仮設トイレの考え方

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 災害対策を考えるときにまず最初に出す方の対策をしようということは、ここで再三再四書いているところですが、具体的にどうすればいいのかということを少しだけ触れてみたいと思います。
 まずはトイレの形状を考えるというお話をしましたが、くみ取り式であれば、水害で浸かってくみ取り槽が汚泥で埋まっているというような状態でもなければ、普段と変わらずに使うことが可能です。
 簡易水洗の場合には、少しだけ流す水が必要な場合がありますが、1リットルもあれば充分に流れますからそこまで神経質になる必要はありません。
 それ以外の場合には、浄化槽式も下水道式もそのままトイレとして使用することはやめてください。
 使う場合には、便器の内部にビニール袋と新聞紙を入れて、汚物を流さないようにする対策が必要です。

便器に仮設トイレをセットしてみたところ。

 災害用の仮設トイレには便器を使用するものもあるので、その場合には取扱説明書のとおりに組み立てて使うようにしましょう。
 トイレや便座が使えない場合には、段ボール箱やバケツを使ってトイレを作る方法があります。

バケツにビニール袋を入れて猫の砂を入れた簡易トイレ。

 段ボール箱やバケツの中にビニール袋を二重に設置し、その中に猫の砂やペット用シート、新聞紙などを入れて用を足し、汚物の入った袋は厳重に縛ってゴミ箱へ、そして新しいビニール袋をセットし、猫の砂などを又入れてといった感じで使います。
 新聞紙の場合には、ポリマー剤などの吸水材があればそれを入れておくと取り扱いが楽になります。
 段ボール箱にしてもバケツにしても、そのままだと座る部分がおしりに当たって痛いので、別の段ボールなどで座面を載せることをお勧めします。
 仮設トイレ用の道具があれば、それを使ってトイレスペースを作るのもありです。
 いずれにしても、汚物を入れるふた付きのゴミ箱は必須となりますので、あらかじめ準備しておくといいと思います。

携帯トイレ各種
一番左がよくある携帯トイレ。男女兼用と書いてあるが、小用で大きい方には使えないので注意。中央部は便器を使用するもの、一番右は和式の簡易便座がついているもの。

 携帯トイレもありますが、これはどちらかというと小水用で、大きい方で使うには向きません。また、ペットシートを地面に広げて直接排泄したり、大人用おむつをつけて排泄したりするのは案外難しいものです。うまくいかずに便秘になったりすることもあるので、できるだけ普段の排泄環境にあわせたトイレの設営をしたほうがよいと考えます。
 今あるトイレをどうやって被災後も使えるようにするか、家にある資材でどんなことができるだろうかということを、平時だからこそ考えておきたいですね。

簡易トイレを考える

携帯トイレ各種
携帯用トイレ。さまざまな種類が出ているが、準備するなら使用用途をよく読んで準備すること。男性の尿用ばかり買うと、大きい方や女性がするときに困ってしまうことがある。

 非常時に1番問題になるのはトイレです。
 特に二階以上の居宅や下水道が普及している地域では、災害後には使えることの確認が取れるまではトイレは使わないことが求められています。
 最近では随分と簡易トイレが普及してきましたが、下水配管や下水道が復旧するまでの期間を考えると、かなりの量の備蓄が必要となります。
 また、使用の終わった簡易トイレから出るゴミの問題もあります。ゴミ収集がすぐに再開すればよいのですが、そうでない場合にはゴミの保管方法を考えておかないと、不快害虫が大量に発生する温床にもなりかねません。
 実はトイレの問題には絶対的な正解がありません。
 下水に流さない、回収してゴミとして保管するという基本は同じですが、個人の考え方や生活様式によって受け入れることのできる正解が異なってくるからです。
 例えば、万が一にも下水に漏れ出したり、他の階からの排泄物が逆流してくるのを見るのがいやだと言うことでおむつが良いという人もいるでしょう。絶対にトイレで用を足したいという人もいると思います。

ビニール袋と新聞紙で作った簡易トイレを便器に収めたところ。量が少ない場合ならこれで十分対応が可能。新聞紙は吸水性と脱臭性の能力が圧倒的に高い。ただし、かさばるのでゴミもたくさんとなる。

 排泄というのは非常にデリケートであり、そして生きている以上は絶対に避けて通れない上に止めることができないというやっかいなものです。
 可能であれば、平時にいろいろと試してみてどういうやり方が自分に向いているかを見定めておく必要があると思います。

プラスチックのバケツとビニール袋、ねこのトイレ砂で作った簡易トイレ。ねこ用だけあって、吸水性、脱臭性はどれも優れている。ただ、新聞紙同様ゴミがかなり嵩張るのが難点。また、ねこがいないお宅では平時は非常に邪魔になる。

 いざというときには、普段やっていることの延長線でしか行動することができないものです。
 トイレの問題は見たくないし試したくないことだとは思いますが、いざトイレが使えなくなってから悩むのでは遅すぎますから、しっかりと考えて準備しておきたいものです。

出す方の準備もしておこう

携帯トイレ各種

 非常用持ち出し袋や備蓄品の準備のときに、食事や寝具などは思いつくと思うのですが、トイレの準備は大丈夫ですか。
 災害時にはトイレが使えなくなることが多いです。特に下水管による集中管理のところやアパート、マンションと言った集合住宅などは災害後に点検が終わるまでは絶対に使ってはいけません。浄化槽タイプのところも、もし停電している状態であれば使わない方が無難です。くみ取り式のものは問題なく使えますが、最近はあまり見なくなりました。
 災害発生後には多くのおうちが被害を受けますので、点検には時間がかかると思った方がいいです。もし点検せずに使った場合、逆流したり階下や床にあふれ出したりと汚物による汚染が広まることを覚悟してください。
 そういう事態に備えて、非常用トイレの用意をしておいてください。非常用トイレにはいろいろなものがあり、便器がセットになっているものからご家庭の洋式便器を利用して使うものなどさまざまありますので、自分に合った準備をすることが大切です。

強力な脱臭効果のある猫のトイレ砂を使っても簡易トイレを作ることが可能。
写真はバケツにセットしたもの。
洋式便座の中にビニール袋をセットし、刻んだ新聞紙を入れても簡易トイレができる。
使うビニール袋は不透明なものがいい。

 また、準備しただけでは駄目で、一度使ってみてください。一度使ってみると、想像と使い勝手が違っていることが多々あることに気づくと思います。例えばよく百円均一などで売られている携帯トイレは、結構使うのが難しかったりします。男女兼用と謳っていても、中には女性が使うのは無理じゃないかというようなものも存在します。さらには、トイレとして使うには目隠しが必要だったとか、排泄口に上手に当てられずうまく使えなかったなど、やってみないとわからないことがたくさんあります。
 非常用トイレにはびっくりするくらいたくさんの種類がありますので、いろいろと試してみて自分が使いやすいものを選ぶようにしてください。
 最後に、排泄後には袋に入れて捨てるなどの処理が必要になります。こちらも付属している袋だとにおいが漏れたりすることがありますので、介護用に使われる防臭袋やおむつを捨てるときに使える圧着式ゴミ袋など、衛生環境が守れるような準備をしておくといいでしょう。
 大規模災害で避難所で最初に発生する問題の一つがこのトイレ問題です。特に地震ではまず下水管は損傷すると思って間違いないので、発災後、施設管理者はすぐにトイレを閉鎖し、避難者は自分の持ち込んだ非常用トイレを使うようにしたいものですね。