ペール缶コンロを作る

 災害が起きると、大概の場合、どこからともドラム缶やペール缶が現れてたき火用のコンロになっていたりします。

これはドラム缶を切ったやつ。石見地方の屋外神楽会場ではよく見るアイテムの一つ。

 でも、そのままだと非常に燃え残りが多く効率が悪いです。
 ちょっとした工夫で効率よく燃やせるようになるのですが、今回は良く燃えるペール缶コンロを作ってみることにします。
 用意するものはペール缶。手に入れるのには何やらルートがあるようですが、お友達にお願いして分けてもらいました。

俗に言う”ペール缶”。オイルが入っていることが多い。よく見かけるが、入手経路は私に取っては謎。

 まずは底を抜きます。最初は缶切りでできないかと思ったのですが、思った以上にサイズが大きくて、缶切りでは歯が届きませんでした。

底を抜くのは案外大変。道具があればすぐだが、無いと相当手こずる。

 仕方が無いので金属切断用のジグゾーを用意。 穴を開けて、缶の縁に沿って歯を回し切り取っていき、無事に底が抜けました。グラインダーでやるのも良くやる方法ですが、火花が散るのでカットするときには場所に気をつけてください。

ドリルで穴を開けるのは滑るので結構大変。
今回は対角線上に4カ所穴を開けたが、入れる木が重たいのであれば、ボルトはもっと増やした方が安定はしそう。

 次に全体の三分の一の場所に穴を開けて、火を支える網を止めるためのボルトを4本対角線上に差し込んでおきます。

買ってきたボルトと網。全部で600円程度だった。網の大きさは直径30cm。ペール缶の直径と全く一緒。
ペール缶に網を載せたところ。このままバーベキューでもできそうなくらいぴったりのサイズ。

 次は火を支える網です。市販品では30cmの丸い網がありましたが、ペール缶のサイズも30cmでうまく入りません。

 ジグゾーで切ってちょっと怖かった。あればニッパーが断然楽。
切り取った丸い部分で網を支えているので、外すとばらばらになりそうな雰囲気。

 再びジグゾーで周囲を切り取り、ペール缶にはまるサイズに加工し、切り取ったものをペール缶に填めてできあがり。

コンクリートブロックで風穴を確保。不慮の事故に備えてぶっかける水も用意した。

 下の部分は通気をよくするためにコンクリートブロックで支えます。

下側に着火剤代わりの新聞紙の丸めたの。上に端材を載せる。

火をつけます。火種の新聞紙と、上に廃材を載せて点火。
数枚くしゃくしゃにして敷いたのですか゛、新聞紙一枚で十分だったみたいです。

 火がつくと炉の中に空気を吸い込むので非常に良く燃える。
あっという間に火がついた。着火は下の吸気口から新聞紙に向けて行った。

あっという間に火が起きました。
ところで、このペール缶には取っ手がついていて、握り手の部分はプラスチックで握りやすいように加工されていましたが、それに気づきませんでした。

組み立てをする前に、プラスチック製の部品はきちんと外しておかないといけなかった。
どろどろになってしまって、冷えたら完全に固まってしまっていた。

 気がついたらどろどろのべたべたになってしまっていましたので、後で切り取っておくことにします。
 これでペール缶コンロができあがりました。上で鍋を作るのであれば、上側にもなんらかの支えが必要となります。
手っ取り早いのは、さっき中に敷いた網をもう一枚買ってきて上に載せることですが、燃料となる木材の出し入れを考えると、ちょっと手間を感じます。

燃え尽きた後のコンロの中。網の上に載っているのは、新聞紙を丸めて固めたものがそのままの形で残っている。上に載せた木はきれいに燃焼終了した。

 さて、このペール缶コンロは少量の木材でもかなりの火力を出すことが出来、鍋で簡単にお湯を沸かすことが可能です。
 自主防災組織や自治会で避難所運営を予定されているのであれば、一個から数個、このペール缶コンロを作っておくことをお勧めします。
 余裕があるときに作っておくと、いざというときに慌てなくて済みますよ。

