情報提供とリスク

 自治会や自主防災組織による地区防災計画の策定でネックになるのが、個人の情報をどうやって提供してもらうのかということです。
 隣近所がわからないこのご時世、そこに誰が住んでいるのかは情報の提供を受けない限り、さっぱりわからないものです。
 もちろん自治会に入っていれば家族構成はある程度わかりますが、そこに住んでいる人がどのような状態で災害時にどのような支援がいるのかは、恐らく誰にもわかりません。
 普段の生活でも支援のいる要支援者については、福祉と防災と地域が連携して要支援者の支援計画を策定することになっていますが、普段の生活はできているが、災害時の避難などに支援のいる人についてはどこも拾うことができません。
 ただ、家族の状態を知られるのがあまり嬉しくない人もいらっしゃるので、放っておいてくれと情報提供を拒否されることもあると思います。
 また、個人情報を気にする人にとっては、情報は行政が持つべきで近所の人が知るべきではないと考えている人もいますので、文字通りの地区防災計画を策定しようとしても一筋縄ではいかないのが現状です。
 ただ、地区防災計画というのはその地区全てが該当者になるわけではなく、地区防災計画の策定に関わった人に対する計画だということに留意して下さい。
 つまり、賛同者だけで計画を策定しても法律上は何の問題もないということになります。
 逆に考えれば、地区防災計画は一人で作っても「自分の地区防災計画」として認められますので、他の人が策定した地区防災計画に従わなくてもいいということで、情報提供はしなくてもいいということになります。
 ただ、その場合には何か起きても全ての責任は自分に降りかかってくるということを肝に銘じておかなければなりません。
 家屋が倒壊してもまず助けてはもらえませんし、状況によっては安否確認すらしてもらえないでしょうが、その覚悟を持ったうえでご自身の情報を提供しないという選択肢を選んで欲しいと思います。
 どこも人手が足りない今、正確な情報を提供して非常時には助けて欲しいとお願いしている人と、自分の情報は出さないが非常時は助けて欲しいという人では、助ける優先度が変わります。
 そういったリスクがあることを考えた上で情報提供について考えて欲しいと思います。