気やガス、水道が止まったときにどうやったら質を下げなくて済むのかを考えて準備をしておくと、それが災害への備えになります。
 個人の災害対策は身構えるほど難しくはありません。できるところから少しずつ手をつけて、災害時に日常生活をできる限り維持できるように準備しておくことをお勧めします。

避難生活の強い味方のお茶

被災して生活が日常に戻るまでの間、生活に必要なさまざまなものが不足している状態になります。
特に食生活においては、配給される食事だけではビタミンやミネラルが圧倒的に不足していますので、それを補う方法を準備しておきましょう。
重要なビタミンである葉酸やビタミンCの補給が手軽にできるものとしては緑茶があります。
抹茶や煎茶など、緑色をしているものには葉酸やビタミンCがしっかりと含まれていますので、それを摂取することで簡単に葉酸とビタミンCを摂取することができます。
ただ、ペットボトルのお茶はこれらの効果は期待薄。葉や粉からお茶をいれるようにしてください。
長期にわたる避難生活では、このお茶にかなり助けられたという話も聞きます。
そんなに重量もありませんしかさばるものでもありませんので、準備しておくことをお勧めします。

2つのマイタイムライン

 さまざまな防災の研修会で取り上げられることが多いので知っている方も多いと思いますが、このタイムライン、2種類必要だということをご存じですか。
 一つは、台風や水害などあらかじめ起きることが予測できる災害に備えるタイムライン。こちらは災害前から発災後まで作る必要があります。
 もう一つは、発災後から作成する地震用のタイムライン。こちらは予測することができないため、発生してから後の行動計画しか作ることができません。
 どちらも作っておくと、いざというときに慌てなくて済みます。
 災害時には、冷静なつもりでも冷静な判断が下せなくなっていることが多いですから、自分用のタイムライン、「マイタイムライン」を作っておいて、災害が予測されるとき、そして災害が起きたときの行動を自動化しておくようにしてください。
 もう少ししたらゴールデンウイークになります。
 新型コロナウイルス感染症の蔓延がなかなか収まらないので、おうちにいる方もいると思いますが、せっかく家にいるのなら、マイタイムラインの作成と併せて、避難経路の点検や確認も済ませておいてくださいね。

カセットコンロと電磁調理器

よくあるカセットコンロの一つ。

 災害後に温かな食事を作るため、調理器は準備しておいた方が安心できると思います。特に災害直後はライフラインの全てが止まっている可能性が高いので、単独で使えるカセットコンロを準備しておくことをお勧めします。
 ただ、カセットコンロはその名の通りカセットガスがなければ使えません。
 調理する時期と内容によってカセットガスの使用量が異なるためになんとも言えませんが、通常2~3食分を作ってガス1本を消費すると考えて準備するといいと思いますが、たくさんのカセットガスが必要なのも確かです。
 田舎であれば廃材で焚き火などをして、そこで調理する方法もあるのですが、都会地でこれをやろうとしても廃材が手に入らないと思いますから、電気調理器を準備しておくといいと思います。
 ライフラインの中で、プロパンガスを除くと一番復旧が早いのが電気ですので、特に都市ガスの地域では電磁調理器を準備すれば、暖かいものを継続して食べることができると思います。
 最近は携帯できるタイプの電磁調理器もあるようですので、あらかじめ準備しておくことをお勧めします。
 特に乳幼児やお年寄りと一緒に避難する場合には、熱源を複数確保するのを忘れないで欲しいと思います。
 ちなみに、お住まいの地域が田舎でプロパンガスであれば、ボンベさえ無事なら、直結できるガスコンロで暖かいものを作って出すことが簡単にできます。

【活動報告】研修会の展示に協力しました

非常用持ち出し袋各種の展示。市販品のセットを手に取るのは珍しいことのようでした。

 去る4月10日、日本防災士会島根県支部益田鹿足ブロックの顔合わせ会兼研修会が開催されました。
 事前の打ち合わせの中で、エマージェンシーブランケットについて現品があれば展示がしたいとのご相談を受け、せっかくなので非常用持ち出し袋について展示していただけないかを打診、快諾いただき、当日に非常用持ち出し袋や仮設トイレ、簡易ヘルメットなどの展示をさせていただきました。
 当日は参加者の方々からさまざまなご質問をいただき、また、市販品の非常用持ち出し袋や防災食について興味深そうに品物を確認していました。
 普段は当研究所の講習会などで展示しているアイテム類ですが、こういったアイテム類の貸し出しにも需要があることがわかって非常に参考になりました。
 今後、他団体の行事でも展示の意向があれば貸し出しについても行っていきたいと考えています。
 今回お話をいただきました日本防災士会島根県支部益田鹿足ブロックの皆様にお礼申し上げます。