危険を見つけよう

 災害が発生すると、普段はなんでもないような場所がものすごい危険な場所になっていたりすることがあります。
 よくあるのがアンダーパスで、普段は何も意識せずに通行していても、短時間に大雨が降ったようなときだと、いきなり池になっていたりします。そういうときには、大抵道路管理者が通行禁止措置を取る前に、多くの車が突っ込んで水に沈むことになっていると思います。
 でも、大雨のときにはアンダーパスは水がたまるかもしれないと意識しておくとどうでしょうか。もしくは、雨の時にはアンダーパスは通らない、できれば普段から使わないといった行動をしていると、冠水時にも自分は被害を受けなくてもすむかもしれません。アンダーパスは危険な場所ということが意識できれば、行動が変わるのです。
 同じようなことが、谷が集まる場所にも言えます。
 普段はなんともなくても、山で大雨が降ると、それが谷筋に流れ、谷が集まる場所では大水が出てしまうことがあります。
 困ったことに、これらはハザードマップでは表示されないケースがよくあり、浸水しない場所のはずなのに床下浸水してしまったりすることがよくあります。
 そのことを知っていると、普段から降ってくる雨の量が気になってくると思います。
 普段から降っている雨の量を意識するようになると、普段の雨と普段と違う雨にも気づけるようになります。
 普段と異なる雨に早くから気づくことができれば、被害が発生する前に避難するなどの対応策も可能になります。
 危険は普段の生活のあちこちに潜んでいますが、毎日の生活ではそれを意識しなくてもいいような環境が作り出されています。
 でも、何かの拍子に意識していなかった危険がいきなり牙をむくことがありますので、普段から「ここはどうなると危険なのか?」といったことを意識するようにしましょう。
 危険を見つけ、そしてその対処法を考えて実行すること。
 災害だけでなく、普段の生活の安全確保でも使えるのではないでしょうか。

【活動報告】ワークショップ「防災マップを作ろう!」を開催しました。

横断歩道の見通しが悪いと、渡ったあとで危険認定。

 去る10月15日に益田市の高津上市地区で小学生による地域安全点検として防災マップ作りを行いました。
 参加者が全部で5名と少し寂しかったですが、そのぶんしっかりと地域の安全点検をして回ることができました。
 普段通学路として使っている道も、安全点検してみるとかなり危険だということに気づいたようで、どうすればいざというときの安全が確保できるかについて参加者でいろいろと話をしていました。

地域のお年寄りとちょっと立ち話。しっかりやってと激励される。

 また、防災や防犯といった普段あまり気にしていないものの見方がわかると、普段の生活でもかなり見方が変わってくるというご意見もいただきました。
 今回はこれで終了しましたが、今後各地で防災マップを作る機会が増えるといいなと思っています。
 子どもたちと一緒に地域の安全点検をしてみませんか?
 興味のある方で講師やお手伝いが必要であれば、ぜひお声がけください。
 できる限りのお手伝いをしたいと思っています。
 今回参加してくれた子供たち、そしてお手伝いいただきました皆様に心から感謝いたします。

