非常食を使う羽目になった

 本日は当研究所の川遊びの日でした。
 いつもの川のいつも遊ぶ場所に到着し、一同で思い切り遊んだ後で昼食となりましたが、ここで驚くべき事実が発覚。
 なんと、本日の昼食の主食である食パンを忘れてきてしまったのです。
 クーラーボックスに入っていたのはパンに挟むためのハムや卵サラダ、ポテトサラダ、チーズで、これではとてもお腹がいっぱいにはなりません。
 とはいえ、周囲10km圏内には食料品店は無く、非常用持ち出し袋や非常用備蓄品も持ってきてはいませんので、お腹の足しになるものは殆ど無い状態です。
 急遽非常用にと車に積んでいた、先日買ったフリーズドライのあんこ餅&黒みつきなこ餅の出動となりました。

あんこ餅と黒みつきなこ餅。「IZAMESHI」ブランドの高級品ではある。

 どちらも一袋ずつなのでお餅の数は正味12個。
 今回の参加者は6人でしたので、一人2個は食べられる計算になります。
 さっそく、あんこ餅の方を開けてみました。
中には乾燥餅が6個、あんこの元1袋、戻す用の水(40g)一袋、そして割り箸が入っていました。

 戻すための水が入っていないものが多いので、こんな風にオールインワンになっていると、いざというときに助かりますね。
 餅を戻すため、レトルトパウチの袋を破って中の水を加えます。

 水を注ぎながら餅の説明書を見ると「片側のトレーに添付のあん顆粒に水を小さじ一杯分(約5cc)を注いでよく混ぜてあんこを作ります」と書かれています。

裏には作り方が丁寧に書かれています。ろくに読みもしないで作ったのが間違いの元でした。


「もしかして作り方間違えた?」
 はいえ、もう作り出してますので修正も難しいです。結局、もちはそのまま戻し、戻した水のあまりを使って餡をこねることにしました。

簡単お汁粉の素に餅をまぶすような状態になりました。水が多すぎたのが敗因です。

 できあがったのは「かなり薄いあんこ」。「あんこ餅」というよりも「冷たい、小豆の入ってないぜんざい」を餅にまぶして食べるような感じでしたが、空腹は最大の調理人。皆さんご機嫌で食べることができました。

次は黒みつきなこ餅です。こちらも封を開けるとあんころ餅と同じように、フリーズドライの餅とそれを戻すための水がついています。そして、黒みつときなこの袋。

 こちらは水で普通に餅を戻し、トレーから水を切って黒みつときなこを振りかけます。この場合、黒みつが先なのかきなこが先なのかはかなり深刻な議論がされるところですが、お腹が減っているときには関係ないので適当に作って一同に配り、これまたご機嫌で胃袋に収まってくれました。
 このお餅のおかげか、午後からも元気に川遊びをすることができ、なんとか無事に終了することができました。
 今回は、まさかこのような事態になってしまうとは思っていなかったので「非常用持ち出し袋」を持ってきておらず、また非常用備蓄品として準備してあるアルファ米やその他非常食もまったく使えなかったわけですが、災害もたぶんこんな感じで予測していないときに来るのだろうなと思い、普段から持ち歩くものについてもう一度考え直す必要があるなと深く反省しました。
 あなたはこんな経験、ありませんか?

【活動報告】着衣水泳体験会を実施しました。

服を着てプールに入るのはやはり勝手が違うらしく、皆さん微妙に緊張した表情でした。

 去る7月28日午前10時から益田スイミング様で着衣水泳体験会を実施することができました。
 当日は久しぶりの良い天気にもかかわらず10名の方にご参加いただきましたことに感謝いたします。
 益田スイミング様の原田コーチと石川コーチにご指導いただき、柔軟体操の後はまずは浮き方から教わりました。

まずは浮く方法から。頭ではわかっていても、なかなか体は動きません。

 息を吸い込み、両腕を大きく拡げて体の力を抜いて浮く、ということだったのですが、試してみた所長はさっそく水没してしまいました。
 体に力が入っており、腰を中心に体が「く」の字に曲がっていたため浮力が足りず沈んでしまった、とのコーチの指摘。
 何度かやっているうちに、なんとか体を浮かせることができました。
 その後は、そのまま安全な場所へ泳いで移動するのですが、これまた力が入って沈没。久しぶりに水に入ったと言うこともあるのですが、やはりかなり勝手が違います。
 泳ぎ達者な参加者の皆様も、着衣だとかなり勝手が違うらしく四苦八苦。

