新型コロナウイルス感染症がまたまた蔓延していますが、あなたの体調は大丈夫ですか。
当研究所のある島根県では、県が感染した時の自宅療養に備えて、5日分程度の生活物資の備蓄を呼び掛けていますが、どれくらい効果が出ているのかは不明です。
ただ、もしも非常用持ち出し袋などが準備してあって自宅療養をしなくてはいけなくなったら、非常用持ち出し袋に入れてある防災食を食べてみてください。
防災食にも当然賞味期限がありますから、それまでには消費しておく必要があります。もしも自宅療養になると、買い物に出るわけにもいかなくなりますので、準備してある備蓄品を使って、その使い心地をしっかりと確認しておいてください。
アルファ米でも缶詰でも、同じ名前のものでもつくっている会社が異なると当然味も違います。こういったときに備蓄をしっかりと食べてみて、あなたの口に合うかどうか、そしてどうすると食べやすくなるのかなどを調べておくと、いざ本番のときにも安心できます。
また、ウェットタオルや消毒なども備蓄品には入っていると思いますので、そういったものを活用してプチ避難生活を試してみるといいと思います。
もちろん体調が悪い、または気が乗らないときに無理にやる必要はありません。
ただ、せっかく自宅に閉じ込められているのですから、同じような条件になる非常用持ち出し袋を使っていろいろと試してみると本当にさまざまな発見があると思います。
もし中身を使ったら、使った分はしっかりと補充。そして自分の好みにあった食料品でいざというときをしのげるようにしておいてくださいね。
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ローソクは必要か否か
非常用持ち出し袋の中身もいろいろと変遷してきていますが、ローソクについては賛否両論あってなかなか判断しづらいのかなと考えています。
人によって必要という人といらないという人が極端なアイテムですが、大きくわけると照明としての直火と、直火による暖、そして同じく直火による精神的安定が挙げられると思います。
賛否両論のどちらも、問題にしているのがこの直火ということです。
確かに地震などで停電してしまったとき、ローソクを使っていると余震でひっくり返り、火事になるかもしれません。
また、ガスの配管が損傷しているときに直火をつけると、気化したガスに引火して大爆発になるかもしれません。
それから、ローソクに着火するためのマッチやライターなどの保管が結構難しいということもあります。
昔はそこかしこに煙草を吸う人がいて、普通にマッチやライターが存在していましたが、嫌煙権が広がって、煙草を吸う人でも電子タバコとなり、火を持っていないのが普通になりました。そのため、着火するための火も自前で準備しておかなくてはいけないわけで、その管理に結構気を使うことになってしまいます。
ただ、直火だからこそ、見たら精神的に落ち着くということがあります。そして、小さな火ですが暖を取ることもできます。ローソクを使うと、簡単な煮炊きができますし、ローソクそのものはそんなに重たいわけでも場所をとるわけでもありません。
ローソクをめぐる議論は、この両面から見て賛否を考えていて、そのどちらの主張もなるほどと思えるものがあるのは確かです。
筆者はローソクと着火道具はセットでジップロックなどに入れて非常用持ち出し袋に入れておけばいいのではないかと考えています。
火をつけた状態で持ち歩くのには向きませんが、安全が確保されている状態ならさまざまな使い道があってとても便利だからです。
地震時、そしてガス漏れに注意するような状況では使わないことを袋に明記しておけば、うっかりと使ってしまう可能性も少なくなると思います。
あなたがもしもこの論争で意見を持っているとしたら、それは貴重なことだと思います。でも、非常用持ち出し袋の中身には「所有者の精神的安定が確保されるもの」も入っているべきだと思っていますので、必要だと考えている人にまで必要ないとは言う必要はありません。また、必要だと思っている人も、必要ないという人に意見を押し付けるべきではないでしょう。
ローソクに限らずですが、非常用持ち出し袋は所有者が避難時に必要だと思うものが入っていることが重要です。
その前提で、ローソクの必要性について考えてほしいなと思います。
バリアフリーを考える
技術の普及や周囲の理解もあってか、日常生活に支援が必要な人でも地域で暮らすことができるようになってきています。
生活の支援といってもさまざまですが、自分で自分が生活する場所を選ぶことができるようになったことは非常に喜ばしいことだと思っています。
