家に限らず、人がいるところでは知らないうちにものが貯まっていくものです。
よく使うものは自然と置き場も決まってきて、そこにないと「どこへ行った?」と探すことになったりします。
ただ、その置き場は自分が避難するときに支障になりそうな場所や状態ではないかどうか、一度確認してみてください。
最近は意識してものが置かれないようにしている施設が多いですが、一昔前には非常口の前に仮置きの段ボールや箱、いろんな道具が置かれていることがよくありました。
非常口の意味はみんな知っているし、いざというときに使えないとこまるものという認識ももちろんあります。
ただ、「とりあえず置いた」という仮置きが、いつの間にかそこがものの置き場所になってしまっていた結果、非常口が使えなくなっているという状態になっていたのです。
確かに、普段使われない非常口の周辺はいつも何も置かれていないので、ものを置く場所を探している人にとっては絶好の置き場所に見えてしまいます。
でも「ちょっとだけ」置いたが最後、気がついたらそこが定位置になっていたりして、非常口が本当に必要なときに使えない状態になってしまっているのです。
これは一般家庭でも良くある話で、ちょっとした空間が空いていると、つい本棚やタンス、食器棚や箱などを置いてしまい、地震の時にはそれらが倒れて通路を塞いでしまい脱出不能になってしまう事例は、あちこちで見られています。
それを防ぐためには、まずは人の移動する線、導線がどのようになっているのかを確認し、その導線を妨げないようなものの配置をすることです。
そして確保しなくてはいけない空間は、ものを仮置きをさせないように、そこが物を置いては行けない場所であることを意識させることが大切です。
よくデパートなどで非常扉の可動範囲の床が赤や黄黒のしましまなどで派手に塗られていることがありますが、そうすることでそこに物を置いてはいけないということが意識できるようになっているのです。
家庭でこれをやると、ちょっと殺伐とした雰囲気になるかもしれませんが、玄関マットを敷いたり、シートやラグを敷くことでものが置かれるのを防ぐことはできると思いますし、仮置きの場所というのを導線から外れた場所に作ってもいいかもしれません。
必要なのは、自分が普段どのような場所を通っているのかということと、万が一のとき、その移動経路を妨げるようなものがないようにしておくということです。
部屋に閉じ込められてしまって、せっかく災害では助かったのに餓死してしまったなどということがないようにしておきたいものです。
避難時に水の中を歩けるか?
水にかかわる災害の時に、逃げられる水位の話が必ず出てきます。
膝までなら大丈夫という人、15cmまでなら歩けるという人、水が出たら歩くなという人、ちょっと調べただけでもさまざまです。
自分の体験から考えると、せいぜいくるぶしくらいまで。それ以上浸かると足下をすくわれるかなと考えています。
自分のくるぶしということで計ってみたら、10cmくらいでした。
ただ、これは成人男性の場合ということになるので、女性や子どもだと当然その深さは変わります。
自力で歩いて避難できる年齢だと5~6歳以上になると思いますが、これくらいの年齢の子どもだと、くるぶしまでというとせいぜい5cmくらい。体重が軽いので、実際のところ5cmでも流れがあったら流されてしまうでしょう。
こうなってくると、水が出たら歩くなというのが一番正しいような気がします。
「水の中を避難するときには複数名で、ロープを繋いで、棒で足下を確認しながら避難する」と書かれた本もあるようですが、体は絶対にロープで繋いではいけません。流れのある深みに誰かが落ちた場合、ロープに繋がれた人が水の勢いでみんな溺れてしまう事態が起きうるからで、繋がれたロープのおかげで助かるなどということはまずありません。
複数名で、棒で足下を確認しながら移動するのが正解ではないかと思います。
そして、避難所までの道のりと避難するときにはまりそうな溝やマンホールといったものを平常時にチェックし、頭にたたき込んでおきましょう。
さて、水が流れていない状態で足下がしっかりとしているのであれば、膝くらいまでは水に浸かっても大丈夫そうですが、この場合には足を守るために運動靴かマリンシューズを必ず着用することが必要です。よく使われる長靴は、中に水が入ると重たくて歩けなくなります。
そして、水の中を避難するときには換えの靴と靴下、そして足を拭くためのタオルは必ず用意してください。避難完了後に足が濡れたままでは避難所に収容してもらえません。
ともあれ、短時間で地域が水没するような事態にでもならない限りは、水が溢れる前に避難所へ避難を完了することが大事だと思います。
水害は7月に集中している石西地域
7月23日は昭和58年水害の発生した日で、益田では10時のサイレンにあわせて黙祷された方も多いと思います。
益田川ダムが造られるきっかけとなった大きな水害ですが、すでに36年前になるんですね。
その後も何度か水害が起きており、一番最近では平成25年7月の津和野を襲った集中豪雨によるものですが、石西地域で起きる水害はかなりの割合で7月に集中していることをご存じですか?