なるべく顔をつけないで周りを見ながら泳ぐことが助かる秘訣です。

 水の中にいるときには服のおかげで浮力はできるのですが、服やズボンの生地がまとわりついて動きにくいのです。そして、水からあがると途端に服がまとわりついて重たくなります。
 着衣のままがいいのか、それともなるべく脱いだ方がいいのか、判断に迷う感じでした。
 その後は水に落ちてしまったときの安全な脱出方法についてレクチャーをしていただきました。
 落ちてしまったら、まずは周囲の確認。そしてなるべく体力を温存できる泳ぎ方で陸地を目指すということで、実際に事故を想定してプールサイドからプールへ落としてもらい、安全な場所まで泳ぐという体験をし、違いを確認すると言うことで靴とズボンを水中で脱いで泳いでみるという体験もしました。

危険は無いとはわかっていても、落ちる瞬間はやっぱりびっくりする。

 着衣水泳をしているときははっきりとわかりませんでしたが、靴とズボンを脱いだだけで格段に泳ぎやすくなり、それまで苦戦していた参加者の皆様もすいすいと泳いでいました。
 そして最後に救助の方法を教えていただきました。
 基本は溺れている人には近づかない。道具を使って救助すること、ということで、ペットボトルを遭難者に投げて浮かんでもらうという方法を教わりました。
 試しにペットボトルに水を少し入れて投げてみるのですが、なかなか上手に飛びません。これも経験が必要だなと感じました。
一番最後に、おまけとして水を一杯に満たした長靴を履いて歩くという体験をしていただきました。

思わぬ重たさによろけてしまう。長靴の重さは、水込みで片方2kg弱。

 今回の着衣水泳体験会では運動靴を履いてやりましたので、期せずして運動靴と長靴で水の中を歩いたらどうなるかを実体験していただくことができました。
 一番最初に履いた人はうまく歩けずによろけてしまいましたが、それを見ていた他の方は上手に歩いてみたり、中には水が入ったまま飛び跳ねる人がいたりと、普通では見られない体験ができました。
 体験された皆様からは「服を着たまま水に落ちたら、泳げると思っていてもけっこう難しい」「なるべく早く服を脱ぐほうが助かる可能性が高い」「泳げないけれど浮くことはできそうだ」「水害の避難の時には長靴より運動靴だね」「益田スイミングで体幹トレーニングしてるから水入り長靴のジャンプも余裕!」などといったご意見をいただき、賑やかに終了させていただくことができました。
 子どもさんは学校で着衣水泳をやる機会が増えていますが、大人の方はあまり体験する機会のない着衣水泳。私自身もそうでしたが、「知っている」ということと「体験している」ということはまったくの別次元の話だなとしみじみと感じました。
 なるべくたくさんの大人たちに体験していただきたいと思いますので、来年またできることを目指して頑張ります。
 今回の体験会の実施にあたって、ご参加いただきました皆様、そして開催に関して全面的にご協力いただきました益田スイミングの皆様に改めてお礼申し上げます。本当にありがとうございました。また、今回の趣旨に賛同してご寄付いただきました皆様にも感謝いたします。収支報告につきましては、別途個別にご案内いたしますことをご了解ください。

危険を体験しておく

 人間という生き物は、自分の経験則の中から現在の状況を推測して行動しようとする癖があります。
 一度にたくさんの情報を処理し、行動しなくてはいけないところからそういう癖があるらしいのですが、自分の経験則が少ないと経験豊富な人から見たらありえないようなミスをすることがあります。
 大人から見て子どもが危なっかしく見えることを考えればこの意味がわかると思いますが、さまざまな経験をすることは自分の判断や行動をより安全なものとするために絶対必要なものです。
 「危険がある場合にはそこから遠ざける」ことが現在の日本の多くの人の行動原理となっていますが、危険から遠ざけられて実際にその危険を体験していない人は、そもそも何が危険なのかがわからないという事態が起こり、避難が必要なはずの地域に住んでいるのに避難しなかったり、危険な場所に家を建てたりしてしまうのが現状です。
 自分が子どもの時に自分以外の誰かが危険から守ってくれていたことが原体験となってしまい、大人になっても自分で危険性を考えること無く、誰かが自分を危険から守ってくれると思い込んでしまっているのではないでしょうか。
 ただ、経験を積めばよいというものでもありません。自分の過去の経験で絶対にここまでは津波がこないと思い込んでいた場所が津波にのまれてしまった東日本大震災のようなケースがあります。災害の場合には自身の経験だけで無く、歴史からも学んでおく必要がありますが、ともかく知っておくことが一番大切なのだと思います。
 ところで、ここ最近でずいぶんとさまざまな災害を体験できる施設や装置が増えてきていますが、あなたはどんなものを体験したことがありますか?