水害について考える日

 今日7月23日は昭和58年豪雨による水害があった日です。
 当時は総計で548mm(諸説あり)の集中豪雨で島根県西部の多くの河川が決壊し、大きな被害が発生しました。ただ、当時どのようなことが起きて何があったのかについては、報道発表など以外の記録というのは案外残っていない状態で、記録の承継をすることが急がれているのでは無いかという気がしています。
 ところで、ここのところ毎年国内のどこかで水害が起きているのですが、その雨量を見ていると、どうかすると1,000mmを超えているようなケースが出てきています。
 これだけの雨が数日で降るような状況だと、避難レベル3から一気に避難レベル5になって避難レベル4を飛ばしてしまうような事態も発生することになり、避難情報が発令されてから避難をしたのでは遅いという状況が起きるようになってきました。そのため、あらかじめ大雨が降ったらどうなるのかと言うことをきちんと知っておく必要があると思います。
 河川に関しては、国が管理している部分の一級河川について水害による浸水想定が出されていて、これは国土地理院の「浸水ナビ」で確認することができます。
 また、県管理河川についても、浸水想定が出されているものもありますので、お近くの河川が氾濫したらどうなるのかということを一度確認して置いた方がいいと思います。
 ハザードマップでは、多くの場合50年に一度くらいの水量を計算して浸水域が設定されているようですが、「浸水ナビ」では、国管理河川に限定されているとは言え最大浸水想定が出されていますので、最悪の場合を想定することができると思います。
最近の天気を見ていると、水害はいつ起きてもおかしくないという印象を持っています。
 ハザードマップだけで無く、国土交通省や都道府県、市町村が出している河川ごとの浸水想定域などの地図も参考にして、避難が必要かどうか、そして避難する場合の避難先と避難経路について、確認して準備しておくようにしてくださいね。

避難計画を作ってみよう

前段となる防災マップ作りの一コマ。

 避難計画を作るときは、まず避難経路の検討をするところから始めましょう。
 ただ、前提条件として「全ての災害にオールマイティで使える避難経路はほぼ作れない」ということを知っておいてください。
 その前提を頭の片隅に置いた状態で、とりあえず避難経路を一つ作ってみましょう。

1.防災マップ(避難経路検討用の地図)を作る

 避難経路を決めるときには、住宅地図にハザードマップと避難所の位置を落とし込むところから始めます。
 ハザードマップは面で作っていますが、住宅地図は点で見ることができるので、重ねることで自分の家や周囲の状況が一目でわかります。
 できればこれに標高の色分けを加えると、非常に使いやすい防災マップができあがります。

2.防災マップで家と周囲の避難所の位置関係を把握する

 できあがった防災マップを見て、家と避難所の位置関係及びその間にある障害を確認します。
 崩れそうなところ、水没しそうなところを確認し、避難しやすそうな避難所があるか確認してみます。
 どの避難所も避難するには危険だと考えた場合には、近くの安全そうな場所に一時避難を考えるか、あるいは早めの避難行動開始を検討することになります。

3.避難経路の線を引いてみる

 決めた避難先までの経路を地図に落としてみます。

4.実際に決めた避難経路を歩いてみる

 作った地図を片手に、実際に作った避難経路を歩いてみます。
 実際に歩いてみると、図上では気づかなかったマンホールや側溝、古い家屋やブロック塀が案外多いことに気づくと思います。
 それを地図に落とし込んでいき、地図だけではわからない情報を調べていきます。

5.実際に歩いてみた情報を元に、災害ごとの避難経路を考えてみる

 現地を見て得た情報を使って、想定される災害ごとに危険だと考えられる場所を避けるような経路を考えてみます。
 危険だと考えられる場所を決めるときには、どういう理由で危険なのかを整理しておくとそこを避けるべき災害がわかります。
 例えば、マンホールだと蓋が外れた状態が見えないことにより中に落ちる危険性があります。蓋が外れているかどうか確認できない状態ではそこは避けるべきということになりますから、地震だと夜間、水害では危険だということがわかります。
 こうして整理していくと、考えられる安全な経路がいくつか見えてきますので、災害時にはそこを避難すればある程度安全が確保されるわけです。

 実際に作ってみると、最初に想定していた避難経路が非常時には使えないということがわかることが多いです。
 図上と実地調査、どちらも重要なものですから、しっかりと確認しておきましょう。
 そして、一度作ったら終わりではなく、最低でも年に1回は実際に避難してみて、問題なく避難ができるかどうかを確認するようにしましょう。

