当事者の災害、他者の災害

 災害というのは思ったよりも復旧に時間がかかるものです。ただ、マスメディアに取り上げられなくなり、災害の跡が片付いて行き、時間が経過していくとだんだんと人々の記憶からは忘れ去られていくものです。

 でも、被災した当事者はなかなかそうは行きません。自分の生活を取り戻し、日常を取り戻したように見えても、心の中の整理はなかなかつくものではありませんから、ここにギャップが生じてきます。周囲はその災害を忘れてしまったように普通の日々を過ごしているのに、自分だけは被災した日から時間が進んでいない。特に高齢者の方は、被災し、さまざまなものを失い、呆然としている中で周りだけが変化して、自分だけが取り残されていく。相談する相手もなく、人と会いたくなくなって、俗に言う「震災関連死」の1人になってしまう。これではあまりに悲しすぎます。

 ハード面では復旧しているかもしれませんが、急激な変化についていけない人たちに対してどんな対応をしていけばいいのか、立て続く災害の中で、行政も地域も問われているのではないのかなという気がします。