 例えば、起震装置による地震体験。最近は装備も改良されて過去に起きたさまざまな地震を再現できるようなものも増えています。海溝型と直下型の違いが体験できるようなものもありますので、一度経験しておくと本番では慌てなくてすむと思います。
 また、消火器の使用訓練。消火器はいざ使おうと思ってもなかなかうまく使えないものですが、職場や地域の防災訓練等で使い方の訓練を受けておくと、いざというときに迷わず使うことができます。また、お近くで実地訓練が無い場合には、せめて映像による消火器の使い方の説明だけでも確認しておきましょう。(リンク先は福岡消防局のものです)
 他にも煙の中の避難が体験できる煙ハウスや、水害や津波が体験できるVRなどもありますので、そういったもので実際に起きたらどのような感じになるのかを体験し、経験して考え、本番に備えていくのがよいと思います。
 本来は、裸火や刃物なども実際に体験しておいた方がいいのですが、極端なまでに治安維持に傾いているこの国では、そういったものは生活から遠ざけられているのが実際です。
 ちょっとした時間を作って、たき火OKな場所でたき火をしてみたり、ナイフを使っていろいろな道具を作ってみたりすることも経験しておくことで、火や刃物の便利さと怖さを知ることが出来、生きた危険対策をすることができるのではないかと思います。
 体験したことのないものは、その危険性も理解できない。
 そのことを頭の片隅においていただき、機会を作ってさまざまな体験をしていただければなと思います。

 そういえば、最近はやっている着衣水泳体験のおかげで、子どもの川での溺死が急速に減ってきているという内容が書かれていたのを見つけました。
 大人の溺死者はあまり変わっていないそうなので、今後は大人も着衣水泳体験をしていく必要があるのだろうなと思っています。
 手前味噌で恐縮ですが、2019年7月28日に当研究所でも「大人の着衣水泳体験会」を益田スイミング様にて開催する予定になっています。
 危険を体験するという内容の一つとして、お近くの方は参加されてはいかがでしょうか?
 申し込みは益田スイミング様受付、または当研究所へのお問い合わせフォームにて可能ですのでご案内させていただきます。

節水型手洗い装置を作る

 災害時には水は貴重品となります。
 生活用水とはいえ、手洗いに使う水も普段のようにじゃぶじゃぶとふんだんな流水を使うわけにはいきません。
 ただ、そうはいっても手は洗いたいもの。
 そこで節水型の手洗い装置を作ってみることにしました。

・用意するもの

ペットボトル1個、穴を開けるための道具

穴が開けば釘でも安全ピンでも大丈夫。

・作り方

1.まずはペットボトルの下の方に穴を開けます。小さすぎるとうまく水が出ませんし、大きくなると水がこぼれてしまいますので、ちょっとずつ穴を拡げて、ちょうどいいサイズを探してみてください。

2.開けた穴を指で押さえて内部に水を入れます。

蓋がきちんと閉まっていれば押さえない限り水はこぼれない。

3.穴を指で押さえたままキャップを閉めます。これでできあがりです。

キャップの微調整が少し難しいが、慣れると思ったように調整できるようになる。

4.キャップを緩めると水が出てきますので、適当な量で手を洗い、キャップを閉めます。少量の水で手が洗える節水型手洗い装置ができました。

穴のサイズとキャップの閉まり具合で出てくる水の量がさまざまに変化しますので、平時にいろいろとやってみて好みの状態を把握しておくといいかもしれません。

懐中電灯を即席ランタンにする方法

懐中電灯だけで照らしてみる。小型ながら強力な懐中電灯なので、壁の反射で周囲が明るくなっている。

 懐中電灯は指向性の強い灯りです。その指向性の強さのおかげで安心して歩いたり移動したりできる照明器具なのですが、いざ避難所で使おうとすると、いる場所全体を照らしたいのに天井や壁の一点しか明るくならず、どうかすると他の避難者の方からまぶしいと怒られたりしてしまうものです。
 今回は懐中電灯をちょっとした工夫で即席ランタンにする方法を考えてみます。

1.懐中電灯とランタンの違い

 懐中電灯は一点を照らすため光が指向性を持っている照明器具で、ランタンは逆に周辺全体を照らす照明器具で、懐中電灯ほど明るくはなりませんが、明るさの濃淡というのはさほどひどくはありません。

2.懐中電灯をランタンにするには?

