お化粧用品も準備する

大規模災害になると、長期で避難所生活を余儀なくされる方もたくさん出てきます。
そして、大勢の人たちと一緒に暮らすわけですから、身支度ができないと非常に恥ずかしいと感じてできるだけ人目に触れないようにお布団からでなくなったり、他人との接触を嫌がるようになってしまいます。
身支度の中にはお化粧も入ってきますので、もしあなたがお化粧をする人であれば、普段使っているもの、少なくとも必要最低限のものだけでも非常用持ち出し袋に入れておくべきです。
お化粧の効果というのは馬鹿にできないもので、本人も周囲も明るくなりますし、きれいな身支度は自分の安心や自信にもつながります。
やりすぎると嗅覚過敏症の人や化学物質アレルギーを持っている人が困りますので、香水などの匂いがするものは避けたほうがいいかもしれませんが、あまり臭いのしないものを中心に備えておくといいでしょう。
支援物資として送られてくるものの中には化粧品はほとんどないと思って、自分のこころの健康を維持するためにも、お化粧道具を入れておくようにしてくださいね。
ちなみに、化粧を落とす道具も一緒に準備しておくと、お肌があれずに済みます。
その時には、水を使わなくてもすむような化粧を落とす道具を準備しておくと安心だと思います。
避難中であっても、できるだけ普段の生活は維持するようにしないといけませんので、お化粧の習慣のある方は、お化粧道具も忘れずに、非常用持ち出し袋に入れて準備しておいてくださいね。

ペットシーツを使った冷却材を作る

暑い時期に少しでも涼を取ろうとして、いろいろと工夫している方も多いと思います。
暑いけれど冷やしすぎたくはないときや、停電時に涼しくなりたいときには、給水ポリマーを使った冷却材を作ってみてはいかがでしょうか。
作り方は簡単。
ビニール袋にレギュラーサイズのペットシーツ(紙おむつでも可)を入れ、ペットシーツが給水できるぎりぎりまで水を含ませた後、水が漏れないようにしっかりと口を縛って振り回すだけ。
振り回しているうちに、気化熱で袋の中のペットシーツが冷たくなりますので、体の冷やしたい部分や体全体がほてっている場合には、首筋やわきの下、鼠径部など大きな血管のある部分を冷やすことができます。
ぬるくなってしまったら、また改めて振り回せば、水が蒸発しない限りは何度でも使うことができますので、非常に経済的でもあります。
ペットシーツの中の吸水ポリマーに吸われた水が空気に当たることで冷える原理を利用していますが、しっかりと冷えるので非常時の涼を取る方法としては結構いいと思います。
ペットシーツでもおむつでも、あるのなら吸水ポリマーそのものでもできる方法なので、お手元にあるのなら、一度試してみてください。

おしりふきと制汗シート

 暑い時期に汗をかくとそのあとの臭いが気になる方も多いのではないでしょうか。
 最近では制汗シートもさまざまなものがあって、これで肌を拭くとすっきりとして気持ちがいいものです。特に汗でべたべたしているときにこれを使うとさっぱりしますので、筆者のカバンの中にも入っているのですが、先日それで肌を拭いたら、少しぴりぴりとしました。
 肌が少し日焼けして若干痛んでしまっていたようです。
 ほてりを冷ますためのカーマインローションを塗るほどではないのですが、それでも拭くたびにお肌はぴりぴり。
 使っていた制汗シートは冷却効果を感じるためにミント系のものが使われていましたので、それと制汗シートを湿らせているアルコールがぴりぴりの原因だったようです。
 こういうときにさっぱりしたいと思ったら、赤ちゃん用の水だけ染み込ませてあるおしりふきがとても便利です。
 制汗シートと違って量が多く、持って歩くのがかさばるのが難点ですが、刺激性がまったくないので、お肌にもやさしく、肌を拭いたら、制汗シートほどではありませんがさっぱりとします。
 制汗シートもおしりふきも使っている不織布は厚手で丈夫なので、一枚で結構体を拭くことができるので、お風呂に入れないときでも体の衛生を保つことができます。
 肌のダメージがありそうな季節は両方用意しておいたほうがいいのかなとも考え、一応筆者の非常用持ち出し袋には両方入れてはあるのですが、あなたならどう考えますか?

