防災の仕事をしていると、自主防災組織の方から組織運営について相談をいただくことがあります。
最初は地域の人を災害から守るという熱い思いで結成された自主防災組織も、時がたって災害が起きなければ、だんだんと熱も冷め、次世代への承継もうまくいかないことが多いようです。いただくご相談は、今後どうやればうまく活動ができるのかとか、人がいない、集まらない、動けないといった内容で、あまり明るい内容ではありません。
ただ、聞いていると不思議に思ってしまうことが一つあります。
それは、なぜ身の丈にあった計画に変更しないのかということ。
ご相談いただくときの前提が「この活動計画ができなくなっている」というのが大半なのですが、できないのであれば、できるような活動計画に変更すればすむのではないかと思います。
自主防災組織の中には、非常に立派な行動計画を作って毎年それを更新しながら組織をうまく運営しているところもあります。
でも、地域によってはその行動計画を実行するだけの力がなくなっているところもありますので、そういった状況で持っている行動計画をやろうとするとどうしても無理が来ます。
自主防災組織はあくまでも「共助」のために結成されている地域のボランティア的な組織ですから、実行することが難しい行動計画でできないというのであれば、行動計画自体を変えてしまえばいいのです。
基本的な考え方は「できることをできる範囲で」です。
理想を掲げても物理的にできない場合にはできませんので、できることをできる範囲で設定しなおすことで、無理のない自主防災組織の運営が続けられることになります。
もちろん、人が増えたりやる気のある人たちがたくさんいる状況になれば、活動計画を組み替えて大きなものにすればいいだけなので、その時々に応じてやる活動を変動させるくらいの気持ちでいればいいと思います。
よく誤解されているのですが、自主防災組織は自主防災組織に所属する人たちを守るために存在しています。
自治会や自治体とは異なる任意組織ですので、あくまでも自主防災組織に加入している人をどうやって守るのか、を基礎にしてください。加入していない人を相手に考える必要はないのです。
自主防災組織に加入している人達が、お互いにできる範囲でできることをして助け合うだけでいいと考えると、何となく肩の荷がおりませんか。
自主防災組織を難しく考える必要はありませんん。地域の人間関係がしっかりと生きているなら、存在しなくてもいいくらいの組織であり、あくまでもお互いをできる範囲で助け合うために作られているのです。
できることをできる範囲で、無理なくやり続けること。
これからの自主防災組織はそれを前提にして活動計画を作ったほうがいいのではないか。そんな風にお話をしています。
被災地外でできることとしてはいけないこと
大規模な災害が起きると、その地域の人の手助けがしたいと思う方も多いのではないでしょうか。
東日本大震災の後、しばらくはあちらでもこちらでも募金活動をやっていて、募金する人が寄付疲れを起こしてしまうようなこともありましたが、大規模な災害のあと、被災地が復旧・復興するための支援はさまざまな形でできます。
被災地への支援というと、多くの人は直接的な支援ということで現地ボランティアや支援物品の送付を行ってしまいますが、これらは現地の受け入れ態勢ができていないとかえって混乱を起こしてしまいます。
もしも直接的な支援をするのであれば、現地の受け入れ態勢が整ってから支援を開始してください。
少なくとも大規模災害の場合には、災害発生から3日間程度は現地の混乱や救助作業が優先されることから、素人が現地入りしたり、支援物資を送られても道路や物流に混乱が生じるだけで被災地に負担をかけるだけです。
特に支援物資を送るのはご法度です。
SNSやマスメディアで「〇〇が不足している」と報じられても、個別に自力で現地に持ち込める人以外は絶対に送ってはだめです。
物流に負担をかける上に、届いたころには現地で必要なものは変わっています。
そして、どうかすると届いた時には腐ったり痛んだりしていることもありますし、大量に余ったものは現地で処分することになって余計な負担をかけることになります。
同じ物品を送るのであれば、例えば大手通販サイトがやっているような、被災地から要求された物品を購入して届けてもらうようなシステムを活用してほしいと思います。
また、被災地の復旧・復興は非常に時間がかかります。
一過性の寄付だけではなく、被災地の物品を購入したり、被災地の被害から復旧したところへ旅行に出かけてみたりして、直接的・間接的に被災地にお金が回るようにしてください。
