南岸低気圧

 気象情報で「南岸低気圧」の名前を聞くようになってきました。
 南岸低気圧は日本列島の太平洋側沿岸部を進みながら発達する低気圧で、日本列島の南側の沿岸を進むことから南岸低気圧と呼ばれていますが、主に冬から春にかけて発生しますので、筆者は冬を告げる季節の変化のようなイメージを持っています。
 勢力が極端に強くなると「爆弾低気圧」と呼ばれたりもしますが、太平洋側での大雨や大雪はこの低気圧によってもたらされることが多いようです。
 この南岸低気圧、気象台を始めとする天気を予測する人達も降水・降雪予報を当てるのはなかなか難しいとのことで、太平洋岸で予想外の大雨や大雪が降ることもままあるようですので、天気予報でこの低気圧の名前が出てきたときには天候に注意が必要です。
 ちなみに、日本海側で雪が多いのは大陸から吹く冷たい季節風が日本海から熱と水蒸気を受け取って雪雲となり降るもので、こちらは比較的予測しやすいようです。
 とはいえ、地球の温暖化による影響が天気にもさまざまな影響を与えていますので、どこで何が起きても不思議ではありません。
 お出かけ前には天気予報の確認。できれば習慣づけておきたいですね。

【終了しました】防災安全講演会が開催されます

 令和3年11月30日の13時30分から、大田市のあすてらすで島根県の主催する防災安全講演会が開催されます。
 講師は国崎信江氏で、演題は「災害時の避難所をめぐる課題について~女性・子どもの視点から~」。
 他に事例発表としてしまね女性センター小川洋子氏による「島根県の防災における女性参画の現状」があります。
 お申し込みやや詳しいことにつきましては、リンク先をご確認ください。

令和3年度防災安全講演会(島根県のウェブサイトへ移動します)

救急ポーチの作り方

救急セット
救急ポーチの一例。消毒用として衛生綿が準備されている。

あなたの非常用持ち出し袋には救急セットは入っていますか。
非常用持ち出し袋の作り方では、「救急セット」や「救急箱」と書かれてはいるのですが、その中身について具体的に触れているものというのはあまり見たことがない気がします。
今回はこの救急セットには何を入れておくといいのかを考えてみたいと思います。

1.持病の薬がいるならまずはそれから準備する

まず最初に準備すべきは、常に必要な薬があるかどうかです。
日常的に薬を飲まないといけない人は、まずはその薬を救急セットに入れてください。
目安としては1週間分です。処方せんが必要な薬の場合には、かかりつけのお医者さんに事情を説明して非常用として準備しておくようにしましょう。
処方せんが必要な薬にも有効期限が存在していますので、新しいものを受け取ったら、その都度救急セットに備えているものと入れ替えるようにしてください。

2.外傷に備える

 絆創膏はちょっとした怪我や傷に使えて手間のいらない便利なものです。
 いくつかの大きさを揃えておくと、ちょっとした怪我なら簡単に処置ができて助かります。
 最近ではハイドロコロイドタイプの絆創膏も出ていて、これを使うと、貼り替えの手間が内上に傷跡が殆ど分からないくらいにきれいに直ります。
 ただし、ハイドロコロイドタイプは傷口を密閉して身体の修復機能を利用するという構造上、傷口がきれいになっていないとかえって怪我を悪化させることも可能性としてありますので、傷口が充分に洗浄できない場合には通常タイプの絆創膏を使った方が安全かもしれないと思います。
 次に滅菌ガーゼ。大きな擦り傷や抜くと命に危険がありそうな傷口の保護に使います。また、圧迫止血法を使うときには現金ガーゼを使うのが基本となりますので、いくつか準備しておきましょう。
 器具としては、手当に使うはさみやピンセット、毛抜きといった道具類はセットのものも売っていますが、値段と性能がほぼ比例するものです。
 そのため、入手できるのであれば個別に揃えた方が安くて良いものが揃うのではないかと思います。
 滅菌、減菌されている必要はありませんが、救急セットに入れるのであれば、それなりに衛生的なものを入れてください。
 そして粘着包帯。当然包帯として使えますが、それ以外にも添え木の固定具やテーピング、ちょっとしたものを縛るときなどにかなり役立ちますので、1セットはあったほうがいいと思います。
 粘着包帯と滅菌ガーゼの組み合わせだと圧迫止血もしやすくなりますので、滅菌ガーゼとセットで考えるといいのではないでしょうか。
 最後に使い捨てカイロと急速冷却剤。季節によって変わるかもしれませんが、小型の使い捨てカイロと急速冷却剤を入れておくといざというときに非常に役立ちます。
 使い捨てカイロは体温の保全に、急速冷却剤は打ち身やねんざ部分を冷やすのに使えます。いずれも緊急用ですので、小型のもので充分だと思います。

