避難時の思わぬトラブル

 避難訓練と実際の避難で違っていたなと考えるのに、家に残していく大切なものをどうするか、ということがありました。
 避難訓練では何を置いてもまず避難となりますが、実際の水害で災害発生までにまだ余裕があると思うと、避難の前に自分にとって大切なものをできるだけ上階に避難させておきたいという感情が働くようです。
 今回は時間にかなり早い段階で家族での避難判断をしたのですが、避難判断をしてから避難準備完了までに実は40分かかっています。
 その理由は、子ども達が自分にとって大事なものを上階に避難させていたから。
 「大事なもの」の定義がみんな違っているのはいいのですが、大事なものが何かと考え込んでしまって行動が遅くなったということもあったようです。
 非常用持ち出し袋は準備していたので着替えを入れたら終わりだったのですが、考えついた自分にとっての大事なものをあれこれと上階に避難させているうちにそれだけの時間がかかってしまいました。
 その様子を見ながら、自分にとって大事なものをきちんと決めておくこととそうでないものの整理を普段からしておかないといけないなと感じました。
 避難先から帰宅しての反省会では、自分にとって大事なものは何かを決めておくことと、それ以外はあきらめることを確認し、次回があればそれを実践してみることになりました。
 水害では、氾濫危険水位から実際の氾濫までそれなりに時間の余裕が作られています。本来それは避難用の時間なわけですが、中途半端に時間があると、逆にあれこれ考えてしまって手遅れになってしまうのかなと感じました。
 そういった意味では、避難判断から避難開始の間の最大所要時間を決めておき、それを過ぎたら問答無用で避難開始でもいいのかもしれません。
 今後家庭で行う避難訓練では、実際に大事なものを上階に避難させる訓練も取り入れた方がより実戦的になるのかなと思いました。

避難所での服装

 避難所での女性の服装。
 大規模災害が起きる度にさまざまな物議を醸している問題ですが、今回避難をしてみて思ったことを書くと、「他人の目は防げない」ということです。
 防災関係の本を紐解くと「目立たない格好をしよう」とか「一人にならないように」とか、すごいのになると「女性とわからない格好をしよう」と書かれているものまであります。
 でも、ある意味ではこれは正しいと思います。
 特に普段年頃の女性に接することのない人は、どうしても目で追いますし、どうかするといやらしい視線になることもあります。
 中には妄想全開な方もいますので、そういう人にはいくら理屈で説明しても無駄ですから、やはり自衛するしかないというのが正直なところ。
 目立たない服装にするかどうかはともかく、できるだけ肌の露出が少ない格好をしたほうがよさそうです。
 見るなといっても自然と目が向いて見てしまうものです。言い過ぎると言い過ぎると喧嘩になって殺伐としてしまいますし、ヘタすると恨みも買います。それよりも最初から見せない方に力を入れる方が建設的で角が立たないと考えます。
 避難所生活は非常事態ですから、おしゃれしたい人は、可能な限り早めに退去したほうが精神衛生上いいのかなという気がしています。

内水氾濫に気をつけよう

内水氾濫で池になった田

 先日の大雨でも、いくつかの場所で内水氾濫が起きていました。
 大雨が降って排水ができなくなり、排水路から溢れた水によって冠水してしまう状態になるのを「内水氾濫」といいますが、最近これが増えてきている気がします。
 河川の水位が上がると排水のための樋門を閉鎖し、河川から水が逆流しないように対策をして、代わりに排水ポンプを使って河川に水を排水していきますが、ポンプの排水量よりも流入量の方が増えて水が溢れ、土地が冠水してしまうことが起きています。
 堤防が切れたりすることにより発生する河川氾濫は外水氾濫と呼ばれて区別されているのですが、住んでいる人から見れば水没している状態に変わりはありません。
 ハザードマップや国土地理院の地図を使うと水の集まりやすい低地はわかりますので、そういった場所に住んでいる人は早めの避難が必要です。
 また、水の通り道は多くの場合決まっていますから、その周囲の人達も早めの避難をしたほうが無難です。
 内水氾濫が起きる条件はあまり変わりませんから、雨量や予想降水量を考えて、道路や家が冠水する前に高いところへ避難しておきましょう。
 また、人間は緊急時でも無意識に普段の行動を取ろうとするものです。
 冠水時に避けるべき道路のアンダーパスや低地を車で走行しようとして動けなくなることも多発していますから、普段から低地を意識してなるべく避ける経路を作っておきたいですね。

