バケツのフタはありますか

 バケツの無いおうちもあるとは思いますが、できれば最低一つ、バケツは準備しておいてください。
 災害後、断水になったときにはこのバケツで水やお湯を運んだり、トイレが使えなければ汚物を入れたり簡易トイレに使ったり、洗濯や床下などの泥の運搬に使うこともできます。また、小さな子どもであれば、バケツにお湯を張って簡易浴をすることもできますので、小さなお子さんがいるおうちでは、優先度は結構高いと思います。
 バケツの大きさはいろいろとありますので、あなたが水を一杯に張って運べる程度の大きさのものであれば良いと思いますが、用意するバケツには、できればフタもつけるようにしてください。
 バケツにフタがついていると、吸水された水を運ぶときもこぼさなくて済みますし、汚物を入れるときにも臭いを封じ込めることができます。
 基本的にフタはばら売りになっていることが多いので、バケツを買うときにサイズを合わせて一緒に買うとサイズを間違えなくて済みます。
 単品では使い道がないバケツのフタですが、バケツとセットになると非常に使い勝手のよい道具になりますので、もしこれから備えるのであれば、一緒に購入しておくことをお勧めします。

書く道具を用意する

 油性ペンや鉛筆、ボールペン、クレヨン、万年筆、黒墨など、一口に書く道具といってもいろいろとあります。
 災害時、書き付けるためのものは、紙が無くても何とかなりますが、書く道具がないと相当苦労します。メモ帳や付箋、ノートは忘れても、書く道具だけは絶対に忘れず持ち歩くようにしてください。
 では、非常用持ち出し袋や防災ポーチに入れるとしたらどのようなものがいいのでしょうか。
 災害後、いろいろな出来事が起きますが、何にでも書くことができるということが前提になりますので、万年筆やボールペンは必須にはなりません。
 油性ペンで太い芯と細い芯がセットになっているようなものがよさそうですが、カバンなどに入れてそのままにしておくと、いざというときに乾いていて使えないということが起きるかもしれませんので、管理はきちんとしておきましょう。
 鉛筆は、つるつるとした面以外は結構さまざまなものに書くことができるので重宝します。芯が折れたら使えなくなるので、そこだけは気をつけておく必要があります。
 意外ですが、クレヨンやダーマトグラフは大抵のものに書くことができ、落ちにくく、落とそうと思うとすぐにきれいに落とせるという魅力があります。

ダーマトグラフ。結構何にでも書けて便利。

 これも鉛筆と同じく、芯が折れてしまうと使えなくなるので、保管の方法には気をつけておきましょう。
 どのような書く道具も一長一短がありますので、結局は使いやすいものになっていくのだと思いますが、手に入りやすさで油性ペン、ずぼらな人はダーマトグラフを用意しておくといざというときにもいろいろ掛けて便利ですよ。

避難所の鍵

避難所としてよく使われる体育館。ここは誰が鍵を開けるのでしょうか?

 小さな自治会の避難所であれば、避難所の鍵がどこにあるのかというのは皆さんご存じだと思います。
 災害対策や施設の利活用に熱心なところであれば、鍵の貸し出しや保管方法のルールも定められているのではないでしょうか。
 地域で災害が起きそうなとき、その地域の人が誰でも避難所の扉の鍵を開けることができているのは、避難所の基本です。
 では、大規模な避難所はどうかというと、大規模な避難所では、殆どが施設管理者しか鍵を持っていません。
 施設が開いている時間に避難所になるのなら問題ありませんが、施設が閉まっているときに避難所を開設しようとしても、鍵が無いので避難所には入れないということになります。
 そのため、学校や大きな施設などは、災害時には施設は解放せず、災害が収まってから避難所として解放するというところもあるようです。
 施設の鍵が複数あることは、防犯上好ましいことではありませんし、平時にその鍵を使ってトラブルが起きることは、施設管理者としては認めることができないことだと思いますから仕方がないことなのですが、避難してくる人から見ると施設側の都合はどうでもよくて、避難してきたのに避難所は鍵がかかっていて入れないという事実だけが残ります。
 かといって避難してきた人が鍵を壊して勝手に入ってしまうと、これは不法侵入になってまた別の騒ぎになってしまいます。
 本来は避難所の開設の一番最初の手順である鍵の問題は平時に取り扱いを決めておかないといけないのですが、災害が来ると騒がれている地域でも、それが完全にできているわけではないようです。
 あなたが避難することのできる避難所の鍵は誰がいつ、どうやって開けられるのか、避難訓練などのときにでも確認しておいた方がよさそうです。

