【活動報告】自然観察会を開催しました

山頂から島根県側を望む。中央右の丸い山が青野山。

 2021年4月25日、山口県山口市阿東町にある十種ヶ峰で自然観察会を行いました。
 十種ヶ峰はこのあたりの単独峰で、地下には青野山造山帯に連なる火山ドームがあるとされていて、そのドームの形成によってできた山だとされています。


 この山には荒れた斜面に生えるヤマシャクナゲと言われる花の群生地があり、ちょうど花の時期だったことから、ヤマシャクナゲを観察しながら鉄砲水の出た痕跡や地面の変化などを辿りました。


 当日は天気がよかったこともあり、ヤマシャクナゲだけでなく、イカリソウやヒトリシズカ、カンアオイといったさまざまな花もゆっくりと観察することができました。


 また、ここ数年の大雨による川の掘削なども確認でき、土地の成り立ちによってさまざまなリスクや生態があるということを学習することができました。
 現在は会員向けということで、なかなかお声がけすることが難しかったのですが、参加してくださった皆様に感謝します。

災害対策は小さなことの積み重ね

 災害対策というと「面倒くさい」という言う人や「準備するだけ無駄」「やらなくても問題ない」「災害が起きたら何をしてもどうせ死ぬから」といった感じで対策を最初からやらないという方も多いです。
 確かに、いっぺんにいろいろとしようとすると、ものすごく手間がかかりますし面倒くさいものではあります。
 でも、その手間や面倒を惜しむほど、あなたの命は安いものでしょうか。
 例えば、自分が住んでいるところの地形やハザードマップの確認は5分もあればできると思います。
 建物が地震に耐えられるかどうかは、簡単な判定基準が公開されていますので、それを使えば耐えられるか耐えられないかの予想はつきます。
 災害対策は、一気に全てきちんと準備できているのが理想ですが、毎日少しずつ行うことで気がついたら準備ができているという感じでも全然問題ありませんし、そちらのほうが心理的負担は少ないかもしれません。


 例えば、そのあたりの棚に直接置いてあったものを、かごに詰めて棚に貼った耐震ジェルの上に置く。これだけでも確実にその場所の安全度は上昇します。
 タンスの固定や倒れる方向の修正、寝室の安全確保など、ちょっとした作業で効果のある方法をとっておくと、あなたの命を守れる確率は簡単に上昇するのです。災害対策というと、どうしても災害や避難の知識に偏ってしまいがちですが、知るだけでなく行動することが、災害対策では非常に重要なことなのです。
 何か行動を起こすことは、0から1への変化です。0には何をかけても0ですが、1に整数をかけるとその分だけ数字は大きくなり、あなたの安全度は上昇していきます。
 一度にたくさんのことをするのは難しくても、毎日一つだけ危険度を下げる何らかの行動をすることで、あなたが安全に災害をやり過ごせる可能性はあがります。
 昨今の災害を考えると、いつあなたが被災者になっても不思議ではありませんから、ちょっとずつでいいので災害対策を始めてほしいと思います。

内水氾濫に気をつけて

 水害が起きる「氾濫」には、堤防等の治水施設が壊れることによって起きる「外水氾濫」と排水能力が追いつかなくなって水が溜まっていく「内水氾濫」があります。
外水氾濫は水が一気に押し寄せて起きる水害で、多くの人がイメージする「水害」はこちらだと思います。
 ただ、いくら堤防を強化しても起こってしまう水害があります。それが「内水氾濫」と言われるもので、こちらは排水能力を超えた水が流れ込むことによって排水路から水があふれ出して周囲が水没するものです。

数分間で大量の雨が降ったため、溢れてしまった側溝。降り続けると水没する。


 外水氾濫は河川や池沼などがなければ心配する必要はないものですが、内水氾濫は周囲と比して低地にいるのであれば起こりえる水害であることに留意してください。
 また、内水氾濫は静かに起こるため、気付いたときには周囲が水没しているということがよくあります。
 平時にあなたがいる場所の高さについて確認しておき、もし低地にいるようであれば、大雨時には周囲により注意を払うようにしてください。

