間違えやすい生き物たちと防除

 家庭菜園などを荒らす生き物が出ると、その対策をする必要が出てきますが、その際に重要となるのは荒らしている敵を知ることです。
 当研究所にご相談いただいたとき、現地の痕跡や被害にあったもの、場合によっては監視カメラなどでそれが何かを判定していますが、相手を特定しないと効率的な対策が取れません。
 荒らしている相手を特定して、相手に応じた対策を取らないと、対策をしても意味がないと言うことになりますので注意が必要です。
 今回は石西地方で家庭菜園に出没する、見間違えやすい動物についてご紹介します。   使っている写真はいずれも大田市の三瓶自然館サヒメルに展示してある標本です。

1.タヌキ

 人里周辺の雑木林や藪林に住んでいます。木登りは得意ではありませんが、ある程度登ることはあるようです。
 雑食性で、木の実や果実、昆虫や小型動物の他、ゴミや残飯なども食べます。
特徴的なのはため糞をすることで、被害地の周辺を探してこれがあるとタヌキの犯行と予測することができます。
 後述のアナグマやアライグマとよく間違われます。

顔:目の周りが黒く、アライグマと間違われることが多いです。
体色:濃い茶色のことが多いです。
尾:太くて短め、縞模様はありません。尾が縞模様だと、アライグマになります。

2.アナグマ

 人の住んでいるところの近くの雑木林や藪林に住んでいて、よくタヌキと間違われる生き物です。
 雑食性で、人家の周辺ではゴミや残飯なども食べます。
 名前のとおり、頑丈な爪で穴を掘って生活しており、場所によっては何世代にもわたって掘られた穴に住んでいることもあります。
 木登りはへたくそですが、太くて短い足と長い爪は穴を掘ることに非常に向いています。

顔:目の周りが縦長で黒くなっています。
体色:薄い茶色
尾:割と細くて短く、縞模様はありません。

3.アライグマ

北米原産でとあるアニメブームで日本に入ってきたものが野生化した特定外来生物です。
見た目は非常にかわいいのですが、凶暴で危険です。
雑食性で運動能力も高く、水が平気なことから昆虫や小型動物だけでなく水中に住む両生類や魚もえさになります。
木登りが得意で、器用な前足を持っており、わずかな隙間からでも侵入することができます。

顔:眉間から鼻筋にかけて黒くなっています。
体色:茶色から灰色まで茶系統でさまざまな色があります。
尾:長くて太く、縞模様がある。

4.ハクビシン

外来生物か在来種かで揉めることもある小型の動物です。
木登りが非常に得意。住宅の屋根裏を巣にすることがあり、糞尿による悪臭や足音による騒音が起きることがあります。
植物中心の雑食性で、果樹が好物であることから、果樹園などで被害が起きることがあります。

顔:ハクビシンという名前のとおり、おでこから鼻にかけて白い筋が通っています。
体色:頭部は黒、胴体部は灰色から薄茶色であることが多い。
尾:細長く、尾の根元から少し離れると濃い色に変わる。

それぞれに特徴があって対策も異なるのですが、共通する対策は次のとおりです。

1.えさを与えない

 野生動物は基本的にえさがあるのでやってきます。
 えさがなくなれば来なくなりますので、収穫物は全部採ること、生ゴミや摘果した作物を放置しないことが大切です。
 また、餌付けは絶対に止めましょう。


2.防護柵の設置

 野生動物のえさは人間にとっての収穫物でもあるので、撤去ができない場合もあると思います。
 その場合は、収穫までの間収穫物の周囲を防護柵で囲ってしまうのが一つの手です。
 ただ、トタン柵もメッシュ柵もちょっとした足場などがあると登って突破されてしまうので、防護柵を設置するときには注意が必要です。
 電気柵を正しく張るのが一番効果的ですが、張り方にコツが必要なのと、導入費用がある程度高くつくのが難点です。
 たまに家庭用電源から直結して電気柵を作る人がいますが、誤って人が触れると死んでしまうことがありますので絶対に止めてください。

3.生息場所の撤去

菜園の周囲の見通しがよいと、野生動物は警戒しますので、周辺の草刈りや藪の撤去、山の抜開などをすると効果が大きいです。
家の屋根裏や床下などに巣を作ることがありますので、定期的に点検して穴を塞ぐようにしてください。

4.捕獲

上記の3つをやっても駄目なら捕獲という手段を使います。捕獲では小型の箱わなを使うようにしてください。
箱わなを設置しても、猫など駆除対象の生き物以外もかかることが非常に多いので、毎日の点検と管理は欠かせません。
また、一定の条件を満たしていない場合には必ず有害生物捕獲許可が必要になりますので注意が必要です。

 収益を得るための農業であればともかく、家庭菜園にはなかなか手がかけられないかもしませんが、これらの生き物を放置すると数が増えて手に負えなくなってきます。
 見かけてから対策をするのではなく、いるかもしれないと思って事前に対策をしておくといいのではないでしょうか。

 有害生物対策で詳しいことが知りたいと思った方は、島根県中山間地域研究センターのウェブサイトをご覧ください。


各種の対策パンフレット(島根県庁中山間研究センターのウェブサイトへ移動します)