 基本となるのは以上の2つ。これなら準備することはあまり難しくないと思いますが、理由を説明しておきます。
 持病の薬というのは、実はかなり準備優先度の高いものになります。携帯トイレ、水の次くらいに重要なのでは無いかと筆者は考えています。
 せっかく命が助かったのに、持病の悪化で体調不良や亡くなってしまうようではなんにもなりませんので、非常用持ち出し袋だけでなく、普段持って歩く防災ポーチにも持病の薬は必ず入れておくようにしましょう。
 それから、怪我に使えるアイテム類は自分で持っておかないとなんとかできるものではありません。そこで、怪我に対しては応急処置できるようなアイテムを揃えておくのと同時に、それらの道具類が使えるようになっておきましょう。怪我をしてから治療の手引き書を読むようでは、助かるものも助からないと思います。

 ・・・ひょっとすると、「こんなものでいいの?」と思われるかもしれませんが、こんなもので充分です。
 後の準備については、おうちの救急箱を考えてみてください。普段どのような道具や薬を使っているでしょうか。救急箱に入っている薬や道具は、使うものと使わないものがはっきりとわかれていると思います。その中でよく動いていて無いと困るものを追加していけばいいのです。もし救急箱が無い、あるいは中身が動いていないおうちの場合には、追加アイテムも不要だと思います。
 最後に、これらを救急ポーチに入れるときには、それぞれのアイテムをチャック付きビニール袋にいれて収めるようにします。
 これは避難時に非常用持ち出し袋がずぶ濡れになったとしても、持病や応急処置に使うものは濡らさないようにするためです。
 蓋を開けるととても簡単な救急ポーチですが、例えば新型コロナウイルス感染症対策だとここにマスクや非接触型体温計などが必要になるかもしれません。それらのことも踏まえた上で、あなたにベストな救急ポーチを作ってもらいたいなと思います。

公衆電話の位置を知っていますか

 携帯電話(スマートフォン含む)は、恐らくあなたも含めて多くの人が持っていると思います。
 では、あなたの身の回りでどこに公衆電話があるか思い出せるでしょうか。
 また、公衆電話の使い方はご存じですか。
 災害などで停電が長引くと、携帯電話の電波の中継を行っている携帯基地局の電源が喪失され、携帯電話がつながらなくなります。
 携帯電話の普及で殆ど姿を見なくなってしまった公衆電話ですが、災害発生時には有線回線のため、基地局の状況に関係なく電話をかけることが可能です。
 また、公衆電話は大災害などで一度に大量の通信がある地域に集中したときに行われる通信規制の対象になりにくい特徴も持っています。
 いざというときに非常に頼りになる存在ではあるのですが、携帯電話の普及で公衆電話を使う人が激減したため、災害対策用に置かれているものを除いて、殆ど見かけることがなくなってしまいました。
 とはいえ、大規模災害時の携帯基地局の復旧にはある程度の時間がかかりますから、公衆電話というのはそういったときに自分の状況を被災地外へ伝えることのできる有力な手段となります。
 NTT西日本では、お住まいの地域の公衆電話の設置場所を地図にしたものを公開しています。
 あなたが作る防災マップやご自身の防災計画の中で、いざというときに備えてお近くの公衆電話の位置も把握しておくと便利です。
 そして、10円硬貨と公衆電話の使い方も身につけておくと、いざというときに困らなくて済むと思います。

公衆電話設置場所検索(NTT西日本管内)(NTT西日本のウェブサイトへ移動します)

公衆電話設置場所検索(NTT東日本管内)(NTT東日本のウェブサイトへ移動します)

