常備薬をどうするか?

お薬手帳の表紙
よくあるお薬手帳。スマホ用アプリも出ているのでそれを使うのもいい。

 さまざまな持病を持っていて、普段の生活で薬が必要な人はそれなりにいるのではないでしょうか。
 大規模な災害が起きると、医療設備が破壊されたり使えなくなったりします。
 医療者はいても資機材がなければ医療処置はできませんから、本格的な医療行為は資機材がそれなりに手当てされてからのことになります。
 さまざまな薬の流通が再開されるまではそれなりに時間がかかるので、その間に薬により病気の重篤化が防げていた人の病状はどんどん悪化していくことになります。
 そんなことにならないように、持病を持っている人は自分が避難するときに備えて薬を1週間程度備蓄しておくことと、万が一に備えてお薬手帳のコピーを持っておくことをお勧めします。

 筆者も持病を持っていますが、あらかじめかかりつけ医に相談をして、1回だけ1週間分多めに処方してもらっておき、薬をもらうたびに入れ替えていくローリングストックで使用期限を維持しています。
 もしも薬が切れた場合でも、お薬手帳を見ればどのような薬が処方されていたかわかるので、逆説的にその人の病気がわかることになり、医師であれば適切な処方をすることが可能になります。
 最近ではスマホなどのアプリでも電子お薬手帳がありますから、そういうのを利用すれば荷物を増やさずに自分の医療情報を持ち歩くこともできます。

 特殊な薬が必要だったり、特定の医師が診た方がよい病気だったりするなら、平時にかかりつけ医以外でその病気を見ることのできそうな医師をかかりつけ医に確認しておくことが大切です。
 持病のある人やさまざまな理由で医療支援が生活の一部になっている人は、被災したら速やかに被災地域外に広域避難して、自分の病気が悪化しないために被災していない医療機関に支援をしてもらってください。
 そうすることで、自分の命を守ることができるだけでなく、被災で医療体制が悪化している被災地の病院の負荷を減らすことができます。
 今の日本ではなかなか広域避難という発想にならないかもしれませんが、万が一に備えて、準備だけはしておくようにしたいですね。

非常用持ち出し袋と筆記用具

普通の人にはあまりおなじみでないダーマトグラフ。ざっくりなイメージではクレヨンの芯に薄い紙が巻き付けてあって、糸を引いて芯を出していく筆記具。いろんなものに書けるので便利だが、小さなメモ帳に核のには向かない。

 非常用持ち出し袋に必要な資材を示したリストには、多くの場合メモ帳と油性ペンなどの筆記具が入っています。
 一見なんに使うのか分からないアイテムなのですが、これは避難後に大活躍するアイテムですので、必ず非常用持ち出し袋に入れ、折に触れてきちんと書けるかどうかのチェックをしておいてください。
 メモ帳は、さまざまな伝言や避難所などのスケジュールの聞き書き、場所取り、記録などさまざまなことに使います。緊急連絡先なども忘れないように書き留めておくと、あとで非常に助かることがあります。
 筆記具では油性ペンが大活躍します。印をつけたり、記録を取ったり、油性ペンの性質上、さまざまなところに書けますので、もしも紙が無くてもその場にある物がメモ帳代わりになることもあります。
 メモ帳はあると助かるというアイテムですが、油性ペンや鉛筆などの筆記具は無いと困る物の一つです。
 準備が面倒くさいという人でも、最低一本は何か書くことのできる道具を準備しておきましょう。これがないと連絡一つ取るのにも大変な苦労をすることになります。
筆記具で言うと油性ペンが万能に思えるのですが、残念ながら濡れている面には書くことができません。そのため、濡れている面にも書くことのできる鉛筆やダーマトグラフ、クレヨンなどを一緒に入れておくと便利です。
 いずれにしても、非常用持ち出し袋だけでなく防災ポーチや備蓄品の中にも、メモ帳と筆記具を忘れないように入れておきましょう。

非常用持ち出し袋に一枚「巻きタオル」

巻きタオル。筒にしても使えるしバスタオルとしても使える。何気に便利なタオル。

 「巻きタオル」というのをご存じですか。小学校などの水泳の前後に着替えに使っていた人もいると思いますが、大きなバスタオルで筒にできるスナップボタンがついていて、首から落ちないように上側になる部分にはゴム紐が入れてある着替えもできるバスタオルです。
 「ラップタオル」という呼び方もされるようですが、非常用持ち出し袋にこれが一枚はいっているといろいろと使えます。
 用途通りに身体を拭いたり、この中で着替えをしたり、防寒着になったり、広げるとちょっとしたタオルケットになったりもします。丸めれば枕、紐や洗濯ばさみを使えば間仕切りや簡易カーテンにもなりますし、見せたくない洗濯物を干すときのカバーとしても使えます。
 お値段もそんなに高くなく、非常用持ち出し袋から溢れてしまうような大きさでもありませんので、非常用持ち出し袋に一つ入れて置いてはいかがでしょうか。
 非常用持ち出し袋に入れる前には、一度サイズが自分に合うかは必ず確認してくださいね。また、子どもさんの非常用持ち出し袋に入れる場合には、定期的にサイズ合わせすることをお勧めします。
 身体の大きさがきちんと隠れるサイズの巻きタオルでないと、いざというときにこまったことになりますから、それだけはご注意を。

ダーマトグラフは便利な筆記具

 先日、とある防災用品セットを見る機会があったのですが、その中でちょっと興味を引かれた道具がありました。
 それは「ダーマトグラフ」と呼ばれる筆記具なのですが、これ、どれくらいの人がご存じでしょうか?
 イメージとしてはクレヨンに近いのですが、あんな感じの太めの芯に紙でできた軸が巻き付けてあり、芯がちびると、軸をひもで裂いて新しい芯を取りだして書く構造になっています。

ダーマトグラフの黄色。つるつるした面に書けるため、印刷屋さんや眼鏡屋さんなどで見ることがある。

 このダーマトグラフ、割とどんなものにでも文字や絵が描けて非常に便利なのですが、芯が太いためにノートなどに書き込むには不向きです。
 ただ、小さく文字が書けないということは誰にでも読めるサイズの文字を書くということにもなり、これで書いた文字は簡単に読み取ることができるというのは、非常に災害対策向きだなと思いました。
 よく、防災の本などには油性ペンを入れるように書いたものがありますが、油性ペンでは苦手な濡れている面やすべすべしたところにもこれなら書くことができます。
 逆にしっかりと定着はしないので、こすれたりすったりするような場所に使うには不向きです。
 窓ガラスやつるつるした壁に文字が書けて、ティッシュペーパーなどで簡単に消せるので、一本あるといろんなことに使えそうです。
 インクは使っていないので乾燥を気にする必要はありませんし、色もそれなりにあるので、使い分けも簡単です。
 あまり知られてはいない筆記具だと思いますが、非常用持ち出し袋の中にいれる筆記具の一つとして、これを準備してみてはどうでしょうか。