死ぬところを想像してみる

 災害の研修をするときには危険から身を遠ざけることの大切さを説明するのですが、その時に「自分が死ぬかもしれないと思っているか」を聞くことがあります。
 災害の研修会で自分の身を守るための話を聞いているのに、自分が死ぬかもしれないと考える人はまずいません。
 ごくたまにいることがありますが、そういった人はものすごく真剣に研修を受講しています。
 人間の特性なのか、なぜか自分だけは死なないと思い込んでいる人が非常に多いのが気になるのですが、被災したとき、さまざまな理由から自分が死んでしまうことは当然考えられます。
 でも、楽観思想なのか周囲の人はだれか死ぬかもしれないが、自分は死ぬというイメージがつかないというのが実際なのでしょう。
 正直なところ、災害で死んでしまうときには、その死体はあまり人がみることができる状態にはなっていません。
 そういう状態がイメージできればもっと真剣に考えるのかもしれませんが、見ていないものや体験していないものをイメージするのはかなり難しいものです。
 でも、自分が死ぬところをイメージしたとき、どんな死に方をすればいいのかについて、一度考えてみてもいいのではないかと思います。
 誰もいつか死にますが、その原因が災害にならないように、災害で死んでしまうかもしれないという想像をしながら研修会や訓練に参加してくれるといいなと思っています。

犯人はともかく・・・

 先日、家の基礎に穴を掘ってきゅうりを埋めていた何かがいることを書きましたが、そのおうちから連絡があって、同じ壁面のちょっとだけ離れた場所にまたきゅうりが埋められていたとのこと。

わかりにくいが、真ん中の物体がキュウリ。地面に埋まって黒く見えるのは配管。

 現地を確認したところ、確かに新しい穴ができていて、その中に爪か牙かでつけられた穴がたくさんあるきゅうりの端材が転がっていました。
 ちょっと離れた場所には、同じきゅうりと思われる、別なものが地面に転がっています。
 きゅうりを食べて、かつ埋めておくというのは非常に珍しいような気がするのでおそらくは前回と同じ個体ではないかと思うのですが、たびたび続くとちょっと困るという施主様のご意向で、対策を考えてみることにしました。

壁際の土が柔らかいために掘りやすく、掘っていると予測されるが、配管もあって掘られると悪影響が出そうなので対策が必要と判断。

 この手の対策では、餌をとる場所とその餌が埋められる場所の両方の対策をしておくのが一番いいのですが、このきゅうりがどこから来たのかがわかっていません。
 ご近所で少し聞いた限りでは、特に被害にあっているところは見当たらなかったので、餌をとる場所の対策は諦めて、埋めている場所に埋められないような対策をすることにします。
 埋められない対策としては、この場所をコンクリ張りにすることや、電気柵を張ることなどが考えられますが、費用対効果が悪い上に、ここには小さな子供さんがいますので、万が一の事故が起こっても困ります。
 「穴が掘られなければいい」ということなので、幅45cm、格子のサイズが5cmのワイヤメッシュを敷くことにしました。

穴堀りを防ぐだけなら、ワイヤーメッシュが結構使える。

 これを敷くと、掘っている犯人の体重で掘ろうとしたときにワイヤメッシュを動かすことが難しいので、これで諦めるのではないかということでやってみました。
 これでうまく言えばよし、だめなら次の手を考えます。
 鳥獣対策は地味でこれなら万全というものは存在しません。
 相手を考え、その相手が来ては困る場所に来たくなくなる対策を考えていかなければいけません。
 じきに地生えきゅうりも終わると思いますので、それまでこれでうまくいくといいなと思っています。

二重遭難は絶対に避ける

 災害が起きたとき、逃げ遅れた人を救助するような場面に出会うこともあると思います。
 その場合には、冷たいようですがまずはあなた自身の安全を確保することが最優先。
 危険がなければできる限り人命救助に協力すべきだと思いますが、周囲が何らかの理由でその場にいる人たちが危険な状態になっていたり、安全か危険かの判断ができない場合には、ひどいようですが逃げ遅れた人の救助を諦めて自分の命を優先させてください。
 災害で逃げ遅れた人を救助していて一緒に死んでしまったのでは、せっかくの命が無駄になります。
 災害救助のプロである消防や自衛隊の人たちも、災害救助でまず優先すべきは自分の命であることを訓練で叩き込まれています。
 それはその場で死んでしまうことで、本来なら助けられてはずの大勢の人も道連れにしてしまうことになるからです。
 ひどい言い方になりますが、まずは自分の命を最優先すること。ほかの人の命は、自分の安全が確保されている範囲で救助に参加するようにしてください。

犯人は誰だ?