各種見舞金と保険

 突然ですが、あなたは災害に備えた火災保険や地震保険に加入していますか。
 変な言い方になるかもしれませんが、もしもあなたが持ち家で、災害後も引き続き持ち家を持ちたいのであれば、地震保険に入っておくことをお勧めします。
 というのも、地震で全損したおうちには、国の被災者生活再建支援金が支給されますが、その額は最大で300万円となっています。
 これに日本赤十字社などから義援金が配られるとして、その額は地域の人口や災害の規模によって相当まちまちと考えていいと思います。
 大きな災害でも被災者数が多ければ受け取れる義援金の額は少なくなりますし、受け取れる時期も、はっきり言えば不明です。
 そんな状態で、ひょっとすると仕事も家も無くしてローンだけ払わなければならないという事態に陥るかもしれないと考えると、保険でせめて当座の資金だけでもなんとかするような手はずをしておかなければまずいと思います。
 では、どんな保険に入ればいいのかということなのですが、まずは火災保険に入ることです。
 火災保険があって、その火災保険に付帯する形で地震保険が存在しているため、火災保険なしで地震保険のみ保険をかけるということはできない仕組みになっています。
 しかも、火災保険額の30%~50%が補償額になるため、保険をかけていてもけっして安心というわけではありません。
 ただ、いくらかはローンが減らせますし、何よりもまとまったお金が国の生活再建支援金や義援金などよりも早く受け取れますので、生活が非常に楽になります。
 重ねて書きますが、地震保険は火災保険の付帯ですので、火災保険をかけた上で地震保険をかけることになります。
 もしもあなたが持ち家で火災保険を掛けているのなら、地震保険が付帯されているかを確認し、していないようなら必ず付帯させてください。そうしないと、火災保険では地震による被害は補償されません。
 だいぶ言われるようになってはきましたが、今一度自分のおうちの保険を確認し、災害対応型になっているかどうかをチェックしておいてくださいね。

稲むらの火

 今日、11月5日は世界津波の日です。
 津波という言葉は、あまり他の言語では存在しないようで、国際的にも「TUNAMI」と呼ばれているようです。
 ところで、あなたは稲むらの火という故事をご存じですか。
 江戸時代に起きた安政南海地震のとき、夜に村を襲ってきた津波から逃げるため地元の商人だった濱口梧陵という人が丘にあった稲わらに火をつけて村人達に避難の方向を教えたというものです。
 元々はラフカディオ・ハーン(小泉八雲)が採録したお話だそうですが、この出来事が旧暦の11月5日だったことから、この日が世界津波の日になったそうです。
 いくつかの大陸プレートで構成されている日本列島は地震大国ですが、津波大国でもあります。
 最近東海・東南海地震が起きるような話が出ていますが、これに限らず、津波の影響のある地域にお住まいであれば、こういった日にご自身の避難経路や避難方法について考えてみて欲しいと思います。
 ちなみに、坂口梧陵さんの地元である和歌山県広川町のウェブサイトで紹介されている「稲むらの火」の話は、伝えられている物語とはちょっと異なっているようですので、興味がある方はそちらもぜひ覗いてみてください。

資料室【稲むらの火】~安政地震津波の顛末~(和歌山県広川町「稲むらの火の館」のウェブサイトへ移動します)

被災時は温かい食事が気力を守る

火を使わずに簡単に加温できるのはこういった化学的に熱を作るアイテム達。ただ、お値段は結構高い。

 災害用に非常用持ち出し袋を作ることを推奨されていますが、非常用持ち出し袋に入れっぱなしにしてしまうといざというときに使いかたが分からないというなんとも情けないことになってしまいます。
 そのため、普段から使っているものを非常用持ち出し袋に入れておくのが基本になりますが、非常用持ち出し袋の中身はあなたが確実に使えるようなセットになっていますか。
 さて、災害後に生活を続けていくのには何かを食べなければいけません。
 家屋が被災して避難所生活になった場合には、非常用持ち出し袋に準備したものと各地から届けられる支援物資による食事になりますが、食中毒対策などの事情で届けられる食事は原則として常温から冷たいものが殆どになると思います。
 ただ、気持ちが落ち込んだり不安なときほど温かいものを食べたいもので、温かいものを食べられるようにある程度の準備はしておいたほうが安心です。


 具体的にはカセットコンロを準備すること。カセットコンロはカセットボンベという独立している燃料が必要ですが、カセットボンベさえあれば割とどこででもお湯が沸かせ、温かいものを摂ることが可能になります。
 普段から登山などしている人であればOD缶と携帯コンロはお持ちでは無いかと思うので、それを使ってもいいと思います。


 もちろん、できればお鍋ややかんなども準備しておきたいところですが、お湯を作れるかどうかが食のレベルを決めると言ってもいいと思いますので、持ち運びできる調理器具を準備しておくようにしましょう。
 幸いにして、これから寒くなってくるとお鍋のおいしい季節になります。
 最近では卓上型のIHコンロも普及しているようですが、カセットガスコンロなら普段使いも災害時に使うことも可能なアイテムですので、これを使って家族や仲間、もしくはご自身でお鍋を囲むのもいいのではないでしょうか。