新型コロナウイルス感染症と備蓄品

アルファ米の五目御飯、各メーカーの食べ比べ。かなり味が違っていて面白い。

 新型コロナウイルス感染症がまたまた蔓延していますが、あなたの体調は大丈夫ですか。
 当研究所のある島根県では、県が感染した時の自宅療養に備えて、5日分程度の生活物資の備蓄を呼び掛けていますが、どれくらい効果が出ているのかは不明です。
 ただ、もしも非常用持ち出し袋などが準備してあって自宅療養をしなくてはいけなくなったら、非常用持ち出し袋に入れてある防災食を食べてみてください。
 防災食にも当然賞味期限がありますから、それまでには消費しておく必要があります。もしも自宅療養になると、買い物に出るわけにもいかなくなりますので、準備してある備蓄品を使って、その使い心地をしっかりと確認しておいてください。
 アルファ米でも缶詰でも、同じ名前のものでもつくっている会社が異なると当然味も違います。こういったときに備蓄をしっかりと食べてみて、あなたの口に合うかどうか、そしてどうすると食べやすくなるのかなどを調べておくと、いざ本番のときにも安心できます。
 また、ウェットタオルや消毒なども備蓄品には入っていると思いますので、そういったものを活用してプチ避難生活を試してみるといいと思います。
 もちろん体調が悪い、または気が乗らないときに無理にやる必要はありません。
 ただ、せっかく自宅に閉じ込められているのですから、同じような条件になる非常用持ち出し袋を使っていろいろと試してみると本当にさまざまな発見があると思います。
 もし中身を使ったら、使った分はしっかりと補充。そして自分の好みにあった食料品でいざというときをしのげるようにしておいてくださいね。

ローソクは必要か否か

 非常用持ち出し袋の中身もいろいろと変遷してきていますが、ローソクについては賛否両論あってなかなか判断しづらいのかなと考えています。
 人によって必要という人といらないという人が極端なアイテムですが、大きくわけると照明としての直火と、直火による暖、そして同じく直火による精神的安定が挙げられると思います。
 賛否両論のどちらも、問題にしているのがこの直火ということです。
 確かに地震などで停電してしまったとき、ローソクを使っていると余震でひっくり返り、火事になるかもしれません。
 また、ガスの配管が損傷しているときに直火をつけると、気化したガスに引火して大爆発になるかもしれません。
 それから、ローソクに着火するためのマッチやライターなどの保管が結構難しいということもあります。
 昔はそこかしこに煙草を吸う人がいて、普通にマッチやライターが存在していましたが、嫌煙権が広がって、煙草を吸う人でも電子タバコとなり、火を持っていないのが普通になりました。そのため、着火するための火も自前で準備しておかなくてはいけないわけで、その管理に結構気を使うことになってしまいます。
 ただ、直火だからこそ、見たら精神的に落ち着くということがあります。そして、小さな火ですが暖を取ることもできます。ローソクを使うと、簡単な煮炊きができますし、ローソクそのものはそんなに重たいわけでも場所をとるわけでもありません。
 ローソクをめぐる議論は、この両面から見て賛否を考えていて、そのどちらの主張もなるほどと思えるものがあるのは確かです。
 筆者はローソクと着火道具はセットでジップロックなどに入れて非常用持ち出し袋に入れておけばいいのではないかと考えています。
 火をつけた状態で持ち歩くのには向きませんが、安全が確保されている状態ならさまざまな使い道があってとても便利だからです。
 地震時、そしてガス漏れに注意するような状況では使わないことを袋に明記しておけば、うっかりと使ってしまう可能性も少なくなると思います。
 あなたがもしもこの論争で意見を持っているとしたら、それは貴重なことだと思います。でも、非常用持ち出し袋の中身には「所有者の精神的安定が確保されるもの」も入っているべきだと思っていますので、必要だと考えている人にまで必要ないとは言う必要はありません。また、必要だと思っている人も、必要ないという人に意見を押し付けるべきではないでしょう。
 ローソクに限らずですが、非常用持ち出し袋は所有者が避難時に必要だと思うものが入っていることが重要です。
 その前提で、ローソクの必要性について考えてほしいなと思います。