梅雨末期、もしくは梅雨明けすぐの時期にどうやら大雨が降るようになっているようで、国土交通省の高津川の紹介によると、昭和47年、昭和58年、そして平成9年の水害が7月に起きているそうです。平成25年の津和野は津和野川で島根県が管理している区域であるために出ていないということのようです。
今年もかなりの雨が降り続いていますが、できれば何事も無くこのまま梅雨明けしてほしいものです。
市街地が水没した昭和58年の水害の記憶を持っているのは40歳以上の人たちになると思いますが、もし機会があったら、その時市内に住んでいた人にその時どうしたのかを聞いておくと、万が一水害が起きたときに参考になると思います。
危険を体験しておく
人間という生き物は、自分の経験則の中から現在の状況を推測して行動しようとする癖があります。
一度にたくさんの情報を処理し、行動しなくてはいけないところからそういう癖があるらしいのですが、自分の経験則が少ないと経験豊富な人から見たらありえないようなミスをすることがあります。
大人から見て子どもが危なっかしく見えることを考えればこの意味がわかると思いますが、さまざまな経験をすることは自分の判断や行動をより安全なものとするために絶対必要なものです。
「危険がある場合にはそこから遠ざける」ことが現在の日本の多くの人の行動原理となっていますが、危険から遠ざけられて実際にその危険を体験していない人は、そもそも何が危険なのかがわからないという事態が起こり、避難が必要なはずの地域に住んでいるのに避難しなかったり、危険な場所に家を建てたりしてしまうのが現状です。
自分が子どもの時に自分以外の誰かが危険から守ってくれていたことが原体験となってしまい、大人になっても自分で危険性を考えること無く、誰かが自分を危険から守ってくれると思い込んでしまっているのではないでしょうか。
ただ、経験を積めばよいというものでもありません。自分の過去の経験で絶対にここまでは津波がこないと思い込んでいた場所が津波にのまれてしまった東日本大震災のようなケースがあります。災害の場合には自身の経験だけで無く、歴史からも学んでおく必要がありますが、ともかく知っておくことが一番大切なのだと思います。
ところで、ここ最近でずいぶんとさまざまな災害を体験できる施設や装置が増えてきていますが、あなたはどんなものを体験したことがありますか?
