出す方の準備もしておこう

携帯トイレ各種

 非常用持ち出し袋や備蓄品の準備のときに、食事や寝具などは思いつくと思うのですが、トイレの準備は大丈夫ですか。
 災害時にはトイレが使えなくなることが多いです。特に下水管による集中管理のところやアパート、マンションと言った集合住宅などは災害後に点検が終わるまでは絶対に使ってはいけません。浄化槽タイプのところも、もし停電している状態であれば使わない方が無難です。くみ取り式のものは問題なく使えますが、最近はあまり見なくなりました。
 災害発生後には多くのおうちが被害を受けますので、点検には時間がかかると思った方がいいです。もし点検せずに使った場合、逆流したり階下や床にあふれ出したりと汚物による汚染が広まることを覚悟してください。
 そういう事態に備えて、非常用トイレの用意をしておいてください。非常用トイレにはいろいろなものがあり、便器がセットになっているものからご家庭の洋式便器を利用して使うものなどさまざまありますので、自分に合った準備をすることが大切です。

強力な脱臭効果のある猫のトイレ砂を使っても簡易トイレを作ることが可能。
写真はバケツにセットしたもの。
洋式便座の中にビニール袋をセットし、刻んだ新聞紙を入れても簡易トイレができる。
使うビニール袋は不透明なものがいい。

 また、準備しただけでは駄目で、一度使ってみてください。一度使ってみると、想像と使い勝手が違っていることが多々あることに気づくと思います。例えばよく百円均一などで売られている携帯トイレは、結構使うのが難しかったりします。男女兼用と謳っていても、中には女性が使うのは無理じゃないかというようなものも存在します。さらには、トイレとして使うには目隠しが必要だったとか、排泄口に上手に当てられずうまく使えなかったなど、やってみないとわからないことがたくさんあります。
 非常用トイレにはびっくりするくらいたくさんの種類がありますので、いろいろと試してみて自分が使いやすいものを選ぶようにしてください。
 最後に、排泄後には袋に入れて捨てるなどの処理が必要になります。こちらも付属している袋だとにおいが漏れたりすることがありますので、介護用に使われる防臭袋やおむつを捨てるときに使える圧着式ゴミ袋など、衛生環境が守れるような準備をしておくといいでしょう。
 大規模災害で避難所で最初に発生する問題の一つがこのトイレ問題です。特に地震ではまず下水管は損傷すると思って間違いないので、発災後、施設管理者はすぐにトイレを閉鎖し、避難者は自分の持ち込んだ非常用トイレを使うようにしたいものですね。

支援物資で送られてきて困るもの

 ある程度以上の大規模災害になると、全国各地からさまざまなものが支援物資として送られています。お互い様の精神で、それは非常に素敵なことだと思うのですが、送られたものが現地に迷惑をかけているという現状があることをご存じですか。
 一番困るのが「私はもう使わないけど、まだ使える」といった感覚で送られてくる中古の服や靴、使い古した靴下や下着など。衣類の中古はまず引き取り手がありませんので、最終的にごみとして処分することになります。
 支援物資はごみの送り先ではありません。あなたが使わないものは他の人も使いませんので、あなたが使うだろうなというものを送るようにしてください。
 次に多いのがどなたか一人に届くようにとセットされたもの。中にお手紙が入っていたりして非常に素敵なのですが、そういったものが支援物資の集積場にくると、中に何が入っていて誰がつかうことを想定しているかがわからず、場所を取るだけの死蔵品となります。中身を確認して仕分けろといわれるかもしれませんが、毎日大量の物資をたくさんの避難所、避難者に届けなければならないこの仕分け業務は、行政職員や配送を請け負った業者の方が休む暇無く行っているものです。
一つ一つ中をていねいに確認して送り先を決めている余裕は現場にはありません。どうしても個別にセットした支援物資を送りたいのであれば、外箱に中にどんなものが入っているかのリストをつけてください。それもできれば細かく記載して欲しいと思います。そうすれば、場合によってはその中身に適合した方のいる避難所に送られる可能性があります。
 それから、テレビなどで「○○が不足しています」という情報が流れた後に届く大量の「○○」。現地で不足するものは刻一刻と変わっていきます。テレビで不足していることを放映していたからと言ってその物資を大量に送りつけても、寸断された流通網では届いた頃には必要がなくなっていることも多々あります。被災地の流通網は殆ど機能していないと考えていただき、もしも不足している物資を送るのであれば、自身で直接該当する場所へ送り届けるようにしてください。
 また、生鮮食料品は絶対にやめてください。避難所で生鮮食料品が不足しているからといって宅配便で発送しても、被災地には普通にとどくことはありません。1週間から2週間、場合によっては一月以上かかることもあります。生鮮食料品は確実に腐ってしまいますので、送るのは絶対に止めてください。

