災害遺構を訪ねて17「益田川ダム」

 厳密に言うと「災害遺構」というのとはちょっと違う気がするのですが、災害がきっかけとなって作られた、洪水対策に特化した益田川ダムをご紹介したいと思います。
 益田市というところは、高津川と益田川に挟まれた地域に市街地が広がっています。
 二つの川がもたらす良質な耕土は流域に豊かな田畑を作ってくれましたが、同時にちょっとした雨でも水没する、水害多発地帯でもあったのです。
 戦前からさまざまな治水事業や改良事業が行われてきたのですが、その想定を超える豪雨や台風に襲われて、流域が水没することが繰り返されていました。
 益田川ダムを造る計画自体はかなり昔からあったようですが、昭和58年の島根県西部水害が決め手となって益田川ダムが造られることになったそうです。
 このダムが面白いのは、洪水対策の単能ダムだということ。
 元々は他のダムと同じような多目的型の湛水するダムだったそうですが、紆余曲折の末に普段は水をためない穴あきダムになったそうですが、その後の雨の降り方を見ると、これで正解だったのではないかという気もします。

ダムを上流部から見る。湛水していないのがよくわかる。

 吐水口はダムの低い位置で常に開放状態となっていて、流域に大量に雨が降ったときでも、吐水口から排出される水の量は一定のため、下流域に影響が少ないことです。
 昨今のダムの緊急放水による下流域の水没事故などの話を聞くと、このダムの優位性がよく分かるのではないかと思います。
 普段は地元の人のお散歩やダムマニアの人くらいしか見かけない場所ですが、このダムができてから後、益田川での大きな氾濫が起きていないことを考えると、効果はあったのだろうなと思います。