制御された危険で体験をする

 新型コロナウイルス感染症のせいか、ここ最近アウトドアがはやりのようですが、それに伴ってさまざまな怪我や事故も増えているようです。
 刃物やたき火など、普段の生活で出てこないものを使うのがアウトドアの醍醐味ではあるのですが、それらは危険だということを知ってはいても経験がないため、引き起こされるトラブルも多いのですが、大きな事故や怪我を防ぐためには、制御されている状態で危険を体験することが大切です。
 二昔前くらいまでは日常生活でさまざまな体験ができていたのですが、現在は安全が最優先されて危ない目に遭うことがほとんどない状態ですから、さまざまな野外活動などで擬似的に危険を経験するしかありません。
 危険とは失敗ですが、指導者が見ているところで体験する危険は、命にかかわるものは殆どありません。怪我はするかもしれませんが、その代わりに危険について学習することができるのです。
 危険をしらないということは、どこで危険に遭遇するのかという予測もできないということです。危険を経験することで、他の部分でも危険を予測する力になり、災害時に自分が生き残ることのできる力になるのです。
 これから秋で過ごしやすい時期になってきます。
 屋外でのアウトドア教室ではさほど密にもなりませんし、個別に活動することも多いですから、そういったイベントに参加して危険に対する感覚を身につけ、生き残るための勘を養えるといいなと思います。

夜に避難訓練してみよう

 避難訓練というと日中の条件のよいときに行うことが殆どです。
 避難とはどのようなものかを体験してもらい、事故が起きないようにするためにはそうするしかないのですが、毎回同じ条件だと慣れっこになってしまうものです。
 災害は夜中に起きることがありますから、条件を変えてみることも兼ねて、一度夜間に避難訓練してみることをお勧めします。
 もちろん快晴の時で構いません。月明かりや星空の下、自分たちが決めている避難先まで移動してみるのです。
 平時は防犯灯がついていますのでそこまで危険でもありませんし、夜道を歩く練習にもなります。
 実際にやってみると、普段歩き慣れている道でも、夜歩くとまた違った表情を見ることができて意外な発見があったりします。
 これから秋。涼しく歩ける季節になります。
 避難が必要な場所にいる方は、一度やってみてはいかがでしょうか。

耐震補強、しないとどうなる?

 地震が頻発する日本では、大きな地震が起きるたびに耐震化の必要性が言われています。なぜなら、他の災害と違って、地震は起きたときには勝負がついているからです。
揺れ始めてから慌てても耐震化工事は絶対に間に合いません。
 そのため、事前に揺れても家がつぶれないように耐震化工事をきちんとしてくださいということが言われているのです。
 新築される建造物については、よほどの手抜き業者でない限りは耐震補強がされた状態で建設されているはずですが、古い建物だとどのように作られているのかがわからないので耐震補強が必要だと考えた方がいいでしょう。
 では、耐震強化をしなければどうなるのか。
 それについて、防災科学技術研究所が同じ建物で耐震補強された場合とそうでない場合の比較を実物を使って実験していますのでご確認下さい。

 この実験から言えるのは、一階よりも二階の方がいくらかは安全と言うことでしょうか。
 耐震補強する気が無い、またはしたいけれどすぐには無理という場合には、寝るところだけでも二階にしておくと、それなりに命が守れそうです。
 とはいえ、古い建物はメンテナンスをしないと劣化が進みます。その作業のついでに、耐震強化も考えてみるといいのではないでしょうか。

ケミカルライトの明るさを比較する

 化学反応で発光するケミカルライト、サイリュームとも言われていますが、コンサートなどではお馴染みのアイテムです。
 熱を出さず、燃料も電気も不要なため、非常用持ち出し袋に入れておくと万一のときの灯りとして使うことが可能です。
 もっとも、光量はそこまで強くはありませんので、場所のマーキングや障害物の注意表示に使うことが主になりますが、読書するのにも使えるというのがどこかの記事にありました。
 ご存じとは思いますが、ケミカルライトの色はさまざまです。色によって用途を分けることもできるのではないだろうか。
 そう考えて、今回は色で見える範囲を比べてみることにしました。

1.緑色


 見ての通り、かなり明るく発色しています。
 背後は地元の誇る水族館アクアスのうちわですが、文字もQRコードもかなりしっかり読み取ることができます。

2.青色、桃色


 下にある文字は読めません。
 近づいていくとぎりぎり読めるかもしれないというレベルの光量です。

 反応が始まってからの時間もあるので一概には言えませんが、黄色や緑色は割と読みやすく、桃色や青色はちょっと見にくいといった感じです。
 どの色も目立つのですが、読書や手元のごそごそに使うのなら黄色や緑色、マーキングや誘導路として使うのであれば桃色や青色が使いやすいのかなと思いました。
 もちろんこれは一つの事例でしかないので、いろいろと試してみて自分に向いたケミカルライトを準備しておくといいと思います。
 今回の比較があなたの準備の参考になれば幸いです。