 ところで、支援物資で助かるのは箱詰めされている同一品目の新品です。輸送も楽ですし、送り先も考えなくていい状態のものなので仕分けが非常に楽です。
 また、Amazonなどで商品を購入し、その商品を被災地へ送るようなシステムが作られていますので、そういったもので送っていただければ非常に助かります。
 繰り返しますが、災害後の支援物資を仕分けする集積所の機能はさほど高くありません。避難所等から送られてくる必要とされる物資を集めて送り出すだけで精一杯なので、なるべく仕分けのしやすい形にして送るようにしましょう。
 あと、寄付金なら無駄になることがありませんので、ものではなくお金を寄付するのもいいと思います。被災地で機能を回復するためにはさまざまなものにお金がかかりますが、そのお金がなかなか手配できずに困っている自治体や団体は非常に多いですから現金による寄付は非常に喜ばれます。
 災害が起きるとさまざまなものが送られてきて物資集積所は大混乱を起こします。流通経路や集積所の仕分けに負担をかけないためにも、支援物資の送り方を考えていただければと思います。

災害対策について考える

 大雨や洪水、台風といった災害では「タイムラインを作れ」ということがよく言われるようになってきました。
 地震以外の災害は必ず何らかの予兆があるので、それを見逃さずに災害が発生する前から対処を開始して手遅れになることがないようにしようということなのですが、どんな情報があってどういう風に活かしたらいいのかがなかなか理解されないという現状があります。
 ただ、各市町村が発表するさまざまな避難関係の情報は、被害が大きくなってくると間に合わなくなってきます。これは災害が発生し始めると加速度的にしなくてはいけないことが増えるためで、専任の職員がいても華麗に裁くのはかなり困難な仕事です。そのため、市町村が判断するための根拠となる情報を確認して避難関係の情報が出るかもしれないという予測を立て、行動に移す。そのための時間軸がタイムラインということです。
 これはお住まいの地域や家族構成によって必要となる行動や判断基準が変わります。例えば、避難勧告が出ていても避難しない方が安全なところもあれば、避難準備の段階ですでに危険な場所もあるからです。自分のいる地域の強み弱みを知った上で先手を打って行動することで、助かる確率を上げていくための手段だと考えてください。
 ただ、そうそういつも家にばかりいるわけでもありません。出掛けた先で災害が起きそうなときはどうすべきか。これは市町村が出す情報から判断して避難をしていくしかありません。そのため、状況がおかしくなりそうだと気づくことが一番大切なこととなります。周辺状況の変化を意識することが重要になります。
 ところで、地震の場合にはどうなるのでしょうか。地震は、なかなか発生するタイミングを予測することは難しいです。予想もしなかった場所で大きな地震が発生することもよくありますから、地震が起きたときに死なないように対策をしておく必要があります。
 地震で亡くなる人の殆どは、地震そのもので死ぬのではなく揺れによって倒壊した建物や倒れてきた家具などの下敷きになって圧死しています。つまり、耐震補強や転倒防止処置をすることが大切になってくるのです。家だけでなく、自分が出掛ける先がちゃんと地震対策をしているかどうかが、いざというときの生死をわけることになりますから、出掛けた先では意識的にどこなら自分の安全が確保できるかを考えながら行動するようにしてください。最初は面倒くさいかもしれませんが、これも慣れてくると意識していなくてもできるようになります。
 災害対策は自分だけではなく、家族やペット、友人や近所の人といった自分の周りのたくさんの人が誰も死なないようにするために行うものです。自分の対策ができたら、家族同士で内容を擦り合わせ、何かあってもきちんと合流できるようにしておいてください。また、復旧方法や対応策についても、ある程度検討しておいていざというときにすぐ対処ができるようにしておきましょう。