善意と悪意

 大災害が起きると、発生後すぐに金品や物品の寄附をしようとする人がいますが、その行為、少しだけ待って下さい。
 現地の状態がわからないのに金品の寄附の受付を始めるところは、本当にその寄付金が現地に届くかどうか、しっかりと調べることが必要です。
 いろいろと言われていますが、日本赤十字社は赤十字社という全世界に繋がるネットワークがありますし、会計報告もきちんとされています。
 もしも寄附をするのであれば、ここを基準にしてどのような寄附の使い道があってどれくらい明朗会計なのかを確認しても遅くはありません。
 どのみち寄附したお金がすぐに現地に届くわけではないですから、一呼吸おいて、状況がはっきりしてからの寄附でも充分間に合います。
 せっかくの善意を、悪意ある人に利用されないようにしてください。
 それから、物品の寄附もできれば止めてください。
 物品の寄附をしてもよい人は、現地に直接持ち込めて受取人が明確である場合だけです。ただ、災害発生後すぐに物資を持ち込もうとするのは、現地への災害救助派遣や救助活動の邪魔になりかねませんので、持ち込むのであれば他の活動の邪魔にならないようにご配慮願います。
 そして、物品を送る人が忘れがちですが、災害が発生してダメージを受けているのは物流も一緒です。善意でものを送りつけようとすると、ダメージを受けている物流にさらなる負荷をかけてしまって、結局届いた頃には必要ない状態になっていたりすることが殆どです。
 ちなみに、災害後の個人からの任意の救援物資でかなり困るものが、生鮮食料品と古着です。物流がダメージを受けている以上、平時と同じように物品が届くなどと考えないで下さい。流通の回復には時間がかかりますので、生鮮食料品を送っても、100%腐ってゴミになってしまいます。
 また、不要な古着を送るのも絶対に駄目。あなたが着ないものは他の人も着ません。送るのならば新品のものを、できるだけ箱単位で送って下さい。
 送りつけられた古着は、ほぼ100%現地で焼却処分となっていて、そうでなくても負荷のかかっている現地のゴミ処理にさらなる負荷をかけてしまいます。
 マスコミの報道やSNSなどで「○○が足りない!」と発信されることはよくありますが、その後その○○が山のように届いて処分に困る状況になることはよくあります。
 物資の調達は現地からでもできますから、慌てず騒がず、せっかくの善意を無駄にすることの無い方法で届けてください。
 最近ではAmazonやヤフー、楽天などで現地の必要としているものと提供する人のマッチングサイトも災害時には運営されるようになってきています。
 そういったところを利用して、いるものをいるぶんだけ必要な場所に届くようにしたいですね。
 せっかくの善意が現地にとって悪意にならないように、金品や物品を送るときには、しっかりと配慮して欲しいなと思います。

参考:支援物資等を提供する(NPO法人レスキューストックヤードのウェブサイトへ移動します)

常識と非常識の狭間

 被災後の被災地での生活では、それまで常識だと信じていたことが非常識になることがたくさんあります。
 なかでも、性に関する問題は常識と非常識がぐちゃぐちゃになって、現地の当事者になってしまうと何が本当なのかさっぱりわからなくなってしまいます。
 例えば、普段の生活の中で女性が着替えをしているところを覗くと、明らかに犯罪です。
 ところが被災地の避難所でそういったことが起きてしまっても、覗いた方では無く覗かれた方が悪いことになってしまったりします。
 同じように、寝ている女性の布団に近所のおっさんが入ってきたとします。
 普段から間違いなく犯罪ですが、被災地の避難所では「それくらい我慢しろ」と言われてしまったりします。
 その避難所の男性陣からそう言われるだけではなく、女性陣からも同じような発言があったりすると、いったい何を信じて良いのかわからなくなってしまうでしょう。
 こうやって考えてみると、常識と非常識というのはその場に居る人や雰囲気、状況によっていかようにでも変化するものであり、常識などは人の数だけ存在するのでは無いかと考えることもできそうです。
 大規模災害が起きると、被災地は必ず治安が悪くなります。日本人は規律正しいと言われますが、全ての人がそうではありませんし、悪さをするやつはします。そして、災害という事態で自制心が飛んでしまった人にとっては、平時においては犯罪となる行為をやってしまうことに罪の意識はありません。
 ではどうすればいいか。
 残念ながら、同性同世代で自衛するしか手がありません。決して単独行動は取らない。避難所でも寝ずの番を複数立てるなど、犯罪に遭わないような対策を取るしか手が無いのです。非常時には、平時の常識は通用しないと思って下さい。
 自分達の身は自分たちで守るしか無い。
 「自決主義」というと言い過ぎかもしれませんが、犯罪を犯そうとしたものは自らの手で始末する。それくらいの覚悟がいるのではないでしょうか。
 一番良いのは、常識が非常識にならないような災害後の治安維持ができればいいのですが・・・。

