台風15号の被害は時間を経過するごとに明らかになってきています。
情報集積地である東京のすぐそばの千葉県や島嶼部の情報がなんでこんなに遅れているのか。先日の佐賀県の災害の方がよほど早く、大きく報道されているような印象を受けます。
では、なぜそうなってしまったのか。
これは今回東京も被災しており、東京のキー局がお膝元である東京の情報ばかり出して台風15号の報道が終わってしまったことに原因があるような気がします。
佐賀県の災害は遠くなので客観的に情報を集め、提供することができましたが、台風15号では当事者となりました。それにより自分たちが体験したこと、見聞きしたものの提供が中心になってしまい、情報を客観的に見ることができなかったのではないかと考えます。
また、自治体からの情報もかなり発信が遅れていますが、これは被災自治体が現場対応に手一杯になってしまうことが原因です。
「だれが」「どこで」「何をする」は各自治体の事業継続化計画で決められているのですが、被害通報は時間が経過するとある期間までは加速度的に増えていくため、行政の限られた人員では対応が追いつかなくなることがその原因です。
過去には、熊本地震で一番被害のひどかった益城町からの情報発信がかなり遅れていたことが指摘されていましたが、これも現場対応に追われて全体の状況把握ができていなかったことが原因であるとされており、その後、国や都道府県は積極的に情報収集要員や災害対策支援職員を被災自治体に送り込むようなルールになりました。
プッシュ式と言われる方法ですが、市区町村の災害対策本部が立ち上げられない限り派遣された情報収集員の集められる情報は断片的なものになります。市区町村の災害対策本部が機能していなければ、市区町村の情報を使う都道府県や国の災害対策本部も機能できません。
そのため、本来されるべき状況の把握と分析がうまくいっていないという現状が見て取れ、結局SNSの拡散により初めて被害状況が社会的に認知されました。
現地では「電気がない」「水がない」「ものもない」のないないずくしになっているようですが、被災地外からどのように支援したらいいのかがまだ見えてきません。
全体を俯瞰した情報がないため、どこまでが無事でどこからが被災しているのか、何がどこで必要なのか、どこが通れるのかなど、わからないことだらけ。
本来は災害が起きたら各自治体の所有する防災ヘリが空から被災状況を確認しますが、千葉県は防災ヘリを所有していません。
上空からの被災状況確認は効率的な災害復旧指揮には不可欠なものですが、被災地全体を俯瞰した情報収集がなされていなかったのではないかという気がします。
初動対応として自治体職員が現場に出かけるのは正しいと思います。ただ、それとは別に初動からひたすら情報を収集・整理して提供する人員が必要です。
何があっても現場対応をせずに情報をひたすら収集・整理するだけというのは結構大変ですが、その結果、さまざまな情報がうまく発信されて被災現場の復旧が早まることになります。
こういった機能は、被災自治体そのものが持つのは住民感情的になかなか難しい部分がありますので、被害が広域であれば都道府県や国が積極的に情報を集め、発信していく必要があると思います。
初動が遅れると後々まで尾を引くというのは災害復旧では常識なのですが、今起きていることを今後しっかりと分析、検討し、大都市で発生する災害への対応について、もう一度整理して備えておく必要があると思います。