災害対策も「段取り八分」

 マスコミなどで「事前に避難してください」と言う割に開設されないのが公設避難所です。
 最近は災害発生前から避難所開設するところも出てきていますが、開設に行政職員が派遣されることになっているような避難所だと避難が難しい状態になってから開設されることが多いのが現状です。
 避難所という場所の性格を考えると、「避難所開設」→「レベル3・避難準備・高齢者避難開始」という流れになっていないと対応が間に合わなくなります。
 石西地方では吉賀町がそのあたりに気をつけておられるようで早めの避難所開設がされていますが、避難所の運営については各自治会に任せているようだという話を聞いています。
 高齢者や障害を持つ方、避難路に不安のある方などは、「レベル3」が発令される時には避難ができないこともあるので、やはり避難所が事前に開設されていることは重要になると思います。
 ただ、闇雲に避難所を開設するといろいろと準備など大変になることも事実ですから、開設の無駄をなるべく減らすためにも「地域にどのような人がいるのか」「もし避難が必要だとするとその人にどんな支援が必要か」「避難完了までにどれくらい時間がかかるのか」ということを確認し、それをタイムラインに落とし込んで避難所を開設するというのは一つの方法だと思います。
 少なくとも、避難するときと同じように、避難所開設でも「いつ」「だれが」「どうなったら」「どのように」開設するのかを、その避難所を利用する、または運営する人たちの間で情報共有しておく必要があるでしょう。
 いつ避難所が開設されるのかということが共有化されていないと「早めに避難はしたものの、避難所が開設されておらず被災した」というような事態になりかねません。
 全てのお宅が災害に対して安全であればよいのですがそんなことはありませんので、早めの避難所開設をすることで自宅や避難路が心配な人が避難でき、その結果として最悪人命だけは守ることができるということができると思います。
 何も起きていない時だからこそ、何か起きたときの段取りを決めておくこと。
 よく「段取り八分」と言われますが、一度発生すると考える時間が余りない状態で行動を判断しなければならないのが災害です。
 自分自身の災害への備えはもちろんですが、避難所開設と運営といった共助部分の段取りもやっておかないといけないと思います。
 地域がその気になってないと、なかなか難しい部分ではあるのですが・・・。

避難の空振りをどう受け取めるか

 大規模な災害が起きそうだと判断されると、最近は早めに避難勧告を出す自治体が増えてきています。
 災害の発生が夜間や明け方が想定されるようなときだと、前の日の夕方、日のあるうちにレベル3「避難準備・高齢者等避難開始」が発令されることもしばしばです。
 でも、結果としてたいしたことなく終わることも当然多いわけで、梅雨時期や台風シーズンで避難所と自宅を行ったり来たりすることが続くと、「いい加減にしてくれ」と言いたくなることもありますが、空振りについてはそんなものだと思うしか無いのかなと思っています。見方を変えれば何事も無かったわけで、何事も無かったことを喜べる意識というのも大切なのかなとも思います。
人は自分の行動を正当化する理由を常に欲しがるものですから、空振りをプラスにとらえればその避難は成功したことになりますし、空振りをマイナスにとらえれば、気がついたら避難しなくなっているのです。
毎回「何事も無くて良かったね」で喜ぶことができるのであれば、仮に何度空振りがあったとしても「何事も無くて良かったね」で終わります。
「空振りさせやがって」と不満に思っていると、避難するのが馬鹿馬鹿しくなって、本当の災害時に逃げ遅れて被災してしまうことになります。
どちらも理性では無くて人間の感情の問題なので、無事で良かった、何事も無くて良かったね言える気持ちを作り上げておきたいですね。