例えば、起震装置による地震体験。最近は装備も改良されて過去に起きたさまざまな地震を再現できるようなものも増えています。海溝型と直下型の違いが体験できるようなものもありますので、一度経験しておくと本番では慌てなくてすむと思います。
また、消火器の使用訓練。消火器はいざ使おうと思ってもなかなかうまく使えないものですが、職場や地域の防災訓練等で使い方の訓練を受けておくと、いざというときに迷わず使うことができます。また、お近くで実地訓練が無い場合には、せめて映像による消火器の使い方の説明だけでも確認しておきましょう。(リンク先は福岡消防局のものです)
他にも煙の中の避難が体験できる煙ハウスや、水害や津波が体験できるVRなどもありますので、そういったもので実際に起きたらどのような感じになるのかを体験し、経験して考え、本番に備えていくのがよいと思います。
本来は、裸火や刃物なども実際に体験しておいた方がいいのですが、極端なまでに治安維持に傾いているこの国では、そういったものは生活から遠ざけられているのが実際です。
ちょっとした時間を作って、たき火OKな場所でたき火をしてみたり、ナイフを使っていろいろな道具を作ってみたりすることも経験しておくことで、火や刃物の便利さと怖さを知ることが出来、生きた危険対策をすることができるのではないかと思います。
体験したことのないものは、その危険性も理解できない。
そのことを頭の片隅においていただき、機会を作ってさまざまな体験をしていただければなと思います。
そういえば、最近はやっている着衣水泳体験のおかげで、子どもの川での溺死が急速に減ってきているという内容が書かれていたのを見つけました。
大人の溺死者はあまり変わっていないそうなので、今後は大人も着衣水泳体験をしていく必要があるのだろうなと思っています。
手前味噌で恐縮ですが、2019年7月28日に当研究所でも「大人の着衣水泳体験会」を益田スイミング様にて開催する予定になっています。
危険を体験するという内容の一つとして、お近くの方は参加されてはいかがでしょうか?
申し込みは益田スイミング様受付、または当研究所へのお問い合わせフォームにて可能ですのでご案内させていただきます。
災害時に頭を護るあれこれ
災害、特に地震では「頭を護りましょう」ということがことあるごとに言われます。
例えば有名な「ダンゴムシのポーズ」は手で頭と首を守るような姿勢を取ることになっていますし、防災ずきんは必ず被るように指導されているところも多いと思います。
また、ヘルメットも着用を勧められているわけですが、これらで頭を守るためには正しく着用することができるようになっていなければ意味がありません。
地震報道時のマスコミがヘルメットを前後ろ逆に着用していたり、あごひもをつけていなかったりした映像はネットでちょっと調べるといくらでも出てきますし、防災ずきんは冬場はともかく夏場は暑くて熱中症になってしまう場合もありそうです。
これらの用途は「頭上からの落下物から頭を護る」ことなので、例えば頭上の安全が確保されている避難所であればかぶらなくてもいいわけですから、場所と状況に応じて臨機応変につけたり外したりすることが大切です。
また、防災ずきんや通常のヘルメットを洪水や大雨時の避難で着用することは危険かもしれません。
あごひもをちゃんと締めて避難しているときに水で流されたりすると、防災ずきんや普通のヘルメットでは水の勢いをもろに受けて流され、あごひもで首が絞まることにもなりかねません。
こんなとき、自転車用のヘルメットであれば、汗を逃がすための穴が開いていますので、水に流されても首が絞まることはありません。
水遊びなどでヘルメットとライフジャケットを着用して遊んでいる人を見かけることがありますが、被っているヘルメットは高確率で自転車用だと思います。
もっとも、自転車用ヘルメットが災害対策に使えるなんてことはメーカーさんはたぶん言わないと思うので、使う際には自己責任ということになりますが、自転車に乗る子どもがいる家では、かなりの確率で自転車用ヘルメットがあると思いますので、それを避難時に着用するとより安全な避難ができると思います。
また、普通の帽子や手ぬぐい、タオルでも上から降ってくる細々とした破片から頭部を守ることは可能ですので、あればかぶるようにしてください。