垂直避難で気を付けること

 あちこちで大雨が降っていますが、あなたのお住いの地域ではどのような状態でしょうか。
 ここのところの雨の降り方は数時間で河川氾濫や内水越水が起きるような強烈なものになっているため、行政の避難情報が間に合わない事態も起きているようです。
 自分の命を自分で守るためには、自分で避難すべき基準を作り、確認しておく必要がありそうです。
 ところで、こういった雨の降り方をすると、場合によっては安全な場所に逃げるための水平避難が間に合わない場合が想定されますので、いざというときに備えてご自宅の二回以上に避難する垂直避難も逃げる選択肢に入れておいたほうがよさそうです。


 垂直避難では、基本的に二階以上に避難したら、水が引くまではそこで過ごすことが原則となります。地域によっては水防団などが救助に来てくれる可能性もありますが、基本は避難した場所から移動ができません。
 そのため、そこで過ごすために必要なあれこれをあらかじめ備え付けておくようにしてください。
 水、携帯トイレ(もしくは簡易トイレ)、食料、着替え、布団、ポータブル電源、テレビやラジオなどの情報が確認できるもの、そして暇つぶしのできるものなどを用意しておくといいと思います。
 ただし、垂直避難できるのはその地域の水没する水の高さが1階の高さ以内に収まることが前提となりますので、二階以上が水没するようなハザードマップが出ている場合には、危険だと思ったらすぐに域外へ避難することです。
 一番いいのは安全な場所にいますぐに引っ越しをすることですが、それができない人は、雨には十分に警戒するようにしましょう。
 最近は精度の高い雨雲レーダーの情報(リンク先は日本気象協会)や気象庁のキキクルなどもありますので、自分できちんと情報を集めてどうするかの判断をするようにしてください。
 そして、自分で判断が難しい場合には、そういったことが得意な人に注意を促してもらうようにしておくといいでしょう。
 いずれにしても、垂直避難は決して安全な避難ではありません。
 もし垂直避難するのなら、避難後に困らないような準備を、二階以上に備えておいてくださいね。

母乳とストレス

 災害時には母乳が出なくなって乳児にあげられなくなるという話をよく聞きますが、これは正しくないようです。
 母乳はどんな状態であっても作り続けられていて、ストレスなどにより体が警戒することで、母乳が出なくなっているというのが実際のところのようです。
 つまり、まずはお母さんと乳児を安心できる環境にすることで、ストレスが軽減して母乳が出るようになるということで、できるだけ普段の生活環境に近づけることで、体の警戒態勢を緩めてやることで、母乳はきちんと乳児に与えることができるということになります。
 例えば避難所であれば、しっかりとした目隠しや仕切り、できれば人ごとに仕切られた授乳室を作ることで体の警戒態勢を緩めることができると思います。
 母乳がでなければミルクを与えるのも手ですが、ミルクが嫌いだったり、諸般の事情でミルクを受け付けない子もいますので、母乳を出すための周辺環境を整えてやることが重要だと思います。
 また、ストレスを与えないという視点で見れば、自宅や親兄弟の家といった行きなれていて見慣れた人たちがいる場所を避難先として選ぶといいと思います。
 場合によっては、被災地外に出て状況が落ち着くのを待つという方法も選択肢に入れたほうがいいと考えます。
 乳児を抱えての避難所生活はかなり大変です。
 支援体制がきちんと整っている乳児向けの福祉避難所、または避難所ではない避難先を平時に決めておいて、いざというときに途方にくれないようにしたいですね。

自治体の備蓄は当てにしない

 あなたはお住いの自治体の備蓄一覧について確認したことがありますか。
 もしも確認したことがなかったら、ぜひ一度確認してみてください。
 備蓄品の一覧は、お住いの市町村の作成している防災計画または防災計画付属資料に書かれています。
 この備蓄品の一覧を見て、それでも自治体の備蓄があるから大丈夫と言えるかどうかを一度しっかりと検討することをお勧めします。
 例えば、当研究所のある益田市の備蓄品を見てみましょう。
 益田市の人口は令和4年3月末現在で44,821名です。
 そして、非常食の備蓄で見てみると、一番多いもので五目御飯が6,400食あることになっています。