非常用持ち出し袋の中身を考える

 災害に備えて準備しておきましょうと言われるものの一つに「非常用持ち出し袋」があります。
 ただ、この非常用持ち出し袋、政府の推奨する量を全て収めるとかなりの重さになってしまい、高齢者や乳幼児の居る世帯では持って逃げることが困難なのではないだろうかと考えてしまいます。
 試しに、内閣府の防災情報のページにある非常用持ち出し袋の中身の一例を書き出してみましょう。

飲料水、食料品(カップめん、缶詰、ビスケット、チョコレートなど)、貴重品(預金通帳、印鑑、現金、健康保険証など)、
救急用品(ばんそうこう、包帯、消毒液、常備薬など)
マスク、軍手、缶切、ナイフ、懐中電灯、衣類、下着、毛布、タオル、ライター、携帯ラジオ、予備電池、
使い捨てカイロ、ウェットティッシュ、洗面用品、ヘルメット、防災ずきん

 これらのものを家族構成に合わせて準備し、玄関近くや寝室、車の中、物置などに置いておくようにしようと書かれています。
 よく3日分~1週間分の準備をしておこうという話もありますが、災害は発生から収束まで長くても2~3日ですから、さほど間違った内容だとも言えません。もっとも、そちらは家にストックしておく備蓄品でも構わない訳なので、自分の体力にあわせた非常用持ち出し袋を作る必要があるでしょう。
 自分が持ち歩く非常用持ち出し袋は、当然自分が持ち歩けなければ意味がありませんから、あなたの体力や状況によっては、必要だとされる全てのものを持って避難することは無理かもしれません。
 では、最悪の場合は何を持って行けばいいでしょうか?

 前提条件は、とにかくあなたが生き残ることができることです。危険な状況で非常用持ち出し袋を持ち出せる余裕が無い状況であれば、身一つで逃げましょう。
 もしも持ち出す余裕があるのであれば、最低限として次のものを準備しておくといいと思います。

 まずは飲料水。ライフラインが絶たれたときに一番困るのは衛生的な水を手に入れることです。一人一日3リットルという話もありますが、300mlだろうが50mlだろうが、無いよりは遙かにましですので、持てるサイズのお水は必ず用意してください。
 常備薬。慢性疾患や気になる病気がある方は必要です。
 新聞紙1日分と買い物用のビニール袋。これを組み合わせることで簡易トイレや敷物、簡易防寒着やたき火の焚き付けなどに使うこともできます。
 お財布や健康保険証といった貴重品は、恐らくある程度まとめて普段から持ち歩いている人も多いと思うので、その袋をそのまま持って行きます。
 携帯電話をお持ちの方は、充電池と充電ケーブルは絶対に必要ですし、できれば充電機能をもった携帯ラジオがあるとよりよいと思います。
 タオルはバスタオルとフェイスタオルを一枚ずつ準備します。女性であれば、普段お使いの生理用品も一回分は在庫があったほうが安心です。
 ウェットティッシュと歯ブラシ、下着、使い捨てカイロはあったほうがいいです。それから、風呂敷と手ぬぐい、帽子。雨合羽。
 最後に余力があれば食料品少々。
 これらのアイテムを、濡れないように密閉できるビニール袋に収めて、背負いやすいリュックサックに入れておきます。