DIGをやってみよう

地図に情報を書き足していくことで防災マップが出来上がる。写真はとある仮想町を使っての演習。

 DIGというのをご存じですか。参加する人が地図を囲み、ゲームのように災害時の対応策を考える図上訓練のことで、Disaster(災害)、Imagination(想像)、Game(ゲーム)の頭文字をとってDIGと呼ばれています。
 一枚の大きな地図を用意してそこにハザードマップの内容や道路や水路、危険に見える建物や構造物、病院や薬局といった施設などを書き込みをしながら地域の強みや弱みを洗い出していきます。
 対象とする災害やテーマを絞れば短時間でもできますし、一人でも複数人でも楽しみながら作ることができます。
 また、情報を一枚の紙にまとめて図化するので誰でも理解できるものができますから、参加した人だけでなくその地図を見る人達の防災力の向上も期待できます。
 聞くと少しだけ取っつきにくい感じがしますが、実際にやってみると非常に面白く、意外な発見があったりしますから一度やってみることをお勧めします。
 参考までにDIGの作り方について記載したウェブサイトをご紹介しますので、興味のある方はぜひ覗いてみてください。

DIGってなぁに?」(静岡県庁のウェブサイトへ移動します)

防災マップと防犯マップの違い

 防災マップ作りというお話をすると、なぜか人気の無い通りや街灯のことについて聞かれることがあります。
 恐らくは防犯マップと勘違いしておられるのだろうなと思うのですが、この二つは似通っていながら微妙に性格が異なっているものです。
 もちろん防災・防犯マップとして一枚の紙に落とし込むことは可能なのですが、見る視点が違うと見方が当然変わっています。
 ただ、このことはやっている本人でもなかなかイメージがつかないものです。
 ざっくりと考えると、防災マップは自然現象対策、防犯マップは人対策になるのかなと思っていますが、防災、防犯でかぶっているところも多いので、なかなか割り切ることは難しいです。
 例えば、「安全な場所」で考えてみます。防災マップでは、周囲に危険物が無く物理的に安全な場所を指しますが、このときには第三者の目があるかどうかは殆ど気にすることはありません。でも、防犯マップではまず人目がしっかりとあるかどうかが先にきて、その上で逃げ込める場所を探すことになると思います。このときに物理的に危険なものがあるかどうかはあまり考慮しないと思います。
このように同じ言葉を使っていてもその定義が異なっていることがあり、この二つを混ぜるとちょっとだけ地図の作り方がややこしくなってきます。
 このあたりの交通整理が上手にできるともっと有用な地図を作ることができると思うのですが、当研究所にはまだそれだけの能力が備わっていないなと感じています。
 あえて書くとするなら、防災マップは地域全体が非常事態になっている状況、防犯マップは、地域全体は平常だが部分的に非常事態になっているということなのかもしれませんが、なかなか違いを理解するのは難しいなと感じています。
 目標は防災・防犯の両方を含んだ地域の安全安心マップです。
 この域に早く届くように試行錯誤を続けていきたいなと思っています。

どこに何があるかを知る

 被災時に痛切に感じるのは、どこにいったら何があるのかを実は知らないということです。
 例えば、家の中に飲める水がどれくらいあるのかを意識したことがあるでしょうか。
 保存している水はもちろんですが、例えばトイレの水洗タンクの中、あるいは太陽熱温水器があれば水だけで無くお湯が手に入ります。
 でも、意識していないと水があるのに水が無いと思い込んでしまうことになりかねません。
 食料でも同じです。冷蔵ものや冷凍ものは冷蔵庫が駄目になるとすぐに食べられなくなると思ってしまいますが、クーラーボックスに詰め替えれば、半日から一日程度は食べることが充分に可能です。
 冷蔵ものの上に冷凍物を乗せておけば冷気で冷蔵物の保温もできますし、冷凍物はそのうち自然解凍されて調理しやすくなります。
 家の中に何があるのかは案外と知らないものなので、災害対策の備蓄を確認する際には、どこに何があるのかをチェックしておくと慌てなくて済みます。
 同じように、自分がいる街のどこに何があるのかを知っておくと、いざというときに自分の命を守ることにも繋がります。
 避難するのに使える場所だったり、公衆電話や公衆トイレ、自動販売機、下水用マンホールなど、普段目にするものでも意識しなければ無いのと同じ。
 家や地域の防災マップ作りは危険な場所を確認するだけで無く、いろいろな資源を知る作業でもあります。
 しっかりと意識して、できれば所在図や地図を作っておいて、災害発生後、自分の生活を守るための武器として使いたいですね。