 当研究所では有害生物対策もやっているのですが、有害生物といっても、当研究所の場合は野生の動物対策がほとんどです。
 野生動物対策をやっていると、さまざまな不思議な出来事に出会うことがあるのですが、今回出くわしたのもその一つ。
 「家の横、壁の下が掘られていてきゅうりが埋めてある。このきゅうりにはたくさん の動物の傷がついているが、どうしてだろうか?」
 というお問い合わせをいただき、写真を確認して現地調査したところ、建物の壁、コンクリートに沿った地面に穴が掘られていて、ご丁寧にキュウリが埋めてありました。

地面の中に緑色のものがあるのに気が付いて掘ってみたら出てきたとのこと。

鍬の手前のちょっと土が柔らかそうな部分が今回の現場。

 野生の動物には、こういった餌を隠す習慣のある生き物がいるのですが、ちょっと前からたまに悪さをするアナグマがいるので、今回はそいつの犯行ではないかと考え、犯人を特定したいとこのキュウリがどこから来たのかを聞いてみたのですが、キュウリの出所がわからないということがわかりました。
 近くにはキュウリを作っている方もいらっしゃるのですが、そちらでも被害は出ていないとのことで、犯人に加えて、このキュウリがどこから来たのかという謎も残ってしまいました。
 アナグマはそんなに遠くまで餌を持って逃げることはほとんどないので、そうするとカラスかなとも思ったのですが、それにしては穴がしっかりと埋め戻してあり、鳥ではあればお見事といいたくなる出来でした。
 ちなみに、見つけた餌を移動させて埋めておくという事例はさほど多いものではないようですが、アナグマ、タヌキ、カラス、クマ、猫などにそういった行動をとる個体がいるようです。
 結局犯人不詳のまま、キュウリは撤去して穴は埋め戻したのですが、わかるものであれば、この犯人がだれで、キュウリをどこから持ってきたのかを確認したいところです。
 さて、犯人は誰だったのでしょうか?

新型コロナウイルス感染症と備蓄品

アルファ米の五目御飯、各メーカーの食べ比べ。かなり味が違っていて面白い。

 新型コロナウイルス感染症がまたまた蔓延していますが、あなたの体調は大丈夫ですか。
 当研究所のある島根県では、県が感染した時の自宅療養に備えて、5日分程度の生活物資の備蓄を呼び掛けていますが、どれくらい効果が出ているのかは不明です。
 ただ、もしも非常用持ち出し袋などが準備してあって自宅療養をしなくてはいけなくなったら、非常用持ち出し袋に入れてある防災食を食べてみてください。
 防災食にも当然賞味期限がありますから、それまでには消費しておく必要があります。もしも自宅療養になると、買い物に出るわけにもいかなくなりますので、準備してある備蓄品を使って、その使い心地をしっかりと確認しておいてください。
 アルファ米でも缶詰でも、同じ名前のものでもつくっている会社が異なると当然味も違います。こういったときに備蓄をしっかりと食べてみて、あなたの口に合うかどうか、そしてどうすると食べやすくなるのかなどを調べておくと、いざ本番のときにも安心できます。
 また、ウェットタオルや消毒なども備蓄品には入っていると思いますので、そういったものを活用してプチ避難生活を試してみるといいと思います。
 もちろん体調が悪い、または気が乗らないときに無理にやる必要はありません。
 ただ、せっかく自宅に閉じ込められているのですから、同じような条件になる非常用持ち出し袋を使っていろいろと試してみると本当にさまざまな発見があると思います。
 もし中身を使ったら、使った分はしっかりと補充。そして自分の好みにあった食料品でいざというときをしのげるようにしておいてくださいね。

【活動報告】イノシシ対策その後(~2022年7月18日)

 イノシシの罠については引き続き監視および管理を行っていますが、5月に仕掛けている箱わなと柵を隔てた敷地に置いていた餌の入った丸ペール缶をひっくり返されるという事件が2回ありました。


 最初は熊かと思ったのですが、監視カメラの判定結果は大きなイノシシで、対策として餌のペール缶の前に箱わなを仕掛けてみました。

 結果は、わなの半分くらいまでは体が入るのですが、箱わなの扉を閉めるトリガーという装置を器用に躱して餌だけ食べている状態。
 この依頼を最初にいただいたときに発端となった個体ではないかとも思うのですが、非常に頭はよいみたいで、なかなかうまくはかかりませんでした。
 6月の中旬くらいから、わなを運用している山の反対側で道路工事が始まり、それに伴ってイノシシが一切寄ってこなくなりました。
 工事自体は半年くらいやるようですので、少なくとも夏の間は寄ってこないのではないかと判断し、一度罠の蓋を閉じました。


 今後は監視カメラで状況確認をしながら経過観察することになりますが、もともとイノシシを近寄らせないという目的で設置した箱わなですので、うまくいけばこのまま管理終了、撤去となるのではないかと思っています。
 捕獲するということは、基本的には餌を撒いてその場へ獲物を寄せることになり、有害鳥獣対策としては、実はあまり面白くないことになります。
 このままイノシシがでなくなってくれることを願いながら、しばらくは監視活動を続けます。