避難時の思わぬトラブル

 避難訓練と実際の避難で違っていたなと考えるのに、家に残していく大切なものをどうするか、ということがありました。
 避難訓練では何を置いてもまず避難となりますが、実際の水害で災害発生までにまだ余裕があると思うと、避難の前に自分にとって大切なものをできるだけ上階に避難させておきたいという感情が働くようです。
 今回は時間にかなり早い段階で家族での避難判断をしたのですが、避難判断をしてから避難準備完了までに実は40分かかっています。
 その理由は、子ども達が自分にとって大事なものを上階に避難させていたから。
 「大事なもの」の定義がみんな違っているのはいいのですが、大事なものが何かと考え込んでしまって行動が遅くなったということもあったようです。
 非常用持ち出し袋は準備していたので着替えを入れたら終わりだったのですが、考えついた自分にとっての大事なものをあれこれと上階に避難させているうちにそれだけの時間がかかってしまいました。
 その様子を見ながら、自分にとって大事なものをきちんと決めておくこととそうでないものの整理を普段からしておかないといけないなと感じました。
 避難先から帰宅しての反省会では、自分にとって大事なものは何かを決めておくことと、それ以外はあきらめることを確認し、次回があればそれを実践してみることになりました。
 水害では、氾濫危険水位から実際の氾濫までそれなりに時間の余裕が作られています。本来それは避難用の時間なわけですが、中途半端に時間があると、逆にあれこれ考えてしまって手遅れになってしまうのかなと感じました。
 そういった意味では、避難判断から避難開始の間の最大所要時間を決めておき、それを過ぎたら問答無用で避難開始でもいいのかもしれません。
 今後家庭で行う避難訓練では、実際に大事なものを上階に避難させる訓練も取り入れた方がより実戦的になるのかなと思いました。

避難所での快適さを増す方法

 先日から台風や大雨であちこちで河川氾濫や内水面越水が起きているみたいです。
 当研究所のあるところでも、近くの高津川が氾濫危険水位にまで達したため、何度か避難指示が出されました。
 で、避難指示が発令される度にどこへ避難するかどうかを考えるのですが、今回は行政の指定する避難所へ避難してみることにしました。
 今回はそこで感じたことを書いてみたいと思います。

1.床に敷くものは必須

 避難先が体育館だったこともありますが、基本的に避難生活に必要ないろいろは自分で準備する必要があります。
 今回も少し厚めのレジャーシートを持参したのですが、避難所では四角い大きめの段ボールが敷物代わりに提供されていて、下に敷くと非常に快適でした。
 段ボールは断熱性、クッション性が高くて寝心地もいい、その上そこに誰か居るのがわかるという非常に便利なアイテムで、避難するときに持参するのもいいなと感じました。
 ちなみに、提供されていた段ボールはどうやら間仕切りだったようですが、避難者のソーシャルディスタンスは確保されるくらいの空間はありましたので、問題はなかったようです。

2.暇つぶしの道具は必須

 避難が終わると、災害の危険が収まるまではそこで待機することになります。
 多くの避難者がいるところでは大騒ぎするわけにもいきませんので、静かに時間が使える本や学習道具、ボードゲームやカードゲームなどを持参したほうがいいです。
 当研究所の研究員達(うちの子)にも普段から言ってはいたのですが、いざ避難になるとやはり考えがそこまで至らなかったようで、ちょっと困っていました。

3.歯ブラシは必須

 避難生活で発生するさまざまな病気は口の中が菌などで汚れていくことで発生するものが非常に多いです。
 それを防ぐには、歯磨きが一番です。食後に歯磨きをすることで生活リズムも保てますし、虫歯や病気を防ぐためにも歯ブラシは必ず持って行きましょう。
 入れ歯の人は、入れ歯を管理するための道具もあると快適に生活できると思います。

4.スリッパがあると安心

 体育館は原則として土足禁止なのでそこまで神経質になる必要はないのですが、衛生上素足や靴下などで中を歩くのはあまりよくないなと感じました。
 スリッパがあると、足の汚れを気にせずにすむので気分的にいいです。

5.アイマスクと耳栓は必要かも

 防犯上、避難所は夜間も消灯はしません。明るさが気になる人はアイマスクが、生活音や話し声が気になる人は耳栓を準備しておくといいと思います。
 習慣的に睡眠導入剤を飲んでいる方もいらっしゃると思いますが、避難所では何が起きるかわからないので服用はお勧めしません。
 できるだけ環境条件を整えて、薬を使わなくてもすむようにしておく方が安全だと思います。

