BCPを語る上で切っても切り離せないのが「タイムライン」と呼ばれるシナリオです。
これは災害の発生前から発生後復旧するまで時系列にあわせて対応を決めておくもので、いざというときに見落としがないように、そして優先順位を間違えないために作成するものです。
作るときに必要なのは「何について」「何を」「誰が」「いつ」「どのように」判断するのか、そして「そのための判断材料は何か」を決めることです。
先日、保育園様のタイムラインを一つ、防災担当の先生方と作成してみましたので、それを例に考えてみたいと思います。
1.「何について」決めるのか
今回は「運動会」について判断を決めることになりました。
運動会は、なるべく中止を防ぐために屋外と体育館での開催を毎回検討しておられます。
ただ、去年は迷走台風により開催の判断をするのに大変苦労した上、当日の朝に大雨が降ったので急遽開催を延期することとし、保護者の方から「もう少しなんとかならなかったのか」という意見が寄せられていました。
そこで、今回、試しにタイムラインを作成することにしました。
2.「何を」を決めるのか
ここでは中止の判断、及び屋外と体育館での開催決定のための判断基準を作ります。
3.誰が決めるのか
決定権保育責任者である園長先生が、主任先生や担任の先生と相談して決定することにしました。
4.「いつ」「どのように」決めるのか
1)中止の場合
まずは中止の判断です。
この保育園の運動会の開催時期は9月なので、季節柄「大雨・洪水」「台風」「光化学オキシダント」「高温」が想定されます。
気象については気象庁がさまざまな予報を出しています。「高温早期警戒情報」や「台風の進路情報」「早期注意情報(警報級の可能性)」は5日前から予報が出されています。
これらの情報が発表された場合には、速やかに保護者に「中止の可能性」について予め説明しておこうということになりました。
また、当日の天気がどうあれ「中止する場合には『前日の午前中』」に決定する」こと、保護者には「基本的にはお迎えの時に伝えるが、必要な人は前日昼以降のところで電話により保育園に確認をしてもらうこと」を周知することとしました。
2)開催の場合
開催の場合には中止の判断と同様、前日の午前中に「屋外」なのか「体育館」なのかを決定することにしました。
この判断には昨今突風でテントが飛ばされる事故が多発していることから、「大雨・洪水」「台風」「光化学オキシダント」「高温」に加えて「強風」を加えることにしました。
①体育館の場合
判断基準である前日の午前中の時点で「光化学オキシダント注意報」が発表されている場合、当日の状況を問わず体育館開催することにしました。
また、天気予報で雨天が予測されている場合、グラウンドコンディションが悪い場合には、同じく体育館開催とし、事前に異常高温注意報が発表されている場合には、時間を短縮した上で体育館開催としました。
②屋外の場合
気象条件やグラウンドコンディションに問題が無い場合には屋外開催とします。
ただ、突風が起きることがあるので、風が強くなってきたときには園児のテント以外は倒しておくことと、園児のテントは飛ばされないようにしっかりと支柱を固めておくこととしました。
それから当日の光化学オキシダント発生や異常高温時については、予め省略するプログラムを決めておき、時間を短縮して開催することにしました。
これらの判断には、気象情報に加えて空の霞ぐあいやちょっと離れた場所の工場の排煙の煙も利用することにしています。
5.情報の共有化
保育園の運動会では、保護者だけでなくそれ以外の園児の関係者も多数来られます。
そのため、判断基準についてはあらかじめ保護者にも伝えて心構えしておいてもらうことが大切です。
今回の話し合いでは、「運動会のご案内」をプリント配布する時点で判断基準について併せて保護者にお知らせすることにしました。
また、保護者が判断に困るような天気になりそうであれば、3日前に「開催の判断についてのお知らせ」を改めてプリント配布すること、運動会のプログラムに「演目の省略があるかもしれないこと」を記載することとしました。
保護者に限らずですが、明確な判断基準があることがわかると、ある程度の予測ができるようになり、それぞれが準備できるためにトラブルが防げます。
この判断基準でも「もっと早く判断して」というお話が出るかもしれませんが、そのときにはもう一度判断基準を見直していけばいいだろうということで、今回はこれでやってみようということになりました。
タイムラインは作るまでは結構大変ですが、一度作ってしまうとあとは修正ですみ、だれがやってもそんなに大きく判断がずれないというメリットがあります。
今回の話し合いでは「短い時間の大雨などで保育園の休園はどのように対応したらいいか考えてみたい」というご意見をいただきました。
ちょっとずつでもタイムラインを整備していくことで判断に迷うことなく行動を取ることができます。
まずはよく使うものを一つ文章化して作ってみてはいかがでしょうか。