災害後は人間関係が極端化する

 災害が起きた後、被災地域を中心としてDVなどの暴力は増加する傾向があります。その暴力は、見知らぬ関係ではなく、よく知っているはずの夫婦、家族や兄弟、近所の人など、顔見知り同士であることが多いようです。
 犯罪に関していえば、家屋侵入を除くとどちらかといえば減少傾向(平成23年度の犯罪情勢ー警視庁)ようなので、災害によって人心がすさんだ結果というわけでもなさそうです。
 ただ、さまざまな報告書を見ていくと、一つの傾向として「それまでの人間関係で押さえてきたものが噴き出した」ような印象を受けます。
 暴力を振るっていた人がひどくなるのはなんとなく予想ができますが、それまでおとなしく家族思いだったお父さんが災害後には家族に暴力をふるったり、自分以外の家族にお金を渡さないといった事態が起きて、突然変貌したお父さんに家族が戸惑うというケースがたくさんあったようです。(「減災と男女共同参画研修推進センターの記事」より)
 これは普段何があっても文句の言えず家族の意見に従っていたお父さんが、災害による不安やストレスで抑えが効かなくなったのかもしれません。
 普段自分の感情や思いを押さえ込んでストレスをため込んでいる人は、災害という大きな外部ストレスに耐えきれず、感情や衝動に抑えが効かなくなってしまうことが起きます。つまり、普段の生活の中で我慢していたちょっとしたことの積み重ねが爆発してしまったといってもいいでしょうが、こうなってしまうと、それまでの生活を取り戻すことは不可能に近いですから、そうなるまえに対策をしなくてはいけません。
 その対策はたった一つ。「普段から夫婦や親子間で腹を割ってしっかりと話し合うこと」です。
 これにより、普段の生活にはちょっとした波風が立つかもしれませんが、ストレスの蓄積をなくすことで災害という極端に大きなストレスに耐えることが可能になります。また、普段から家族同士がしっかりと話し合えてれば、そこまで極端な不安に陥ることもないと思います。
 災害後には、普段我慢しているさまざまな人間関係への思いが一気に噴き出してきます。そうならないためにも、節度は絶対に必要ですが、夫婦、家族、兄弟同士でお互いに言いたいことが言える環境を整えておくことが大切です。

2019年10月29日追記
 今回引用した「平成23年度の犯罪情勢-警視庁」では検挙率も低下していることが書かれていますので、実態としてどうだったのかということには議論の余地があると思います。
 また犯罪が減少した理由として「みんな我慢している」という妙な連帯意識による窃盗や性犯罪の隠蔽もあるのではないかという気がしますが、ここではそこには触れていないことを書き添えておきます。