継続して支援することが、被災地の復興にはもっとも大切になります。
そしてもっとも難しいのも、この継続してする支援で、どこまで、いつまで続ければいいのかはあなたの判断次第です。
被災地への支援は有形無形、いろいろとできますので、できる範囲で、できることを、現地に負担をかけない形でしてほしいなと思います。
「大丈夫」という情報の大切さ
災害が起きた時に自分に大きな被害がなかった場合には、あえて自分は大丈夫という情報発信はしないという方が多いと思います。
特に大きな災害の場合には、短時間で相当数の安否確認の電話やメールが集中してしまうので、通信環境への負荷を防ぐという意味でも発信を控えるということはよくあることだと思います。
ただ、心配している人から見ると情報発信がないというのは「大丈夫」だから発信していないのか、それとも「発信できないような状況」になっているかがわかりませんので、不安に駆られて相手が出るまで電話やメール等を送り続けて通信環境を悪化させてしまうことが発生します。
被災地外で被災地にいる人の心配をする人は、とりあえず無事なことがわかればいいのですから、とりあえず被災地にいる人は自分が大丈夫である旨の情報は発信したほうがいいわけですが、電話やメールでやりとりしていると状況はあまり変わりません。
SNSや災害時伝言ダイヤル、災害用伝言版などを活用して、なるべく通信環境に負荷をかけずに大丈夫なことが伝えられるといいと思います。
SNSであればいいのですが、災害時伝言ダイヤルや災害用伝言版では一つ気を付けておかないといけないことがあります。
それは「鍵となる電話番号を決めておくこと」です。
「J-Anpi」というシステムによって、固定電話、携帯電話会社に関係なく、登録されている伝言はどこからでも見たり聞いたりできるようになっていて、いちいち探す手間はかなり減りました。
ただ、J-Anpiの伝言を聞くためには鍵となる電話番号が必要となります。
「もし自分が被災したとき、安全だったら伝言を出しておくから、〇〇番で検索してくれ」という情報を連絡してくるであろう相手に伝えておくことで、いざというときに通信環境に負荷をかけずに安否が確認できます。
これは家族間でも同じことで、いざというときにどの番号で伝言をやりとりするのかについては事前に決めておくようにしてください。
また、災害時伝言ダイヤルや災害時伝言版は平時でも訓練用に開放されているときがありますので、そういった機会を使って、実際にやりとりする練習をしておいてください。
「私は大丈夫です」ということを伝えることは大切な情報です。
自分が無事だから発信しなくても大丈夫、ではなく、無事だからこそ大丈夫だという情報を早めに発信するようにしてください。
J-Anpi(J-Anpiのウェブサイトへ移動します)
NTT西日本の災害への備え・対策サイト(NTT西日本のウェブサイトへ移動します)
交通規制に気を付けて
寒くなりました。
雪が降っているところもあるようですが、車をお持ちの方はスタッドレスタイヤをきちんと履いて、安全運転で移動をお願いします。
よく「四輪駆動車だから問題ない」とノーマルタイヤで雪道に突っ込む方がいらっしゃいますが、いくら四輪駆動でも、道路と接しているのはタイヤです。
四輪駆動でも前輪駆動でも、ノーマルタイヤだと駆動形式に関係なく滑ってしまいますので、雪道は必ずスタッドレスタイヤ、またはタイヤチェーンを履くようにしてください。
ところで、冬タイヤ規制は雪の降る場所では普通に行われていますが、今年も大雪で車が動けなくなるような場所ではそれに加えてチェーン規制が行われます。
チェーン規制が該当する区間を走る人は、スタッドレスタイヤに加えてチェーンも持参するようにしてください。
チェーン規制の区間や使えるチェーンの種類など詳しくは国土交通省のウェブサイト内にある「チェーン規制Q&A」をご確認ください。
チェーン規制Q&A(国土交通省のウェブサイトへ移動します)
【活動報告】高津小学校の防災クラブを開催しました
2022年11月30日に益田市立高津小学校で11月の防災クラブを開催しました。
この防災クラブは学校のクラブ活動の一つとして取り入れてもらっているものですが、今回は校内に設けられたチェックポイントに準備された問題を解いたり、演習をしたりしてもらう「校内オリエンテーリング」を開催しました。
