災害が発生するたびに「想定外」という言葉が飛び交っていますが、それは本当でしょうか?
例えば、水害が起きている地域の歴史を紐解いていくと、結構な頻度で大規模に水害が発生していることがわかるはずです。
ハザードマップを作るときに「1000年に一度の降水量」で計算していると書かれていたりしますが、この数値はあくまでも統計数値のある百年程度の降水量から計算で「これくらいなら1000年に一度は起きそう」といってはじき出されているものに過ぎません。
過去の歴史資料にあたっていくと、「1000年に一度」の規模の水害が200年に一度起きてたりすることがざらにあります。
これは計算方法が間違っているというよりも、計算できない不確定要素が多すぎるということなのですが、過去の記録が驚くくらい残っているのに、その記録が防災関係ではあまり活用されていないのが実態ではないかと思うことがあります。
過去ばかり見ているわけにもいきませんが、少なくとも歴史を調べることで、過去にどれくらいの水害が起きたのかということはわかりますから、その記録を元にして防災計画を立てることが必要なのではないかと思います。
確かに河川改修や護岸整備で昭和、大正、明治、江戸以前に起きていた水害は起きなくなっているかもしれませんが、どこが切れてどこが浸かったかというような情報は現在でも活用できます。
こんなことを書くのは、今日伺った山口県萩市須佐町にある萩市立須佐歴史民俗資料館「みこと館」というところに展示されていた墨書された床板を見たからです。
この地域は2013年7月23日に水害で大規模に水没しました。そこで再発見されたのが、地元の方から寄贈された一枚の床板でした。この床板に文字が書かれていたために寄贈されたのですが、水害が起きた後、これが過去の水害の記録だったということがわかったそうです。
記録には「文政四年巳七月二十日朝洪水(以下略)」と書かれており、文政4年、1821年にもこの規模の水害が起きた旨の記事が書かれていました。写真撮影不可でしたので、現物はぜひお出かけいただいて見ていただければと思うのですが、千年どころか、二百年前にも同じような水害があったことが被災者本人によって床板に記され、他にもこの文政4年の大水害で被災した場所を示す地図なども見つかっており、そういったものを参考にしていたなら、被害の起き方は変わったかもしれないなと感じました。
歴史というのは案外と馬鹿にしたものではありません。過去の災害を見直すことで、これから起きるであろう災害とその規模もある程度は予測できると思っています。災害関係の対策を行うときには、コンピュータによるシミュレーションはもちろんですが、過去の文献や口伝による被害もきちんと加味して計画を行うべきではないかと考えています。