 そろそろまた雨の季節がやってきます。
 雨の時期に入る前に、側溝や水路、雨樋といった排水に関わる部分の点検や掃除、そして海抜高度の確認をしておいてくださいね。

日本で地震がよく起きるわけ

 地震の回数と頻度では、日本は恐らく世界で一番多い国なのではないかという気がします。
 ただ、どうして地震が多いのかについて考えてみたことがありますか。
 その理由の一つが、日本が今の形になった理由でもあるプレートの問題です。
 簡単な作図になりますが、まずは次の絵を見てください。

 これは日本列島と陸の乗っているプレートの関係を示すものです。
 かなり適当な日本地図の上におおざっぱに線を引いたものなので実際には自分で確認して欲しいと思いますが、日本列島は4つのプレートがぶつかっている場所であることがわかればいいと思います。
 そのうち、矢印を確認していただきたいのですが、これがプレートが押しつけられている方向を示しています。
 太平洋プレートとフィリピン海プレートが北アメリカプレートとユーラシアプレートに押しつけられていることがわかると思います。
 そんな馬鹿なと思った方は、国土地理院のウェブサイトで地面がどれくらい動いているかを確認できますので、是非一度ご確認ください。
 さて、押しつけられたプレートは、そのうちに崩壊してかかっている力が一時的に小さくなります。この崩壊時に地震が起きるというわけです。
 下の図面で、海溝部に潜り込んだプレートがわかると思いますが、これが摩擦の力で反対側の陸地を引っ張っていきます。


 そして限界点を超えた瞬間、陸地か海側かのどちらかが崩壊して力を逃がすのです。
 力が均等にかかり続ければ崩壊するタイミングも極端に大きくずれることはないので、ある程度周期的に地震が起きることが予測できます。
 それから考えると、プレートの移動が収まらない限りは日本と地震は切り離せない関係になることがわかると思います。
 地震大国日本は、その成り立ちからして地震から逃げることはできません。
 絶対に地震が起きない場所はないのですから、どこに住んでいても地震には備えておいた方がよいと思います。

【活動報告】真砂の城山で地質と自然観察の学習会を開催しました

まさ土の塊を壊してどんな石が含まれているか調べているところ

 益田市馬谷町では、良質の真砂土が取れることで知られています。
 実は、地質図を見るとこの地域だけ真砂土で構成された少し不思議な場所になっていて、ここだけこの地質になった理由は諸説あってよくわかりません。
 真砂土は花崗岩が風化してできたもので、災害時には、水を含んである瞬間一気に崩れてしまう非常にやっかいな性質も持っています。
 庭土などに使われることから分かるように、水を含み水を保持する能力も持っており、広島などの土砂災害は地質がこの真砂土であったことが一つの原因として考えられています。
 今回選んだ城山と呼ばれる山は別称高嶽山ともいわれていて、中世の頃には城が築かれていたそうです。
 久しぶりに晴天だった4月11日に、会員様と一緒に自然観察、地質観察をしながら山頂まで登山をしました。

 春の山野草であるゼンマイやワラビ、アザミやスミレ、その他の花々を眺め、食べられる山野草の見分け方を確認したり、道ばたのスイバを囓ったりしながら、ゆっくりと登山をし、途中花崗岩でできたコアストーンなども確認。


 結構急な上り坂や城だった頃の堀割、倒木やキノコなどもあって、里山でありながらいろいろと登山の楽しみを味わうこともできました。
 史跡としてはあまり知られていないこの山ですが、山の恵みや土地の形成、そして地域と山が共存していることがよくわかる学習会。
 予定よりは遅れたものの、無事に下山まですることができました。
 今回参加して下さった皆様にお礼申し上げます。

普段使う道の安全点検

例えば、こういった道で地震に遭遇したとしたら、あなたならどうやって身を守りますか?