 ■後日談(2019.5.20追記)

出かけた先のコメリさんでペール缶よりも一回り小さい網を見つけました。

サイズは28cmでペール缶よりもちょうど一回り小さい。

中に填めてみたら、割ときれいに収まりました。わざわざカッティングしなくてもしっかりした状態で網が使えるので助かります。もしペール缶コンロを作ろうとお考えの方は、アウトドア用品の充実している今の時期に資材を揃えておくといいかなと思います。

見た感じではわからないが、若干ペール缶が変形しているようですっぽりとは収まらなかった。
ただ、火の台としての仕事はきちんとできるレベルの収まり方ではある。

水の運び方

 災害が発生すると、ライフラインの復旧が問題になってきますが、一般的に地面の中に埋まっているものは復旧に時間がかかるものです。
 中でも水は他に代替手段がないため井戸が無い限りは復旧まで給水車に頼ることになりますが、給水車は各戸に回って水を供給してくれるわけではありません。
 指定される近所の給水所まで水をもらいに行くわけですが、その給水所から家までどんな風に水を運ぶのかを考えたことがありますか?
 水の重量は500mlで500g。1リットルならほぼ1kgです。
 国の試算では、1日に成人が必要とされる飲料水は料理用も含めて最低3リットルですが、給水所から家まで3kgのものを抱えて移動することを考えてみてください。
 そのとき、どんな容器で運ぶことを考えていますか?
 例えばよく出てくるのはバケツですが、そのとき使えるバケツが常に清潔だとは限りません。
 こんなときにはバケツの内側にきれいなビニール袋を二重に入れれば、バケツを洗浄しなくてもきれいな水を運ぶことが可能です。
 また、バケツがなくても同じ方法で段ボール箱でも運ぶことができます。
 気をつけるところは、ビニール袋の持ち手があるものを使うこと。ビニール袋の中の7割程度に水を入れて口を縛れば、段ボール箱を濡らさずに運ぶことができます。
 例えば、燃えるゴミの袋などはどの家庭にでもあってこういう使い方もできる便利な袋です。製造元はこういった使い方は推奨しないと思いますが、非常時なので許してもらうことにしましょう。
 そして、輸送用の台車があると子どもや高齢者でも安心して運ぶことができます。わずか3kgと思われるかもしれませんが、これを抱えて移動するのは結構大変ですから、何らかの道具が使えると便利です。
また、ここからは支援者側の問題になりますが、被災者の輸送能力、給水を待つ人数、給水能力を考えると、給水所は半径500mごとくらいをカバーできるくらいで作るのが理想です。
 そして、給水装置の形によりますがなるべくこぼさないようまたこぼれた水が利用できるような準備、例えば下に水受けを用意するなどしておく必要があります。
 最近では5リットルや10リットル入りの給水袋に入れた水をそのまま提供することもあるようですが、給水時の給水方法を事前に周知しないと水を入れる容器と給水袋を抱えて途方に暮れるような辞退が起きないとも限りません。
 速やかに受け渡しができるような整理をしておく必要があると思います。
 そして避難所の場合は避難所として飲料水を確保することになるので、予定避難者に見合うだけの水を確保できる20リットル灯油缶などの専用道具が必要です。
 どのように貯水するのかについては、事前にしっかりと検討をしておかないといけません。
 いずれにしても、普段のように蛇口をひねれば水が出る状況ではありませんので、そういう事態に備えた準備をきちんとしておきましょう。

