危険を体験しておく

 人間という生き物は、自分の経験則の中から現在の状況を推測して行動しようとする癖があります。
 一度にたくさんの情報を処理し、行動しなくてはいけないところからそういう癖があるらしいのですが、自分の経験則が少ないと経験豊富な人から見たらありえないようなミスをすることがあります。
 大人から見て子どもが危なっかしく見えることを考えればこの意味がわかると思いますが、さまざまな経験をすることは自分の判断や行動をより安全なものとするために絶対必要なものです。
 「危険がある場合にはそこから遠ざける」ことが現在の日本の多くの人の行動原理となっていますが、危険から遠ざけられて実際にその危険を体験していない人は、そもそも何が危険なのかがわからないという事態が起こり、避難が必要なはずの地域に住んでいるのに避難しなかったり、危険な場所に家を建てたりしてしまうのが現状です。
 自分が子どもの時に自分以外の誰かが危険から守ってくれていたことが原体験となってしまい、大人になっても自分で危険性を考えること無く、誰かが自分を危険から守ってくれると思い込んでしまっているのではないでしょうか。
 ただ、経験を積めばよいというものでもありません。自分の過去の経験で絶対にここまでは津波がこないと思い込んでいた場所が津波にのまれてしまった東日本大震災のようなケースがあります。災害の場合には自身の経験だけで無く、歴史からも学んでおく必要がありますが、ともかく知っておくことが一番大切なのだと思います。
 ところで、ここ最近でずいぶんとさまざまな災害を体験できる施設や装置が増えてきていますが、あなたはどんなものを体験したことがありますか?

 例えば、起震装置による地震体験。最近は装備も改良されて過去に起きたさまざまな地震を再現できるようなものも増えています。海溝型と直下型の違いが体験できるようなものもありますので、一度経験しておくと本番では慌てなくてすむと思います。
 また、消火器の使用訓練。消火器はいざ使おうと思ってもなかなかうまく使えないものですが、職場や地域の防災訓練等で使い方の訓練を受けておくと、いざというときに迷わず使うことができます。また、お近くで実地訓練が無い場合には、せめて映像による消火器の使い方の説明だけでも確認しておきましょう。(リンク先は福岡消防局のものです)
 他にも煙の中の避難が体験できる煙ハウスや、水害や津波が体験できるVRなどもありますので、そういったもので実際に起きたらどのような感じになるのかを体験し、経験して考え、本番に備えていくのがよいと思います。
 本来は、裸火や刃物なども実際に体験しておいた方がいいのですが、極端なまでに治安維持に傾いているこの国では、そういったものは生活から遠ざけられているのが実際です。
 ちょっとした時間を作って、たき火OKな場所でたき火をしてみたり、ナイフを使っていろいろな道具を作ってみたりすることも経験しておくことで、火や刃物の便利さと怖さを知ることが出来、生きた危険対策をすることができるのではないかと思います。
 体験したことのないものは、その危険性も理解できない。
 そのことを頭の片隅においていただき、機会を作ってさまざまな体験をしていただければなと思います。

 そういえば、最近はやっている着衣水泳体験のおかげで、子どもの川での溺死が急速に減ってきているという内容が書かれていたのを見つけました。
 大人の溺死者はあまり変わっていないそうなので、今後は大人も着衣水泳体験をしていく必要があるのだろうなと思っています。
 手前味噌で恐縮ですが、2019年7月28日に当研究所でも「大人の着衣水泳体験会」を益田スイミング様にて開催する予定になっています。
 危険を体験するという内容の一つとして、お近くの方は参加されてはいかがでしょうか?
 申し込みは益田スイミング様受付、または当研究所へのお問い合わせフォームにて可能ですのでご案内させていただきます。