熱中症対策の飲み物を考える

 熱中症については先日ざっくりと触れたのですが、その中で熱中症予防にはこまめな水分補給が重要だというのがありました。
 利尿作用のあるカフェインが含まれる、例えば日本茶やコーヒーなどは却って脱水症状を招くので駄目とも書きましたが、ではどんな飲み物がよいのか。
 今回はそれを考えてみたいと思います。
 代表的なものとして、今回は「水」「麦茶」「経口補水液」「スポーツドリンク」の4つを比べてみることにします。

1.水

お水にはいろいろな種類がある。

 水分補給というと、文字通り水を飲むことが最初に浮かぶと思います。
 炎天下で飲む冷えたお水はなんともいえず美味しいですし身体への負荷も少ないのですが、実は水だけ飲み続けると、水を飲んでいるのに脱水症状が起きるという妙なことになってしまいます。
 これは血液などの体液にある塩などのミネラル分が汗や尿と一緒に体外に排泄され、体液が減ったところに水だけ補給することで体液の濃度が下がり、体液の濃度を戻そうとする身体の働きによって水分が排出され、結果として脱水状態になってしまうからです。
 塩分や糖分を一緒に摂取すれば発生しない問題なので、お水と一緒に塩飴や塩分補給用のタブレットなどを食べるとよいでしょう。
 もちろん、食べ過ぎ飲み過ぎにはご注意を。

2.麦茶

麦茶には六条麦茶、二条麦茶、ハトムギ茶などがある。メーカーによって微妙に味が異なるので、お気に入りを見つけるのも楽しい。

 麦茶は夏の飲料の代表選手です。熱中症対策に重要なミネラルがしっかりと含まれていて、熱中症予防の飲み物としては非常に優秀です。
 1リットルの麦茶にひとつまみの塩を加えることで水分が身体に吸収されやすくなります。
 はと麦が原料のものは、成分に利尿作用のあるものが含まれているらしく気をつける必要がありますが、手軽で安く、飲み続けることができる飲料としては最適だと思います。
 一つ気をつけておきたいのが、小麦アレルギーの方。食品表示法における27品目に大麦は入っていないのですが、小麦アレルギーの方の中には麦茶でアレルギー反応が出る方もおられるそうですので、該当する方は気をつけていただきたいと思います。

3.経口補水液

写真は経口補水液として有名な大塚製薬のOS-1。これ以外にもいろいろとある。味付きの方が飲みやすい。

 経口補水液は、元々は医薬品ですが、医療行為を伴わずに脱水症状の改善が期待できることから割とよく使われるようになっています。
 特長は、身体への吸収の早さ。脱水症状の改善のために使われるものですので、身体に吸収しやすいように電解質濃度が高くなるように作られています。
 同じ理由から、スポーツドリンクよりも糖度は低くなっています。わかりやすく書くと塩分多めで糖分控えめということです。
 塩分が多めですから、塩分の摂取制限のある方は飲むときに注意が必要です。また、飲み方や取り使いについてもパッケージに記載があるので、それに従って服用することになります。
 常用するのではなく、脱水症状が感じられる状況で使うというのが正しいと思います。個人的な感覚ですが、これを美味しいときには身体に脱水症状が起きつつあって、そうでないときにはまずくて飲めないというのを体験しています。

4.スポーツドリンク

スポーツドリンクはさまざまなサイズがある。用途に応じて選ぶ方が無難。

 ポカリスエットやアクエリアスなどのスポーツドリンクも身体の水分補給を目的として作られています。
 経口補水液と異なるのは、汗や排尿で失われる塩分だけでなく、運動時に失われる糖質の補給も考えられていること。
 そのため、運動していない状態でスポーツドリンクを摂取し続けると糖分過多になってしまうので気をつけてください。
 また、作られた目的上塩分・糖分がしっかり含まれていますので、それらの摂取制限を受けている人は注意が必要です。
 ちなみに、以前「甘いので水で割って飲む」という話を聞いたことがありますが、身体への吸収効率などが変わってしまううえにおいしくないのでお勧めはしません。

 目安としては、ゆったりとしているときや日常生活程度の運動であれば水や麦茶、炎天下での作業やスポーツをするならスポーツドリンク、脱水症状を感じたら経口補水液といった感じでしょうか。
 その時々に応じて飲み物を変えていけばいいと思います。
 気をつけたいのは、冷えすぎている飲み物は胃腸に負担をかけてしまうということ。
 汗をかいた後に飲む冷たいものはとてもおいしいのですが、胃腸に負担がかかると吸収しにくくなるようですので、冷やしすぎないことも上手な水分摂取のコツといえるでしょう。
 上手に水分を摂取することで、脱水症状を防ぐようにしたいですね。

熱中症対策を考える

 ここ数日暑い日が続いていますが、ここ数年、暑くなってくると熱中症についてさまざまなところで注意が呼びかけられています。
 暑いところで起きる熱中症ですが、似たようなものに熱射病や脱水などがあったりして、筆者自身はどう違うのかいまいちピンときていません。
 そもそも熱中症ってなんでしょうか。
 今回はざっくりと熱中症について調べてみたいと思います。

1.熱中症とは?