 人の命が危険になる順番としては、①体温低下、②脱水症状 ③飢えになりますので、ここではそれに対応した準備をご紹介しています。食料は、無いとお腹が減ってひもじい思いはしますが、食べ無ければすぐに死ぬという人で無い限り、優先順位はそんなに高くありません。でも、低体温や脱水は生命にかかわってきますので、そちらへの対応を重視していることが読み取れるでしょうか。
 もっとも、これらのものを準備したところで自分が使わなかったり、使い方を知らなければ単なる重しでしかありませんので、使えてかつ必要だと思う物を準備しましょう。また、上記にプラスして、おうち個別の事情で追加しておくべきものもいろいろあると思います。例えば乳児のいるおうちではおむつやミルクが必要になるでしょうし、高齢者の方だと老眼鏡や入れ歯が追加になってくるという風に。
 ただ、個別の事情を考え出すと、あれもこれもということになって、結局いろいろなものを準備しすぎて持って行けなくなるということが非常によくあります。せっかく準備していても、それを持って避難ができなければ何の意味もありません。
 高齢者が多く、自治会管理の避難所があるところでは、身一つでの避難を徹底する代わりに、避難所にコンテナボックスに入れた各個人の非常用備蓄品が備えることで非常用持ち出し袋の代わりができるようになっていたりすることもあります。

 何を重視するのかは人それぞれですし、地域によって備えるべき災害と準備は異なります。あなたや家族、地域の状況を考えた上で、自分が持てる重さの非常用持ち出し袋を準備するようにしてくださいね。

避難所と防疫

 災害時に怖いのは、人がたくさん集まって生活する空間となっている避難所で発生する感染症。インフルエンザやノロウイルスなどは、避難が長期化した避難所では必ずと言っていいくらい発生して蔓延してしまいますが、その対策としては、徹底的な防疫を行うことくらいしかありません。
 今回は、避難所で起こりうるであろう感染症発生時にどのような対策をすればいいのかについて考えてみます。

1.防疫って何だろう?

  国語辞典などを見てみると、防疫とは「伝染病を予防し、またその侵入を防ぐこと」とされています。つまり、防疫という言葉は「予防措置」と「防御措置」の二つの性格をもっていると言うことになります。

2.予防措置

 大規模避難所では、何よりも衛生環境の維持が必要です。感染症を起こさないようにするためには、徹底した手洗いとうがいが推奨されていますが、被災地では必ずしも水が潤沢にあるわけではありません。
 それでも消毒を行ったり、ウエットティッシュなどで拭く、手が洗浄できなければ使い捨て手袋を使うなど、可能な限り衛生管理を行ってください。
 また、生活空間は絶対に土足禁止です。そして、寝る場所は床から少しでも高さのある状態にしてください。この二つを守ることで衛生環境はかなり維持することができます。
 あとは歯磨きなどで歯や口の中の雑菌を繁殖させないようにすること。特に避難所での生活では気力も体力も消耗していきますから、いつも以上に口腔内の衛生には気をつけるようにします。

3.防御措置

 それでも人が多く集まれば何らかの感染症が発生することは避けられません。感染症発生に備えて、患者を隔離できる部屋を一つ準備してあらかじめ空けておく必要があります。
 また、基礎体温のチェックや体調の確認は毎朝毎晩行うようにし、少しでもおかしな兆候があればマスクを着用した上で隔離部屋へ移動してもらって様子を見ます。
 隔離部屋は部屋だけでなく、その周辺を含めて立ち入り制限区域とし、制限すべきエリアは目で見てわかるようにしておきます。また、立ち入り制限区画の出入口には消毒、マスク、手袋などを用意し、できるだけ感染者に直接接触しないようにします。感染者に接触した後は、生活空間に菌を持ち込まないようにマスクや手袋などは制限区域内に処分場所を用意してそこで外すようにします。間違ってもそのまま生活空間に入らないようにしてください。
 隔離部屋については、室内が乾燥しないようにし、感染者が寝るための場所を準備しておきます。これは生活空間と同じように直接床ではなく、少しでも床から高い位置に場所を作るようにします。そして汚物入れや汚染されたものを生活空間に持ち込まないように窓などから外部へ搬出できるルートは作っておいてください。
 また感染者には優先的に食べやすいものや飲料を供給し、病気の回復を支援するようにします。