虫対策を考える

 災害が発生した後、どこで過ごすにしても虫に悩まされることが多くなります。
 さまざまな腐ったものから発生するハエやその他の虫、あちこちに貯まった汚水から発生する蚊など、普段はあまり気にしないような虫がたくさん発生します。
 この対策として、虫除けや殺虫剤などを用意しておく必要があります。
 例えば避難所には網戸がないことが多いです。そして、特に夏場では熱がこもってしまうので窓を開けないと熱中症になる危険性があります。
 網戸のない窓からハエや蚊、その他の虫が避難所を飛び回ることによって、衛生環境や不快感が出て、そうでなくても先の見通しがはっきりしせずにいらいらしている避難者達をよりいっそういらいらさせてしまうことになります。
 対策としては、個人としては非常用持ち出し袋には虫除け薬及び虫刺されに効く薬を入れておくことが第一です。
 そして、避難所を準備・運営する側は蚊取り線香等の虫除け・虫取り・殺虫剤を準備しておくことを考えておいた方がいいでしょう。
 また、衛生環境を維持することからも消毒用の消石灰の準備をしておくとよりよいと思います。
 もちろん、避難所での生活において生ゴミなどから虫が発生しないような対策を行っておくことも大切です。
 災害後、なかなかそれまでの衛生環境を取り戻すことは時間がかかります。ですが、資材によってある程度防ぐことが可能な部分でもありますので、事前準備をしっかりとしておきましょう。

あなたが食べられるものを非常食にしよう

 当研究所でも「非常食を食べてみた」でぽちぽちと災害時の非常食について検証をしているところですが、災害が発生した後、自分が何を食べるのかについて考えたことがありますか?
 一昔前であれば「乾パン」、最近なら「アルファ米」や「レトルト米」が上げられるでしょうか。保存食としてある程度の期間保存が利くものが上げられるのではないかと思います。
 準備していないのは論外ですが、準備している人でも「実は食べたことがない」という人も多いように感じます。
 災害時には、最初は気が高ぶっていますからなかなかお腹も空きませんが、かといって何も食べないというわけにもいきません。
 いざ食事をしようとしたときに、持ち出し袋の中に入っていた非常食が食べられなかったとしたら?
 実際にあった例では、入れ歯の避難者の方が非常食として持っていた乾パンが食べられずに難儀をしたというのがあります。
 今の乾パンは、以前のものに比べると随分と食べやすくはなっていますが、堅いことには変わりありません。我が家の小さな研究員達はぼりぼりと食べていましたが、歯の悪い人がこれを食べられるかと考えると「無理」という答えになりました。
 細かくすりつぶして水でも加えれば、それでも食べることが可能になるかもしれませんが、そのままの形では水を吸わないのが乾パンという食べ物なので、年寄り向けであればビスケットの方が向いているねという結論になりました。
 また、温めが必要な食べ物を用意することも多いと思いますが、避難所では火気厳禁が徹底されていますので、火以外でそれを温める手段、例えばヒートパックやカイロなどといった火を使わずに温める道具を準備しておく必要があるでしょう。
 とにかく、一度でいいからそれを食べてみること。食べてみることで、どういう風にしたら自分が食べやすいのかを考えることができます。
 我が家の場合、例えばアルファ米の変わりご飯なら白飯と半分ずつ混ぜれば好みの味になるということがわかっていますからそういう風な準備をしています。
 災害という非常事態であっても、できれば普段の食事に近いものを食べられるような準備をしておいた方が元気が保てます。
 そのためには、普段から「自分が食べられるもの」で「自分の好みに合ったスタイル」を研究しておいたほうがいいでしょう。
 ちなみに、災害時に何も備えがない場合には、政府や自治体などの行政からの支援に頼ることになりますが、この場合、3日目から5日めに配給される乾パン二個などという哀れな食事になる可能性があります。また、アレルギーなどには配慮されない配布方法が殆どですので、アレルギーを持っている人ほど自分の食べられるものを用意しておく必要があるのです。
 ともあれ、気力と体力を維持するためにも、自分がおいしいと思う非常食を準備しておく必要があると思います。

職場からの避難場所を知っていますか?

