防災に取り組む理由・取り組めない理由

 災害列島と呼ばれ、毎年複数箇所でさまざまな災害に見舞われている日本列島に住んでいるのに、どういうものか毎回逃げ遅れや悲惨な避難所の話が出てきます。
 耐震補強やタイムラインなどを整備し、非常用持ち出し袋の準備や避難経路を決めておくなどの作業をしておけば自分が助かるのに、どうして同じことが繰り返されるのでしょうか。
 いろいろな被災者の方の書かれたものを読むと、「まさか自分が」や「考えてなかった」といった言葉があちこちに出てきます。逆に備えていた人は「当たり前のことを当たり前にやった」といった言葉が出てきます。
 同じ地区で隣同士に済んでいても、対応が真逆になることも多いのです。
 内閣府防災の調査では、災害に対する備えについての質問に対して約半数の人が「何も準備していない」と回答しています。
 今まで日本は「空気と安全はタダ」という認識でしたからそれも仕方がないことなのかもしれません。政治や行政も住民に対して良いことばかり行ってきた結果でもあると思います。被災したら行政が全て面倒を見てくれると思っている人もいるそうですが、行政はいちいち一人一人の面倒など見てはくれません。
 阪神淡路大震災から後、政府は3日分生活できるだけの物資を各自で準備するように方針を変えました。東日本大震災の後は、1週間分程度準備した方がいいかもしれないという風に変わってきています。
 つまり、自分の命は自分で守るしかないのですが、いつくるかわからない災害に備えるというのは、優先度をどのようにするのか判断に迷うこともあると思います。
 防災対策は普段は取り組んでいても取り組んでいなくても目には見えないしわからないものです。準備や訓練をしている姿を見られるのがかっこわるいということもあるかもしれません。でも、一度被災してしまうと、備えていた人とそうでない人は明確に差が出ます。備えていた人の復旧・復興はかなり早いですし、すべきことが整理されているので無駄もありません。逆に備えていない人は、まず何が起きているのかの把握から話が始まるので、初動が遅れますし見える世界は全てネガティブなものですから絶望にとらわれてしまうことも多いと思います。
災害後に自殺する人が増えるのは、先の展望が見えないせいが大きいと感じていますが、災害なんかで死なないためには、あらかじめ準備して備えておくことがかなり重要なのではないかと思っています。
 いつ起きるか分からない災害に備えることは、あるいは無駄になるかもしれません。でも、万が一に備えて準備しておくことが自分を助けることになる。
 できない理由、やらない理由はいくらでもあげられると思いますが、やる理由、やれる理由を探して備えておくことが大切なのではないかと思っています。
 ただ、被災した人であっても備えていない人もたくさんいますから、そういう人にやる気になってもらうのはなかなか難しいなとも思いますが。