学校や施設、企業などでは、基本的には災害時の対応マニュアルが作られているはずですが、あなたはそれに目を通したことがありますか。
もしも目を通したことがあるなら、書き方がどうなっていたのかを思い出してください。例えば避難なら「近くの公園や施設に避難」といった抽象的な書き方か、「〇〇公園の〇〇に避難」といった感じで具体化されていたでしょうか。
面倒くさいことと時間が取れないこと、そしてわからないことや責任問題に発展することを恐れてだと思うのですが、防災マニュアルではとにかく抽象的な書き方をすることが非常に多いです。
ただ、抽象的に書くと、いざ災害の時には非常に悩むことになってしまいます。例えば、具体的にどこへいつまでにどのように避難するのかがしっかりと明記されていないと、避難すべきタイミングを失ってずるずると逃げ遅れることになります。
緊急時に備えたマニュアルでは、より具体化し、単純化しておくことが大切です。
防災マニュアルを備える前提は「命を守ること」、そして「被害を軽減化する」ことですので、何を最優先するのかを取り決めたうえで内容を具体化してマニュアルは作成しておきましょう。
作るまでは非常に手間がかかりますが、一度作ってしまえば毎年きちんと見直すだけで災害時の行動基準となるマニュアルが手元にあることになり、災害時から復旧、復興時の手順がはっきりとわかり、手順が組みやすくなります。
また、もしもその防災マニュアルを使うことがあったなら、状況が落ち着いてから内容に足りないものがなかったかや段取りはうまくできていたかなど、次回に備えた検証と反映をしっかりと行っておきましょう。
担当する各省庁がそれぞれの所管に応じて防災マニュアルのひな型を作っていますが、あれは必要最低限の記載がされているだけですので、実際には自分のところにあわせたカスタマイズが必要になります。
ひな型に文字を入れて出来上がり、ではなく、その内容も含めてしっかりと検討し、自分のところにあった具体化されたマニュアルを備え付けるようにしてください。
マニュアルができたなら、そのマニュアルはしっかりと所属する全職員に情報を共有化しておかなければなりません。全部覚えることができないとしても、マニュアルがどこにあってどのページを使うのかがわかれば、非常時には心強い存在になりますので、作成から共有化する作業までを一連の流れとして、しっかりと整えてほしいなと思います。
カテゴリー: 行動
おうちテントで避難訓練
ゴールデンウィークに入りましたが、お休みの方、お仕事の方、それぞれだと思います。前半は天気が割とよいとのことなので、外のイベントに参加する方も多いのではないでしょうか。
ただ、後半は天気が悪くなり、ところによっては大しけになるという予報が出ていますので、外あそびが難しい日もありそうです。
もしもお手元に自立型のテントがあるなら、それを使って家の中でおうちキャンプをやってみてはいかがでしょうか。
手持ちのキャンプ用品を使って、家にいながら家の道具は基本的に使わない、屋内でのキャンプ体験です。
電気やガス、水道、トイレなどは、その気になればいつでも普段の生活に戻すことができますし、その気になれば手持ちのキャンプ用品だけで家の中でのキャンプ生活を体験することもできます。
子どもさんがいれば、多くの場合は大喜びして楽しんでくれると思いますので、お出かけが難しい方でも、おうちレジャーとしてやってみたらどうでしょうか。
実は、これは災害時の避難訓練にもなっています。
雨漏りや窓ガラスなどの飛散、物の散乱などで自宅では普通の生活ができない場合でも、テントがあればちょっとした片付けさえできればそのまま家を避難所として使うことができます。
平時にいろいろと試しておけば、災害時にも慌てずに自宅にそのまま住み続けることも可能になるのです。
発災後の避難所は、その地域の人がすべて避難してきた場合にとても全員を収容することはできません。ましてや、快適な環境などは得ようもありません。
テントやちょっとしたおうちキャンプを重ねていれば、いざというときでも家や庭などで避難生活をすることができますし、避難所に避難しても、敷地やその周りでのテント生活がさほど抵抗なくできると思います。
「おうちテントで避難訓練」