 あなたは自分の家以外で災害にあったとき、例えば勤務先の周囲の避難場所や避難所を意識してみたことがありますか?
 災害を意識している人でも、家以外で災害に遭遇したときどこへ避難するのかは決まっていないということが多いです。
 自治会や自主防災組織の訓練でも自宅から避難することがほとんどで、それ以外の場合の訓練や避難先の確認というのはされていないことが殆どです。
 また、お勤め先で防災訓練をされるとき、どこへ避難するか、どこが避難場所なのかということは意識されていないと思います。
 これは別にお勤め先の防災担当者がサボっているわけではなく、その地域に住んでいる人以外は基本的に避難所に待避することは考えられていないことに原因があるからです。
 最近騒がれている首都直下型地震や東海・東南海地震に備えている自治体からは、地域の職場に対して職場を避難所にするため備蓄などを行うように依頼を行っています。
 お勤め先の建物が災害に耐えられれば、そこでとりあえずしのぐことは可能です。ただ、飲料食や排泄処理、環境がその場で待機できるようになっていないと、そこから避難所へ人が流出し、本来は地元の住民に対して準備されているさまざまなものを消費してしまうことが十分に予測されます。
 東日本大震災時、大規模な被害は受けなかった首都圏で、職場で飲料食を持っていなかった人たちがコンビニエンスストアに群がって店舗が空っぽになったことを思い出してみてください。
 また、大量の帰宅者が路上にあふれて交通が麻痺し、これからの防災対策に不安を残す結果になったこともありました。
 本来は雇用主が従業員の生命を維持するためのインフラを整備すべきだと思いますが、残念ながら職場の準備は進んでいないのが現状です。
 そうなると、自分で準備するしかありません。
 首都直下型地震や東海・東南海地震では、職場に3日間はいるようにという政府の依頼が出ていますが、そこまで行かなくても、せめて1日分くらいは職場で立てこもれるような飲料食やトイレの準備はしておいた方がよさそうです。
 また、家に帰る際にも大規模な災害の場合には自分の足に頼ることになります。
そのことも考えて、安心して歩ける運動靴を一緒に備えておいてくださいね。

電気は何に使う?

 災害時に備えて、さまざまな施設では自家発電機や蓄電池を持っています。
 では、そこで準備した電気は何に使うかということはきちんと整理されているでしょうか?
 何に電気を使うのかによって、必要とされる発電機や蓄電池の種類、発電量や蓄電量、備蓄しなければならない燃料量などが決められます。
 パソコンや医療機械などの精密機械を使うのであれば、発電機は正弦波タイプでなければ使えませんし、電子レンジやエアコンを動かすのであれば瞬間出力に耐えうるだけの蓄電量が必要です。
 そして、照明に使う程度であれば発電機の能力が大きすぎるということもあり得るでしょう。
 逆に利用する機材に比べて発電量が小さいと言うことも起こりうるかもしれません。
 電気がないと機能が維持できない施設はたくさんあります。どこに使う電気を止めるわけにいかないのかをあらかじめ確認しておくことで必要な電力量を把握することができます。
 その電力量をカバーできる発電機を準備しておけば、貴重な燃料を無駄にせずにすみます。
 もちろん、定期的に発電機や蓄電池の運転試験を行って、その電気を使ってみることも大切です。
 最近は発電機や蓄電池も小型化してきていて家庭用として使えるようなものもたくさんあります。また、太陽光発電などで電気を供給することも可能になっています。
 でも、準備した電気を何に使うのかをきちんと決めておかないと、結局無駄になってしまうことも多いです。
 あなたのところでは何に電気が必要なのか、そしてその発電量はどれくらい必要なのか。時間のあるときにでも洗い出しておくといいかもしれませんね。