避難は安全な日中のうちにしてしまおう

 大きな台風10号がゆっくりと接近してきているようです。
 このまま行くと、どうやら西日本直撃コースのようで、益田市の安全安心メールでは「14日から風が強くなり、15日明け方には暴風域に入り大荒れの天気になる恐れがある」という情報が配信されています。
 今回の台風は強風域が非常に広くて「超大型の台風」という扱いになるようですが、とりあえず風が強くなる前に家の周囲の片付けをしてものが飛ばないようにしておく必要がありそうです。また、事故が起きる可能性が高くなりますので、風が強く吹き出してからの屋根の修繕や窓の補修などは絶対にしないでください。
 ところで、気象台や市町村と言った行政機関が発令する避難勧告や避難指示、レベル4、レベル5といったものは、昼夜を問わずに発令されます。そのとき、自分が避難すべき場所に避難することが可能でしょうか?
 今回の台風では、当地域は「15日の明け方には暴風域にはいる」恐れがあるそうです。そうすると、レベル4が発令されて15日の日中に避難しようとすると、視界の効かない足下も見えない暴風雨の中を徒歩で避難することになってしまいます。それは非常に危険なことですし、一つ間違うと遭難してしまうことにもなりかねません。
 また、もし夜中に発令されれば、真っ暗な暴風雨の中を視界も効かない状態で避難所まで移動しなくてはならず、避難する難易度は跳ね上がります。
 そのため、空振りになるかもしれませんが、天気の比較的安定している14日の夕方に避難所に避難することを勧めます。明るい中を避難するのと日が暮れてから避難するのでは避難のしやすさがまるで違います。
 場合によっては、まだ避難所が開設されていない時期かもしれませんが、台風の場合には進路予想ができますので、来ると分かっている、または来る可能性があるのであれば、影響の出始める前に避難所を開設すると、日中の避難がとてもしやすくなります。そして、大荒れになってレベル4やレベル5が発令されたとしても、とりあえずの安全は確保されている状況になるわけです。
 影響の出る前の日中に避難することは、正直に言って恥ずかしいかもしれませんが、安全を最優先に早めの安全な避難をしてほしいなと思います。
 大きな被害がでないことを祈ってはいますが、まずは自分の安全確保を考えて行動してください。

生活弱者ほど防災対策を知っておこう

 発災してからしばらくして落ち着いてくると、避難所の生活リズムも確立されていきます。
 その中で、生活弱者の視点があるのかというと、ないと言わないといけないのが現状です。
 ただ、生活弱者がもし防災や避難所運営に詳しかったとしたら、避難所の生活リズムの中に生活弱者の視点を取り入れることが可能ではないだろうか、と考えています。
 災害が発生して避難所が立ち上げられるときには誰もが呆然とし、不安になるものですが、もし、そこで普段「生活弱者」とされている人が避難所設置の指示を出し、避難所の運営を主体的にすることができたなら、よりよい避難所運営が可能なのでは無いかと思うのです。
一般的に「避難所では生活弱者ははじき出されてしまう」ことが多いのですが、運営の核の部分に入り込めれば、うまく避難所運営ができている限りにおいては追い出される心配はないのではないでしょうか。
 そして、生活弱者が避難所で生活できる環境というのは、生活弱者で無い人が生活するにしても悪い環境ではないはずです。
 いろいろと考えてみるのですが、生活弱者が「お客さん」として避難所に入ってくると、これはそうで無い人がその手配をさまざまにしなくてはいけないことになり、非常に煩雑になってくるものです。
 ですが、最初から避難所の運営にそれが組み込まれているのであれば、仕組みを変更する必要が無いのでうまく回せるはずです。
 訓練時に「生活弱者だから」こそ積極的に参加して、避難所の設置方法や運営方法といったことに提案や協力をするのであれば、災害本番の時にも当然それが組み込まれていきます。
 生活弱者の実態と対応は、その立場にある人で無ければ完全には理解できませんから、災害時に立場の弱い生活弱者ほど、積極的に訓練に参加しておくべきなのではないかなと思います。
 そうすることで、避難所を運営する人たちにもそれなりの覚悟ができますし、そういう生活弱者がいるということを知ってもらっておくことも大切なことです。
 「迷惑かけてはいけない」とか「足手まといだから」とか、「どうせこのまま死ぬから」とか言っているうちは、避難所に入ることが受け入れてもらえないし、生活弱者への対応も当然してもらえません。
 自分の防災対策はもちろんですが、地域の防災活動にも参加することで生活弱者もそうで無い人も、お互いに安心して避難できる環境を作ることができるのではないかと思っています。

寝床で使える段ボール

 災害によって、何らかの理由で家に帰れなくなって避難所などで生活しなければならなくなったとき、眠りやすさというのは非常に重要なことです。
 でも、床や地面にそのままで寝転ぶと、堅くて痛くて大概の人は熟睡できないのではないでしょうか。
 エアマットなどしっかりとした敷物があればそちらの方がいいですが、ブルーシートや床の上に直接寝なくてはいけないときにはせめて上半身だけでも体の下に敷く段ボールを探して敷くことをお勧めします。
 段ボールが一枚あるだけで体への負担が全く違います。
 そして、上半身だけでもその恩恵を受けることができれば、心身に受けるダメージはかなり変えることができるのです。
 避難施設等では、段ボールは探せば大抵の場合どこかには存在しています。それを上手に使うことで、避難生活の質が向上できるのであれば、使わない手はありません。
 よく路上で生活している人たちが段ボールハウスを作って生活していますが、床に段ボールを何層か敷いてその上に毛布などの寝具を敷いて使うといくらでも寝られるそうです。
 災害時にはそこまでたくさんの段ボールはないとは思いますが、避難している場所で快適に過ごす一つの方法として、段ボールの活用方法を考えてみてください。

