地域の調整役を作っておく

 被災後に支援や復旧がどれくらい速やかに進むかどうかというのは、地域、行政、ボランティアを繋ぐ調整役がいるかどうかで決まります。
 行政機関はこの役を地域の自治会長に担ってもらうことを前提にさまざまな支援計画を作っているわけですが、自治会のない場所や自治会が機能不全に陥っているところは自治体職員が派遣されて調整を行うことになります。
 誰がやるにしても、地域の中でしっかりと顔が売れていて、「あの人が言うのなら」というような人が調整役として存在していないと声の大きい人やさまざまな伝手やコネを持っている人が優遇されてそれ以外の人はいっこうに復旧が進まないといった事態になることもよく起こります。
 地域を上手に復旧させるためにはしっかりとした方針と実行力が必要となります。そして、いろいろな要望や無茶ぶりをする人達の間を上手に調整してトラブルを上手に解消できること。そう言った人を地域に作っておかないといろいろと面倒なことが起こります。
 普段から頼りになる人に防災担当になってもらい、諸機関と地域の被災者を上手に調整してもらうことが必要なのです。
 ちなみに、阪神淡路大震災でも東日本大震災でも、救助や復旧が早かったのはこういった人がいる地域でした。
 なかなかご近所同士でも顔が分からないことがあるというこのご時世ですが、地域で頼りにできる人は必ずいると思いますので、可能であれば地域で災害だけでも窓口を決めておくことをお勧めします。

ご近所さんに顔を売る

 災害後の避難所の運営は、多くの場合地元の自治会が担うことになりますが、あなたは自分の住んでいる地域の自治会の人の顔が分かりますか。
 というのも、避難所の運営は行政が長期間に渡って関わることはかなり難しいからです。地元住民で運営をすることになると、どうしても自治会組織というのが出てきます。避難所運営は普段地域を構成している組織が運営に深く関与すると言うことは忘れないようにしてください。
 そこで確認しておきたいのですが、あなたは自分のいる地域の自治会や地元の人の顔と名前がどれくらい一致するでしょうか。
 特にアパートや借家に住んでいると地域との関わりは少なくなってきますし、単身家庭では余計にその傾向が強くなりますが、住んでいる地域にどんな人がいるのかくらいは知っているでしょうか。
 もし誰も分からない、そしてたぶん誰も自分を知らないという状態だと、ちょっとまずいことになります。顔見知りがだれもいない状態で避難所に避難すると、一時避難であればよいのですが、避難所に継続して避難し続けようとしたときに必ずもめ事が起きます。
 というのも、被災後は非常時ですから顔を知らない相手は普通に警戒されますし、その結果として、避難所で受け入れてもらえなかったり、支援物資を受け取ることができなかったりといった事態が起きるのです。
 地域とのつながりは無くても普段の生活はできますが、非常時にはさまざまなものが先鋭化されます。地域にかかわらず生活していた人は、非常時には地域から拒絶されてしまうこともあるのです。
 大きな都市ではそこまでひどくないかもしれませんが、小規模な街だと、地域に住んでいる人の殆どが顔見知りと言ったケースもよくあります。そういったところでは、「顔を知らない人=警戒すべき相手」として避難所を運営している人達から追い払われてしまうことも起こりえるのです。
 地域の多くの人と顔を繋ぐことができれば理想ですが、せめて住んでいる地域の人数人にでよいので、自分がその地域に住んでいることを知っておいてもらうことが必要だと考えます。
 例えば、もし地域で奉仕活動などがあるのであれば、そう言った場にたまにで良いので顔を出しておくと、とりあえずこの人がいるという認識はしてもらえると思います。
 地域のコミュニティを維持する協力をしない人はいざというときに地域コミュニティから弾かれる。
 自分が困ったときほどそういった状況に陥ってしまうことが多いので、地域にある程度の顔は売っておくようにしましょう。