避難場所の憂鬱

 テレビの映像などに映し出される避難所では、避難している方がそれなりにいろいろなものを持っていて生活している様子が映し出されることが多いです。
 これは避難所が開設されて運営されているから。
 でも、災害直後や事前避難の映像では、大概の場合「不安そうにテレビを見ている図」しか映像になっていないと思います。
 これは何故かというと、「他に絵になるものがない」からです。
 災害直後や事前避難で避難するのは、「避難所」ではなく「避難場所」。以前にもちょっと触れましたが、避難場所は「一時的に危険から身を守るために避難を行う場所」とされており、行政機関などは場所の提供のみを義務づけられていることになります。
 つまり「基本的には何もない」のが避難場所なのです。
 「行政機関の防災計画書では食料や水、毛布の備蓄はあることになっているじゃないか!」と言われるかもしれませんが、避難場所に対しては資材を提供する義務はありません。
 あくまでも場所の提供だけなのです。もちろん避難所を開設すれば備蓄資材を使うことも可能になりますが、行政機関が備蓄している資材は、対象人口に比べるとないに等しい量しか確保されていないのが現状です。
 自治会や自主防災組織が避難場所の管理者になっている場合にはその判断により避難所を開設して資材を解放することも可能ですが、大概の場合は自治会や自主防災組織が調達した資機材の提供となるはずです。
 この事はあまり知られていないのか、「避難所に身一つで行っても、とりあえず快適な避難生活ができる」と勘違いしている方が非常に多いのが現実です。
 災害が起きてから慌てて身一つで避難場所に移動し、何も物資がないと知って避難場所を運営している行政職員に対して文句をつけるというのが、残念ながら現在の避難所のパターンとなっています。
 繰り返しになりますが、避難場所はあくまでも「場所の提供」です。
 自分の食べ物や飲み物、避難所で過ごすために必要なものは、大原則として自分で準備しておかなければなりません。
 避難してから途方に暮れずにすむように、自分が避難中に使うものについては自分できちんと準備して避難の時にさっと持ち出せるようにしておきたいものです。

防災公園が解放されたようです

 益田市役所の前に防災公園が完成し、一般にも解放されたようです。
 防災公園ということなので、市役所に出かけたついでにどんなものか見学させていただきました。

 全景です。東屋が一棟、水飲み場が1つ、ベンチが3つ、太陽光パネルのついた街灯が二機と同じく太陽光パネルのついた時計が一基。 地面はコンクリート製かな?


 水飲み場。防災公園だとよくある、地下にある清水タンクからのくみ上げか、あるいは単純に水道に繋がっているのか?

ベンチの2基は非常時には炉として使えるタイプのようです。座面の下にコンクリート製のU字溝が置かれています。

この1基は、なんだろう? 炉ではないようですがよくわかりません。

  照明はLEDです。一灯は公園内を、もう一灯は通常の街灯として歩道を照らすようになっています。

時計はどうやら寄付のようです。

東屋は、周りをキャンバス地で覆うことができるようです。

 中に大きめの棚もありそうなので、地元自治会の道具が何か入っているのかもしれません。でっかい南京錠がかかっています。
 ここまで見て、トイレがないことに気づきました。災害時に最も重要かつ緊急性の高いトイレがないとはどういうことなのか?
 戻ってきて益田市役所のホームページを調べてみたら、都市計画課のところにこの公園についてのコンセプトや検討結果が掲示されていました。
 どうやらトイレを作っても汚物処理についてうまくできそうにないことから、下水道管がこの公園まで伸びたところで改めて検討するようです。
 それまでの間、せめて東屋の中の棚に仮設トイレが入っているといいのですが、もしないとするとトイレ問題が即座に出てきそうです。
 もっとも、益田市内の大きな避難所はどこも同じ問題を抱えてはいるのですが・・・。
 ともあれ、日当たりもよくこれからの季節、のんびりするにはよさそうな場所ですので、市役所に出かけたついでにでも見学してみるといいかもしれません。

子どもを退屈させないために

 災害が発生しそうで避難所へ避難すると、多くの人は不安になるものです。
 でも、そこで何をするかといえば、テレビを見るかラジオを聞くか、寝てるか、顔見知り同士で話をするかくらいです。
 そうなると困るのは子ども達。特に元気を持て余している小さな子どもは暇や退屈を我慢できません。
 災害で家や街がどうなるかなどという心配はしませんし、知っている子どもがいれば一緒に走り回って遊び始めるのは普通です。
 ところが、そうすると不安になっている大人達は子ども達がどたばたするのを我慢できませんから「静かにしろ!」と怒鳴りつけ、しばらくするとまた子どもが騒いでまた怒鳴りという悪循環が発生します。
 これを防ぐためには、子ども達を暇にさせない、退屈させないことです。
 そのため、子どもがいるおうちの非常用持出袋の中には、必ず複数の子どもが静かに遊べるその子の好きなおもちゃを入れておくようにしましょう。
 絵を描くことが好きな子なら、自由帳と色鉛筆。読書が好きなら単行本や絵本。編み物や将棋や碁もいいですし、トランプやUNOといったカードゲーム、持ち運びできるボードゲームも楽しいですよね。