怖い感染症

 年末年始にかけて新型コロナウイルス感染症のオミクロン株が蔓延しているようですが、感染症というと、新型コロナウイルス感染症だけでなく、インフルエンザウイルスやノロウイルス、ロタウイルスといった有名どころを忘れてはいけません。
 大規模災害で大規模避難所ができると、これらの感染症が避難所内で猛威を振るうことが非常に多くなります。
 日常生活だと、例えば風邪にかかっても家で寝ていれば直るのですが、避難所の場合だと、寝ていると避難所内の人に感染させる危険性があります。
 そこで感染者を隔離するわけですが、この手のウイルスは気がついたときには蔓延しているという場合が殆どですので、多くの場合打つ手なしの状態になります。
 これらを防ぐ方法は、しっかりとした流水によるこまめな手洗いとマスクの着用。アルコール消毒もある程度は有効で、実際に2021年は新型コロナウイルス感染症対策の手洗いが励行された結果として、感染症にかかった人が激減していました。
 ただ、大規模避難所になると充分な手洗いスペースや消毒スペースが確保できないという問題があります。元々今ある施設を避難所に転用しようという発想ですので、これは仕方の無いことなのかもしれません。
 また、日常生活の延長線上にある生活の場でもあるので、衛生概念のずぼらな人が一人いると、避難所内に感染症が蔓延することになりかねません。
 必要なことは、とにかく早期発見早期隔離なので、毎日の体調管理や検温は必須だと思いますし、少しでも体調不良な人は別室で隔離するくらいの対応が必要になってきます。
 また、トイレのような場所は不衛生になりやすくウイルスが蔓延しやすいので、しっかりとした清掃が必要になります。
 これらの管理がしっかりとできると、ある程度感染症対策はできると思うのですが、あなたの避難すべき避難先ではこういった衛生管理について、どのようにすることになっているでしょうか。

避難所の開設・運営方法を確認しておこう

 島根県では、避難所を開設するのは市町村が基本になっているようですが、災害時には職員でないと対応できない事が加速度的に増えていくので、災害時にあってはできる限り地域にお任せしたいところだと思います。
 本当は平時から避難所運営委員会を立ち上げて誰がどのような権限をもって何をするのかをしっかりと決めておきたいところですが、地域コミュニティがしっかりしているところばかりではありませんので、それを決めるところに至るまでが大変なようです。
 ただ、避難所の設営や運営について具体的にどのようなことをするのかについては、ぼんやりとしたイメージしかないのではないでしょうか。
 勘違いしがちですが、避難者はお客様ではありませんので、避難所の運営や維持について自分たちで出来ることは当然自分たちでやらなければなりません。
 避難所の開設手順や運営については、さまざまな地方自治体がマニュアルと設定していますが、今回はいろいろと見た範囲で筆者がわかりやすいと感じた千葉市の避難所開設・運営の映像をご紹介したいと思います。
 避難所の開設基準やトイレの状態、備蓄品の状態などはさまざまな自治体ごとに異なりますので全てがその通りになるわけではありませんが、必要な手順はきちんと触れられていて一通りの流れが理解できると思いますので、よかったら参考にしてください。

「避難所は住民の力で ~目で見る避難所開設・運営の流れ~」(youtubeのchibachityPRに移動します)

地区防災計画ってなんだ?