自治体の備蓄は、基本的に非常時の中の非常用の数しか確保されていないことに注意。

 人口のすべての人が配給対象になるわけではありませんが、それでも6,400名が被災したら1食分しかないことになります。
 一日3食食べるとしたら、2,130名ちょっとにしか行き渡りません。
 国の支援物資が3日後には届くとして、単純に考えると700名ちょっとしか養えない計算になります。
 首を傾げるかもしれませんが、これらの備蓄は何らかの事情で非常用持ち出し袋が持ち出せなかった人や、旅行者などこの地域の住民でなく食料を持っていない人たち用に準備されていると考えると、割と納得できる数字なのではないでしょうか。
 また、同じ表にある子供用おむつを見てください。
 いくら乳幼児の数が減少しているからといっても、一日分どころか一回分ですら賄えない程度の備蓄しか備わっていないことが分かれば、自分で準備しないと困ることがわかるのではないでしょうか。
 さまざまなご意見があるのは承知していますが、災害対策は自助が基本となります。
 自助の上で地域の共助があり、それらがカバーできない部分を公助が賄うのが現在の災害対策基本法の考え方です。
 つまり、身一つで避難所に行ってもあなたの身を助けてくれるものは何一つないのだということを覚えておいてください。
 自分が避難所などで少しでも快適に過ごしたいのであれば、自分に必要なものは自分で持参すること。
 自治体の備蓄は当てにならないことを知って、自分の身を守るための準備をしっかりとするようにしてください。

AEDは機械の指示をしっかりと聞く

 AEDは現在ではかなりメジャーな救命器具となりましたが、あなたは使ったことがありますか。
 AEDは自動体外式除細動器といい、心臓を動かす電気信号がおかしくなっているのを正常に戻すための道具で、現在の救急救命法の講習会では、ほとんどの場合、心臓マッサージと併せてこのAEDの取り扱いを実施しています。
 複数回、違う主催者の訓練で使われた方はお気づきかもしれませんが、AEDはさまざまなメーカーから発売されていて、それぞれに特長があります。
 そして、AEDの作られた時代によっても扱い方が異なりますので、AEDを使ったことがあるからと教わった手順でAEDを被害者に取り付けても、そのAEDと手順が違うことも起こりうるのです。
 ただ、AEDは機械が起動すると、すべて作業手順を機械が教えてくれるようになっていますから、その手順通りに作業すればAEDは正常に仕事をしてくれますから、どんなに慌てていてもAEDの手順をしっかり聞いてそのとおりに作業を行うことがもっとも重要なことになります。
 慌てずに、AEDの指示をしっかりと聞いてそのとおりに手順を行っていくこと。そうすることで、AEDは最大限の効果を発揮します。
 まずは電源を入れる。あとはAEDの指示通りに作業する。
 この手順を忘れないようにしてください。
 ちなみに、最近のAEDはAEDが収まっている入れ物の蓋を開けると自動で電源が入り、電極パッドの設定が終わると自動で電気ショックを与えてくれるものも出てきています。
 逆に電源ボタンを人が押さない限り起動しないAEDもまだまだ残っていますので、電源が入るかどうかだけは機械を気を付けてみてほしいと思います。

生活用水を考える

 災害対策の中で大きな問題になるのが水です。
 そのうち、生活用水については量も多く必要で飲料水よりも優先順位が低くなるため、なかなか確保が難しいのではないかと思います。
 ただ、生活用水は飲料水ほどの清潔さは求められませんから、あらかじめ準備がしてあれば確保は非常にしやすくなると思いますので、水の確保という意識を持つとよいのではないでしょうか。
 例えば、排水に影響で他者に影響がなければ、風呂おけはおそらく家の中で最大の貯水場になりますので、災害が起きる前にそこに水をためておくのは一つの手です。
 庭などに井戸があるなら、それらを定期的に使えるかどうか確認しておくと、いざというときに非常に頼もしい存在になります。
 電気が来ているのであれば、除湿器の水やエアコンの排水なども使えるかもしれません。また、雨水タンクや太陽熱温水器なども貯水装置としては優秀です。
 最近では配水管の中に貯水できる空間を確保したものもあるようですので、ちょっと意識するだけで水の確保はある程度できると思います。
 普段からどのあたりに水があってどうやって処理しているのかを意識するだけで、ある程度の水の確保は可能です。
 全てを準備するのは大変かもしれませんが、できる範囲での生活用水の確保の方法を考えてやってみてください。