水に浸かった床下はしっかりと乾燥させよう

 あちこちで床下浸水したおうちは多いと思います。
 天気が安定しているうちにお片付けをするということで、急いで作業はしておられることと思いますが、居住空間の床下だけはしっかりと乾燥させておきましょう。
 床下浸水した場合、ほぼ100%汚泥が入り込んでいます。この汚泥はそのままにしておくとさまざまなトラブルを引き起こす元になりますので、大至急撤去しておく必要があります。
 排水と汚泥の撤去は、できる限り早急に丁寧に行います。これができないと、後に基礎が腐ったり朽ちたりして住むことができなくなりますから、面倒でもしっかりとやっておきましょう。
 自分で全部やるのは普通無理なので、支援ボランティアや知り合いの方にお願いして手伝ってもらって作業した方が負担が少ないです。
 きれいに落ちない場合には真水を使って洗い、しっかりと排水まで行います。
 その後、床下を露出した状態で扇風機などで風を送り込み、中をしっかりと乾かします。生乾きのままだと、カビが発生したり臭いが出たり虫が沸いたり体調を崩したりとろくな事が起こりませんので、徹底的に乾かしましょう。
 時期や天候にもよりますが、3日~1週間程度は乾燥させる時間が必要です。乾く時間を短縮させようとして熱を加えたり温風を使うと基礎の木材が反ったり伸縮することがありますので、止めた方が無難です。
 乾燥が終わったら、消毒液や消石灰を撒いて床を敷き直します。
 消毒の方法については地域や状況によって異なるのと、状況によっては自治体が配布していることも多いですので、自治体に確認をしてください。
 床下の乾燥はおうちの災害復旧での大きなポイントです。
 面倒くさがらずに、しっかりと対応しておきたいですね。

避難所での快適さを増す方法

 先日から台風や大雨であちこちで河川氾濫や内水面越水が起きているみたいです。
 当研究所のあるところでも、近くの高津川が氾濫危険水位にまで達したため、何度か避難指示が出されました。
 で、避難指示が発令される度にどこへ避難するかどうかを考えるのですが、今回は行政の指定する避難所へ避難してみることにしました。
 今回はそこで感じたことを書いてみたいと思います。

1.床に敷くものは必須

 避難先が体育館だったこともありますが、基本的に避難生活に必要ないろいろは自分で準備する必要があります。
 今回も少し厚めのレジャーシートを持参したのですが、避難所では四角い大きめの段ボールが敷物代わりに提供されていて、下に敷くと非常に快適でした。
 段ボールは断熱性、クッション性が高くて寝心地もいい、その上そこに誰か居るのがわかるという非常に便利なアイテムで、避難するときに持参するのもいいなと感じました。
 ちなみに、提供されていた段ボールはどうやら間仕切りだったようですが、避難者のソーシャルディスタンスは確保されるくらいの空間はありましたので、問題はなかったようです。

2.暇つぶしの道具は必須

 避難が終わると、災害の危険が収まるまではそこで待機することになります。
 多くの避難者がいるところでは大騒ぎするわけにもいきませんので、静かに時間が使える本や学習道具、ボードゲームやカードゲームなどを持参したほうがいいです。
 当研究所の研究員達(うちの子)にも普段から言ってはいたのですが、いざ避難になるとやはり考えがそこまで至らなかったようで、ちょっと困っていました。

3.歯ブラシは必須

 避難生活で発生するさまざまな病気は口の中が菌などで汚れていくことで発生するものが非常に多いです。
 それを防ぐには、歯磨きが一番です。食後に歯磨きをすることで生活リズムも保てますし、虫歯や病気を防ぐためにも歯ブラシは必ず持って行きましょう。
 入れ歯の人は、入れ歯を管理するための道具もあると快適に生活できると思います。

4.スリッパがあると安心

 体育館は原則として土足禁止なのでそこまで神経質になる必要はないのですが、衛生上素足や靴下などで中を歩くのはあまりよくないなと感じました。
 スリッパがあると、足の汚れを気にせずにすむので気分的にいいです。

5.アイマスクと耳栓は必要かも

 防犯上、避難所は夜間も消灯はしません。明るさが気になる人はアイマスクが、生活音や話し声が気になる人は耳栓を準備しておくといいと思います。
 習慣的に睡眠導入剤を飲んでいる方もいらっしゃると思いますが、避難所では何が起きるかわからないので服用はお勧めしません。
 できるだけ環境条件を整えて、薬を使わなくてもすむようにしておく方が安全だと思います。

6.自立型テントはあってもいいかも

 避難所の条件によりますが、プライバシー保護を考えると、自分たちの居住空間を目隠しできるテントはあってもいいと思います。
 避難所によっては新型コロナウイルス感染症対策等で支給されることもありますが、自分たちで準備しておくと就寝や着替えなど人に見られたくない部分を隠すことが可能です。
 ただし、夏場などで中が暑くなることもありますので、換気と熱中症対策は考えておいた方がよさそうです。