さまざまなゲーム類。やり始めると夢中になることが多い。

 よくある携帯ゲーム機やスマホゲームも悪いとはいいませんが、光や音、電源の問題などでトラブルが起きやすいのが難点です。また、遊ぶゲームによっては通信系に負荷をかけてしまうこともありますので注意が必要です。
 どんなおもちゃであれ、肝心なのは子ども達が夢中になって楽しむことができること。
 暇で退屈するから走り回ったり遊びをいろいろと考えつくわけで、夢中になって遊べるものがあれば、子ども達は本気で遊んでくれます。
 では、おもちゃがなければどうするか?
 そんなときには、大人がそこにあるもので、しかも周りに迷惑をかけずに遊ぶ方法をいくつか教えておくと、後は子ども達が勝手に新しい遊びを作り出していきます。また、一緒になって遊ぶのもいいと思います。
 一緒に遊びながらさまざまなルールを教えると、子ども達は驚くくらい素直にそれを守ってくれます。
 さらには、何か仕事をお願いするのもいいでしょう。
 とにかく、子ども達を暇で退屈させないこと。
 避難所がギスギスしないための一つの方法です。

責任は誰が取る?

 災害対策を考えるとき、地域での「自主防災組織」の整備が脚光を浴びていますが、ちょっと考えさせられることがあります。
 それは、そもそもの自主防災組織の位置づけのことです。
 自主防災組織が立ち上げられた地域では、災害が発生しそうなときにはこの自主防災組織が組織のある地区の住民に避難を呼びかけることになっているところが非常に多いと感じます。
 新聞などで災害特集を見ると、自主防災組織が住民に避難を呼びかけるためにどうしたらよいかという記事が非常に多い気がしますが、私自身はこの考えはちょっとおかしいのではないかと思っています。
 そもそも、自分の命は誰が守らないといけないのでしょうか?
 今行われている災害への対応をどうするかという議論では、避難の実行役が自主防災組織や消防団が担わされるような方向付けになっていないかと気になります。
 本来は、「自分の命は自分で守ること」が大前提となるはずです。
 避難が難しい人や支援が必要な人に対して支援を行うというのが、自主防災組織の位置づけだったのではないでしょうか?
 通常時の避難訓練や、避難所の開設や運営などが本来の自主防災組織の仕事だと思います。
 住民に避難を呼びかけることや避難させることが設置の目的ではないはずです。
 自分が避難するためにどれくらいの時間がかかり、避難するためにはどのようなものを準備しておかないといけないのか。
 そしてどのタイミングで自分が避難を開始しないといけないのかということは、本来自分自身で考えて決めて、準備しておかないといけないことのはずです。
 ですが実際には、自主防災組織に判断を丸投げし、自分は自主防災組織に声をかけられるまでは知らん顔という人があまりにも多いような気がします。
 自主防災組織は決してその人のためにだけ作られた組織ではありません。
「自分の命は自分で守る」
 そのために自分が避難の判断をする情報の集め方や避難の仕方、そして避難所での自分の役割などを周囲の人と共有し、お互いに助け合って災害を乗り切るために作られているのが自主防災組織なのではないでしょうか。
 最近のさまざまな報道や行政の動きを見ていると、どうも何か勘違いしているような気がして、この先うまく行かなくなるのではないかと、余計な心配をしてしまいます。
 繰り返しになりますが、自分の命に対する責任は自分自身が取らなければいけません。
 「大丈夫だろう」ではなく「危ないかもしれない」という考え方で災害が起きるかもしれない時の行動を決める癖を付けておきましょう。
 何か起きたとき、悪いのは自治会でも行政でも自主防災組織でもなく「自分自身」なのだということを肝に銘じて、災害への備えをしたいものだと思います。