【活動報告】防災マップ作りを開催しました。

事前準備は前日に行いました。

 本日8月8日、高津公民館で地域の防災マップ作りを開催しました。
 今回のテーマは「高津小学校から高台の避難所への避難経路の確認」で、小学生4名が参加してくれました。
 午前中はコースを実際に歩いてみるということでしたが、曇り空のおかげでそこまで暑くならないうちに現地調査が完了しました。普段から道路や建物は意識しているようでしたが、地図を持って回ってみると、案外と安全に避難できる道が少ないことに気づいたようです。

 公民館に帰ってから、お互いの地図を確認して非常食を使ったお昼ご飯。

 今回は炊き込みご飯の食べ比べということで、尾西食品さん、アルファー食品さん、サタケさん、そしてモンベルさんのアルファー米ともう一つ缶詰の炊き込みご飯を用意しました。缶切りを見たことの無い子ども達はどうやって使うのか試行錯誤してなんとか開封することに成功しました。また、じゃがりこを使ったポテトサラダも作り、最後は缶詰のデザートで大満足だったようです。
 午後からは自分たちの記録を元にして地図を作っていきました。

 初めてする作業なので、子ども達はいろいろと試行錯誤の連続。スタッフは出したくなる口を押さえて作成を見守り、なんとか時間ぎりぎりに完成しました。
 いろいろと思うようにならなかったようですが、始めて完成させた防災マップ。
 参加してくれた子達からは「一人で逃げる場合と大勢で一緒に逃げる場合には使える道が違うのがわかった」「大きな道は車も多く通るので、たくさんの小学生がそこを横断できるかわからない」といった感想をいただきました。
 これを元に、またいろいろと自分や仲間の安全対策について考えてくれるといいなと思います。

皆さんお疲れ様でした!

 なお、今回は「社団法人日本損害保険協会」様の開催してる「小学生のぼうさい探検隊コンクール」に出すことになっています。
 コンクールをご紹介いただき、今回の防災マップ作りでもご協力いただきましたあるむ保険プランの大谷様にも、厚くお礼申し上げます。
 今回初めて防災マップ作りをしてみましたが、わずかな時間ではあっても、子ども達が得るものはとても大きく感じます。興味を持たれたら、ご家族でも学校でも職場でも、ぜひ一度作ってみることをお勧めします。
 また、一緒にやってみたいというお話がありましたら、ぜひ当所「お問い合わせ先」までご連絡いただければと思います。何かお手伝いできることがあるかもしれません。
 最後になりますが、会場を快く貸してくださった高津公民館様、参加してくれた子ども達、そして支援してくれたボランティアスタッフの皆様に心から感謝します。 ありがとうございました。

各自の状況ごとに対応を考えておく

 避難訓練だと、家にいるか会社や学校にいるかというところで訓練を行うと思いますが、家族がバラバラになっているときの状況についてどうすればいいかということを決めていますか?

子ども達だけでも行動できるような意識付けが普段から必要なのかもしれない。


 例えば、子どもが学校や保育園、幼稚園、学童保育にいるときに大きな地震が起きたと想定します。
 そのとき、あなたはどれくらいの時間でこどもを迎えに行くことができるか考えたことがありますか?
 ある程度大きくなったら集合地点を決めてそこまで各自の判断でということも可能でしょうが、こどもがまだ小さいなら、必ずお迎えが必要となります。
 その時、あなたがいる場所から自分で歩いて子どもを迎えに行くことが可能かどうか。
 あなたが迎えに到着するまでの間、子どもの安全が確保されているかどうか。
 そして、子どもと合流後にはどこへ避難するのか。
 実は、家庭の防災計画はあなたや家族が所属するところの防災計画と連携させて考えておかないといけないものなのです。
 災害が起きたとき、家族がどこにいてどんな行動をとり、どこにいるのかを確認してお互いに知っておくことはあなたや家族の行動を安全にするためにも非常に重要なことです。
 例えば、子どもが安全に避難しており数日間は安全が確保されることがあらかじめ分かっていれば、自分の安全確保をしながら迎えにいくことができます。でも「すぐに迎えに来て」とされていれば、自分の安全は二の次にして子どもをなんとかして迎えに行こうとするのではないでしょうか。
 対応が分からず連絡もつかない状態になると、自分が危険だとわかっていても子どもの安否確認に走るものですから、何が起きたらどうなり、いつまで安全が確保されるのかは、平時にこそ確認しておかなければいけない内容です。
 また、逆に親がどう動いているのかがわからないと子どもが不安になりますが、どれくらい待てば迎えに来るかがわかっていると、不安ながらもしっかりと待っていてくれるものです。
 繰り返しになりますが、防災計画は単独では完結できないものです。
 職場や学校で計画ができていないのなら、自分でその部分は作っておく必要があります。
 目標はあくまでも「命を守り、命を繋ぐ」ことです。
 気がついたとき、少しずつでも自分がどう動けばいいかについて考え、家族や仲間と共有することを意識していただきたいなと思います。