 懐中電灯をランタンとして使うためには、指向性の強い光を周りに拡散する仕掛けを作ればいいことになります。
 灯りの部分に何かをかぶせることで、光を散らすことが基本になりそうです。

1)水のペットボトルを使う

懐中電灯の上に水のペットボトルを置いてみた
重心が上にあるので支えていないとひっくり返る。小型の懐中電灯だと、懐中電灯を入れる容器が必要になりそう。

 照明の光の上に水の入ったペットボトルを置きます。ペットボトルと内部の水が光を反射して、周囲に散光します。
 強めの光が周囲に広がりますが、水の入ったペットボトルという重たいものなので、上手に取り付けないとすぐにこけてしまいそうです。

2)不透明のビニール袋をかぶせる

不透明のビニール袋をかぶせた懐中電灯
ビニール袋はしわくちゃにしてあると光を周囲に反射してくれる。

 買い物などでよく使う不透明のビニール袋をくしゃくしゃにして懐中電灯の光の部分にかぶせます。
 懐中電灯の光は袋の中で乱反射して周囲を明るく照らします。
 懐中電灯が熱を持つタイプだと、その熱でビニール袋が溶けることがありますので、熱くならないように気をつける必要があります。

 地震などで余震が続く状態の時には、ロウソクなどの裸火は使うことができません。
 電池式ランタンがあると一番良いのですが、もしも懐中電灯しか持ち出せなかったときには、光の出口部分に出た光を乱反射させて周囲に散らせるような道具を取り付けることで、周囲を照らせる即席ランタンができますよ。
 自分たちの好みの光を見つけて、それを作れるようにしておくといいですね。

蘇生法を知ろう

心肺蘇生の練習をするために作られた”actor911”

 災害時に限らずですが、負傷者がいるときに考えるべきことは、可能な限り早く確実な手当ができるところ、例えば病院に輸送して手当を受けさせることです。
 ただ、可能な限り早くといっても本格的な手当が開始されるまで何もしなければ生存率は格段に下がってしまいますので、それまでどのようにして命を繋ぐかということを考えておく必要があります。
 大きな出血があれば止血し、心肺停止していれば心臓マッサージや人工呼吸を行うことで、大けがをしている人の生存率を格段に上げることができます。
 今回は、その方法について書いてみたいと思います。
 ただ、最初にお断りしておきますが、止血処置や心臓マッサージ、人工呼吸を行うには正しい知識と正しい訓練が必要です。これには消防署や日本赤十字社が行っている救命講習を受講することが早道です。
 それぞれの救命処置も時代によってどんどん変化していきますので、できれば年に1回程度定期的にどこかで受講して、知識を更新されることをお勧めします。

1.処置にかかるまでの準備

(1)まずは安全確保

 負傷者がいる場合に最初に気をつけないといけないのは、まずは自分の安全です。救助者が被災しては何にもならないので、まずは安全な環境かどうかを確認します。
 負傷者がいる場所が危険であれば、まず安全な場所へ移動させてからの処置となります。

(2)負傷者の全身の状態を確認する

 どのような怪我をしているのか、呼吸や反応はあるかを観察します。大規模な出血などがある場合には、止血処置を優先するかどうかなどもここで考えます。

(3)意識の確認をします

顔を近づけて肩をたたき、耳元で大きな声で「大丈夫ですか!」と声かけをします。3回もやると、意識があればなんらかの反応が返ってくるので、反応がない場合には意識がないと判断します。

(4)支援者を呼ぶ

 周囲に人がいれば、依頼する人を特定して119番通報とAEDの搬送を要請します。このときに、「救急車を呼んで」ではなく「119番通報してください」というように具体的な行動指示を行うようにしてください。
「○○さんは119番通報してください」「そこの赤いシャツの人はAEDを○○ストアから持ってきてください」といった感じです。

(5)呼吸の確認

 胸及び腹の動きを観察します。呼吸があれば上下運動しているはずですので、それがなければ呼吸を停止していると判断します。
 一般的には呼吸停止していても、しばらくの間心臓は動いています。心臓が動いていても心臓マッサージは問題ないという所見が出ているそうなので、「呼吸停止=心停止」と判断してよさそうです。
 意識がなくて呼吸がある場合には、舌や吐瀉物で気道がふさがるのを防ぐため、頭と体を横向きにします。可能であれば頭に枕をするとよりいいでしょう。

2.処置の優先順位

放っておくと死んでしまう危険性の高いものから処置していきます。
出血と心肺停止の場合だと、まずは心臓マッサージと人工呼吸を行います。ただし、大量に出血していたり、心臓マッサージするたびに血が噴き出すような状態の場合には、止血を優先します。
可能であれば、止血処置と心臓マッサージ及び人工呼吸は同時並行で実施できればより生存率が高まります。

3.処置の方法

(1)心臓マッサージ

両手で胸骨を圧迫する。少々力を入れて押さえても凹まないことが体験できる。

 胸骨の下部分を押します。30回一セットで、手の腹の部分を使ってしっかりと体重をかけて押さえるようにします。圧迫の深さはおよそ5cm。少々のことではこの深さまでは押さえられないので、しっかりと圧迫してください。
 1分間に100~120回のペースで行うのですが、わかりにくい場合には、「もしもしかめよ~♪」の歌を歌いながら行うとちょうどよいリズムで、1番が終わるとちょうど30回の心臓マッサージができています。