余談ですが、ショッピングセンターなどで地震にあったら「その場でかごをかぶる」といったことが言われることがありますが、通路の両側にある商品が落ちてくるのを防ぐことはできませんので駕籠をかぶっても頭部へのダメージはそのまま通ります。かごをかぶるよりもなるべく落下物の少ない場所へ移動する方が安全だと考えています。
もし手に鞄などを持っていたのであれば、それらを両手で支えて頭の上を守ることはできると思います。
ともあれ、頭部を守れれば自分が生き残るための判断が継続できますから、いろいろな方法で頭を護り、自分の行動が止まらないようにしましょう。
車での避難を考える
避難行動のとき、早めに動けば避難に車を使うことができるということをずいぶん前に書きましたが、車で避難した方がいいという考え方と、車で避難すべきではないという考え方のどちらかでなければならないのかといえば、必ずしもそうではないのではないかと考えます。
今回は車で避難し、シェルターとして使うとしたらという視点で考えてみたいと思います。
1)車を使う利点
車が使えると、重さや距離を気にすることなく多くの物資や人員を輸送することができます。
つまり、当面の避難生活に必要ないろいろな機材を積み込んで家族で安全なところへ移動ができるということで、高齢者や要支援者のいる人にとってはかなりのメリットです。
そして車を生活空間に使えるためプライベートが確保されます。ミニバンや軽バンなら、避難所と比べて快適な避難生活を送ることが可能でしょう。
また、被災区域の外まで逃げてしまえば、少なくとも災害の直接的な影響を受けることは避けられます。
2)車を使う欠点
みんなが一斉に車で避難を始めると渋滞が起きて災害に巻き込まれるというケースが多発していることから、原則として車での避難は禁止されています。
また、道路が破損している場合にはそこから先に進めず車を置いて逃げることになりますが、そうすると車が道路の阻害物となってしまってさまざまな障害を起こすことになります。
地震の時はどこで何が起きているかわからないこと、そして緊急車両を速やかに通過させるため、車は使わないという意識を徹底しておかなくてはいけません。
特に津波が心配されるような場合には、みんなが自動車で避難しようとする結果、走って逃げた方が早かったという事態になりますので、最初から車を使わないことをお勧めします。
ただ、これは地域によっては車で無ければ逃げ切れないというところもあり、それぞれの地域に応じた対策を考えておく必要があるでしょう。
3)どんなときなら車が使える?
水害や大雨といった時の早期の避難であれば、自動車は問題なく使えます。
避難場所は自動車でも避難できるところがかなりありますので、あらかじめ現地を確認しておき、水に浸からずに車を安全における避難場所を決めておいた方がいいでしょう。
避難を行った後、状況が収まるまでは車の中で過ごすことになりますが、燃料が無いとただの箱になりますので、車をシェルターとして考えている場合には、燃料については意識しておく方がよいと思います。
また、あらかじめ水や毛布などを積み込んでおくことで、倉庫としても活用することができます。
4)エコノミー症候群を防ぐには?
車での避難で一番問題とされるのがこのエコノミー症候群ですが、これは体が長時間同じ姿勢を強いられることで発生するものですので、防ぐためには体をしっかりと動かすことです。
座りっぱなしや寝っぱなしにならないように、一時間に一度程度はしっかりと体を動かすようにしましょう。また、寝るときにはなるべく体の姿勢が平らになるように敷物や詰め物をするとよいと思います。
都会地では車を使わない方が安全に避難できるでしょうし、田舎では車で無いと避難ができない場所がたくさんあります。
災害時に自動車で行う避難については賛否両論あるわけですが、発生している災害やお住まいの地域、そして自身の命を守ることを考えた上で、最適な方法を考えたらよいのではないでしょうか。
使ったことのない道具は使えない
災害用に準備している非常用持ち出し袋ですが、あなたは その中身を使ったことがありますか?
もしかしたら買ったり揃えたりしたことで安心してそのまましまい込んでいるということになっていませんか?