車での避難を考える

 避難行動のとき、早めに動けば避難に車を使うことができるということをずいぶん前に書きましたが、車で避難した方がいいという考え方と、車で避難すべきではないという考え方のどちらかでなければならないのかといえば、必ずしもそうではないのではないかと考えます。
 今回は車で避難し、シェルターとして使うとしたらという視点で考えてみたいと思います。

1)車を使う利点

 車が使えると、重さや距離を気にすることなく多くの物資や人員を輸送することができます。
 つまり、当面の避難生活に必要ないろいろな機材を積み込んで家族で安全なところへ移動ができるということで、高齢者や要支援者のいる人にとってはかなりのメリットです。
 そして車を生活空間に使えるためプライベートが確保されます。ミニバンや軽バンなら、避難所と比べて快適な避難生活を送ることが可能でしょう。
 また、被災区域の外まで逃げてしまえば、少なくとも災害の直接的な影響を受けることは避けられます。

2)車を使う欠点

 みんなが一斉に車で避難を始めると渋滞が起きて災害に巻き込まれるというケースが多発していることから、原則として車での避難は禁止されています。
 また、道路が破損している場合にはそこから先に進めず車を置いて逃げることになりますが、そうすると車が道路の阻害物となってしまってさまざまな障害を起こすことになります。
 地震の時はどこで何が起きているかわからないこと、そして緊急車両を速やかに通過させるため、車は使わないという意識を徹底しておかなくてはいけません。
 特に津波が心配されるような場合には、みんなが自動車で避難しようとする結果、走って逃げた方が早かったという事態になりますので、最初から車を使わないことをお勧めします。
 ただ、これは地域によっては車で無ければ逃げ切れないというところもあり、それぞれの地域に応じた対策を考えておく必要があるでしょう。

3)どんなときなら車が使える?

 水害や大雨といった時の早期の避難であれば、自動車は問題なく使えます。
 避難場所は自動車でも避難できるところがかなりありますので、あらかじめ現地を確認しておき、水に浸からずに車を安全における避難場所を決めておいた方がいいでしょう。
 避難を行った後、状況が収まるまでは車の中で過ごすことになりますが、燃料が無いとただの箱になりますので、車をシェルターとして考えている場合には、燃料については意識しておく方がよいと思います。
 また、あらかじめ水や毛布などを積み込んでおくことで、倉庫としても活用することができます。

研究所近くの高津小学校の校庭。指定避難場所だが、大雨、洪水時には水没する場所なので他所へ避難する必要がある。

4)エコノミー症候群を防ぐには?

 車での避難で一番問題とされるのがこのエコノミー症候群ですが、これは体が長時間同じ姿勢を強いられることで発生するものですので、防ぐためには体をしっかりと動かすことです。
 座りっぱなしや寝っぱなしにならないように、一時間に一度程度はしっかりと体を動かすようにしましょう。また、寝るときにはなるべく体の姿勢が平らになるように敷物や詰め物をするとよいと思います。

 都会地では車を使わない方が安全に避難できるでしょうし、田舎では車で無いと避難ができない場所がたくさんあります。
 災害時に自動車で行う避難については賛否両論あるわけですが、発生している災害やお住まいの地域、そして自身の命を守ることを考えた上で、最適な方法を考えたらよいのではないでしょうか。