(2)人工呼吸を行う

直接口同士を触れると感染症の心配があるので、ハンカチなどを間に挟んで人工呼吸を行う。

意識がない場合、全身の筋肉が弛緩しますので舌も喉の奥に垂れてしまって気道を塞いでしまうことが起きます。
そのため、気道確保が必要となります。あごをしっかりと持ち上げ、鼻の穴を押さえて、負傷者の口を塞ぐように口を合わせて胸が膨らむ程度に息を吹き込みます。
あまり一気に吹き込むと肺がパンクすることがありますので、吹き込む量には気をつけてください。
これを2セット行い、そのあとは再び心臓マッサージを行い、人工呼吸を繰り返すことを続けます。

(3)AED

蓋を開くだけで起動するAEDの例。

心停止の際には心室細動が伴うことが多いですので、それを排除しない限り心臓が自律的に拍動を再開してくれる可能性は低いです。
その心室細動を排除するのがAEDという機械で、だれでも使えるように可能な限り自動化がされています。
最近のAEDはふたを開けると同時に自動で起動し、処置の方法を1から説明してくれますので、その指示に従って作業を行います。
ただ、使用するに当たっては以下の点に気をつけてください。

①胸の周りが濡れていないこと。濡れていれば水気を拭き取ること
②湿布薬などが貼られていた場合には剥がす。
③ペースメーカーが入っていないか確認する。もしあれば右胸のところに凸があるので、パットはそれを避けて貼る。
④ネックレスなどの金属装身具はパッドに触れないように気をつける
⑤パッドは素肌に装着しなければ効果がないが、装着した後はなるべく上にタオルなどをかけて周囲の目にさらされないようにすること

  AEDのパッドは外装袋に貼る場所がイラストで描かれています。心臓を挟むようにパッドを貼り付ける必要があるので、最悪の場合心臓の上と下にパッドを貼り付けても効果があります。
 また、パッドは濡れてしまうと効果を発揮できなくなります。その場合、AEDには予備のパットが入っていますのでそれと取り替えてください。
 注意点として、AEDにおける小児とは未就学児を指します。6歳以上は成人モードで使うことになりますので気をつけてください。
 それからAEDについているパッドが小児用の場合、大人に貼り付けても電圧が足りない場合がありますので、パッドは大人用を使ってください。小児に大人用パッドを使うのは問題ありません。
 AEDは一度装着したら外しません。そのまま救急隊に引き継ぎます。つけられたAEDは負傷者の心電図などのさまざまな情報を持っていますので、それを救急隊や病院が活用します。
 使用後は戻ってきますので、パッドを交換して次の利用に備えてください。

(4)止血処置

圧迫止血を包帯がしてくれる機能を持っているものもある。写真はイスラエルバンテージ、もしくはミッキーバンテージと呼ばれるもの。

 止血処置を行うときは、二次感染を防ぐためにあらかじめビニール手袋やビニール袋などを手に被せ、直接出血部位に手を触れなくてすむようにします。
 止血処置の方法は、次の3つがあります。

①直接圧迫止血法
傷口に清潔なハンカチやタオル、ガーゼなどを直接当てて手のひらで傷口を圧迫する方法です。傷口を心臓よりも高い位置にして行えば、より止血効果を期待できます。
止血処置の基本となる方法です。
②関節圧迫止血法
傷口より心臓に近い動脈(止血点)を圧迫し、血の流れを止めて止血します。
直接圧迫式の準備や処置をする間、流血を押さえるために行うものです。
③止血帯止血法
直接圧迫止血法では止められないような大量の動脈性出血の場合、手足に限ってですが最終手段として止血帯を使った止血方法があります。
これは傷口よりも心臓に近い部分の動脈上に布を当て、布の上から止血帯を巻きます。その止血帯の結び目に棒を差し込み、血が止まるまで棒を静かに回して棒を固定します。
そしていつ止血を開始したのかがわかるように「止血開始○時○分」と外れないようにつけておきます。
この止血帯止血法は非常な痛みを伴いますので、せいぜい20分程度しか持ちません。20分たったら一度緩めて細胞の壊死を防ぐようにしてください。
止血帯止血法を取った場合は、大至急処置のできる医療機関へ搬送します。

4.処置を止めてもよいとき

 基本は救急隊が来るまで心臓マッサージ、人工呼吸、AEDを維持する必要がありますが、次のような場合には処置を止めます。

(1)生き返ったとき

 当然のことですが、生き返ったときには心臓マッサージと人工呼吸は不要です。ただ、医療機関への受診は必要ですので、AEDはつけたまま、救急隊の到着まで安静にさせてください。