非常用持ち出し袋に限らず、準備した道具はとにかく一度使ってみることです。
使ってみたら、その道具がどんな癖があってどんな風にしたら使えるのかがわかります。
例えば、懐中電灯一本でもその照度やスイッチの位置、使い方を理解しているのとしていないのでは行動に格段の差が出ます。
夜中に緊急避難しなくてはならないとき、いちいち説明書を読んでいるわけにはいかないですから、最低限の使い方だけでも自分の中で覚えておく必要があり、そのためには実際に使ってみるのが一番だということなのです。
銀色で薄い非常用ブランケットは一度出すとしまうのがかなり大変ですが、そうでないものは少々使ったからといって困るものでもありません。
やってみたら使えなかったとか、他のものに変えた方がよさそうだといったマイナス情報は使わないことには手に入らないものですから、とにかく使ってみることが大切です。また、通信販売や書籍などで「これはおすすめ」とされていても、実際に使ってみたら自分にとってはどうなのかもわかります。
非常用持ち出し袋は確かに非常用ですが、普段使いにも使えるものがたくさんあります。
たまでいいので、定期的に非常用持ち出し袋の中の道具を使ってみることで、非常用持ち出し袋を意識することが出来、その中身の整理と整備、そして準備した道具類の経験値を積むことができます。
そして、それはいざというときには必ずあなたの命を助けてくれます。
せっかく準備したのですから、非常用持ち出し袋の中身も定期的に使ってみて、より自分にあった道具類を揃えていけるといいですね。
夜間の避難を考える
梅雨も終わりに近づいているようですが、梅雨前線と台風との相乗効果による大雨が予測されています。
大雨警報・洪水警報が発令された後は、気象情報や近くの川の水位に充分注意をし、 危険だなと判断したら、速やかに安全な場所へ避難されることをお勧めします。
ただ、状況によっては避難所が開設されていない場合もあるかもしれませんので、避難される際には事前に避難所の開設状況をご確認ください。
ところで、避難するに当たっては可能な限り日のあるうちに行うようにしましょう。
日中であれば避難する道を目で確認しながら移動できますので、状況を見て避難ルートを変更したり避難先を変えたりすることが容易にできますが、夜間になると頼りになるのは懐中電灯と街灯くらい。雨が降っていて暗くなっている場合には目で十分な確認を行うことができません。そのため、日中なら気づけるかもしれない側溝やマンホールの異常に気づかず、はまってしまったり落ちたりする可能性があります。
普段の夜間の状態を知っていればともかく、普段見ていない時間に大雨や大水の出ている状態での避難は、危険を招くことがあるということを知っておきましょう。
足が悪かったり、寝起きが悪かったりして異常事態が起きてもすぐに避難できない方は、可能な限り高い場所で寝ることをお勧めします。
普段一階で寝ている人であれば、階段の上り下りでかなり不自由するとは思いますが、二階で夜を過ごす。そうすることにより、少なくとも溢れてきた水でおぼれる危険性は低くなります。
大原則は水に浸からない場所に避難をすることになるのですが、雨で視界が聞かない中を移動する危険と天秤にかけて、家の高いところに避難するという選択肢もあると思います。
命を守ることを行動の原則として、自分にとってもっとも安全が確保できそうな方法で避難を行うようにしましょう。
避難後の温度対策
避難した先に冷暖房があればいいのですが、体育館のような場所だと大抵の場合は冷暖房の装置がありません。
また、災害のときに何らかの形でエネルギーが途絶えてしまえば、機械のスイッチを入れることができませんから避難所は外の環境と同じような状態になります。
そうすると暑かったり寒かったりして体調を崩してしまう人が出てくるのですが、なかなか対策がうまく見つからないものです。
実はこの温度管理に重要なのが「風」。
寒いときには風を遮断し、熱いときには風を通す。それだけで環境の快適さがずいぶんと変わります。