避難後の温度対策

 避難した先に冷暖房があればいいのですが、体育館のような場所だと大抵の場合は冷暖房の装置がありません。
 また、災害のときに何らかの形でエネルギーが途絶えてしまえば、機械のスイッチを入れることができませんから避難所は外の環境と同じような状態になります。
 そうすると暑かったり寒かったりして体調を崩してしまう人が出てくるのですが、なかなか対策がうまく見つからないものです。
 実はこの温度管理に重要なのが「風」。
 寒いときには風を遮断し、熱いときには風を通す。それだけで環境の快適さがずいぶんと変わります。
 寒いときには風を遮断して体の周りに空気の層を作り出すこと。それだけで充分に暖かく過ごすことができます。よく防災グッズに入っている銀色のエマージェンシーシートは、なるべく体に巻き付けて体の周りにある空気を逃がさないようにするためのもので、エマージェンシーシートを身につけたからといっても体の周りに動かない空気の層ができなければただ寒いだけでちっとも暖かくはなりません。体を温めるための熱は体温であり、エマージェンシーシートが暖かくなるわけではないことに注意が必要なのです。
 また、夏場の暑いときには建物の中を風が抜けるようにします。窓を開け放ち、風の通り道を確保することで、居住環境がずいぶんと変わります。
 この場合は、例えば外の温度の方が低ければ建物内部から外に向けて扇風機を回すと内部の熱を追い出すことができますし、逆に中の方が涼しいのであれば、建物内部で扇風機を回すようにするとそれなりに快適な空間を確保できます。
 避難所で体調を崩す理由の一つが、この温度管理にありますので、なるべく快適な環境を作り出せるように、「風」を意識して準備をしておきたいものですね。

避難所の環境について考える

 避難所、避難場所、一時避難所(以後「避難所」とします)については過去にも触れているところですが、ここのところ続いている大規模な災害の報道を見ながら考えることがあります。
 それは、避難所の収容人数の問題です。
 例えば、内閣府の発表によると7月3日から4日にかけて降り続いた九州南部の大雨では避難指示(緊急)は約110万人に出されたそうです。そのうち、実際に避難した方が6,301人。率にすると0.005%となり、殆ど避難していないとみることができます。
 では、避難所の収容人員はどうなのでしょうか?
 市町村が定める防災計画に記載された避難計画を見る限りでは、避難所の周辺人口をそのまま収容するような計画になっていることが多いのかなと感じています。
 例として、当研究所のある益田市高津町の避難所で考えてみたいと思います。
 研究所から一番近い避難所は「高津小学校」です。平成30年度益田市防災計画の想定では、収容能力は1,000名。圏域人口は1,554名とされていますので、この時点ですでに収容能力を超えています。
 ただ、実際に避難してきそうな地区の数字を拾ってみると1,038名となるので、これなら大きな誤差ではなさそうです。
 一時避難所として校庭が指定されています。国土地理院の地図からざっくりと面積を拾ってみたら5,857㎡。圏域人口一人あたりの専有可能面積は3.76㎡となります。
 仮に車で避難するとして、車のサイズを5m×2m=10㎡と想定すると、3人で1台分のスペースは確保されることになります。また、単にテントを設営するのであれば圏域人口をなんとか吸収することはできそうです。
 次に、避難所開設時には普通最初に解放されるであろう体育館で考えてみます。
 校庭と同じく、国土地理院の地図でざっくりと体育館の大きさを拾ってみると、その大きさは926㎡。実際の避難者になりそうな1,038名で割ると、一人あたりの専有面積は0.89㎡となり、スフィア基準で定められている難民キャンプでの難民一人あたりに必要とされる面積3.5㎡を下回る数値になってしまいます。
 一人寝るのに必要な面積が2㎡と言われていますので、1㎡を切ると寝ることもできません。その上、実際には避難者はそれぞれ荷物を持ってきますので、間違いなく収容できないという状態になるでしょう。
 逆に考えてみると、926㎡の体育館で3.5㎡の個人スペースを確保しようとすると、避難が可能なのは264人ということになります。
 想定人口の1/5にも満たない数字ですが、大抵の避難所の設定はこんな感じですので、避難所周辺に住む全ての避難者が避難してきた場合には施設がパンクしてしまうわけです。
 これは過去の大規模災害で毎回繰り返されている光景ですが、これに対して打てる効果的な手段というのはさほど多くはありません。
 自分が悲惨な目に遭いたくなければ、なるべく自宅で過ごせるように、もし避難するのなら安心して過ごせる避難先をあらかじめ選んでおく必要があるということです。
 家の立地条件から見て避難すべきなのか避難すべきでないのか、避難するとしたらどこへどんな手段で行くのか、そして避難所でどのように生活をし、どういう状況になったら自分の避難を解除するのかということをきちんと決めておくこと。
 地震は突然やってきますが、それ以外の殆どの災害はあらかじめ起きるのはわかっている場合が多いので、被災想定区域外に出てしまうのも避難の一つです。
 もう一つ、大規模な災害が起きると医療・介護体制が維持できません。そのため病気や障害をお持ちの方は、あらかじめ何か起きた場合の対応方法をお医者様や介護担当者としっかり詰めておく必要があります。
 避難所では適切なケアはされないということを前提に、自分の避難計画を作っておくことをお勧めします。