避難所支援で必要なもの

 避難所ではさまざまな物資が欠乏することが多いのですが、これは時期によってどんどん変わっていくもので、情報が出されたときにはすでに充足している場合もかなりあります。
 SNSで支援要請を行うときには「いつ時点」という表記を入れるようにするということがだいぶ浸透してきてはいますが、正直なところ「もの」を送るという行為に対しては素直に喜べないなと思うところがあります。
 もちろん支援物資を抱えて自力で被災地に持ち込み、そして被災者に直接配布するのであれば、必要なところを探して回れますので、物資の配布という点だけなら、極端に大きな問題にはならないと思います。
 ただ、「〇〇が不足」という情報を元にしてその「〇〇」を宅配便などで送りつけるのは止めた方が無難です。
 これを行うと、そもそもいつ届くかわからない上に被災地までの物流に極端な負荷をかけることになり、届いた後は被災地での配布で人的・場所的資源を取られてしまいます。正直なところ、届く時期が「未定」や「1週間程度」となっている場合には送らないほうが無難です。
 善意から出た行為が現地の負荷になってしまっては何の意味もありませんので、それを考えた支援が必要だと思います。
 足りない物資を届けたいなら、自分で買い付けて自分で送る必要はなく、例えばアマゾンの「ほしいものリスト」などを選択して送ることは一つの手です。
 また、被災している行政機関や支援団体に現金を寄付するのも手です。
 例えばある避難所で水が足りないからと言って、被災地全体に水が足りないとは限りません。別の避難所では水が余っているのかもしれません。
 そういった調整をせずに水が避難所に送り付けられる頃には、水の余っていた避難所から水が届けられて充足していて、あとは届いた大量の水が倉庫や保管場所を圧迫するという状態になってしまいます。
 こういった事態を防ぐために現地で支援物資の調整を行っているのが被災している自治体や支援団体ですので、そういった人たちに支援金が届くと、かなり効果的にお金を使ってもらえます。
 避難所支援というとどうしても物資に目が行きがちなのですが、それを届けるための物流や保管場所がどうなっているのかについてもきちんと確認してほしいと思います。

支援物資の行方

 大規模災害が発生すると、SNSやマスメディアなどで盛んに「〇〇が不足しています」という情報が飛び交います。
 それを聞いた人達はなんとか支援できないかと買い出して宅配業者さんにその荷物を託すことが多いのですが、ここでちょっとした問題があることを考えていただければと思います。
 一つ目は、発信されている情報がいつ時点のものなのかということです。確かに情報を発信した時点では不足してるかもしれませんが、その後何らかの形で物資が足りているという可能性があります。
 これについては、SNSで発信する人達がいつ時点の情報なのかを本文中に書くようにしたり、複数のSNSの発信を追いかけることである程度の状況は把握できると思います。
 二つ目は、宅配業者さんの配達網が現地で完全に確保されているのかということ。大規模災害でもエリアが限定的であれば、宅配業者さんは条件付きで配送を受け付けることが多いです。
 条件付き、というのは、例えば「いつ届くのかは確約できない」や「場合によっては届けられない」という内容ですので、送られたアイテムは必要な時に必要な場所に届かないということを理解しておく必要があります。
 そして、それらのアイテムには使用期限がついています。大量に届いたアイテムは保管場所を取られるばかりか、使用期限が切れるとただのゴミとなり、処分費は届けられた自治体の財政を意図せずに圧迫することになります。
 例えば、国内の大規模災害時に大量に送られてくる古着などは、その多くがゴミとして処分されているのですが、あなたはそのことをご存じでしたか。
 また、九州北部豪雨で送られた大量の水のペットボトルがその後どのようになっているかを調べたことがありますか。
 善意から送られたアイテムであっても、必要な時期、必要な場所に届かなければかえって迷惑になることがあることを知っておいてください。
 では、タイムリーに届けるために、そういったアイテム類を直に届ける場合にはどうなるのか。
 幹線道路が確保されており、支援物資を届ける車両の通過が許可されている場合には、要求のあった避難所に直接届けることは可能だと考えます。
 ただ、現地が混乱している状況で物資を届けようとする場合には、送る側にもそれなりの覚悟がいります。道路が寸断されていたり、通行止めになっていたり、目的地の手前で何百キロも迂回を余儀なくされる場合もあると思います。また、送り届けるための車両の燃料も自力で調達しておかなければなりません。それから、現地に届けたとしても、すでにその物資が充足していて持ち帰ることになることも可能性としては考えられます。
 それでも届けたいという強い意志があるのならば、要求のあった避難所と調整をして持ち込んでもいいでしょう。
 誤解の無いように書いておきますが、多くの人の善意が無駄だと思っているわけではありません。
 情報が発信された時点では、間違いなく不足している物資なのですから、助けてあげたいという気持ちで送る気持ちになることは大切だと思います。
 ただ、それが無駄になったりゴミになったりしてしまうようなことはしないで欲しいということです。
 私自身は、現地の支援団体や自治体に現金を寄附するか、もしくはAmazonなどが行っている「欲しいものリスト」を使った被災地支援を行った方が効率的だと考えています。
 必要なものや必要な場所は時間とともに変化していきますから、その変化に対応できて必要とされるものを必要とされる分届けることのできる方法を取った方がよいのではないでしょうか。
 支援は受ける人もする人も幸せになってこそ意味があると思うのですが、あなたはどう考えますか。