 熱中症とは、何らかの理由で体温が上がったことにより、体内の水分や塩分のバランスが崩れたり、体温調整機能が働かなくなって体温上昇、めまい、けいれん、頭痛など、さまざまな症状の総称です。
 このうち、強い直射日光によって起きるものが日射病、車や部屋の中といった閉ざされた空間が高温になって起きるものを熱射病、汗や尿など体内の水分は出て行くのに適切に水が供給されずに起こるものを脱水症状と言います。
 お年寄りは感覚が鈍いため、自分が熱中症になったことに気づいたときには自分が動けない状態になっていることが多いですし、地面に近く水分の調整が未成熟な子どもも発症しやすいです。
 ようするに、熱中症は「高温多湿な環境に身体が適応できなくなることにより生じるさまざまなトラブルの総称」だと考えればよさそうです。
 ただ、放っておくと重度な後遺症や死亡を招く場合もあるので症状の初期でいかに適切な対応をするかがとても大切です。

2.熱中症が発生しやすい条件

1)気温が摂氏25度以上のとき
2)湿度80%以上の湿度が高いとき
3)直射日光や日差しの照り返しなど日差しが強いとき
4)無風もしくは風が弱いとき
5)暑さ指数が高いとき
 これらの条件が単独だったり重なったりしたとき、体調によって熱中症が発症します。環境省が運用している熱中症警戒アラートは、この熱中症が発生しやすい条件が揃うと発令されますので参考にするといいでしょう。

3.発生する症状

1)めまいや顔のほてり
2)筋肉痛や筋肉のけいれん
3)身体のだるさや吐き気
4)異常な汗(多量または出ない)
5)体温の上昇
6)皮膚の異常
7)呼びかけに反応しない、まっすぐ歩けない、一時的な意識の喪失
8)腹痛
9)水分補給ができない
といった症状があったら、熱中症を疑います。新型コロナウイルス感染症のおかげであちこちに非接触型の体温計が設置されていますので、体温はこまめに確認しておくと安心です。

4.対応方法

 いずれにしても涼しい場所にすぐに移動させます。クーラーの効いている部屋が一番ですが、なければ風通しのよい日影でも構いません。
 可能であれば衣服を脱がして皮膚に水をかけ、うちわなどであおいで身体からの放熱を助けます。
 氷や冷えた保冷剤があるなら、首筋や脇の下、太ももの付け根など、皮膚のそばを大きな血管が走っている場所を冷やして身体の冷却を助けます。
 とにかく体温を下げることを目的として身体を冷やします。
 身体の深部体温が摂氏40度を超えると全身痙攣などが起きて危険な状態になることがありますから、あらゆる手段を使って身体を冷やしてください。
 意識がはっきりしていて飲み物が飲めるなら、冷たいスポーツドリンクや経口補水液を飲むことで、身体の内部から温度を下げることも可能です。
 ただし、意識がなかったり混濁していたり、吐き気を訴えたりしているときには無理に飲ませないでください。
 「3.発生する症状」の(5)~(9)の場合には救急搬送が必要となりますので、身体を冷やす作業をしながら救急車を手配してください。

5.熱中症の予防

 とにかく暑さを避けることです。涼しい服装で、クーラーの効いた部屋で過ごすこと。窓を開けていても熱風が吹き込んでくることもありますので、涼しい環境を意識して作るようにしてください。
 自宅が暑くてどうにもならないときには、図書館などの公的施設に出かけてみるのも手です。
 また、コロナ渦で標準装備になっているマスクは口元に熱が籠もって体温上昇を招く元です。外出時のソーシャルディスタンスを確保できないときを除いて、なるべく外すようにしてください。どうしてもつけないといけない場合には、負荷のかかる運動や作業はしないようにしてください。
 こまめな水分補給も大切です。喉が渇いていなくても、30分~45分程度に一回は水分をとるようにしてください。このとき、利尿作用のあるカフェインを含む飲料、例えばコーヒーやお茶は飲むと利尿作用によって脱水症状を招くこともありますので、できるだけカフェインの入っていない飲み物を取るようにしてください。

 熱中症は気がついたときには一人ではどうにもならない状態になっていることもよくあります。なるべく誰か人のいるところで水分を取りながら暑さをしのぐというのが、一番よいのかもしれませんね。

