言葉と群集心理

 現実はどうであっても、言葉によって多くの人が行動を起こすと、それが事実になってしまうことがあります。
 例えば、身近なところでは新型コロナウイルス感染症流行時のアルコール消毒液がありました。
 マスメディアがアルコール消毒液が不足していると言い出すや、全国の店頭からアルコール消毒液が消え去ってしまって、普段の生活でアルコール消毒液を必要とする人達が非常に困ってしまったことがありました。結局、多くの人のおうちに大量のアルコール消毒液が不良在庫になって残っているという現実があります。
 過去にはオイルショックの時のトイレットペーパーや、不作時のお米などもありますが、一人一人が冷静に必要な分だけその都度調達すれば大きな問題にはならないはずなのに、なくなるかもしれないという不安が買い占めを誘発した結果、本当に店頭からなくなるという現実になってしまうのです。

空っぽになった棚。

 店頭に無くなると、本当に手に入らないのかと不安になってまた買い占め、それを見た人がまた不安になって・・・、の悪循環になってしまいます。
 冷静に考えて欲しいのですが、いくら消耗品でも一度に使える量には限りがありますし、腐らないとは言っても、場所はとりますし劣化もしていきます。
 足りなくなるかもという不安に負けず、その時に自分が最低限必要な量だけを調達すれば、多くの人が困らなくて済みます。
 問題になるのは、足りなくなることでは無くてそれが最低限どれだけ必要なのかを知っておくことです。
 今の日本の供給体制だと、足りないとはいっても一時のことですぐに生産・調達体制が確立されて量は確保されます。
 他人の言葉に踊らされず、必要な量を常に頭の中において必要な資材を購入するようにしたいですね。

事前準備と買い占め

市販品の非常用持ち出し袋
市販品の子供用防災セット。一通りのものがセットされているが、その中に自分が必ず必要とするものが入っているとは限らないことに注意。

 災害で避難や補給が途絶したときに備えて3日~7日程度の備蓄品を準備してくださいということが、政府広報などでさかんに言われていますが、あなたは自分が一日に何をどれ位消費しているかを知っていますか。
 あなたの生活に必要なものや用意すべきものは、あなたがいる環境や場所、体調によって異なりますので、自分が一日にどれくらいのものをどうやって消費しているのかを確認しておくことは、備蓄品の準備にあたって必ず確認をしておく必要があります。
 例えば、飲料水は料理で摂る分も含めて一日一人3リットル準備しなさいといわれていますが、汗をかく人や子どもではそれ以上必要になることがありますし、また、そこまで必要の無い人もいます。普段の生活を知ることで、自分に必要なものの数量がきちんと把握でき、無駄な備えをしなくて済むことになるわけです。
 これは災害後に起きる買い占めでよく起きることなのですが、災害が発生して備蓄がない場合、不安と焦りから自分の生活に必要以上のものを買い占めようとする心理が働きます。その結果、ある人は何も手に入れられず、ある人は手に入れすぎて駄目にしてしまったというようなおかしなことが生じます。自分が普段必要になるものと数量を把握することで、必要以上に買う必要がなくなれば、多くの人が助かることになります。事前準備がしてあれば、なおさら心に余裕ができます。
 自分が生活するのに何がどれくらいいるのかをきちんと確認し、その数量×日数分を準備しておくことで、いざというときに慌てなくて済みます。
 災害に備えて紹介されている準備すべき備蓄品はあくまでも平均的なもの。それらを全て準備したからといって、あなたにとって必要なものが全てそろっているわけではありません。
 自分の生活を確認し、それが支えられる分量を準備すること。そして準備した備蓄品は上手に入れ替えていき、いざというときに買い占めしなくてもすむこと。
 これが災害からの復旧の第一歩です。