災害で開設される避難所は、災害で住む場所を失った人にとって生活の核となる場所です。
また、支援物資や情報の集積地であり、場合によっては復旧支援の拠点ともなる、非常に多機能な場所でもあります。
最近はコロナ渦で在宅避難が推奨されていますが、それでもさまざまな事情で住むところを失い、避難所へ逃げ込む人がいなくなるということは考えにくいことです。
その時に少し注意をしなければいけないことは、避難所における支援物資の要求を始めとするさまざまな支援要請の仕方です。
避難所での避難者が多いほど必要とされる物資やサービスは多岐におよぶことになりますが、その際にその避難所でそれを必要とする人が多いほど要求の優先順位があがるということが起こります。
逆に言うと、そのアイテムがないと生活が立ちゆかなくなる人であっても、そのアイテムを必要とする人が少数であれば、避難所としての優先順位は下がると言うことです。例えば、乳児用のおむつが欲しいと思っても、その避難所で多くの人が必要としているのが大人用おむつであれば、届くのは大人用おむつが優先されて乳児用はいつまでも届かないことになります。
また、避難所では避難所を運営するための運営委員会が結成されますが、その委員達が不要と判断すれば支援物資の要求さえされないということになり、過去には生理用品を始めとする衛生用品が運営委員により不要とされてしまってその避難所で生活する人達が困ったというようなことが起きています。
こういった隠れてしまうさまざまな要求を発掘するためには避難者から直接意見を確認できる場が必須となりますが、行政はどうしても平等という部分に拘って後手に回ってしまうため、NPOや支援団体がそれぞれに立ち入ってそれぞれの対象者からニーズを引き出すという作業を行っています。
これはどちらがいいというわけではなく、避難所としてのニーズと、避難者としてのニーズが異なっているだけですから、対応が異なってくるのも仕方が無い部分があります。
最近ではSNSで避難所で不足しているものの支援要求をすることも増えていますが、そのSNSでの発信は「避難所のニーズ」なのか「避難者個人のニーズ」なのかをしっかりと見極めないと、SNSを見た人が一斉に支援に動くと避難所に同じものが大量に届いて逆に困ったと言った事態も起きます。
支援要求をする際には、それが誰のニーズなのか、いつ時点のニーズなのかをはっきりさせ、具体的に必要とする数量もあわせて発信する必要があるということを情報を出す側も受け取る側もしっかりと考えておく必要があると思います。
一番いいのは、できるだけ避難者のニーズは自分の非常用持ち出し袋に詰めておき、ある期間は自分のニーズを出さなくても大丈夫なようにしておくことです。わかっているものはあらかじめ避難所にある程度ストックしておくことも一つの方法でしょう。
避難所のニーズと避難者のニーズは異なり、それぞれに分けた対応が必要なのだと言うことを前提にして、支援物資やサービスを届けたいですね。
余談になりますが、避難所の支援でもっとも問題となってくるのが水です。避難した時点では確かに不足しているものなのですが、給水車や行政の支援物資として真っ先に供給されるのも水ですから、遠方で飲料水を買って宅配便などで送ったとしても届く頃には充足していることが殆どです。
もし送るのであれば、それが本当に支援になるのか、現地の場所取りになってしまうのではないかを充分に考えた上で送られることをお勧めします。
また、避難所支援といって古着を大量に送る人もいますが、被災者はほとんど着ません。逆の立場になってもらえればわかると思うのですが、さまざまな形で新品が供給されることが多いので、古着はただのゴミです。
災害ゴミを処分しなければならない環境にさらなるゴミを追加することは絶対に止めましょう。
タグ: 避難所の運営メンバーに生活弱者を組み込んでおく
生活弱者ほど防災対策を知っておこう
発災してからしばらくして落ち着いてくると、避難所の生活リズムも確立されていきます。
その中で、生活弱者の視点があるのかというと、ないと言わないといけないのが現状です。
ただ、生活弱者がもし防災や避難所運営に詳しかったとしたら、避難所の生活リズムの中に生活弱者の視点を取り入れることが可能ではないだろうか、と考えています。
災害が発生して避難所が立ち上げられるときには誰もが呆然とし、不安になるものですが、もし、そこで普段「生活弱者」とされている人が避難所設置の指示を出し、避難所の運営を主体的にすることができたなら、よりよい避難所運営が可能なのでは無いかと思うのです。
一般的に「避難所では生活弱者ははじき出されてしまう」ことが多いのですが、運営の核の部分に入り込めれば、うまく避難所運営ができている限りにおいては追い出される心配はないのではないでしょうか。
そして、生活弱者が避難所で生活できる環境というのは、生活弱者で無い人が生活するにしても悪い環境ではないはずです。
いろいろと考えてみるのですが、生活弱者が「お客さん」として避難所に入ってくると、これはそうで無い人がその手配をさまざまにしなくてはいけないことになり、非常に煩雑になってくるものです。
ですが、最初から避難所の運営にそれが組み込まれているのであれば、仕組みを変更する必要が無いのでうまく回せるはずです。
訓練時に「生活弱者だから」こそ積極的に参加して、避難所の設置方法や運営方法といったことに提案や協力をするのであれば、災害本番の時にも当然それが組み込まれていきます。
生活弱者の実態と対応は、その立場にある人で無ければ完全には理解できませんから、災害時に立場の弱い生活弱者ほど、積極的に訓練に参加しておくべきなのではないかなと思います。
そうすることで、避難所を運営する人たちにもそれなりの覚悟ができますし、そういう生活弱者がいるということを知ってもらっておくことも大切なことです。
「迷惑かけてはいけない」とか「足手まといだから」とか、「どうせこのまま死ぬから」とか言っているうちは、避難所に入ることが受け入れてもらえないし、生活弱者への対応も当然してもらえません。
自分の防災対策はもちろんですが、地域の防災活動にも参加することで生活弱者もそうで無い人も、お互いに安心して避難できる環境を作ることができるのではないかと思っています。