(2)救急隊に引き継ぐとき

 救急隊が到着すると、救急隊員から作業の指示があります。そこで救急隊員に引き継いだ場合には、処置は終了となります。

(3)自分の安全が確保できない状態になったとき

 災害現場で救助者の命が危険にさらされているような場合には、まず自分の安全の確保をしてください。一緒に遭難しては元も子もありません。

5.その他

 心肺停止に対応する場合、AEDはかなり重要な要素となりますので、普段からAEDが備え付けてある場所を意識して確認するようにしましょう。
勝負は5分以内です。
 また、知識はあっても練習してみないことには本当はどうなるのかがわかりません。
 消防署や日本赤十字社の救急法講習を積極的に受講して、意識すればきちんと体が動くようにしておきたいものですね。
 なお、ある程度の人数が集まれば講習会を個別開催してくれる場合もありますので、詳しくはお近くの消防署や日本赤十字社の各支社にお問い合わせください。

飲むおにぎりを食べてみた

 いつぞや、どこかでみたテレビで忙しいときに便利な食事特集というのをやっていて、その中に「飲むおにぎり」というのが紹介されていました。
 片手で飲めて手も汚れず、保存期間も長めという夢のような食事だというような触れ込みだったように記憶しているのですが、これは水不要の災害食として使えるのでは無いか、きっとそのうち地元のコンビニでも売ることになるのだろうなと思っていたのですが、その後特に見かけないまま忘れていました。
 ある日、ネットショッピングでたまたまこの「飲むおにぎり」を見つけてしまい、当時忙しかったこともあるので朝ご飯代わりに使えると便利だなと思って、購入ボタンをぽちりと押して買ってみました。

飲むおにぎりはよくドリンクなどであるラミネートパウチに入っている。

 届いたものは写真の二種類。味は「梅カツオ」と「梅昆布」で賞味期限は1年くらい残っています。
 6パックセット、送料込みで3,000円ちょっとでしたので、一つが500円くらいでしょうか。コンビニのおむすびの4個分の値段なので、備蓄品なら許容範囲と感じます。カロリーは280kcal、分量は通常のおにぎり1.5個分だそうです。

 さっそく蓋を開けて覗いてみます。おにぎりというよりも、海苔の佃煮という感じです。

 お皿に出してみました。あまり食欲をそそるような見た目ではありませんが、口から直接飲むものなので問題なしとします。
 さっそく飲んでみました。
 ・・・塩辛い。味が均等にされているせいかどこまで飲んでも同じ味。お米の芯が残ったような感じもなんとも言えず、途中で少し気持ち悪くなりました。ご飯は上手にたかなければということと、おにぎりの塩気の濃い部分薄い部分が食欲を増進させていたんだなぁと感じさせられました。
 半分ほど飲んだのですが、どうにも受け付けなくなってギブアップ。
 通りかかった当所の研究員達が興味を示したので、「梅昆布」を提供して飲んでみてもらいました。
 その結果。薄味好きのS研究員は「味が濃い」として一口で終了。濃い味好きのH研究員はぺろりと嘗めた後、お茶碗にご飯をつけて佃煮代わりに使っていました。最後のM研究員は、一口食べてちょっと考えてからおもむろにお水を飲んでいました。
何でこんなに塩辛いんだろうと言うことで、改めて成分表を見てみると、梅昆布の食塩含有量は3.37g。

写真はうめかつお。食塩相当量は3.47gで、梅昆布よりも食塩量が多い。

 厚生労働省が推奨する一日の摂取目安が7.0g~8.0gですから、それは塩辛いはずです。
 貴重な水なしで食べられるかと考えていたのですが、このまま飲んだらのどが渇いて仕方が無いという結論になりました。
 ただ、アルファ米白米に混ぜれば、おいしいご飯ができるかなとも思います。
 また、汗をかいた時や濃い味が好きな人なら、ひょっとしたらおいしく食べられるのかもしれません。当研究所の所員はみな薄味になれていることもあると思います。味の好みは人それぞれですので、よかったら一度飲んでみてください。

【活動報告】「防災ポーチ作り講座」に参加しました

 2019年6月1日に益田市の吉田公民館様主催による「防災ポーチ作り講座」が開催され、当研究所からは所長とS研究員が受講者として参加させていただきました。
 今回の講師である防災士の黒澤様のお話では「災害を想像すること」が非常に大切であり、各地で起きる災害がもし自分の住んでいる地域で発生したらどのようにするかを、先日各世帯に配布されたハザードマップを確認しながら想像してみるとよいというお話がありました。
 そして、防災リュックと防災ポーチの違いについて「防災リュックは備えておくもの」であり「防災ポーチは日常使いでき、かつ被災時に使える最低限のものを持ち歩くためのもの」との説明がありました。