ただ、生活の支援がいる人は、全てを自力でできる人たちに比べると、どうしても避難の判断や準備、行動が遅れがちになってしまうので、対策としては事前に決められることを全部決めて、いざというときにすべてが自動で動くようにしておく必要があると思います。
さて、今回のお題のバリアフリーですが、避難所におけるバリアフリーというと、どうしても車いすや足の不自由な人が移動しやすいようにスロープや傾斜を準備するというのが最初にイメージされることが多いようです。
でも、バリアフリーというのは、そもそもがバリア、つまり「障害」がフリーの状態、障害がない状態といった意味合いになりますので、一般的に思い浮かぶような物理的なものだけではないはずです。
一般的には、生活するときのバリアには4種類あるそうで、「物理的バリア」「制度的バリア」「文化情報面のバリア」「意識上のバリア」がそれにあたります。
災害時には普段のあれこれが先鋭化してしまいますので、どうしても生活に支援が必要な人たちには厳しい状態になりがちですから、事前にさまざまなケースを考えて想定し、備えておく必要があります。
先ほどのスロープ一つとってみても、健常者が考えるスロープと必要な人の考えるスロープでは出来上がりが違うかもしれません。
同じように、避難所に掲示される情報が難しく書かれていてわからない人がいるかもしれません。
状況がわからず、一人一つの配給品をたくさん取ってしまう人がいるかもしれません。
できあがった仮設トイレが使えない人や、仮設トイレがわからない人がいるかもしれません。
そこで生活する人たちがお互いの家庭の文化が可能な限りぶつからず、必要最小限のストレスで済むような避難所にするためには、開設してからさまざまな人の意見を吸い上げる仕組みを作ることも大切ですが、事前にバリアを持っている人たちに参加してもらって実際の避難や避難所の設営や運営で気づいた点を教えてもらい、改善を続けていくしかありません。
バリアはストレスに直結しますし、へたをするとバリアを感じる人の生死にも影響してきます。
その地域に住む人たちがどのようなバリアを持っていて、どのように支援すればとりあえずの生活が確保できるのか。
避難所のバリアフリーはそういうことをしっかりと考えることが大切です。
車の移動と低地走行
あちこちで大雨が続いています。
大きな被害が出ないことを願っていますが、報道を見ると、車で移動していて動けなくなり救助要請という事態が起きているようです。
大雨でも普段使っている道が冠水して池になっているというのは考えにくいようで、いつものように走っていて水没し、動けなくなるということのようです。
人間というのは不思議なもので、普段から慣れ親しんでいるところが急激に変化するとはあまり考えないようになっているらしく、多くの方がひどい目にあって、「こんなはずではなかった」と言うことが多いです。
ほんのちょっとしたことなのですが、緊急時に安全な場所まで逃げるための避難路の点検と同じように、普段使いしている道路の高低差や経路で土地が低かったり排水がうまくできないような場所を確認しておいたなら、こういった事態にはならなかったかもしれません。
アンダーパスでの浸水の危険性はかなり周知されてきていますが、アンダーパスだけでなく、周囲から見て一段低い場所も水が溜まって危険です。
大きな水たまりに見えていても深いことがありますから、基本はそういった水たまりはできるだけ避けて運転することです。
雨の日にちょっと気を付けていると、水のたまりやすいところや掃けにくいところがわかると思いますので、普段と比べて水の量がどうなのかがイメージできれば、そこまでひどい目に遭うことはないのではないかと思います。
実際に現地を歩いてみたり、国土地理院の地図などで周囲の確認をしたりして、大雨の時にはできるだけ水たまりとなるような場所を通らない。
できれば普段からそういった場所を避けるような経路を作って、それを常に移動するような癖をつけておくといいと思います。
垂直避難で気を付けること
あちこちで大雨が降っていますが、あなたのお住いの地域ではどのような状態でしょうか。
ここのところの雨の降り方は数時間で河川氾濫や内水越水が起きるような強烈なものになっているため、行政の避難情報が間に合わない事態も起きているようです。
自分の命を自分で守るためには、自分で避難すべき基準を作り、確認しておく必要がありそうです。
ところで、こういった雨の降り方をすると、場合によっては安全な場所に逃げるための水平避難が間に合わない場合が想定されますので、いざというときに備えてご自宅の二回以上に避難する垂直避難も逃げる選択肢に入れておいたほうがよさそうです。