去年のチェックポイントは問題だけだったのですが、こちらの想定よりも相当早く帰ってきてしまって時間が余ってしまったという経験から、今回は消火器の使い方や胸骨圧迫を交代で2分行うこと、そして階段で地震に遭遇した時の防御法について実際に動いてみてもらいました。
結果としてはかなり楽しんでもらえたようですが、このオリエンテーリングは当日の準備が大変なので、いかに当日の手間を減らすかがこれからの課題となりそうです。
今回参加してくれた子どもたち、快く支援してくれた先生方、そして毎回手伝ってくれるスタッフの皆様に感謝します。
非常食を食べ比べてみる
災害時の非常用持ち出し品に入っている非常食。
アルファ米や缶詰、レトルト食品などさまざまだと思いますが、あなたはそれを実際に食べてみたことがありますか。
気分の沈んでいるときや不安な時にはちょっとでも元気をつける必要がありますが、その元気のでる代表的なものの一つが食事です。
普段食べなれているものや、普段あまり食べられない好物などをこういったときに食べると、案外と気力が持つものです。
でも、口に合わない食事を毎食食べると考えてみたらどうでしょうか。
恐らく、食事が気分が落ち込んでしまうものの一つになってしまうのではないでしょうか。
ちょっとした気分の落ち込みかもしれませんが、少なくとも食事は一日何回も食べることになりますから、そのたびにちょっとずつ落ち込んでいくと、ちょっとやそっとでは復活できないくらいになってしまうと思います。
食べなれたものを食べるのが一番いいのですが、どうせ非常食を準備するのなら、さまざまなメーカーのものを食べ比べてみることをお勧めします。
缶詰やレトルトパウチ、アルファ米など、非常食を作っているメーカーさんはかなりありますが、各社とも自社が一番おいしいと思う味付けで売り出しています。
そのため、同じ名前の商品でも味が全く違うことがあるのです。
つまり、一つ食べておいしくなかったとしても、他の会社なら好みの味があるかもしれないのです。
もちろん結果的にすべてのメーカーがダメなひともいると思いますが、各社を食べ比べして、自分の好みの味を探すというのも楽しみの一つではないでしょうか。
ちなみに、最近ではアルファ米もさまざまな味が出ていますし、一昔に比べるとかなり味もよくなっています。
また、売っている場所も増えてきていますから、買い物に出かけた時にでも探してみて、もし見つけたなら、実食してみてはいかがでしょうか。
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揺れやすい地形、揺れにくい地形を知る
地震では震源から同じ距離であっても同じ震度や同じ揺れになるわけではありません。
揺れを拾いやすい地形だとより揺れますし、逆に揺れにくい地形だとほとんど揺れません。
揺れを拾いやすい地形は、俗にいう「軟弱地盤」と言われるような場所で、硬い岩盤の上に柔らかな地盤が乗っているため、本来の揺れ以上に揺れてしまいます。
そのため、震源から離れていても、建物が倒壊したり大きな被害が発生します。
建物の構造自身がよく問題になりますが、実は建物の構造よりも建物が乗っている地盤の状態のほうが、地震に対して大きな問題となるのです。
1995年に神戸や淡路島が大きな被害を受けた阪神淡路大震災や2004年に新潟県の中越地方が大きな被害を受けた新潟県中越地震では、この地盤の脆弱性が建物の倒壊を増やしてしまったと言われています。
では、地盤の柔らかさや固さはどうやって調べればいいのでしょうか。
実際には専門家に地盤調査をしてもらうのが一番ですが、おおざっぱに見るのであれば、「地震ハザードカルテ」というものがあります。
これは全国を250mのメッシュで区切って、揺れやすい場所や揺れにくい場所の診断をするもので、大まかな参考になると思います。
さまざまなところで言われているところですが、地震は起きた時には勝負がついています。
建物の倒壊や半壊といった被害を防ぐには、こういった地味な調査も重要になってきますので、よかったら参考にしてみてください。
地震ハザードステーション(防災科学技術研究所のウェブサイトへ移動します)
暖房器具と災害への備え
だんだんと冬らしくなってきました。
気象庁の1か月予報によると、西日本は気温も降水量も平年並みのようですが、暖冬とはいえ、冬への備えはきちんとしておいたほうがよさそうです。
といっても、大したことではありません。
暖房器具の熱源に使うエネルギーの多重化、つまり電気だけに頼らず、灯油ストーブやカセットガスストーブなどを準備しておくということです。
