最近の災害対策で言われているのが「自助」「共助」「公助」です。
考え方はいろいろとあるのですが、災害時には「自助」→「共助」→「公助」の順番に自分の身を守る対策が行われることから、一番最初に来るのが自助となります。
では、普段はどうでしょうか。
「自助」だから自分で、と言われても、何から手を付けたらいいのか、災害対策に興味のある人でもない限りはわからないとなると、自助は全く進みません。
そのために「共助」としての自主防災組織づくりが言われているわけですが、これもコロナ過で地域のつながりが薄れてしまったことや高齢化などでうまくいかないという現実があります。
また、自主防災組織単独で研修や講習をするのは難しいかもしれません。
そこで「公助」の出番となります。
さまざまな研修や呼びかけ、訓練開催などを通じて何をしたらいいのか、何から手を付けるべきなのかを明確化し、実行するための後押しをします。
例えばその相手が自主防災組織だったり、地域だったり、個人だったりするわけですが、誰が何をすべきなのか、どのようにすればいいのかについての交通整理も公助の仕事かもしれません。
災害対策は、平時には「公助」→「共助」→「自助」という、災害時とは逆の動きをする必要があるのです。
「公助」を行政単独でするのが難しいなら、消防や社会福祉協議会、当研究所も含む災害対策のNPO等に支援を要請してもいいと思います。
大切なのは災害対策に対する備えや心構えなどがきちんとすべての人に伝わることです。
理想論かもしれませんが、最初はできることが小さくても、さまざまな災害対策を見たり訓練したりすることでできることが増え、結果として地域の防災力の向上につながっていくと思います。
災害対策は発災前と発災後では「自助」「共助」「公助」の矢印が変わると考えると、案外と関係性がわかりやすくなるような気がするのですが、あなたはどう思いますか。
あなたは地図が読めますか
非常用持ち出し袋のアイテム類の一覧を見ると、多くのものに「地図」が入っています。
田舎に住んでいる人にはピンとこないアイテムなのですが、普段公共交通機関で移動している人の場合には、いざ歩いてときに道がわからないという大問題があるため、地図が必要だと考えられているのです。
ただ、この地図にもさまざまなものがあり、それぞれに特徴があります。
どのような地図を準備してもいいのですが、その地図がきちんと読めないと何の役にも立ちませんので、せっかく地図を準備するのであれば、その地図に書かれているものがどのようなものを意味するのかをきちんと理解しておきましょう。
例えば、自分のいる現在位置がわからないとそもそも地図が使えません。
また、場所がわかっていたとしても、自分がどの方向に向けて移動すればいいのかが理解できていなければ、全く違った方向に移動してしまうことになります。
最近都会地では「避難用マップ」というような名称で徒歩避難者向けの地図も販売されているようですが、地図を用意するのであれば、方位磁針もセットで準備したほうがいいと考えます。
例えば、日本で作られて日本で使う地図の場合には、基本的に上側が北になっているはずです。そうでない場合には地図面のどこかに方位が記載されていますので、それを確認してください。
では、方位磁針がない状態で自分がいま見ている方向を当ててみてください。
次に、30分ほどその地図で歩いてみて、今見ている方向が東西南北のどの方向なのか、もう一度当ててみてください。
結構な確率で方向がわからなくなっていると思います。
平時にはさまざまな目標や目印があって移動もわかりやすいですが、災害時にはそれらが燃えたり崩れたりしてわからなくなるかもしれません。
地図を準備するなら、方位磁針も併せて準備し、そのうえでそれを読み取ることが可能な程度には見慣れておく必要があります。
現在はスマホやカーナビが充実しているため、地図を見ることはあまりないと思います。
地図は普段から見慣れていないと内容を読み取ることは難しいですので、特に長距離を公共交通機関で通勤・通学している人は機会を作って地図と方位磁針に慣れるようにしておいてください。