垂直避難では、基本的に二階以上に避難したら、水が引くまではそこで過ごすことが原則となります。地域によっては水防団などが救助に来てくれる可能性もありますが、基本は避難した場所から移動ができません。
そのため、そこで過ごすために必要なあれこれをあらかじめ備え付けておくようにしてください。
水、携帯トイレ(もしくは簡易トイレ)、食料、着替え、布団、ポータブル電源、テレビやラジオなどの情報が確認できるもの、そして暇つぶしのできるものなどを用意しておくといいと思います。
ただし、垂直避難できるのはその地域の水没する水の高さが1階の高さ以内に収まることが前提となりますので、二階以上が水没するようなハザードマップが出ている場合には、危険だと思ったらすぐに域外へ避難することです。
一番いいのは安全な場所にいますぐに引っ越しをすることですが、それができない人は、雨には十分に警戒するようにしましょう。
最近は精度の高い雨雲レーダーの情報(リンク先は日本気象協会)や気象庁のキキクルなどもありますので、自分できちんと情報を集めてどうするかの判断をするようにしてください。
そして、自分で判断が難しい場合には、そういったことが得意な人に注意を促してもらうようにしておくといいでしょう。
いずれにしても、垂直避難は決して安全な避難ではありません。
もし垂直避難するのなら、避難後に困らないような準備を、二階以上に備えておいてくださいね。
母乳とストレス
災害時には母乳が出なくなって乳児にあげられなくなるという話をよく聞きますが、これは正しくないようです。
母乳はどんな状態であっても作り続けられていて、ストレスなどにより体が警戒することで、母乳が出なくなっているというのが実際のところのようです。
つまり、まずはお母さんと乳児を安心できる環境にすることで、ストレスが軽減して母乳が出るようになるということで、できるだけ普段の生活環境に近づけることで、体の警戒態勢を緩めてやることで、母乳はきちんと乳児に与えることができるということになります。
例えば避難所であれば、しっかりとした目隠しや仕切り、できれば人ごとに仕切られた授乳室を作ることで体の警戒態勢を緩めることができると思います。
母乳がでなければミルクを与えるのも手ですが、ミルクが嫌いだったり、諸般の事情でミルクを受け付けない子もいますので、母乳を出すための周辺環境を整えてやることが重要だと思います。
また、ストレスを与えないという視点で見れば、自宅や親兄弟の家といった行きなれていて見慣れた人たちがいる場所を避難先として選ぶといいと思います。
場合によっては、被災地外に出て状況が落ち着くのを待つという方法も選択肢に入れたほうがいいと考えます。
乳児を抱えての避難所生活はかなり大変です。
支援体制がきちんと整っている乳児向けの福祉避難所、または避難所ではない避難先を平時に決めておいて、いざというときに途方にくれないようにしたいですね。
AEDは機械の指示をしっかりと聞く
AEDは現在ではかなりメジャーな救命器具となりましたが、あなたは使ったことがありますか。
AEDは自動体外式除細動器といい、心臓を動かす電気信号がおかしくなっているのを正常に戻すための道具で、現在の救急救命法の講習会では、ほとんどの場合、心臓マッサージと併せてこのAEDの取り扱いを実施しています。
複数回、違う主催者の訓練で使われた方はお気づきかもしれませんが、AEDはさまざまなメーカーから発売されていて、それぞれに特長があります。
そして、AEDの作られた時代によっても扱い方が異なりますので、AEDを使ったことがあるからと教わった手順でAEDを被害者に取り付けても、そのAEDと手順が違うことも起こりうるのです。
ただ、AEDは機械が起動すると、すべて作業手順を機械が教えてくれるようになっていますから、その手順通りに作業すればAEDは正常に仕事をしてくれますから、どんなに慌てていてもAEDの手順をしっかり聞いてそのとおりに作業を行うことがもっとも重要なことになります。
慌てずに、AEDの指示をしっかりと聞いてそのとおりに手順を行っていくこと。そうすることで、AEDは最大限の効果を発揮します。
まずは電源を入れる。あとはAEDの指示通りに作業する。
この手順を忘れないようにしてください。
ちなみに、最近のAEDはAEDが収まっている入れ物の蓋を開けると自動で電源が入り、電極パッドの設定が終わると自動で電気ショックを与えてくれるものも出てきています。