薪や炭は、家の中で使うのにはかなりハードルが高いのでお勧めしませんが、さまざまな事情で発生する停電対策はきちんととっておいたほうがいざというときに安心できると思います。
電気とそれ以外の熱源の一番の違いは、熱源を調理などにも使えるかどうかということ。電気の場合には暖房にしか使えないものがほとんどですが、他のエネルギーの場合にはほぼ煮炊きが可能です。
また、そこまで大げさにしなくてもという方は、せめて使い捨てカイロや白金カイロの準備をお勧めします。
万が一極寒の時に停電してしまうと、室温は一気に下がり、エマージェンシーシートや毛布などを羽織っても、かなり寒いことは間違いありません。
また、人によっては自分で十分な体温を作れない場合もあると思います。
そういうとき、自分の体温に頼らずに熱を作ってくれる使い捨てカイロなどのアイテムは非常に貴重です。
体温の低下は死ぬことに直結しますので、熱源の確保だけは考えておくようにしてください。
あるものでなんとかするには
災害が起きた後は、とりあえずあるものでなんとかするしかありません。
ですが、あるものでなんとかするには、あるものの活用法を知っておかないとなんとかすることができません。
一番いいのはあるものでなんとかする羽目にならないような準備がされていることなのですが、なかなかそこまで準備のできている人は少ないような気がしています。
あるものでなんとかするためには、その場にないが必要になったものの特徴を考えてみる必要があります。
その特徴を満たすような代替品を探すと、案外となんとかなったりします。
例えば、座布団で考えてみます。
座布団の機能は床の固さの緩和、床の冷気の遮断といったところになると思います。
そうすると、その場にビニール袋と新聞紙があれば新聞紙をくしゃくしゃにしてビニール袋の中に入れれば、とりあえずの代替品になるかもしれません。
大き目のボールがあれば、その空気を抜くことで代替品ができるかもしれません。
緩衝材があれば、袋にいれれば手軽に座布団ができるでしょう。
こんな風に、機能を考えることで代替品を用意できることがあります。
もちろん代替品の候補がどんな機能を持っているのかを知っていないとそもそもどうにもならないので、いろいろなアイテムの機能や特徴を調べて知っておくといいと思います。
例えば、極端な例ですが、穴が開いているからと言ってちくわをストローの代わりにすると、ちくわストローを使って飲んだ飲み物はみんな魚の味に染まってしまいます。
つまり、素材の特徴も知っておかないといけないということです。
あるものでなんとかすることは、ないに越したことはありません。
あくまでも代替品を作ることができるという前提で、必要なものの準備を怠らないようにしてください。
地震の起きる確率
大地震の起きる確率、ということであちこちで数字が出されています。
南海トラフ地震の場合、今後30年以内に大地震の発生する確率は70~80%だそうで、まず近いうちに起きると考えて間違いなさそうです。
これは南海・東南海地震がほぼ似たような周期で発生しているために予測がしやすいという前提があります。
では、確率が低ければ安心できるのかというと、実はそうでもありません。
2016年に熊本地震が発生しましたが、地震が発生するまで発生する確率は0~0.9%というもので、ほとんど起きないのではないかと考えた人も多かったようです。
結果はというと、2016年4月14日にM6.5、その28時間後にM7.3の地震が発生し、大きな被害を受けました。
実はこの地震活動の評価というのは、定期的に発生することがわかっている海溝型地震を別にすると、かなり適当だと考えていいと思います。
南海トラフ地震のように、起きると言われてから10年以上経ちますが、まだ起きていないこともあれば、確率は低くても大地震に見舞われることもあります。
では、この数字をどうみたらいいのか。
答えは簡単で、0%でない場合には地震は起きると考えておけばいいのです。
起きる時期がわからないだけで、地震は起きる。そう考えたほうが精神衛生上いいと思います。
日本に住んでいる場合、ほぼ100%の人が一生の間に一回は大きな地震に出くわすと考えてほぼ間違いないです。
震源近くにいるのか、それともマスメディアで光景を見ることになるのかはわかりませんが、地震は起きるから備えておく。
確率が0%以外の場所にお住いのかたは、それくらいの気持ちでいたほうがいいと思います。
長期評価結果一覧(政府 地震調査研究推進本部のウェブサイトへ移動します)