行かないという選択肢

 台風15号は首都圏にさまざまな有形無形の被害を与えたようです。
 今回、首都圏の鉄道会社は事前に計画運休する旨を告知していましたが、蓋を開けてみれば運休していることを知らずに駅にやってきた人がたくさんいました。
 速報値のようですが、首都圏全体の6割の会社や学校が計画運休に対してどのように対応するのかという指示がされていなかったそうです。
 去年関西で続いた地震や台風で企業や学校の災害時対応が騒がれたところですが、今回もやっぱり指示なしによる通勤通学難民が大量発生してしまいました。
 テレビやラジオのニュースでは「情報が提供されていない」と騒ぐ人たちが取り上げられていましたが、果たしてどこまで情報提供すればこの人達は納得するのだろうかとかなり疑問に感じています。
 それはともかく、台風が来るということと、鉄道が計画運休するということは事前にわかっていたのに、そして強風吹きすさぶ中、駅に向かって移動して動きの取れなくなった人たちは何を考えていたのかと言うことに興味があります。
 発表されているさまざまな情報が自分に影響があるという意識ができないということ、言い換えれば「全ての事実は他人事」なのかなと感じます。
 もっとも「計画運休時は休んでよし」と言えない企業や学校に基本的な問題があります。
 安全を意識して「行かない」という選択をしたら、後になって「何故来なかった?」と言い出しかねない風土が、通勤通学難民を生み出す大元になっているのかなと思います。
 社員や学生の安全を意識できないような企業や学校は、このご時世ではこの先、おそらく生き残ることは無理でしょう。
 社員や学生を危険にさらし、社会的インフラに負担をかけ、さらに社会インフラを維持するため出勤する人たちをも妨害している状態が果たしてまともなのでしょうか。
 鉄道も無意味・無計画に計画運休しているわけではありません。
 計画運休するのは、乗客の安全を確保し、災害発生後の復旧を手早くするために行うものです。
 その意味がわかれば、社員や学生を交通手段の途絶している中、通常どおり来させるという行為がいかに無謀かということが理解できるのではないでしょうか。
 今後しばらくは、災害は増えることはあっても減ることはありません。
 そろそろ企業や学校、そして自分自身も災害時対応計画を作って、計画運休時には不要不急の出社や登校はやめるということを決めておく必要があるのではないでしょうか。