逆に電源ボタンを人が押さない限り起動しないAEDもまだまだ残っていますので、電源が入るかどうかだけは機械を気を付けてみてほしいと思います。
体温調整には血管を使う
体温の調整システムがうまく機能しなくなると、体にさまざまな障害が発生します。代表的なものだと、熱中症は体の排熱調整がうまくいかなくなって熱がたまってしまい発生するものですし、低体温症は体の熱生成機能がうまく働かなくなって熱を作れなくなってしまい発生するものです。
どちらもそのまま放っておくと死に至ってしまうかもしれない危険な状態なので対処をしなければいけないのですが、すぐに病院に搬送ができないときには、血管を使って体温の調整をしてみてください。
体の中のおおきな血管を冷やしたり温めたりすることで、体の体温がある程度調整できますので、緊急時に打つ手の一つとして知っておいて損はありません。
大きな血管は首やわきの下、鼠径部といった場所で体表に近いところに露出しています。そこに向けて熱中症であれば冷たいものを、低体温症であれば暖かいものを置いてやることで、外部から効率的に体温の調整ができます。
もちろん体内の温度は簡単に変動しませんので、冷たいものや暖かいものを飲む必要はありますが、外部からと内部からの両方で体温調整をしてやることで、本来持っている体の恒常性を取り戻すことができるのです。
余談ですが、低体温時には体で熱を作ることが難しくなっていますので、例えばエマージェンシーシートや毛布などで体を覆っても体温は上がりません。
もしも体が濡れていればすぐに乾いたものに着替えさせること、そして外部から暖かな熱を与えることが必要になりますので、対処するときには気を付けてください。
加害者にならないために
災害、特に地震が起きた時に怖いのは家屋や塀、構造物の倒壊です。
平時はなんともないように見えても、地震が起きたら倒れたり折れたり崩れたりといったことが起こりえますので、そういったことが起きないように普段から適切な管理が必要となります。
個人の所有権が認められている日本ですが、所有権は同時に所有しているものへの管理責任もついて回りますので、仮にその場の状態を知らなかったとしても、何か起きて被害が発生すれば、その被害を補償する義務を負うことになるのですが、このことが理解できている人はまだまだ少ないようです。
例えば、経年劣化で倒れそうな塀があるとします。所有者は高齢で、経済的にもこの塀を取り壊すのは無理だと主張しています。
で、この壁が地震で倒壊し、その倒れた先に人がいて、その人が死んだり怪我をしてしまうと、所有者の管理責任が問われて取り壊し費以上の補償料を支払うことになってしまうのです。
地震が頻繁に起きる日本では、家や塀といったあらゆる構造物が地震対策をしていないといけません。
貸家や貸倉庫などでも、地震で崩れれば貸主が賠償する責任しなければならない可能性が出てきます。
平時の日常生活では必要経費の優先順位は低いかもしれませんが、発生した災害で事故が起きると、途端にさまざまな損失があなたに襲い掛かってきます。
地震保険に入っておくのはもちろんですが、古い家であってもきちんとした耐震補強、高いブロック塀は取り壊したり高さを下げたりして、万が一倒壊しても周囲に被害を及ぼさないようにしておくなど、所有者としての義務をしっかりと果たすようにしましょう。
生活用水を考える
災害対策の中で大きな問題になるのが水です。
そのうち、生活用水については量も多く必要で飲料水よりも優先順位が低くなるため、なかなか確保が難しいのではないかと思います。
ただ、生活用水は飲料水ほどの清潔さは求められませんから、あらかじめ準備がしてあれば確保は非常にしやすくなると思いますので、水の確保という意識を持つとよいのではないでしょうか。
例えば、排水に影響で他者に影響がなければ、風呂おけはおそらく家の中で最大の貯水場になりますので、災害が起きる前にそこに水をためておくのは一つの手です。
庭などに井戸があるなら、それらを定期的に使えるかどうか確認しておくと、いざというときに非常に頼もしい存在になります。
電気が来ているのであれば、除湿器の水やエアコンの排水なども使えるかもしれません。また、雨水タンクや太陽熱温水器なども貯水装置としては優秀です。
最近では配水管の中に貯水できる空間を確保したものもあるようですので、ちょっと意識するだけで水の確保はある程度できると思います。
普段からどのあたりに水があってどうやって処理しているのかを意識するだけで、ある程度の水の確保は可能です。
全てを準備するのは大変かもしれませんが、できる範囲での生活用水の確保の方法を考えてやってみてください。