ろうそくと火災

 昨日は災害における死因について書きましたが、消防研究センターの調査によると、被災後に起きる火事の原因では、「通電火災」「ろうそくによるもの」「カセットコンロによるもの」「その他」に分かれるようです。
 最近は殆ど見ないような気のするろうそくが原因の火災が、消防研究センターから注意が出るくらいには起きているということで、今回はなぜろうそくによる火災が起きているのかについて考えてみたいと思います。

 最近でこそ電池式ランタンが普及していますが、ちょっと前までは普通にろうそくを使っていました。
 市販されている「防災缶」でも照明器具としてろうそくが入っているくらい、ろうそくは災害後の生活ではメジャーなものです。

市販の「防災缶」の中身。小型のペンライトと、背の低いろうそくが一緒に入っている。

 灯りだけでなくある程度の暖を取ることもできますし、なによりもろうそくの火は安心感を与えてくれます。
 非常にありがたい道具ではあるのですが、裸火であるが故に地震の際には非常に危険なものにもなるのです。
 地震ではしばらくは余震が続きます。重心の低いろうそくを使ったり、風防でろうそくを囲ったりと、いろいろと気をつけていても、強い余震がきたら飛んだりはねたり転がったりして、周囲にあるものに引火することがありますし、ろうそくは動かなくても、他の可燃物が倒れたり落ちたりすることもあるでしょう。
 他の災害時はともかく、地震ではろうそくに限らず屋内の裸火は危険であると言うことを覚えておいてください。

防災缶の中のろうそく。このサイズで3時間程度は燃えるらしい。
缶の表面に書かれている案内文には、たき火の火種にも使えるとある。

 ところで、災害備蓄ではランタンを勧めているのになぜろうそく火災が増えるのか。
 お仏壇があるようなお宅だと、たいがいろうそくとマッチが一緒に置いてありますので災害時にはそこから持ってきて使うということが多いようです。
 普段使わずどこにしまってあるかわからない電池式ランタンよりも、すぐに取り出せて普段使い慣れているろうそくを使うのはある意味で当然です。
 そうであるなら、例えばろうそくをしまってある場所に「災害の時はランタンを使う」という張り紙をしておいたり、ロウソクと一緒にランタンをしまっておいたり、家族で一緒に一年に一回くらいはランタンを囲む日を作ってもいいかもしれません。なんらかの形でランタンを意識し、使うという気にさせるような仕掛けを作っておけば、ろうそくを使う確率を下げることができるのではないかと思います。
 ろうそくは便利であるけれど、地震の時には屋内では使わない。その意識を持ってランタンを準備しておくようにしましょう。