熱中症対策で摂る飲み物あれこれ

 熱中症対策と言うことで、毎年夏はさまざまな飲み物が飲むべきとか飲まない方がいいとか言われ、同じ飲み物でも評価が分かれることがあります。
 もうそろそろ夏も終わると思いたいのですが、今回は熱中症対策で誰がどんな飲み物を飲むべきなのかと言うことについて考えてみたいと思います。

1.スポーツドリンク

 ポカリスエットやアクエリアスと言ったスポーツドリンクは、熱中症対策としてまずあげられる飲み物ですが飲むべきという人と飲むなと言う人がいる飲み物でもあります。
 浸透圧が調整されているため体に吸収されやすく、水分だけで無く他に体に必要な塩分や糖分といったものも入っているので熱中症対策としては一番手近で一番飲みやすい飲み物です。
 問題になっているのは、その糖分です。元々スポーツドリンクですので、運動している人に必要とされる糖分がしっかりと入っています。そのため、体を動かさない人が多量に飲むと、糖分の過剰摂取が起こってしまうのです。
 糖分の過剰摂取が起きると吐き気や腹痛、意識がもうろうとしたりするペットボトル症候群になるのですが、これを熱中症の症状と勘違いしてさらにスポーツドリンクをがぶ飲みし、救急搬送されてしまったケースもあるようですので、炎天下で大汗を流して仕事をする方や走り回っている人には向いていますが、屋内の冷房の効いたところで飲む場合には、あまり向いているとは言えません。

2.経口補水液

 割と最近登場したスポーツドリンクよりも糖分を押さえ、ナトリウム分などの電解質が強化された飲み物です。
 元々下痢や嘔吐、発熱と言った病気に伴う脱水症状に対して使われているため医師の指導の下で使用するようになっている製品もありますが、そうでないものもあってちょっとややこしいです。
 医療用のものがあるくらいなので、正しく使えば非常に効果的。ポイントはちょっとずつ定期的に飲むことです。
 最も、経口補水液を口にしたときにこれがおいしく感じる状態であれば、軽度の自覚の無い脱水症状を起こしていることが考えられますので多めに飲むことをお勧めします。
 スポーツドリンクとは逆に、炎天下で激しい活動をしている人には糖分が不足しているので向きませんが、屋内の冷房の効いたところでの水分補給には非常に向いた飲み物です。
 市販品も多いですが、「水・1リットル、砂糖・40g、塩・3gを合わせてかき混ぜる」と経口補水液を手作りすることもできます。

3.麦茶

 夏場の飲み物の代表格というとこの麦茶です。割と最近までは「麦湯」と呼ばれていて夏場の滋養によいと飲まれていました。麦茶の原料は大麦で、体温を下げる働きがあることが知られています。
 塩分以外のミネラル分が豊富ですが、塩分と糖分が不足しており、今はどうかわかりませんが、30年前の運動部などではこの麦茶に塩をひとつまみ加えたものが定番アイテムとなっており、糖分を補うためにはレモンや梅干しのハチミツ漬けがよく出てきていました。
 安価で飲み過ぎても体調を崩さずに済むという点では安心して飲むことができ、誰でも安心して利用することが可能です。

4.水

水分のみ補充することができます。安心して飲むことができますが、飲み過ぎると下痢したりします。塩分やミネラル分、糖分といったものを何らかの形で補う必要がありそうですが、塩分飴などが摂取できれば、水で充分という考え方もできます。

5.ビール、コーヒー、紅茶、日本茶

 これらの飲み物は脱水症状を助長します。ビールはアルコール、コーヒー等はカフェインに利水作用がありますので、いくら飲んでも脱水症状がひどくなるだけです。よく「最初の一杯をおいしくするために汗をかいて水分は摂らない」という飲んべえの猛者がいらっしゃいますが、下手するとビールにありつく前に倒れますし、ビールを飲んでも体の脱水症状を助長するだけですのでお勧めはしません。

6.清涼飲料水

 さまざまなものが発売されていますが、いずれも糖分過多です。飲み過ぎるとペットボトル症候群になる確率が高いですし、乾きが満たされることもありませんので、熱中症対策としてはお勧めできません。ただ、水気のものがとりにくいときに自分が好きな味のものを飲むことで脱水症状を遅らせることはできるかもしれません。

7.甘酒

塩分を始めとするミネラルや糖分を効率よく摂取することができ、飲む点滴という方もいます。ただし水分の補給にはなりませんので、別途何か水分の取れる飲み物が必要です。

以上、いろいろと書きましたがそれぞれの飲み物の得手不得手があると思います。
一種類に固執するのではなく、いろいろな飲み物を組み合わせて上手に脱水症状を回避するようにしたいものです。
そして、調べられる範囲では調べていますが、ここに書いたのはあくまでも私見ですので、書いてある内容は鵜呑みにせず、裏付けを確認した上で自己責任で摂取してくださるようにお願いいたします。