台風15号の被害では、都市災害のテストケースのような問題がいろいろと発生しています。
一番の問題は、長期間の大規模停電による情報遮断ということでしょうか。
携帯電話基地局やテレビ・ラジオの中継塔では非常用発電装置や非常用蓄電池を持っていて、停電になっても1日から1日半は機能を維持できるように作られています。
ですが今回のように長期間にわたる停電となると、自家発電機の燃料も蓄電池の電源も切れてしまって機能が止まってしまいます。
本来であればそうならないようにいろいろな手が講じられるのですが、今回は全てが後手に回っている状態で、現在も混乱が続いています。
なぜ後手に回ったのかと言えば、指揮する場所のある東京が被災したから。
他の災害では災害はよそ事なので、冷静に判断して指示を出すことができますが、今回は自分たちが被災したため、その状況確認をしているうちに災害対応が終わってしまったと勘違いしてしまったのです。
また、大規模な被害が出た地域はそもそも情報すら発信できませんので、外部から調査が入って初めてひどいことになっていることが判明することが殆どです。
今回台風15号による東京以外の被害をマスコミが報道したのは発生から2日目以降でした。SNSからの発信で、東京以外に被害が出ていると言うことに初めて気づいたといった感じです。
「災害時にはテレビやラジオ、ネットから情報を取る」「行政からの被害情報は防災無線やインターネットにより適宜発信を行う」というのが最近はやりの自助による情報収集なのですが、被災していることに気づいてもらえなければインフラの復旧がされず、被災者が情報を受け取ることができなくなります。
今回はとにかく「情報が無い」ことが一番の問題となっています。
行政や支援団体がいくらインターネットに情報を出しても、被災者が確認に使う携帯電話基地局の電源が無ければ通信環境がないので、そもそもそれを見に行くことができず、どんな情報も集めることができません。
役場の広報車や街頭での貼り紙、口伝えによる情報拡散くらいしか手がないのですが、正直なところ自治会や自主防災組織がない地域では情報の広がりは期待できません。
地域のつながりの薄いところだと、話を聞いた人が同じ地域の他の人に伝えることは考えにくいでしょう。
もし東京23区内や大阪市内で同じような被害が起きたとしたら、今回以上に悲惨なことになるのは目に見えています。
インターネットが使えない場合に、どこへ行けば情報を得ることができるのか、どこへ貼り出せば地域の人が見てくれるのか、アナログ手法を再確認しておく必要があるのではないでしょうか。