7.長袖と半袖の服を持って行く

 夏場でも冬場でも、避難所の温度管理は結構大変です。
 夏でも冷え込むことがありますし、冬でも暑くなることもあります。
 体感温度の調整が簡単にできるように、半袖の服と長袖の服を持って行くようにしましょう。
 薄手の服が複数枚あると、温度に応じて簡単に着たり脱いだりできるので、お勧めです。

8.寝袋や毛布は持って行く

 避難所での避難は、夜間は基本的に帰宅しないのがルールです。
 避難所で夜を過ごすためには、寝袋や毛布を準備しておきましょう。
 避難所で毛布が配られることもありますが、避難者の数にはとても足りません。
 また、自分のものだと安心して寝ることができると思います。
 可能な限り普段の生活と変えないためにも、普段の生活で使っているものを持ち込んだ方が安心です。

9.非常食は準備しておく

 避難所に入ると食事の配給があることがありますが、ほとんどの場合はおむすびや総菜パン、菓子パンといったものになります。
 提供してもらえるのは非常にありがたいことなのですが、それだけでは栄養素が偏ってしまいますので、果物などを持参しておくといいと思います。
 また、中にはそれらの配給品が食べられない人もいると思いますので、そういった方は自分で準備しておく必要もあります。
 大規模災害の場合にはまず配給はしてもらえないので、とりあえず最低1日分の水や食料は持参するようにしてください。

 他にもいろいろとあるのですが、以上の内容は多くの人に共通する部分だと思います。あなたにとって何かの参考になれば幸いです。

ペットの避難と管理

 ペットをつれて避難しなさいという国の方針で、避難所へペットと一緒に避難する同行避難と、避難所でもペットと一緒に過ごすことができる同伴避難の制度が導入されました。
 賛否についてはいろいろとあるみたいですが、ペットがいるから逃げない、逃げられないという人が多いことを考えると、とりあえずペットと一緒に避難しろというのは正しいことなのではないかと思っています。
 ところで、ペットと一緒に過ごすことができる同伴避難の場合には大きな問題にはなりにくいのですが、ペットと一緒に避難だけできる同行避難の場合には、避難した後のペットの収容場所や管理方法についてよく考えておかないと、いろいろとトラブルが発生します。
 ペットと同行避難する避難所についてはなるべく居住区画とペットの居るエリアを離しておいたほうがいいなと感じているのですが、特に犬が避難してきた場合には気をつける必要があります。
 特に高齢者の飼っている犬に多いのですが、普段一緒にいるのに避難所に避難したら別々に過ごす状態になると、しつけが行き届いている犬であっても非常に不安を感じて鳴き出すことがあります。
 飼い主の顔が見えればいいのですが、飼い主が知らん顔していると犬は飼い主を呼び続けて鳴きます。呼び声ですから、当然鳴き声は大きいです。そして、避難所は犬好きばかりがいるわけではありません。鳴き声で避難者が不快な気持ちになったり、就寝時間に鳴かれると寝られなくなったりして実害も発生してきますので、なるべく犬が鳴いても影響のない場所に収容するようにしたほうがよいでしょう。
 とはいえ、避難所にそれだけの場所があるなら、恐らく同伴避難を受け入れることができる避難所になっていると思います。敷地の問題で同伴避難を受け入れることが難しいことは多いのですが、それでも飼い犬が不安を感じないような手立てを講じておく必要はあるのではないかと考えます。
 また、飼い主に知っておいて欲しいのですが、どんなにしつけがちゃんとできている犬であっても、環境が変わって飼い主が見えなければ不安でいっぱいになり、飼い主を鳴き声で呼びます。連れてきた以上、飼い主には飼育する責任がありますから、きちんと鳴かないような手立てを考えておく必要もあると思います。
 ペットと一緒に避難するのであれば、ペットと一緒にある程度までは過ごせるだけの覚悟が必要です。
 そのことを念頭に置いた上で、ご自身の避難計画や避難所の設計、運営について考えていただければなと感じています。

【お知らせ】ますだすまいる通信96号に掲載いただきました

 益田市役所の市民活動支援センター様が発行しているますだすまいる通信96号(令和3年8月発行)で当研究所をご紹介いただきました。
 表紙では8月28日開催予定の研修会のお知らせ、2ページ目には去る7月15日に二条公民館様のお楽しみ教室でさせていただいた防災教室の内容を掲載していただきました。
 当研究所のPRがへたくそなため、集客に苦労しているのが正直なところなのですが、こういった形で活動の一端をご紹介いただけるのはとてもありがたいことです。
 今後また掲載していただけるような内容を作っていけるように努力していかねばと、気持ちを引き締めて活動を続けていきたいと思っています。
 このたび掲載をいただきました益田市民活動支援センター様及び担当者様にお礼申し上げます。
 なお、内容については益田市民活動支援センターのウェブサイトへのリンクを貼っておきますので、よかったらみてやってください。