4.感染症は起きるものと考える

 感染者と一般者が普通に接触していると、感染は一気に拡大します。早めの封じ込めにより感染拡大を防ぐことと、汚染されているかもしれない空間と汚染されていない空間とがはっきりわかるようにしておくことは、感染症対策としては絶対条件となります。そのため、例えば巡回する医師や看護師などの医療関係者も感染者に接触した後は生活空間に入らないようにしてもらいましょう。
 防疫については大げさすぎるくらいでちょうどいいと思います。ここでは病院に搬送できないという想定で隔離部屋を作っていますが、発症したら病院に送り込むくらい極端でも構わないと思います。
 そしてもし避難所内で隔離するのであれば、感染者が体力を維持し、回復できるように飲料食や薬を優先的に回せるように考えておきましょう。
 いずれにしても、ある程度の規模の避難所では、避難が長期化してくると感染症は必ず発生します。発生したとき、いかに素早く対応できるかで被害の状況が変わりますので、感染させないこと、感染を広めないことを念頭において日々の管理を行うようにしましょう。

避難所の種類と機能について考える

 災害が起きると、住民の避難先として注目されるのが避難所ですが、行政側も住民側も避難所がなんなのかがよくわかっていない部分があるような気がします。
そこで、今回は避難所について改めて整理してみたいと思います。

1.避難所の定義

出典:国土地理院

 避難所には、「指定避難所」「一時避難所」「避難場所」があります。名前と表示マークは同じなのですが、定義がなぜか自治体によって異なっているので、ここでは石西地方の市町の定義でご紹介します。

①指定避難所(していひなんしょ)

 家が壊れたりして住めなくなった住民を収容して一時的に住居を提供するところです。地域の復興支援のためのボランティアセンターやそのサテライト、住民に提供する物資の集積所の機能を持ちます。

②一時避難所(いっときひなんしょ)
災害を避けるために一時的に避難をする施設で、災害が収まったら速やかに帰宅あるいは避難所に移動する必要があります。津和野町では住民が自主的に開設・運営する避難所を一時避難所として定義しています。

③避難場所(ひなんばしょ)
災害を避けるために緊急的に避難をする場所です。学校の校庭や公園など、安全の確保できる広い空間が指定されることが多く、災害後にここでそのまま過ごすのはかなり困難です。
熊本地震では自家用車で車中泊したり、被災者のテント村が設営されたりもしました。

2.避難できる災害の種類
内閣府防災が定めている避難所で定義する災害は次の5種類です。

①洪水・内水面氾濫
「○」避難可能
「×」水没するため避難不可
「△」水没するが上層階なら避難可能

②土砂災害(土石流、崖崩れ、地すべり)
「○」土砂災害の危険がなく避難可能
「×」土砂災害の危険があるため避難不可

③地震
「○」耐震・免震・制震構造等で新耐震基準に適合している施設及び公園や校庭
   など建物倒壊の影響のない場所
「×」地震で倒壊する可能性のある施設または倒壊する建物の影響を受ける場所

④高潮・津波
「○」標高10m以上の場所にある施設・場所
「×」標高10m以下にある施設・場所

⑤大規模火災
「○」大規模火災の影響を受けない施設・場所
「×」大規模火災発生時に何らかの影響を受ける施設・場所

このうち益田市は「大規模火災」の定義をしていません。また、津波については津和野町、吉賀町は該当がないため、益田市の基準を紹介しています。

上記の1と2で定義したものを看板にすると次のようになります。益田市、津和野町、吉賀町の3市町では、吉賀町のみがこの掲示をしているので、吉賀町の吉賀高校体育館のものをサンプルとして表示しています。

3.指定避難所の機能
 避難所というと避難している人のための施設というイメージがありますが、指定避難所のところでも触れたとおり避難者受け入れ以外にもさまざまな機能を持っています。よく誤解されるのですが、避難所に集積される物資は避難所の避難者専用ではありません。避難所は地区の物資集積所として地区全体の被災者支援に使われることが前提で物資が集まってきますので、避難所を運営する方はそれを必ず意識してください。
 また、行政から発信される情報も避難所に掲示されます。避難所は地区の物資と情報集積の基地として機能するということを覚えておいてください。
 もちろん、避難所は自宅が被災して住めなくなった人が身を寄せて生活する場所でもありますから、生活空間としての避難所と物資情報集積基地としての避難所を上手に切り分けて運営する必要があります。
 ただ、避難所の運営は行政がしない方が無難です。行政が運営するとどうしても「平等の原則」が働きますので、届いた物資が欲しい人全員に行き渡らなければ配布しないという事態が起こりえます。乳幼児やその母親、高齢者などの弱者と健常者が同じ扱いとなってしまうということは、体力の無い人は生き残ることができないと言うことになりますので、食料や水など生活に不可欠なものの配布優先順位をあらかじめ作っておくことをお勧めします。