幅20.5cm、高さ15.5cmの百円均一のポーチ。ものはたくさん収まるが、重くすると持たなくなるという問題をどう解決するかが鍵。講師の方は、普通のポーチで自分の防災ポーチを作り上げていた。

 それから基本的な防災ポーチということで、今回は「絆創膏5枚」「個別包装されたマスク1枚」「ポリ袋2枚」「ウエットティッシュ1組」「ホイッスル&小型ライト1組」「飴2個」「マジックペン1本」「付箋紙10枚」をポーチに入れてみました。

今回作成した防災ポーチの中身を並べてみた。コンパクトだが、基本的に必要なものは揃っている。

 各シーズンによってこれに汗ふきシートやカイロ、保湿クリームなどが加わったり外れたりと、普段使いすることで自然とアイテムが更新できる仕組みになっていることを伺うことができました。また、手ぬぐいを一枚入れているとさまざまなことに使えて便利というような話もありました。
 その後、このポーチに「自分に必要なものを足してみよう」ということでグループ討議が行われ、エコバッグやソーイングセット、歯磨き用シートやガム、カード型拡大鏡、ポケットティッシュ、輪ゴム、新聞紙など、その人にとって必要だと思われるアイテムがいろいろと出てきました。
 ただ、あれこれと欲張るとポーチに収まらなくなって結局持ち運びしなくなるという問題が発生するため、ポーチに収めるものの最低ラインをどのように設定すれば良いのかということで参加者がいろいろと首をひねっていました。
 講師の方からは、これに家族やペットの写真、保険証のコピー、スマートフォンの充電器、衛生用品などが良く追加されるアイテムだという話がありました。
 他にも「ポリ袋は何枚程度あればよいのか?」や「刃物を加えるのはどうだろうか?」などといった質問も出され、非常に和やかな空気で講義時間を過ごすことができました。

参加者の発言を黒板にまとめたもの。予想もしなかったものがたくさんでて、確かに必要だと思わせるものがいろいろと出ている。

 講座の最後にはこの講座からどのようなことを考えたかという主催者からの問いがあり、「習ったことを持ち帰って周囲の人に伝えていく」「持ち歩くことが大切」「被災しても年数が経つと忘れてしまうのでこういう機会にそれが思い出せて良かった」などという意見や「避難にはスニーカーが必要で、ベッドの下にはいつも置いてある」「避難して一番困るのはトイレットペーパーの在庫」というようなお話もありました。
 いずれにしても、十人いれば十通りのセットができるというこの防災ポーチ。
 自分なら何をセットするかを考えて作ってみてはいかがでしょうか。
 最後になりましたが、講師の黒澤様、そして主催された吉田公民館の皆様にお礼申し上げます。

会場には市販の避難セットも展示されていた。文具メーカーのコクヨが出している防災バッグで、いろいろなものが収められている。ただ、普段持ち歩くには笠があるかも。

防災マップを作ろう・自分の部屋編

 防災研修会をやると必ずといっていいほど出てくる防災マップ。
 地域の危険な場所やものを調べて地図に書いていき、安全な場所や安全な避難経路を確認するために大切なものです。
 ただ、地域をどんなに点検しても外に出ることができなければ、せっかく作った地域の防災マップは何の役にも立ちません。
 自分のいる場所から外に出るまでの経路もきちんと点検しておかないといけませんよね。
 そこで、今回は自分の部屋の防災マップを作ってみようと思います。

 まず、準備するものは方眼紙。書きやすく、部屋の見取り図が書きやすいものを用意してください。
 次にメジャー。5m計れれば十分だと思います。
 この二つを使って、部屋の見取り図を作っていきます。
 記入をする方眼紙は一マスのサイズが何cmかを決めておかないといけませんが、ここではとりあえず1マス10cmとして作成をすることにしましょう。
 まずは部屋の大きさを方眼紙に黒色で落とし込みます。外枠だけ書いてあれば大丈夫です。扉やガラス窓の位置がわかるようにしておきましょう。
 次に、家具の大きさを測って記入していきます。テレビ等も記入します。
 見取り図には幅と奥行きだけを書いていきますが、高さもメモしておいてください。

所長が試しに書いてみた部屋の間取り。四角一つが10cmで作成している。

 書き終わったら、今度は赤色を使って先ほど記入した家具のうち、安定の悪い面に倒れたと想定して、メモしておいた高さに従って倒れた部分を書いていきます。
 中には倒れないものや動かないものもあると思いますが、それはそのままで大丈夫です。
 次にガラス窓が割れたことを想定して飛散する区域を斜め線で書きます。窓から30cm程度斜め線を入れておいてください。
 そして、その状態で出入り口の扉が動かせるかどうかを確認してみます。
 さて、ここまで書いてもらったのは、地震に遭ったときに最悪どのような被害が出るのかを試しに書いてみたものです。
 その絵の中に、普段自分が寝ているであろう場所に青色でマークをつけると、現在のこの部屋とあなたの危険度を教えてくれる図のできあがり!

