あなたの安全は誰が確保するのか

 あなたの安全はあなたが確保しなくては誰も助けてはくれません。
 そのために災害対策の知識を身につけ、さまざまな訓練も行っているわけですが、ここで一つ質問です。

質問
「あなたが所属している組織のBCP(事業継続化計画)では、発災時にあなたの安全は誰が確保することになっていますか?」

 実は、ここがはっきりしていないBCPはBCPと呼ぶには不完全です。
 BCP、業務継続化計画を策定する際に重要な要素の一つが人的資源の被害対策で、人が全く介在しない組織というものは存在しないので、そこに関わる人の被害対策はきちんと明記しておかなければなりません。
 ですが、なぜか多くのBCPはここが非常に曖昧になっています。
 また、定義していても業務中に限定されていることが殆どで、通勤・登校時まで決めているところはあまりありません。 
 さらに言えば、出社・登校時に出るべき場合、出ない場合の判断にまで言及しているところがどれくらいあるでしょうか。
 その部分がはっきりしていないため、発災後に通勤・登校時に被災した人がどう行動すべきなのかが判断できず、通常と同じ行動をとろうとしてしまって混乱が発生します。
 いきなりやってくる地震だけでなく、台風や大雨・洪水といった場合に公共交通機関が止まっても出社・登校しようとする人がたくさんいることは、防災の視点から見るとちょっと異常です。
 ではなぜ通常の行動をとろうとするのかを考えてみます。
 一言で言えば、「出社・登校しないことにより被る不利益が出社・登校することにより被る不利益を上回るから」。
 出社・登校しないことにより被る不利益は無断欠勤や欠席という目に見える形で自分に直接降りかかってきます。
 でも、出社・登校することにより被る不利益は社会全体に対する影響であって、自分への不利益は表面上感じません。
 そこで出社・登校するという行動に出てしまうのです。
 そして、出社・登校することによって生じた不利益は出社や登校を命じる人にはまったく悪影響がないということで、社会的な視点を持たない組織は平気で出社や登校を促し、出てこない人にはペナルティーをかけてしまうのです。
 ではどうするのか。
 あなたの安全はあなたが確保するのは大前提なので、その行動を会社や学校が認めればよいのです。
 同じ出勤・登校下の被災でも、いる状況や環境によって発生している内容はさまざまです。
 それを全部BCPで想定して決めるのはものすごい量になってナンセンスですし、出勤・登校する人もそんな内容は覚えられないし、第一見ません。
 BCPの人的資源に対する組織の被害対策は「通勤・登校時の被災時の安全確保については各個人が責任を持つ。組織はそれを最善の行動として認める」の一文を記載すれば済みます。
 そうすることによって、社会的な混乱を防ぐことができ、面倒くさいBCPも簡単になり、出勤・登校する人も安心して自分の安全確保をとることができるようになります。
 公共インフラを守る組織は非常時には出社して公共インフラを復旧・維持しなければならないのでやむを得ないとして。社会的に何の意味もないのに無理矢理出社・登校させようとする組織はあなたには興味がないと言っているのと同じですから、所属することに対して、ちょっと考えた方がいいかもしれませんね。

災害時の危険ってどんなこと?

 防災関係でよく言われる言葉に「災害が発生しそうなときに危険だと思ったらすぐに避難してください」というのがあります。
 命を失いかねない状況になることだと考えると、「避難=命を守る」ということになりますので、命の守り方をしっかりと理解していないといけません。
 では、災害で起きる命を失いかねない状況を考えてみましょう。
 まずは大雨。大雨になると水路や地面が水を裁ききれなくなって越水や水没、土石流、地すべり、土砂崩れなどの土砂災害が発生し、それに巻き込まれることによって命の危険が生じます。
 対策はというと、海抜高度の低いところや川の周囲、又は川の跡、土砂災害の起きそうな場所には住まないことが一番です。とはいえ、実際のところはそこまで考えて住んでないと思います。
 ではどうするかと言えば、危険なときにだけそれらの危険のない、海抜高度が高くて土砂災害の起きない場所に逃げておけば危険を避けて命を守ることができます。
 台風も同様で、これに風対策が追加になります。家の周りのものが飛ばないように、他からものが飛んできても被害が出ないように、例えば植木鉢やバケツなどは屋内にしまっておく、屋根の修理は早めにしておく、窓には飛散防止フィルムを貼っておくなどの準備をした上で、水の被害が起きそうなら、やはり水に対して安全な場所に逃げておくことで命を守ることができます。
 風が強いと停電になることが多いので、ランタンや懐中電灯といった照明具やカセットガスといった調理器具の準備も必要になるかもしれません。
 最後は地震。いきなり来るとは言え、大きな揺れだけでは心臓の悪い方以外で危険を感じる方はいないと思います。
 問題になるのは揺れによって発生するさまざまな被害です。例えば、家屋の倒壊、土砂災害、高いビルだと長周期振動も問題になりそうです。
 対策としたら、家屋の耐震調査をし、必要があれば耐震補強すること。家具が人のいる場所に倒れないようにしておくこと、なによりも危険な場所には住まないことです。
「三十六計逃げるに如かず」という言葉もありますが、危なければ危なくないところへ逃げれば良いだけなのです。そして、その情報を得るためにハザードマップが存在します。
 ハザードマップを過信してはいけませんが、一つの目安になるものであることは間違いありません。自治体が配っているハザードマップにしっかりと目を通して、避難所以外でも危険がなさそうな場所も探しておいてくださいね。