わかっていることとわかった気になっていること

 どんなジャンルにもその道のプロと言われる人がいます。
 防災という分野でも、たくさんのプロ講師がいて、日々日本中を駆け回って講演会をやっています。
 有名どころの人の講演会を聞くと「なるほどな」と思うことも多いのですが、1時間もたつときれいに忘れていたりする自分がいて、それはどうしてなんだろうと考えてしまうことがあります。
 一つには、その人の講演が上手にまとまっていて、疑問を挟む余地がないので記憶に残らなかったことなのかなと思います。
 それから、そういった人の講演会は全国や日本という大きなくくりの話になりがちのため、目の前の自分の地域や自分のいる場所に落とし込めておらず、自分のことになっていないこともあるのかなと思います。
 地域のことにしっかりと災害対策を落とし込むためには、長期戦でじっくりと、災害対策がその地域にとっての当たり前になるまでやり続ける必要があります。
 年に1回くらい「いい話」を聞いても、最終的にわかった気になっているだけで自分事になっていないため、毎年やっても状況が変わらないということはあるのかもしれません。
 では、本当にわかってもらうためにはどうすればいいのかというと、偉くて有名な人を呼んできて講演をやってもらうよりも、地域に根差した防災活動をやっている人と一緒に地域の防災対策をやり続けることではないか。
 実はこれは非常に難しいことで、片手間にできることではないですし、やり続けることはもっと難しいように思えます。
 ただ、災害対策として取り組むのではなく、地域づくりの一つとして地域活性化の一つの手段にしてしまえば、地域づくりをする限り災害対策は進んでいきますし、忘れられることもないと思います。
 行政機関も自治会も、災害対策の定義を一度考え直して、地域がどうあったらいいのかをしっかりと考えることがわかっていることという状態にするには必要なことではないかと思います。