 新学期になり、入学式もあり、さまざまなところで生活環境が変わっている方も多いと思います。
 住むところや通勤・通学路が変わった方もいるのではないでしょうか。
 せっかくなので、散歩や周辺の調査も兼ねて、お住まいの地域や通勤・通学路の安全点検をしておくことをお勧めします。
 普段はあまり意識しない道路ですが、よく見ると同じ道路でも安全な場所危険な場所があることに気づくと思います。
 危険な場所は誰でも気づくと思いますが、身を寄せることのできる安全な場所は、点検のときでも案外と見落としていたりするものです。
 安全点検では、危険な場所、安全な場所、そして役に立ちそうなものを見つけて確認していきます。いざというときにいきなり安全な場所や役に立ちそうなものを見つけるのは難しいですから、最初にしっかりと調べておいて、いざというときに備えておきたいものです。
 また、もしお子様がいらっしゃるのであれば、ぜひ一緒に通学路の点検をしておいてください。そうすることで、安全や危険について同じ目線を持つことができます。
 災害が起きたとき、どこでどうやり過ごし、どこで合流するのか。
 常に大人の目があるとは限りませんし、周囲の大人が正しい判断をするとも限りません。
 どんなに小さくても、自分の判断で自分の命をしっかりと守れるように、しっかりと安全点検をしておいて欲しいと思います。

【活動報告】秋吉台でカルスト台地について学習しました

湧水の流れる川に自制する「ベニマダラ」を確認している様子

 あいにくの荒天の中でしたが、去る4月4日に山口県美祢市にある秋吉台及びその周辺でカルスト台地について会員向け学習会を行いました。
 最初は別府弁天池にて湧水と、それに伴うマスの養殖や普段あまり見ることのできない「ベニマダラ」という藻類の自生している様子を見学しました。


 その後、秋吉台科学博物館に移動して秋吉台の形成や生態系、植生について学習し、ニャンモナイトやパンモナイトといった珍種の化石(?)も見ることができました。
 昼食後は天候が回復してきたので長者原に移動して、冠山、北山、長者原を回り、石灰石や秋吉台について体感してもらいました。

山焼きの後だったこともあって非常に見晴らしが良かった。でもかなり寒かった!

 それから秋吉台エコミュージアムで鍾乳洞などのでき方や秋吉台の成り立ちを再確認した後、景清洞で実際に鍾乳洞に潜って学習会を終了しました。
 なかなか雨にたたられて思ったようなフィールドワークができていない現状ではありますが、さまざまな地形を見て確認し、考えることは重要だと思っていますので、今後も開催していきたいと考えています。
 今回ご参加下さった皆様に感謝します。

島根県土砂災害予警報システムが新しくなりました

 市町村が発表する避難情報は、国や県の水防情報や土砂災害警戒システム、気象庁の情報などを総合検討して出されています。
 そして、災害対策基本法では、災害対策は市町村がその責を負うこととされていて、避難情報自体は市町村が発表を行います。
ただ、同じ情報を見れば市町村が発表する避難情報の前に行動を開始できるかもしれません。
また、避難情報は地区を指定して面で発令されますが、あなたの避難はあなたが住んでいる場所や条件によってかなり変わるということを知っておきましょう。
居住環境から考えて避難が必要ないのに、全域避難勧告が出されたからといって避難中に遭難してしまうような事例もあります。
市町村を始めとする行政は地域という面で考えますが、あなたの安全はあなたがいる場所を点として考える必要があるのです。

さて、ではどうやって情報を集めればいいのか。
最近では県や国、市町村などでも判断を行うメタ情報を積極的に出すようになりました。
例えば、水防情報システムを見れば近くの川の水位や増水の傾向がわかりますし、雨雲レーダーや降水予想を見ればどれくらい雨が降るのか、どれくらいの時間続くのかがわかります。
土砂災害に関していえば、土砂災害警戒システムを確認すれば、雨の降水量や累積雨量から危険度を発表しているので、住んでいる地域の情報を見て早めの避難が可能になるわけです。
今回は島根県の土砂災害予警報システムが更新され、より見やすくなったというお知らせです。
今までパソコン前提で作られていたサイトでしたが、新たにスマートフォンや携帯電話用のサイトも作成され、多言語化にも対応しました。
地図も見やすくなっていて、スマートフォンの場合にはGPSが有効であればあなたのいる位置を中心とする地図が表示されます。つまり、あなたのいる点を中心とした状況が確認できるということです。
幸いにして、まだ雨のシーズンには早いですが、一度サイトを確認してみて、新しい土砂災害予警報システムの使い勝手を確認してみて下さい。