面倒も難しくもなく、簡単にできてかなり効果のある楽しい訓練。あなたも一度試してみませんか。
安心リストを作っておこう
人間というのは普段からさまざまな不安を持っているものです。
そして、その不安を解消するために、さまざまな行動をしていることもご存じのとおり。
こと、災害になるとそういった不安がさまざまな形で精神に悪影響を及ぼしますので、そうならないために対策を考えておかなければなりません。
そこでやっておいてほしいことが一つあります。
それは、普段から自分が安心できる状態になれる「モノ」「コト」「場所」「人」などを考えてリストアップしておくことです。
数が多ければ多いほど、いざというときに役立ちますので、思いつく限りのことをリストアップしておいてください。
出来上がったそのリストは、非常時に持ち歩くものの中に入れておきます。スマートフォンのメモ機能などでもいいのですが、電源確保が不安ですので、できれば紙に書きだしておきましょう。
そして、避難完了時や被災後に自分が不安な気持ちになったときは、そのリストを見てその時の自分のコンディションに応じた安心できる状態を探して試してみましょう。
記憶しているから大丈夫なような気がしていても、いざというときにはなかなか思い出せませんから、可視化したものでチェックをしていくと、意外に気持ちが安定してくるものです。
また、普段から意識していることで、自分が安心だと思える傾向も見えてきますから、不安にならないための行動をあらかじめとることもできるようになると思います。
災害からの復旧・復興は意外と長期戦になりますから、気持ちが落ち込んだりくじけたりすることが恐らく出てくると思います。
そんなときに役に立つ「安心リスト」。災害時でなくてもこころの不安時には必ず役立ちますので、普段から意識して作ってみてくださいね。
消火器の位置を考える
消火器の設置については法律に設置を義務付けられている施設とそうでない施設がありますが、初期消火のことを考えるとどのような建物であれ消火器は備え付けておくほうがいいと思います。
ただ、備え付けているだけではダメで、出火した時にすぐ使える状態になっていなければ意味がありません。
消防法令では、消火器は「通行又は避難に支障がなく、必要時にすぐに持ち出せる場所に設置すること」とされていますが、実際には火を使っているコンロの下やその周辺、何かの物陰になっていてそこにあることが周りにはわかりにくい状態になっていたりします。最近ではおしゃれで見た目消火器に見えないような消火器も販売されていますが、消火器とはわからないので、そこにあるのに使ってもらえない可能性が出てきます。
火を使う場所、施設では厨房、ご家庭では台所になると思いますが、その室内で目立ち、かつ邪魔にならないところがあるかを見回してみてください。そういう場所は案外と見つけるのが難しいもので、結局その室内にあるちょっとした空間に置くことになるのですが、設置のときにはしっかりと意識していても、普段使われていないと、そのうちに周りに物が積まれたりそこから撤去されたりして、いざというときにはどこにあるのかわからないという状態になってしまうこともありますので、家族や従業員といったそこを使う人たちで消火器が必要であるということを共通認識とし、繰り返し確認しておく必要があります。
新築するときや引っ越した時、または模様替えや大掃除の時、消火器の位置について考えて、設置をするようにしてください。
【活動報告】よつばキッズスクールの避難訓練を見学しました
民間学童に限らず、児童の集まる施設では避難訓練を行うこととなっていますが、今回は益田市の民間学童保育であるよつばキッズスクール様の避難訓練を見学し、そのうえで避難についてのお話をしました。
初期消火と避難では、まずは避難、火が小さかったり、消火できる余力があれば消火作業を行うことになりますが、よつばキッズスクールの避難訓練では、実際に学童保育の先生が初期消火の対応訓練もされています。
子供たちは初期消火中に屋外へ避難し、なるべく出火現場からは離れる行動をとります。