使いやすい髪留め用ゴム
非常用持ち出し品の中に余裕があるのであれば、長い髪を束ねるときに使う髪ゴムを入れておくといろいろと使えて便利です。
普通の輪ゴムに比べると丈夫で絡みにくく長持ちな上、輪ゴムと同じように使えるため、ものをまとめたり、縛ったり、固定したりと使い勝手がいいアイテムです。
輪ゴムに比べると値段は高いですが、切れる心配をしなくてもいいというのは、ストレスがかかりやすい災害後の生活においては結構大切なことなのではないかと思います。
また、普段は気にならない長い髪の毛も、洗髪できない状況が続くとうっとうしくなることが多いようですが、そういったときにも髪の毛をまとめればうっとおしさは軽減されます。
その特性上、輪ゴムのような滑り止めの効果は期待できませんが、ちょっとしたあれこれに使える髪留め用のゴム、準備しておいて損はないと思います。
防災ポーチと防災ボトル
手軽に持ち歩ける防災アイテムとして「防災ポーチ」というのがあります。
マスクやエマージェンシーブランケット、お手拭きや懐中電灯、ホイッスルなどが小さなポーチに入っているのですが、最近は防災ボトルというのが発売されています。
プラスチックの飲料用ボトルを収納容器につかって、中に防災ポーチと同じようなアイテム類が収められているもので、防災ポーチに比べると場所を取りますが、重要な問題の一つである「水」を確保する容器がついている非常に実用的なアイテムだと思います。
学校や外回り用のカバンであまり大きな空間が確保できない場合には防災ポーチ、お出かけカバンなどで収納に余裕があるのであれば防災ボトルと、持ち歩くカバンに併せて作ってみるといいと思います。
どちらもあまりたくさんは入れられませんので、必要と思うアイテムを厳選し、どこにでかけるときでも最低限の防災用品が備わっているようになっているといいですね。
ちなみに、12月18日に開催する「持ち出し用防災セットを作ろう」では、ポーチかボトルのどちらかを入れ物に選んで作成を行います。イメージがしにくかったら、そういった企画に参加して確認してみるのもいいと思います。
【活動報告】防災講習会で非常用持ち出しについての講師をしました
去る11月19日、益田市の市民学習センターで開催された南町自治会様・同自主防災組織様の防災講習会の一コマで非常用持ち出しについて講師をしました。
災害時、自分の避難が完了してから支援物資が届きだすまでは自分の持ち込んだ非常用持ち出し品を使ってしのがなければなりません。
その際にどのようなものを用意しておくのかやちょっとしたコツなどについてお話をしました。
皆さん熱心に聞いていただき、こちらの説明がいざというときに備えた非常用持ち出しを上手に作るための参考になるとよいなと思います。
お声がけくださった南町自治会の皆様にこころからお礼申し上げます。
なお、当日カメラを忘れて写真がありませんことをご了承ください。
【お知らせ】「持ち歩ける防災セットを作ろう」を開催します。
来る12月18日(日)に益田市の市民学習センターにて、ワークショップ「持ち歩ける防災セットを作ろう」を開催します。
当日は普段のカバンに入れておくことのできる防災グッズを選んで自分だけの持ち歩ける防災セットを作ってみます。
また、よくある防災グッズを実際に使ってみたり、選ぶ時のコツなども考えていきたいと思っています。
詳しくは画像のチラシをご確認ください。
資材の準備の都合上、できるだけ事前申し込みをしていただけると助かります。
興味のある方のご参加をお待ちしております。
【お知らせ】防災安全講演会が津和野町で開催されます。
令和5年1月21日(土)10時から、島根県鹿足郡津和野町日原の津和野町立日原小学校体育館で島根県等が主催する防災安全講演会が開催されます。
今回の講演会は自主防災組織にスポットを当て、コロナに負けない災害に強いまちづくりについて考えるお話をされるそうです。
申込期日や申し込み方法など、詳しくはリンク先をご確認ください。
令和4年度島根県防災安全講演会(津和野会場)を開催します(島根県庁のウェブサイトへ移動します。)
