人の行動には、その行動の元になる価値観が存在しています。
価値観とは、その人の生き方ですので簡単に変わるものではないのですが、災害のときにはこれが大きなネックとなります。
水害で水没した地域や台風で被害を受けた地域を見ていると、若い人よりもお年寄りの方が要救助者になっていることが非常に多いと感じています。
これは「今までの雨でもここは大丈夫だった」という価値観が「避難」という行動をとることを認めなかったということで、その根底には「自分は安全な地域に住んでいる」という根拠のない自信があるのです。
テレビなどで、70歳代80歳代の方が登場して、「生きてきて今までこんな被害は見たことがない」とよく言っているのですが、過去を紐解いていくと大概の場合何か被害の起きた記録や痕跡が残っているものです。
ただ、たまたま被害の発生していなかった時期を過ごしてきたからこそ、根拠のない安全神話を自分で作り出してしまったのでしょう。
「避難すること」がかっこ悪いという考え方もあるようです。「避難して何も無かったらご近所から笑われるから避難しない」という話も聞いたことがありますが、笑いたい人は笑わせておけばいいのです。
百回避難して何事もなくても、災害が起きそうなら避難するということを繰り返していれば、「あそこはああだから」とそのうちに話題にもならなくなると思います。
ちなみに、70歳代80歳代の人が「様子がおかしいから避難しよう」というと、その地域の多くの人が避難するということも田舎の災害では聞くことがありますので、判断に迷ったときの年配の人の発言というのは、案外と重みのある発言なのかもしれませんね。
歴史を紐解いていくと、災害のない穏やかな時期というのは案外と少ないことがわかります。「災害は起きるもの」ということを前提にして、「災害で死ぬのはかっこ悪い」という価値観が広がっていくといいなと思っています。