島根県の土砂災害予警報システム(パソコン版のサイトへ移動します)

地盤改良と軟弱地盤

 水の浸透しやすいところや埋め立て地、池や沼だったところなど、他の土地に比べると災害の起きやすい地面を軟弱地盤と呼びます。
 この軟弱地盤に家などの構造物を作る際には、できる限り地盤調査をし、場合によっては地盤改良をする必要が出てきます。
 これは建物がいくら耐震強化していても、地盤が弱いと建物ごとひっくり返ったり地盤に引っ張られて壊れたりしてしまうからです。
 とはいえ、口で説明してもなかなかイメージが伝わりにくいのも事実です。
 プリンを使った地盤の実験をしてみましたので、興味のある方はぜひご覧下さい。

避難計画を作ってみよう

前段となる防災マップ作りの一コマ。

 避難計画を作るときは、まず避難経路の検討をするところから始めましょう。
 ただ、前提条件として「全ての災害にオールマイティで使える避難経路はほぼ作れない」ということを知っておいてください。
 その前提を頭の片隅に置いた状態で、とりあえず避難経路を一つ作ってみましょう。

1.防災マップ(避難経路検討用の地図)を作る

 避難経路を決めるときには、住宅地図にハザードマップと避難所の位置を落とし込むところから始めます。
 ハザードマップは面で作っていますが、住宅地図は点で見ることができるので、重ねることで自分の家や周囲の状況が一目でわかります。
 できればこれに標高の色分けを加えると、非常に使いやすい防災マップができあがります。

2.防災マップで家と周囲の避難所の位置関係を把握する

 できあがった防災マップを見て、家と避難所の位置関係及びその間にある障害を確認します。
 崩れそうなところ、水没しそうなところを確認し、避難しやすそうな避難所があるか確認してみます。
 どの避難所も避難するには危険だと考えた場合には、近くの安全そうな場所に一時避難を考えるか、あるいは早めの避難行動開始を検討することになります。

3.避難経路の線を引いてみる

 決めた避難先までの経路を地図に落としてみます。

4.実際に決めた避難経路を歩いてみる

 作った地図を片手に、実際に作った避難経路を歩いてみます。
 実際に歩いてみると、図上では気づかなかったマンホールや側溝、古い家屋やブロック塀が案外多いことに気づくと思います。
 それを地図に落とし込んでいき、地図だけではわからない情報を調べていきます。

5.実際に歩いてみた情報を元に、災害ごとの避難経路を考えてみる

 現地を見て得た情報を使って、想定される災害ごとに危険だと考えられる場所を避けるような経路を考えてみます。
 危険だと考えられる場所を決めるときには、どういう理由で危険なのかを整理しておくとそこを避けるべき災害がわかります。
 例えば、マンホールだと蓋が外れた状態が見えないことにより中に落ちる危険性があります。蓋が外れているかどうか確認できない状態ではそこは避けるべきということになりますから、地震だと夜間、水害では危険だということがわかります。
 こうして整理していくと、考えられる安全な経路がいくつか見えてきますので、災害時にはそこを避難すればある程度安全が確保されるわけです。

 実際に作ってみると、最初に想定していた避難経路が非常時には使えないということがわかることが多いです。
 図上と実地調査、どちらも重要なものですから、しっかりと確認しておきましょう。
 そして、一度作ったら終わりではなく、最低でも年に1回は実際に避難してみて、問題なく避難ができるかどうかを確認するようにしましょう。