家庭用の火災報知機の警報音を聞いた子供たちはきょとんとする子も多かったですが、先生の「火事だ!」という声で一斉に避難を開始。避難する児童の中には口元に袖口を当て姿勢を低くして素早く移動する子も見られ、かと思えばなかなか避難しない子もいて行動に差が出ていました。
訓練後のお話の中では、学校と家庭用の火災報知機の音の違いや、とにかくどこでもいいから出口から出て屋外へ逃げることを説明しました。
子どもからは「避難するときには履き替えなくてもいいのか?」という質問も出され、履き替えずにそのまま避難することをお願いしました。
実際の訓練の通りに本番でも行動すると思われますので、できれば訓練でも素足や上履きのまま外へ避難することも必要なのかなと感じました。
また、子どもが火災を発見した時に周りに大人がいない場合も最近では多くなってきていますので、子ども達でも初期消火できる、または火を出さないための教育についても考えていった方がいいのかなという気がしました。
今回、避難訓練について快く見学を許可くださいましたよつばキッズスクール様と、そこに通っている児童の皆様にこころから感謝いたします。
大人の訓練、子どもの訓練
防災活動の一環として、避難訓練などの支援をすることがあります。
支援というのは、避難訓練のタイムスケジュールや訓練時の状況作成、訓練後の講評などさまざまですが、このうちで、一番喜ばれないのが訓練講評です。
講評をするにあたっては、人の命を守るべき仕事のある人には厳しく、自分の命を守ればいい人はそれなりに見ていくのですが、どんなに頑張ったとしても、必ず一つや二つの修正点、改善点は発生します。それを指摘して改善や修正方法を提案するのですが、これを「あら探し」と感じる人もいて、非常にやりにくいことがあります。
大人だけや子供だけの訓練はそれでも比較的楽なのですが、大人と子供が入り混じった訓練になると、途端に大人が傍観者になって参加している子どもたちの講評を始めてしまいます。
そういった人は、たいてい自分の訓練が満足にできていない方なので、どうしても辛口の評価になってしまい、後で怒られることもしばしば。
大人と子供が入り混じった避難訓練では、大人は子どもの講評ではなく、安全を確保するための誘導をしてほしいのですが、なぜか大人が指示を出し、子どもがそれに従って全員死亡の評価になったりするので、本当に難しいなと思います。
大人であれ子供であれ、自分の命を守るのは最終的には自分でしかできません。他人に命を預けてはならないのです。
本当は防災訓練でそういったことを徹底したいのですが、大人は指示慣れ、子どもは指示待ちになってしまっている場合が多いので、普段の生活を変えなければ、災害時に助かる人を増やすことは難しいのかもしれないなと思うことがあります。
大人だけ、子どもだけの訓練ではこういったことは発生しないので、混ざったときにどうやって生き残るすべを身に着けてもらうのか。
これができたとき、東日本大震災で子供達の避難が大人も救ったような状況が作れるのにと、少しだけ歯がゆい思いもしています。
どのようにしたら大人も子供も一緒になって助かることができるのか、試行錯誤は続きます。
暑熱順化しておこう
ここ最近、寒暖の差が激しい日々が続いていますが、体調は管理できていますか。
しっかりとした睡眠と食事、無理のないスケジュールなど、身体や心に負荷がかかることをなるべく減らすようにして、気温の変化が心身への過度な負担にならないようにしてくださいね。
ところで、暑くなってくると思わずエアコンの冷房スイッチを入れたくなりますが、そうすると体が季節の暑さについていけなくなって、暑い時期に熱中症を始めとするさまざまなトラブルが発生します。
そうなる前に、無理のない範囲で、しっかりと汗をかいて体を暑さに慣れさせるようにしてください。このことを「暑熱順化」といいます。
暑熱順化のポイントは汗をかくこと。汗をかくことで汗腺が開き、暑い日に汗をかくことができるようになって体の中の余計な熱を排泄できるようになります。
例えばウォーキングやジョギングなど、軽く汗をかく程度で十分です。面倒くさければ入浴でも構いません。湯船にお湯を貼り、汗をかくことでも暑熱順化することができます。汗をかくときには、しっかりと水分や塩分を補給しておくことを忘れないようにしてください。
