防災に完全なマニュアルはない

 防災については最近どうやら流行のようで、本屋さんやネット通販でもさまざまな本や道具が販売されています。
 「これがあれば大丈夫」とか「こういうときはこうする」などといったテクニックや災害時の行動マニュアルもずいぶんと紹介されるようになりました。
 ただ、ちょっと気になるのが、ノウハウ系、マニュアル系の本が増えるに従って、「こうしなければならない」という風潮が出てきているように感じていて、それはどうなのかなと思っています。
 もちろん、当研究所の研修会でもさまざまなノウハウはお伝えしますし、基本的な考え方自体は変わらないので「このときはこうする」というお話もしているのですが、前提なるものを必ず最初にお話ししています。
 それは、「何のためにそれを行うのか」「何のためにそれを準備するのか」を考えてもらうということ。
 毎度書くことですが、例えば市販品の非常用持ち出し袋をあなたが買ったとして、それで備えが充分かというとそんなことはありません。
 人の数だけいるものいらないものがある。そう考えると、市販品の非常用持ち出し袋はあくまでも基礎的なアイテムで、それにプラスして自分に必要なものを加えたり、必要ないものを外したりしてカスタマイズする必要があると言うことです。
 もっと書くと、都会では水や食料をしっかりと準備しないといけませんが、田舎だとわき水や井戸、貯蔵している米、野菜があったりして、そこまで優先度が高くないこともあり得ます。
 また、洪水では垂直避難もありだとされていますが、海抜0m以下のところだと、洪水が起きると3階建ての最上階でも水没することが起こり得ますし、富士山のてっぺんで洪水対策を考えるのはナンセンスです。
 ノウハウやテクニックがいけないというわけではありませんが、状況と置かれた環境によって、自分に必要な行動や準備はかなり異なってきます。
 マニュアルに書いてあるとおりにしたからそれで大丈夫ではありません。
 ノウハウ本やマニュアル本はあくまでも参考にして、自分の置かれている状況や環境を考え、その上で、自分にあった備えや準備をするようにしてください。