自分だけは死なない災害

2021年8月14日の高津川の増水。このときも川に作業に出かけ、流されて亡くなった人が出た。

 災害が起きると、不幸にして亡くなる方が出る場合があります。
 亡くなった方も、死のうと思って亡くなったわけではなく、何らかの事情で災害に巻き込まれて亡くなっていることが殆どです。
 例えば、大雨の時に田の水を見に行ったり、川に様子を見に行ったり。出かける途中や出かけた先で溝や川にはまってしまっています。
 災害で人が死ぬかもしれないという認識は殆どの人が持っていると思うのですが、不思議なことに、自分が死ぬかもと思っている人はまずいません。
 自分が死ぬかもしれないという意識が持てないのです。
 死ぬとは思っていないから、無意識に危険な行動を取ってしまい、そして亡くなってしまうことが起こるのです。
 もしかしたら、非常時に平時の感覚で行動してしまうせいなのかもしれませんが、災害は誰にも程度の差はあれ危険をもたらします。
 災害から身を守るには、「行政が言うから行動」ではなく、「自分の身を守るためにはどういう行動が必要か」をふまえた上での自分の判断で行動をしないと、手遅れになったり避難途中で遭難することになったりします。
 「自分だけは死なない」のは、今までがたまたま運が良かったからで、単なる偶然でしかありません。
 災害時の考え方は「自分が助かるにはどうすればいいのか」です。
 考え方を間違えないようにしたいですね。

赤ちゃんの災害への備え

 生活弱者といわれる方々の中に、赤ちゃんとそのお母さんが含まれていますが、もしもあなたがその対象であるなら、ご自身の災害に対する備えができているでしょうか。
 被災後の避難所での生活は、支援物資が届くまでは自助でなんとかしないといけませんが、元気な大人でも備えがないと結構大変ですので、赤ちゃんが居る場合にはそれ以上に事前に準備をしておかないといけません。
 そして、赤ちゃんは日々大きくなっていきますので、ただ準備すればいいわけでは無く、成長にあわせて日々備えを変えていく必要があります。
 おむつやミルクの量、着るための服など、非常用持ち出し袋を作っても数週間で準備した内容を全部変えてしまわないといけないこともよく起きます。
 もっとも、赤ちゃんとのお出かけをするためのお出かけカバンを作っている方であれば、お出かけから戻ったらすぐに次のおでかけの準備をするようにしておけば、それが非常用持ち出し袋になりますからそんなに手間ではないと思います。
 お出かけをあまりしないようなおうちであれば、3日分くらいのおでかけができるような内容で非常用持ち出し袋をつくっておくといいと思います。
 もちろん一番良いのは避難しなくても済む、家にそのままいることができる状態ですので、1週間程度の備蓄はしておくようにします。
 でも、万が一何も持っていない状態で被災し、避難することになったらどうするか。
 日本新生児生育医学会というところが「被災地の避難所等で生活をする赤ちゃんのためのQ&A」というリーフレットを発行していますので、興味のある方はリンク先を覗いてみてください。

被災地の避難所等で生活をする赤ちゃんのためのQ&A」(日本新生児生育医学会のウェブサイトへ移動します)

「助けて」って言えますか

 日本人はできるだけ自分で全てのことをやることが美徳とされていて、「他人に頼ること=迷惑をかけること」と考えている人が多いです。
 なんでもかんでも周囲に頼り倒すのはまた別の問題を引き起こすことになると思いますが、それでも普段からある程度他人に助けてもらう練習をしておくことは、災害時に役に立ちます。
 というのも、普段なら全部自分でできることでも、大災害で被災者になると自分だけではできないことがたくさん発生するからです。
 特に、自宅が被災したとき、その復旧を一人でやろうとするとかなり無理があります。恐らく、やっている最中に心が折れてしまうのではないでしょうか。
 災害時に発生するさまざまな問題は、自分一人で解決できないものがとても多いですが、困っている自分が「助けて」と言わない限り、救いの手は届きません。
 他人に頼ることは、他人に迷惑をかけることではありません。自分ができないことや時間がかかることをできる人や作業の早い人にお願いするのは、その後のあなたの生活に影響が出てくる災害復旧では生活再建のために行うべきことなのです。
 災害ボランティアは「助けたい」と思って被災地へ乗り込んできます。彼らの善意に頼って、しっかり助けてもらえばいいのです。
 ポイントは助けて欲しいことを明確に伝えること。
 特にボランティアセンターへ派遣を依頼する際には、どんな作業をどれくらいする必要があるのかをはっきり伝えないと、なかなか人が来てくれません。
 どんな作業があるのか、どれくらい人や時間を投入しないといけないのか、もし自分で分からなければ、わかる人に頼んで確認してもらえばいい話です。
 普段から「助けて」を言いやすい状況を作っておくことで、助けてもらえる確率はかなり高くなります。
 あなたが被災したとき、他人の力が必要なときに「助けて」が言えるようになっておきましょう。