暑熱順化には、体質によりますが数日から半月程度はかかりますので、ちょっとずつ暑さに慣れていくことをお勧めします。
熱中症について学ぼう:暑熱順化(熱中症ゼロへのウェブサイトへ移動します)
非常食は食べてみる
災害への備えの中で、割と早い段階で出てくるのが非常食です。
火を使わなくても食べられて、お腹が膨れ、しかも栄養価が高くておいしいもの、というのが理想ですが、おいしいというところで結構判断が分かれているような気がします。
普段の味付けが割とその人の舌を作りますので、同じものを食べてもおいしいという人もいれば、味が濃い・味が薄いのでおいしくないという主観がかならず入ります。
そして、いざ災害というときに準備していた非常食がもしも自分の口に合わないものだとしたら、かなり気力が萎えてしまうと思います。
そのため、非常食については一度は実際に食べて味が自分に合うかどうかを確認してみてください。
他の人がおいしいといっても、それがあなたの口に合うとは限りません。
当研究所でやっている防災キャンプなどでも、アルファ化米の食べ比べをやることがありますが、同じ製品名で入っているものがほぼ同じでも、味が全く異なることで子供たちが結構驚きます。
その中で自分の好みの味を見つけたり、自分だったらどう作るかなどを考えて、実際に作ってみることまでいければ、いざ災害というときにもさほど落ち込むことはないと思います。
非常食は値段が高いですし、ものによってはかなりの分量があったりもしますが、実際に食べてみることで味がわかれば、自分にあったものを探して準備することができると思いますので、ぜひ食べ比べをして、自分の好みの味を準備しておくようにしてください。
静かに溺れる
先日スイミングスクールで参加していた子が溺れてなくなるという事故がおき、無くなられたお子様にはご冥福をお祈りします。
この報道を聞いて、スイミングスクールのコーチがどうして溺れていることに気づかなかったのかと疑問に思われた方もいるのではないかと思います。
テレビドラマの影響かなという気がしているのですが、「溺れる」というのは水中でもがき苦しんでいるというイメージをされることが多いです。でも、実際には、ああいった溺れ方をする人はかなり少ないのではないかと、溺れて死にかけたことのある筆者としては疑っています。
筆者の場合には、溺れる瞬間、突然息ができなくなって動けなくなりました。
そのときの思考は「溺れた!」というパニック状態で「呼吸ができない」や「浮かべない!」といった考えが同時並列で発生、なぜか水の底がとても近くに見えました。
身体の動きを取り戻して水面に浮かび上がったときには、溺れる前とほとんど周りの人の動きは変わっていなかったのでほんの数秒だったと思うのですが、溺れるというのはこういうことかと、それから後、水の中で泳ぐのが非常に怖くなりました。
専門的にはこれを「溺水反応」というそうですが、後で聞いたらすぐ傍にいた人も溺れていることに気が付いてなかったそうです。
また、おぼれてばちゃばちゃしている場合でも、「助けて」という大声は出せません。声は肺に空気がないと出せないのですが、溺れているということは肺には充分な空気がなく、声が出せても小さいものになってしまいます。
もう少しすると、水遊びが楽しい季節がやってきますが、子どもも大人も、予想しない「まさか」というところで溺れることもありますので、水遊びの時にはとくに気を付けておいてください。
水遊びの時には浮力のしっかりあるライフジャケットを身に着けること、必ず監視役を置くこと、そして静かになったらすぐに確認することを心がけておきたいですね。
「“静かに”溺れる?夏休みの水遊びに潜むリスク」(NHKのウェブサイトへ移動します)
【終了しました】救急救命講習会を開催します
来る5月21日13時から、益田市の益田スイミング様において、日赤島根県支部の方を講師にお招きし、救急救命講習会を開催します。
誰もがいつどこで必要になるかわからない心肺蘇生法やAEDの使い方などを、丁寧にしっかりと教えてもらうことができます。
普段なかなか接することのない救命法について、こういった機会を通して学んでみませんか。
詳しいことはチラシをご覧ください。
興味のある方のご参加をお待ちしております。
当日の様子はこちら