6.自立型テントはあってもいいかも

 避難所の条件によりますが、プライバシー保護を考えると、自分たちの居住空間を目隠しできるテントはあってもいいと思います。
 避難所によっては新型コロナウイルス感染症対策等で支給されることもありますが、自分たちで準備しておくと就寝や着替えなど人に見られたくない部分を隠すことが可能です。
 ただし、夏場などで中が暑くなることもありますので、換気と熱中症対策は考えておいた方がよさそうです。

7.長袖と半袖の服を持って行く

 夏場でも冬場でも、避難所の温度管理は結構大変です。
 夏でも冷え込むことがありますし、冬でも暑くなることもあります。
 体感温度の調整が簡単にできるように、半袖の服と長袖の服を持って行くようにしましょう。
 薄手の服が複数枚あると、温度に応じて簡単に着たり脱いだりできるので、お勧めです。

8.寝袋や毛布は持って行く

 避難所での避難は、夜間は基本的に帰宅しないのがルールです。
 避難所で夜を過ごすためには、寝袋や毛布を準備しておきましょう。
 避難所で毛布が配られることもありますが、避難者の数にはとても足りません。
 また、自分のものだと安心して寝ることができると思います。
 可能な限り普段の生活と変えないためにも、普段の生活で使っているものを持ち込んだ方が安心です。

9.非常食は準備しておく

 避難所に入ると食事の配給があることがありますが、ほとんどの場合はおむすびや総菜パン、菓子パンといったものになります。
 提供してもらえるのは非常にありがたいことなのですが、それだけでは栄養素が偏ってしまいますので、果物などを持参しておくといいと思います。
 また、中にはそれらの配給品が食べられない人もいると思いますので、そういった方は自分で準備しておく必要もあります。
 大規模災害の場合にはまず配給はしてもらえないので、とりあえず最低1日分の水や食料は持参するようにしてください。

 他にもいろいろとあるのですが、以上の内容は多くの人に共通する部分だと思います。あなたにとって何かの参考になれば幸いです。

実際に避難してみた

 今日は台風9号の影響で地元の川が氾濫危険水位まで上昇し、流域の人達に避難指示が出されました。
 我が家のある地域もその河川の流域に含まれているのですが、川の情報を見たところ増水傾向が続いていたので実際に避難を行う判断をし、準備を開始しました。
 家族全員で避難準備を始め、完了までに約40分。非常用持ち出し袋はそれぞれ持っていたのですが、持って行けない大切なものを二階に移動させる手間でそこまで時間がかかってしまったようです。
 また、通常は実家に避難する設定にしており、避難所へ行く想定はしていなかったので、地域の避難所に何が必要なのかという判断に手間取り、思った以上に時間がかかってしまいました。
 ここから見えることは、大切なものをどの段階でどこへ移動させておくのかを事前に決めておくことと、地域の避難所の物資の状況の把握が必要だということです。
 結局、避難所には行かず、普段避難場所として決めていた高台に移動して様子をみることにしたのですが、さまざまな段取りをつけておかないと避難開始までの貴重な時間を使ってしまって間に合わなくなるということがよくわかりました。
 普段割と訓練をしていると思っていたのですが、いざ本番となるとさまざまなトラブルや勘違い、行き違いが発生してドタバタしてしまうものです。
 できるだけさまざまな想定を考えて訓練しておくことと、今回の状況をきちんと整理して次回に活かす必要があるなと感じた避難でした。

逃げ道マップを作ろう

当研究所が行っている防災マップづくりの一コマ。実際に地域を歩いて確認するところから始まる。

 災害対策として、地域の危険な場所を洗い出してそこから早めに避難するというのは割と言われるようになってきていますが、避難する道をどうするかということと、その道が安全かどうかの点検までちゃんとできていますか。
 実は同じ避難所に避難するとしても、大雨と地震では避難に使える経路が異なることが殆どです。
 例えば、大雨では低地では無く高い場所を繋いで避難を考える必要がありますし、地震では地面の高さよりも周囲の構造物が壊れたり倒れたりしないことが重要です。
 そういった避難経路の情報というのは、意識しながら実際に歩いてみないとわからないことがたくさんありますので、実際に歩いてみて、逃げるための道、逃げ道マップを作っておく必要があるのです。
 地域の安全点検とあわせて、実際に歩いてみて確認してみること。
 地図上では歩けるはずなのに、道がでこぼこだったり、溝があったり、草に埋もれていたり、急な坂道の連続だったりと、逃げ道を決めるのは案外と大変なことがわかると思います。
 その上で災害の種類に合わせて逃げ道を変更するのは、正直言って大変な作業になります。
 ただ、大きな災害時には避難中に遭難してしまうことがよく起きていますので、それを防ぐためにはこういった作業が必要です。
 危険なくらい暑い時期ですので、日中出歩くわけにはいかないかもしれませんが、早朝や夕方、ご家族や友人と一緒に散歩しながら逃げ道を確認してみるのもよいのではないでしょうか。