 最近防災界隈で騒がれているのが、いかにして地区の防災計画を作ってもらうかということです。
 国の防災計画と、都道府県や市町村が作る地域防災計画はあるのですが、これだけでは日本に住む全ての人が安全に避難をすることができるわけではありません。
 そこで、地区防災計画を当事者である住民に作ってもらおうというのがこの話のスタートなのですが、どうもここで規定されている地区を誤解している人がいるようなのでちょっと確認しておきたいと思います。
 ここに出てくる地区とは、例えば自主防災組織や自治会といったものではありません。もっと小さな単位、例えば集合住宅や、場合によっては各個人ごとに作る防災計画もこの「地区」に該当します。
 避難する判断や生き延びるための判断、避難先や受援方法などは、あまりに大きな単位だと条件が違いすぎて全く機能しません。
 より現実的に動かすためには、もっともっと小さい単位で同じような条件の人達を集めてその場所の防災計画を作ることが必要だと考えられているので、ここで出てくる「地区」というのは「地域よりも小さい単位」といったイメージで思ってもらえればいいと思います。
 そして、自分や近所の人がどのように行動するのかを定義することが、この地区防災計画の肝となるのです。
 その場所の災害事情はその場所に住んでいる人にしかわからないということがあります。そのため、その地域に住んでいる人達に自分が助かるための計画を作ってもらい、それを地域防災会議を経て地域防災計画に織り込んでいく。
 そのようなイメージで作るのが本筋です。
 行政機関によっては、自主防災組織や自治会などの単位で作らせようとしている動きもありますが、それでは結局地域防災計画の焼き直しになってしまい、行政が決めたルールの責任を地域に押しつけることにしかなっていません。
 基本はあくまでも小さな集団です。当研究所のある地域では自治会の組、つまり同じような地域条件で生活している5~10世帯を基本単位として作るくらい。
 お隣同士でも条件が異なるのであれば一緒にせず、それぞれに防災計画を作ることになります。
 正直なところ、個人の防災計画とどう違うんだという疑問はありますが、隣近所で話をしてみんなで行動することで逃げ残りや危険な目に遭う人を無くすことができるようにという意図もあるようです。
 お正月、ご家族や親戚が集まるこの機会に、あなたの防災計画についても見てもらって、助言をもらってみてはいかがでしょうか。
 そして、お正月が終わったら、ご近所の方と防災計画について話し合って、より安全に災害を乗り切れるようにしておくといいと思います。

みんなでつくる地区防災計画(内閣府のウェブサイトへ移動します)

みんなでつくる地区防災計画(日本防災士会のウェブサイトへ移動します)

あけましておめでとうございます

 明けましておめでとうございます。
 この一年があなたにとって良い年になりますように祈念しております。
 当研究所も、昨年以上にさまざまな活動を行っていきたいと思っておりますので、お力添えについてよろしくお願いします。
 さて、新年というと初詣に行かれる方も多いのでは無いでしょうか。
 大きな神社はともかく、集落にあるような小さな神社は、よく観察してみると災害の起きにくい場所にあることが多いです。
 これは、神社が古来から集落の避難所として機能してきていて、災害のたびにより安全な場所へ移動してきたために、周辺で一番安全な場所に建っているのです。


 せっかくお参りするのですから、大きい神社ばかりでなく、集落の氏神様にお参りしてみると、その地域でどのような災害が起きてきてその場所に社があるのかがわかると思います。
 もっとも、最近の公共事業などで移築された場合には過去の災害など関係なく移転先を決められてしまうので、この限りではありませんから、「神社のある場所=安全」というわけでもないのですが。
 ともあれ、今年は新型コロナウイルス感染症も落ち着いて、さまざまな活動が制限無くできるようになってくれることを願っています。
 今年一年、引き続きよろしくお願いいたします。

多目的ってなんだろう

 最近あちこちで目にする「多目的」な設備。
 有名なところでは「多目的トイレ」があります。
 本来は障害のある方も障害のない方も、男性も女性も誰でも使えるトイレという意味なのですが、多目的の意味をはき違えている人もいていろいろと困ったことが起きたりもしています。
 それはともかく、災害が起きて避難所が設置されると、やたらと多目的を主張する設備が増えてくるのが困りものです。
 食堂兼交流スペースくらいなら全然問題ないのですが、よくあるのが、授乳室とおむつ交換室、それに更衣室が兼ねられているもの。
 時間がかかるものがセットにされていると、いつでも何かで使用中になって、他の目的で使いたい人が困ることになってしまいます。
 優先順位をつけるといっても、授乳とおむつ交換と着替えの優先順位をどうやってつければいいのか、また、優先する事態で待っている場合には入っている人を追い出すのかなど、多目的であるか故の問題が発生するのです。

パーテーションで仕切ってでも単独機能の方が使いやすい

 利用目的のはっきりしているものや利用者が多いものは多目的にするべきではありません。
 目的ごとに部屋を仕切って、その目的のみに利用すること。
 そうすることで、同じ目的の利用者が複数同時に使えたり、違う目的の人から文句が出たりすることもありません。
 多目的で問題ないのはトイレだけ。
 避難所の設計時にこのことを頭の中においておくとよいと思います。