逃げるべきか留まるべきか
避難という言葉を調べてみると、「災難を避けてその場から立ち退くこと」といった意味になるそうです。
防災対策でよく使われるこの避難という言葉ですが、その中身を見ると「垂直避難」「水平避難」「その場で待機」という大きく3つに分けられています。
「水平避難」は言葉の意味のとおり、災害が発生するであろう場所から災害が起きない場所への水平移動のことを指します。
「その場で待機」は、そもそも避難の必要がない場合に使われるもので、自宅待機ともいわれます。
そして、「垂直避難」は、「その場にいるが、なるべく高いところへ移動する」ということで使われています。
確かにその場から移動はしているのですが、危険地帯から移動しているわけではないので、避難に該当するかどうかは正直疑問ですが、それでも例えば1階にいたら間違いなく溺れてしまうような場所の場合には、2階以上の場所へ逃げるのは一つの考え方なのかなと思います。
ただ、垂直避難には限界があります。都会の何十階建ての建物ならともかく、田舎の一戸建てだとせいぜいあっても3階くらいまで。そんな場所で垂直避難することは、果たして正しいのだろうかとも考えてしまいます。
自分が垂直避難でもなんとかなりそうかどうかは、お住いの場所のハザードマップを確認して判断するしかありません。ハザードマップを100%信用することは危険ですが、それでも一つの判断基準にはなります。
さまざまな条件でそこから遠方へ逃げられない人や、逃げ損ねた場合には、上層階に逃げることで命をつなげるかもしれません。
基本は水平避難ですが、もしも垂直避難になった場合に備えて、どのような条件だと危険なのかについて確認しておくことをお勧めします。
使うか使わないか、使えるかどうか
非常用持ち出し袋のことは防災の話をするときには必ず出てくるものですが、あなたは準備をしていますか。
市販品もさまざまな種類や内容で作られていて、それさえ備えれば準備ができたような感じがして安心できます。
もちろん、一つ一つ自分が吟味したアイテムで作る非常用持ち出し袋なら、何が入っているのかが把握できているので安心できます。
ただ、どちらにしても大切なことが一つ。
それは「そのアイテムはちゃんと使えますか」ということです。
非常用持ち出し袋ではさまざまな便利アイテムが入れられていますが、多機能すぎてどうやって使うのかわからないものや、それなんで入ってるのといったものがセットされていることがあります。
非常用持ち出し袋の一覧表には、基本的にそのアイテムをどうやって使うのかまでは書かれていないことが多いので悩んでしまうこともあるのですが、自分が使いかたのわからないアイテムは使わないと考えてください。また、居住環境によって備えないといけないアイテムもさまざまに変わっていきます。
市販品であれ、オーダーメイドであれ、非常用持ち出し袋を作る時にはそれがどんな時にどんな使い方をするものなのかをきちんと確認して、自分が納得してからアイテムに加えるようにしてください
できることとできないことを見極める
災害が起きたとき、絶対にやってはいけないことが「無理をする」ということです。
「非常時だから」といって人に頼ってはいけないと思ってしまうのは非常に危険です。非常時だからこそ、自分にできることをしっかりと見極めて、できない部分をできる人に助けてもらうということが必要なのです。
誰しも得意なこと不得意なことがあり、できることできないことがあります。自分ができないことは助けてもらい、自分ができることで誰かを助ければいいのです。
例えば、自主防災組織というのがありますが、筆者はこれができる範囲でお互いを助け合うために作られたものだと考えています。
だから、何でもかんでも自主防災組織にやらせるのは間違っていると思っていますし、現在自主防災組織で機能不全を起こしているところが多い理由も、その辺にあるのではないかと思っています。
できることとできないことの見極めとお互いに助け合うという前提。
これが災害時には普段以上に必要となると思っています。