寒いときには風を遮断して体の周りに空気の層を作り出すこと。それだけで充分に暖かく過ごすことができます。よく防災グッズに入っている銀色のエマージェンシーシートは、なるべく体に巻き付けて体の周りにある空気を逃がさないようにするためのもので、エマージェンシーシートを身につけたからといっても体の周りに動かない空気の層ができなければただ寒いだけでちっとも暖かくはなりません。体を温めるための熱は体温であり、エマージェンシーシートが暖かくなるわけではないことに注意が必要なのです。
また、夏場の暑いときには建物の中を風が抜けるようにします。窓を開け放ち、風の通り道を確保することで、居住環境がずいぶんと変わります。
この場合は、例えば外の温度の方が低ければ建物内部から外に向けて扇風機を回すと内部の熱を追い出すことができますし、逆に中の方が涼しいのであれば、建物内部で扇風機を回すようにするとそれなりに快適な空間を確保できます。
避難所で体調を崩す理由の一つが、この温度管理にありますので、なるべく快適な環境を作り出せるように、「風」を意識して準備をしておきたいものですね。
地震の時のポーズあれこれ
「地震が起きたらダンゴムシ」というのは結構有名になってきた地震のときの姿勢ではないでしょうか。
うずくまって両手で頭と首を守るこの格好は、落下物から重要な部分を守り、その上で転倒をしないという意味で非常に理にかなっていると思います。
また、学校の教室などでは、机の下に潜って両手で机を支える「アライグマのポーズ」というのもありますが、これは使っている机によっては逆に怪我をしてしまったりすることもありますので注意が必要です。
これらの姿勢を取る練習としてよく「シェイクアウト訓練」というような言い方をしますが、そもそもなぜこのような姿勢を取る必要があるのかを考えたことがありますか?
第一には頭を護ること。判断し行動するためには正常な判断が下せる状況であることが大切ですから、これは必須です。
次に、怪我をしないこと。特に地震の際には転倒による怪我がよく起きます。ちょっと大きな地震が起きると、転倒による骨折で救急搬送というニュースが必ずといっていいくらい流れますが、これを防ぐには転倒しないようにすることしかありません。なるべく重心を低くして転がりにくくすることが大事です。
例えばよく転倒事故の起きる階段では、揺れ始めたらその場でしゃがみ、あれば手すりをしっかりと持つ。これだけで転倒する可能性はずいぶんと低くなります。
また、地震への対応策として「地震が起きたら外へ逃げろ」というのがありますが、揺れているときにはまず移動できませんし、無理矢理に移動することはかなりの危険を伴う行動です。耐震補強され、転倒防止、落下防止対策がきちんとされているところであれば、自分が転がらないような姿勢を保てさえすれば、怪我をすることはないと思います。
ところで、先日ちょっと考えさせられることがありました。
外での避難でもダンゴムシのポーズを取りなさいという内容の本だったのですが、地震が起きると、砂やほこりが宙を舞います。建物の中であれば問題ないと思いますが、校庭や公園などの土の地面が露出している場所だと、揺れてる最中に砂煙が起こります。そんな状態の時にダンゴムシのポーズを取っていたら、目や口に砂やほころが入り込んで体にダメージを受けてしまいます。
ダンゴムシのポーズは「落下物対策」と「転倒防止」のためのものです。もしも外にいて上や周囲からものが落ちたり飛んできたりしないのであれば「落下物対策」は必要ありません。そうすると「転倒防止」だけに集中すればいいわけですから、仰向けの大の字で寝たり、両足を拡げて腕をつき状態を支えるような格好で転がることを防げれば充分だということになります。
非常時、場所によってポーズを変えるのは大変だからということで、学校や保育所、幼稚園などの教育施設では一元的に「地震が起きたらダンゴムシ」と教えることは大切だと思いますが、それによって体を痛めてしまっては何にもなりません。なぜその格好をするのかを考える必要があると思います。
当研究所では、外での転倒防止の格好は「足を大の字に拡げて上体は起こし、両腕は地面を支える」のが一番良いのでは無いかと考えています。これを「メタボパンダのポーズ」と呼んでいるのですが、あなたならどんな名前を付けますか?