支援と受援

 災害が起きると被災地域の道路や鉄道といったインフラが損壊し、さまざまな物資が不足することになります。
 行政機関がさまざまな手当はするのですが、必要な人が少人数だったり、優先度の低い物資は後回しにされることが多々あります。
 そんなとき、SNSを使って不足している物資の提供を呼びかけ、それに応じてその物資を必要だと言っている場所に直接届けるという動きを作ることで、きめ細かな被災者支援を行っているというのが現在です。
 ただ、支援をお願いする側も、支援を行う側も、お互いにちょっとだけ気をつけておくことがあります。
 それは支援依頼者は発信日時と必要数量を明示し、支援する人はいつ時点の情報かということを必ず確認することです。
SNSを使った物資支援が本格化した東日本大震災以来、さまざまな災害が起きるたびにこのやりとりが行われて物資が届けられているわけですが、その場所で必要とされる支援物資は時間の経過とともに変わっていきます。
でも、発信された情報がいつまでも拡散していくと、発信時点で不足していた物資がいつまでも届き続けるという困ったことになってしまいます。
東日本大震災では乳児用の缶入りミルクがそんな状態でしたし、熊本地震では水が大量に余り、期限切れで倉庫を占拠している状態になっているという話もありました。
拡散した情報のコントロールを上手にしないと、善意で送られてくるものが迷惑なものになってしまうことが起こりえるということです。
ところで、先日の佐賀を中心とした大雨による災害で、佐賀県武雄市が「水不足です。水を送って」というメッセージを発信しましたが、今後のSNSでの物資支援の一つのスタイルになるのかなと思う配信をされていました。
 何がいるのかということが画像として書かれており、発信日時が発信される全ての画像の同じ場所に記載されています。
 本文上ではそれを何のために使うのかということと、どこへ送ってほしいのかが書かれています。

佐賀県武雄市のフェイスブックから抜粋。発信時は物資支援要請だったが、受け入れ中止に記事が変更されている。
支援要請の発信日時は8月31日14:03、記事修正として【9/1 16:00】と変更日時が表示されて迷わないようになっている。

 そして、必要がなくなったときには「水を送って」につけられていた画像が「受け入れ中止」の画像に、元の文章も「ありがとうございました」に変更されていて、古い支援要請がこれ以上拡散しないようにされていました。
 一目見て現在の状況がわかるようになっており、非常に上手に支援要請をされていたのですが、調べてみると2019年の2月に受援マニュアルを作られていたとのことで、それが早速活用されたのかなと感じています。
 さて、一度支援要請を行うと、さまざまな人が支援をしてくれますが、一人一人は小さくても件数が多くなると大変な量になってしまいます。
 そのため、避難所など割と小さい単位での物資支援をお願いするときには、支援要請日時にくわえて必要数量も明示しておくと、わかりやすくていいと思います

 そして、物資が必要量届いたら、かならず受け入れ中止と感謝のメッセージを流すようにしましょう。それによって支援者は他の支援に意識を向けることができます。