防災マップを作ろう・自分の部屋編

 防災研修会をやると必ずといっていいほど出てくる防災マップ。
 地域の危険な場所やものを調べて地図に書いていき、安全な場所や安全な避難経路を確認するために大切なものです。
 ただ、地域をどんなに点検しても外に出ることができなければ、せっかく作った地域の防災マップは何の役にも立ちません。
 自分のいる場所から外に出るまでの経路もきちんと点検しておかないといけませんよね。
 そこで、今回は自分の部屋の防災マップを作ってみようと思います。

 まず、準備するものは方眼紙。書きやすく、部屋の見取り図が書きやすいものを用意してください。
 次にメジャー。5m計れれば十分だと思います。
 この二つを使って、部屋の見取り図を作っていきます。
 記入をする方眼紙は一マスのサイズが何cmかを決めておかないといけませんが、ここではとりあえず1マス10cmとして作成をすることにしましょう。
 まずは部屋の大きさを方眼紙に黒色で落とし込みます。外枠だけ書いてあれば大丈夫です。扉やガラス窓の位置がわかるようにしておきましょう。
 次に、家具の大きさを測って記入していきます。テレビ等も記入します。
 見取り図には幅と奥行きだけを書いていきますが、高さもメモしておいてください。

所長が試しに書いてみた部屋の間取り。四角一つが10cmで作成している。

 書き終わったら、今度は赤色を使って先ほど記入した家具のうち、安定の悪い面に倒れたと想定して、メモしておいた高さに従って倒れた部分を書いていきます。
 中には倒れないものや動かないものもあると思いますが、それはそのままで大丈夫です。
 次にガラス窓が割れたことを想定して飛散する区域を斜め線で書きます。窓から30cm程度斜め線を入れておいてください。
 そして、その状態で出入り口の扉が動かせるかどうかを確認してみます。
 さて、ここまで書いてもらったのは、地震に遭ったときに最悪どのような被害が出るのかを試しに書いてみたものです。
 その絵の中に、普段自分が寝ているであろう場所に青色でマークをつけると、現在のこの部屋とあなたの危険度を教えてくれる図のできあがり!

ざっくりとだが部屋の中の危険な状態はこれでわかる。あとはいかに赤い部分を減らすことに力を入れるかだ。

 どうですか? 寝ているときに地震に襲われたとき、あなたは何かの下敷きになっていませんでしたか?
 もし下敷きになっていたり脱出路が塞がれていたのであれば、どういう風にすれば安全が確保できるかを考えてください。
 例えば、家具の向きを変えてみたり、寝る場所を変えてみたり、より低い家具に変えて転ばないようにするというのもできますよね。
 一番の理想は部屋の中に寝具以外何も無い状態ですが、それが困難であるなら「落ちない」「壊れない」「倒れない」を考え方の基本にして考えてみてください。
 また、ここまでは触れていませんでしたが、部屋の照明にも注意が必要です。天井直付けの照明器具なら大丈夫ですが、釣り下げ式のものだと激しく揺れたときにはどこかにぶつかって割れてしまう可能性があります。
 例えば笠を固定して動かないようにすれば、破片で怪我をしなくてもすみます。
部屋に限らず、自分が長く過ごす場所の安全は非常に大切です。
 一度「部屋の防災マップ」を作って、どういう風にしたら自分の身が守れるのかについて考えてみてはいかがでしょうか。