【活動報告】水遊び&水難事故防止講習会を開催しました。

 令和3年7月18日、益田市匹見町の広見川で水遊び&水難事故防止講習会を開催しました。
 当日は小雨の降るちょっと冷える天気で、予定していた沢登りは中止し、水遊びしながら水難事故防止について説明をさせてもらいました。
 ライフジャケットの着方から、水遊びの諸注意を行い、岩からの飛び込みをした後、少しだけ水に流されたときの方法について説明をしました。
 参加した人からは「着衣水泳と一緒だね」というお話をいただきましたが、基本は着衣水泳と同じです。
 ライフジャケットがあって浮力がある分、気持ちに余裕が生まれるため、生存率が上がることは間違いありませんので、ちょっとした水遊びでもライフジャケットは必ず着用してほしいと思います。

 前回の水遊びに参加してくれた子ども達は、今回は各自網を持参して魚取りを一生懸命にやっていました。ハヤ類やゴギの小さいのがたくさん取れて、やまめを捕まえると息巻いていましたが、残念ながらヤマメは簡単には捕まりません。寒さに震えながらの魚取り大会となりました。

 途中から気温・水温ともに下がってきましたので、1時間あまりで水遊びは終了し、その後用意した豚汁などのお昼ご飯を食べて終了となりました。
 今シーズンは会員及び会員のお友達に限定しての企画となっていますが、親子で一緒に水の怖さと楽しさを知ってもらえたらうれしいです。
 参加していただきました皆様にお礼申し上げます。

飛散防止フィルムを貼ってもらった

 災害時には窓ガラスが割れて飛散して怪我をするということがよく起こります。
 最近では強化ガラスやペアガラスなどが主流になり、窓ガラスの強度自体はかなり上がっているのですが、それでも被災地に行くと割れたペアガラスや砕けた強化ガラスを見ることがあり、飛び散らないような加工は必要だなと感じています。
 特に、古い家屋では窓ガラスはさほど強度が無いので、住人を守るためにも飛散防止フィルムを貼っておいた方がいいと思います。
 割れても破片で怪我しないように、フィルムは部屋の内側に貼ることが大切です。そして、できるだけ空気やしわができないように丁寧に貼ること。
 そうすることで強度も上がりますし、見た目もきれいです。
 ただ、一つ問題になるのは、ガラス面が大きくなればなるほどうまく貼れなくなること。飛散防止フィルムはのりがついていて、それをガラス面にくっつけることでガラスの飛散を防ぐ構造になっています。ですが、のりの面をガラスにくっつけて貼り付けていこうとすると、風が吹いたりまくれたりして、のり面同士が貼り付いたり。一度くっつくと簡単には剥がれませんし、剥がれた場所はしわしわになってしまいます。
 というわけで、今回は飛散防止フィルムを貼るのに専門家に来てもらって、貼り方を教えてもらうことにしました。
 来ていただいたのは益田市美濃地町で「キラク内装」という内装屋さんを経営をしている澤木さん。
 さっそく貼り方について教えてもらいました。
 澤木さんによると、ポイントは次のとおり。

1.可能な限り、窓は取り外して作業する
窓を取り外して採寸する。原寸あわせだとフィルムが痛むので、計って切ってからの貼り付けとなる。
2.できるだけ窓の寸法に近いサイズでフィルムをカッティングしておく
一回りくらい大きめにカット。大きすぎると邪魔になり、小さいとカットが難しくなる。
3.窓ガラスの貼り付ける面はきれいにしておく
4.のり面どうしやガラスの変な場所にくっつかないように、石けん水をガラス面にしっかりと霧吹きで吹いておく
使用する石けん水の分量は、1リットルの水に対して合成洗剤1滴程度。それでのりの接着効果はきちんと止まるし、ガラスに貼った後に石けん汚れは出ないとのこと。
5.丁寧に貼り合わせ、空気や水はゴムべらを使って丁寧にしっかりと除去する

 いうことで、大きい窓ガラス4枚を1時間半程度で貼り終わってしまいました。

貼り終わったところ。肉眼では見えなかったが、フィルムの反射で一部が虹色になっている。


 作業工賃はそれなりにかかりますので全部を頼むわけにはいかないかもしれませんが、きれいでしっかり、手間なしでできる災害対策なので、風の当たる面や不安な場所だけでも専門家に貼ってもらうという選択肢もありではないかと思います。
 また、もし自分で貼られるときには、ポイントに注意すればそれなりにうまく貼れると思いますので、DIYでも上手に貼ってみてくださいね。

 キラク内装の澤木様、ご協力いただきありがとうございました。