令和3年度市民活動支援センター情報誌「ますだすまいる通信」(96号が該当です)

水遊びの事故防止のためにできること

 子どもが水遊びするときに起きる事故のうち、おもちゃやサンダル、防止等が流されてそれを取りに行こうとして事故に遭うというケースがあります。
 流されたものが自分のお気に入りということもあるのでしょうが、「流してしまったことが大人にわかると怒られてしまうから」取りに行くということもかなりの高確率で発生しているようです。
 子どもへのライフジャケットの着用は絶対ですが、もしも子どものものが流されたときには諦めて取りに行かない、その場合には怒らないということを水遊びの前に約束しておくと、ひょっとしたら水難事故が減るかもしれません。
 それから、水の流れを考えること。
 川も海も、流れは一定ではありません。渦が巻くところ、流れが速くなる場所、急に深くなるところなど、さまざまな状態があります。
 実はこういった危険な場所は、地形を見るとある程度予測ができます。
 例えば、川の中州では中州の周囲は急に深くなっていたりします。特に砂州ではその傾向が強いので、海岸の遠浅なものを想像すると危険です。
 また、小さな湾のような形状になっている場所では潮の流れが変化していることが多いので簡単に流されてしまいます。
 せっかく遊ぶのですから、そういった危険を知った上で遊びたいものです。
 水遊びの事故防止のためにできることはいろいろとありますが、まずはライフジャケットを準備し、正しく着用するところから始めましょう。浮いていれば、助かる可能性はかなり高くなります。水遊びにはライフジャケット。習慣にしたいですね。

飲料水を確保する

台風やら前線やらの活動が活発化してあちこちでさまざまな被害が発生しています。
被災された方にはこころからお見舞い申し上げると共に、一日も早い復旧をお祈りします。
さて、災害が起きるたびに言われることですが、飲料水をどうやって確保するのかという問題があります。
普段からある程度の備蓄をしていればいいのですが、旅行や出張などで遠方に出かけた際に被災すると、備蓄も何も無い状態ですからかなり悲惨なことになります。
そんなときに備えて、カバンの中にペットボトルを一本入れておくと、気分的にかなり違います。
最近はいろいろなサイズがありますから、自分のカバンと体力にあったものを用意して持ち歩くようにしてはいかがでしょうか。
これからまた大雨や台風の季節がやってきます。
どこで被災してもいいように、とりあえず飲み水は用意しておくことをお勧めします。

特別警報と警報の違い

 前線停滞により、特定地域に雨が降り続いていて被害が大きくなってきそうな気配ですが、あなたのお住まいの地域ではどのようになっているでしょうか。気になるようでしたら、気象庁のウェブサイトのキキクルを確認してみて欲しいと思います。

キキクル(気象庁のウェブサイトへ移動します)


 当研究所のある島根県のお隣の広島県では大雨特別警報が発令され、最大級の警戒をするように呼びかけられています。
 ところで、この特別警報はどういった意味を持っているのでしょうか。
 警報と何が違うのか。
 今日は気象庁のウェブサイトの記載を元に特別警報と警報の違いを確認しておきたいと思います。

1.「警報」とは

 その地域で重大な災害の起こる恐れのあることを警告するための予報で、各地方気象台がもっている基準を元に発表されるものです。
 そのため、地域によって警報の基準が異なっています。
 暴風、暴風雪、大雨、大雪、高潮や波浪、浸水、洪水などの種類があります。

2.「特別警報」とは

 特別警報とは、その地域の警報の発表基準を遙かに超える大雨や大津波などが予測され、重大な災害が起こる恐れが著しく高まっている場合に発表し、最大級の警戒を呼びかけるものです。
 基準はその地域で数十年に一度起きるかどうかというもので、例えば東日本大震災の大津波や伊勢湾台風の高潮、最近では令和元年に東日本の広範囲で被害を出した台風の大雨などがそれに当たるそうです。
 滅多に起きないがとても危険な状態であることを教えてくれるものと考えればいいと思います。
 大雨、暴風、高潮、波浪、暴風雪、大雪が想定されていて、その中で「大雨特別警報(浸水害)」や「大雨特別警報(土砂災害)」といった風に細分化されています。

 個人的には、警報は「災害が起きる可能性がある」、特別警報は「災害が起きる可能性が高い」といったイメージでいればいいのかなと思っています。
 それにしても、「特別警報」は平成25年に設定され、50年に1回程度起きる規模の異常気象とされているのですが、ここ最近は結構頻繁に耳にするような気がしています。
 原因はいろいろと考えられると思いますが、今までとは違う環境になってきているのかなと考えて、準備だけは怠らないようにしておきたいですね。