手遊びのできるものを非常用持ち出し袋に準備する

 以前にボードゲームやカードゲームを非常用持ち出し袋に入れておくといざというときに気が紛れるということを書きましたが、それらで遊べない年齢の子どもの場合はどうするのかというお問い合わせをいただきました。
 答えとしては、「その子が喜んで遊ぶものをいくつか準備しておく」ということになりますが、一刻を争うときに子どものお気に入りのおもちゃの持ち出しにまではなかなか気が回らないと思います。
 そこで、折り紙や落書き帳をいれておいてはいかがでしょうか。もちろん、折り紙だと折り方を知っていなければなりませんし、落書き帳にはクレヨンや色鉛筆といったお絵かきするための道具も必要です。
 これらは子どもと遊ぶという目的だけでなく、折り紙であればコップや皿を作ることができますし、落書き帳も折り紙に使えますし、伝言メモや記録を書くときにも使うことができます。
 非常用持ち出し袋は、なるべく軽くしたいものですから、いざというときに備えて、これらの紙道具を準備しておいてはいかがでしょうか。
 なお、落書き帳ですがコンパクトな自由帳やメモでは駄目かというご相談を受けることがあります。それでもいいのですが、一枚を書いたという満足感と、作品として完結させたという満足感を持つためにはある程度の大きさが必要だと考えます。そのため、B5サイズ以上の紙の方がいいのではないかと思いますが、その子が普段どのようなものに絵を描いているのかを確認していただき、そのサイズにあったものを準備されればいいと思います。
 同様に、折り紙についてもある程度の大きさの方が、子どもの手には折りやすいのではないかと思います。こちらも子どもと一緒に折ってみて、ちょうどいいサイズを探してみてください。

身体から熱を逃がさないための方法

 寒い時期に被災すると、熱を作り出すのに苦労します。特に雨が降っている状況下では焚き火もできませんから、どうやって身体を冷やさずにいるかということに重きを置く必要があります。
 身体が冷えてくると低体温症になり、ひどくなると死んでしまいます。ずぶ濡れや熱の逃げてしまうような環境で、普通に会話ができていた人がろれつが回らなくなったり、日付や今までのことが言えなくなったりしたときには、低体温症による記憶障害を疑ってみたほうがいいのですが、まずはそうならないために、次の点に気をつけてください。

1.身体を濡らさない

 着替えがあるなら、速やかに濡れた服を脱ぎ、濡れた身体を拭いてから乾いたものに着替えてください。最初は寒く感じますが、熱を奪う水分がなくなった分は身体への負担が減ります。

2.風を遮蔽する

 風は身体から熱を奪っていきます。暑い中で冷たい風にあたると身体の熱が奪われて気持ちいいと感じますが、あれは寒い時期にも起こります。できるだけ風を通さない場所を選び、あれば防寒着や合羽、なければ大きなビニール袋でも構いませんので、身体に着て直接風が当たらないようにしてください。

3.冷たい場所に直接座らない

 金属や石、堅い木の上などに座るとひやっとするかもしれません。その場合、いくら身体を乾かして風に当たらないようにしても、座っているお尻から熱が逃げていきます。それを防ぐために、お尻の下にはエアークッションや座布団、段ボールや新聞紙といった、間に空気が貯まって保温できるようなものを敷いてください。
 新聞紙は空気の層を作る必要がありますので、できれば一日分をお尻の大きさに合わせてたたみ、その上に座るようにしてください。週刊誌や雑誌でも厚手のものであれば同じ効果が期待できます。

4.身体の熱の逃げる部位を覆う

 身体からは思っている以上に熱が逃げています。2で風を遮蔽しているはずですが、熱を逃がさないために身体の周囲に空気の層を作るようにします。エマージェンシーシートやビニールシートといった風を通さない素材で身体を覆うようにします。頭や顔からも案外と熱が逃げますので、理想は包まって目だけ出ている状態です。