ざっくりとだが部屋の中の危険な状態はこれでわかる。あとはいかに赤い部分を減らすことに力を入れるかだ。

 どうですか? 寝ているときに地震に襲われたとき、あなたは何かの下敷きになっていませんでしたか?
 もし下敷きになっていたり脱出路が塞がれていたのであれば、どういう風にすれば安全が確保できるかを考えてください。
 例えば、家具の向きを変えてみたり、寝る場所を変えてみたり、より低い家具に変えて転ばないようにするというのもできますよね。
 一番の理想は部屋の中に寝具以外何も無い状態ですが、それが困難であるなら「落ちない」「壊れない」「倒れない」を考え方の基本にして考えてみてください。
 また、ここまでは触れていませんでしたが、部屋の照明にも注意が必要です。天井直付けの照明器具なら大丈夫ですが、釣り下げ式のものだと激しく揺れたときにはどこかにぶつかって割れてしまう可能性があります。
 例えば笠を固定して動かないようにすれば、破片で怪我をしなくてもすみます。
部屋に限らず、自分が長く過ごす場所の安全は非常に大切です。
 一度「部屋の防災マップ」を作って、どういう風にしたら自分の身が守れるのかについて考えてみてはいかがでしょうか。

【活動報告】初めてのワークショップを開催しました。

 令和元年5月3日にワークショップ「空き缶でご飯を炊こう」を開催しました。
 最初ということもあって会員限定で行いましたが、当日は天気にも恵まれ参加していただけた皆さんも楽しんでいただけたようです。
 途中、空き缶コンロの火が消えてつかないというハプニングもありましたが、なんとか上手に炊きあがり、参加した皆さんでおいしくいただくことができました。

今後ともいろいろなワークショップを開催していきたいと思いますので、引き続きよろしくお願いいたします。

○ワークショップ「空き缶でご飯を炊こう」
 350mlの空き缶を二つ用意して、鍋とコンロを作ってみました。

・材料
350mlの空き缶二個、アルミホイル、缶切り、カッターナイフ、きり、燃料
炊くためのお米とお水

・作り方
1.まずは二つとも飲み口のある側を缶切りで切り取ります。

2.そのうちの一つの胴部分にカッターで穴を開けます。

これでコンロのできあがり。

3.空き缶一つでおよそ1合のご飯が炊けます。ご飯を入れて研ぎます。

4.炊くためのお水を注ぎます。お米よりも2.5cmくらい多めにします。所長は自分の人差し指の第一関節までと決めてます。


5.アルミホイルで包みます。お腹が減っていなければ、ここで1時間くらい水を吸わせるとさらにおいしいご飯になります。

6.コンロに燃料を入れます。今回は料理屋さんの一人鍋についている固形燃料を使います。

7.火をつけてご飯の入った缶を上にのせます。

木をくべてみるが、風の通りが悪いせいかうまく燃えてくれなかった。

7-1.固形燃料の火が消えました。慌ててその辺にあった木ぎれをくべましたが、火がなかなか続きません。吸排気がうまくいっていない感じなので、上部に排気口をきりで開けてみます。

 新しい固形燃料を入れると、今度はうまく燃えてくれました。
8.うまくいくと、やがて「チリチリ」「グラグラ」といった小さな音が聞こえてきますので、
その音が止むまで火にかけたままにします。

9.音が消えたらご飯の入った缶を火から外してひっくり返して蒸らします。
10.10分くらいしたら元に戻してアルミホイルを外します。

火力調整が悪かったのか、ちょっとだけ堅かった。

11.きらきら白ご飯の炊きあがり。

一人スプーン二杯程度しか食べられませんでしたが完食でした。そこにもお焦げはできなかったので、終了後は水で洗ってリサイクルに出せました。

 ご飯を炊くときにはお米の量と水加減、火加減によって炊きあがりがさまざまに変化しますが、空き缶でやるととくに顕著ですので、いろいろと試してみると面白いと思います。

 アルミ缶は非常に薄いので、卓上コンロなどのガスを使うと高温で溶けてしまう可能性があります。
 また、炊きあがりは非常に缶が熱くなりますので、手袋などを使ってやけどしないように気をつけてください。
 なお、アルミ缶のこういう使い方は製造元では想定していませんので、真似してトラブルが起きたときの責任はされた方の自己責任でお願いします。