5.熱を作る

 保温に成功しても、身体のエネルギーが不足すると熱を作り出すことができなくなります。そうならないように、チョコレートやようかんといったすぐエネルギーに変わる糖類を摂取して体内から熱を作り出せるようにします。

 ちなみに、1から4までを空間として作ると路上生活者の人が作っている段ボールハウスになります。断熱・保温・居住性の点で非常に有効なものを作っているなと感じており、その構造は避難所内外のシェルターとしても使えると思っていますので、もしも観察する機会があればどのようにして作っているのかを見てみてください。

避難所で子どもとどう遊ぶか

 突然やってくる地震を除けば、殆どの災害は事前に避難が可能なものばかりです。あらかじめ危険箇所の分析ができていれば、自分のところが避難しなければいけない災害に対して早い段階で安全な場所への移動を完了することができるのですが、その安全な場所が自宅ではない場合、そして子ども達が一緒に避難している場合には、その子ども達が退屈しないように少し知恵を絞る必要があります。
 普段から彼らが遊んでいるものを持参することと、電源が不要な遊びを一緒に楽しめるようにしておくこと。
 例えば、ネットゲームやアニメ、インターネットといった電源や通信環境が必要な遊びでは、災害が発生して電源や通信環境を失ったしまうと遊ぶことができなくなります。そこで電源不要な遊びをできるように準備し、また、ある程度は一緒に遊んで慣れ親しんでおくことも必要です。
 例えば、折り紙やあやとり、落書き帳や筆記具、絵本、カードゲーム、ボードゲームなどを持ち出しセットに準備しておき、一緒に遊ぶことで、子どもだけでなく大人も気が紛れます。
子どもが大騒ぎしたり暴れたり泣いたりするのは退屈ですることがないせいの場合が多いので、彼らを退屈させないように準備をしておくのです。
 もしもそういったものが準備できなかった場合には、新聞紙やその辺にあるものでどうやって遊ぶかを子どもと一緒に考えて、周囲に迷惑がかからない程度に遊ぶのもよいと思います。
 避難所の運営が始まれば、彼らも立派な戦力です。仕事をどんどん割り振って、退屈にさせないようにしましょう。

暖かい食事のために発熱剤を準備してみる

 避難所で避難生活するにしても、自宅で生活するにしても、食事はしっかりと食べる必要があります。
 ただ、冷たいものや常温のものばかり食べていると、暖かいものが恋しくなってくるのは事実ですし、疲れて空腹な時に暖かいものを食べることができれば、それだけでかなりの気力を回復することができます。
 よくカセットコンロを準備しようという話をするのですが、ご家庭の事情によっては、それができない場合もあると思いますが、暖かいものを食べるための環境は整えておいた方が安心です。
 そこで、発熱剤を使ってみてはいかがでしょうか。「紐を引くだけであつあつのお弁当」などというキャッチフレーズでお弁当などにも使われていますが、普段の保管では危険は殆ど無く、劣化しにくく、いざというときには水を注ぐだけでしっかりと発熱してくれます。加熱するためには水が必要ですので、その分を余計に準備しておくという必要はありますが、水であれば基本的には発熱しますので、飲料用でなくても使うことが可能です。
 アウトドアや災害用に使う発熱剤は、殆どの場合ケースがついていますので、そのケースに缶詰やレトルト食品など暖めたいものを入れ、説明書に従って発熱させると暖かいものが食べられます。加熱温度は70~80度くらいですので、焦げたり発火したりすることはありませんし、よくある「○○のご飯」のような加熱しておいしくなるタイプのご飯もしっかりと温めることができます。また、授乳用の液体ミルクを温めるだけでなく、粉ミルクを調製するためのお湯を作ることも可能です。
 とても便利な発熱剤なのですが、欠点としては売っているところが限られているところです。いざというときにすぐ買えないと思いますので、一度買ってみて、自分のニーズにあっているかどうかを試してみてください。
 ちなみに、使い捨てカイロがあれば、その熱でもほのかに暖かくすることは可能ですので、あわせて使い捨てカイロも準備しておくとよいと思います。

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