バリアフリーを考える

技術の普及や周囲の理解もあってか、日常生活に支援が必要な人でも地域で暮らすことができるようになってきています。
生活の支援といってもさまざまですが、自分で自分が生活する場所を選ぶことができるようになったことは非常に喜ばしいことだと思っています。
ただ、生活の支援がいる人は、全てを自力でできる人たちに比べると、どうしても避難の判断や準備、行動が遅れがちになってしまうので、対策としては事前に決められることを全部決めて、いざというときにすべてが自動で動くようにしておく必要があると思います。
さて、今回のお題のバリアフリーですが、避難所におけるバリアフリーというと、どうしても車いすや足の不自由な人が移動しやすいようにスロープや傾斜を準備するというのが最初にイメージされることが多いようです。
でも、バリアフリーというのは、そもそもがバリア、つまり「障害」がフリーの状態、障害がない状態といった意味合いになりますので、一般的に思い浮かぶような物理的なものだけではないはずです。
一般的には、生活するときのバリアには4種類あるそうで、「物理的バリア」「制度的バリア」「文化情報面のバリア」「意識上のバリア」がそれにあたります。
災害時には普段のあれこれが先鋭化してしまいますので、どうしても生活に支援が必要な人たちには厳しい状態になりがちですから、事前にさまざまなケースを考えて想定し、備えておく必要があります。
先ほどのスロープ一つとってみても、健常者が考えるスロープと必要な人の考えるスロープでは出来上がりが違うかもしれません。
同じように、避難所に掲示される情報が難しく書かれていてわからない人がいるかもしれません。
状況がわからず、一人一つの配給品をたくさん取ってしまう人がいるかもしれません。
できあがった仮設トイレが使えない人や、仮設トイレがわからない人がいるかもしれません。
そこで生活する人たちがお互いの家庭の文化が可能な限りぶつからず、必要最小限のストレスで済むような避難所にするためには、開設してからさまざまな人の意見を吸い上げる仕組みを作ることも大切ですが、事前にバリアを持っている人たちに参加してもらって実際の避難や避難所の設営や運営で気づいた点を教えてもらい、改善を続けていくしかありません。
バリアはストレスに直結しますし、へたをするとバリアを感じる人の生死にも影響してきます。
その地域に住む人たちがどのようなバリアを持っていて、どのように支援すればとりあえずの生活が確保できるのか。
避難所のバリアフリーはそういうことをしっかりと考えることが大切です。

車の移動と低地走行

 あちこちで大雨が続いています。
 大きな被害が出ないことを願っていますが、報道を見ると、車で移動していて動けなくなり救助要請という事態が起きているようです。
 大雨でも普段使っている道が冠水して池になっているというのは考えにくいようで、いつものように走っていて水没し、動けなくなるということのようです。
 人間というのは不思議なもので、普段から慣れ親しんでいるところが急激に変化するとはあまり考えないようになっているらしく、多くの方がひどい目にあって、「こんなはずではなかった」と言うことが多いです。
 ほんのちょっとしたことなのですが、緊急時に安全な場所まで逃げるための避難路の点検と同じように、普段使いしている道路の高低差や経路で土地が低かったり排水がうまくできないような場所を確認しておいたなら、こういった事態にはならなかったかもしれません。
 アンダーパスでの浸水の危険性はかなり周知されてきていますが、アンダーパスだけでなく、周囲から見て一段低い場所も水が溜まって危険です。
 大きな水たまりに見えていても深いことがありますから、基本はそういった水たまりはできるだけ避けて運転することです。
 雨の日にちょっと気を付けていると、水のたまりやすいところや掃けにくいところがわかると思いますので、普段と比べて水の量がどうなのかがイメージできれば、そこまでひどい目に遭うことはないのではないかと思います。
 実際に現地を歩いてみたり、国土地理院の地図などで周囲の確認をしたりして、大雨の時にはできるだけ水たまりとなるような場所を通らない。
 できれば普段からそういった場所を避けるような経路を作って、それを常に移動するような癖をつけておくといいと思います。

垂直避難で気を付けること

 あちこちで大雨が降っていますが、あなたのお住いの地域ではどのような状態でしょうか。
 ここのところの雨の降り方は数時間で河川氾濫や内水越水が起きるような強烈なものになっているため、行政の避難情報が間に合わない事態も起きているようです。
 自分の命を自分で守るためには、自分で避難すべき基準を作り、確認しておく必要がありそうです。
 ところで、こういった雨の降り方をすると、場合によっては安全な場所に逃げるための水平避難が間に合わない場合が想定されますので、いざというときに備えてご自宅の二回以上に避難する垂直避難も逃げる選択肢に入れておいたほうがよさそうです。


 垂直避難では、基本的に二階以上に避難したら、水が引くまではそこで過ごすことが原則となります。地域によっては水防団などが救助に来てくれる可能性もありますが、基本は避難した場所から移動ができません。
 そのため、そこで過ごすために必要なあれこれをあらかじめ備え付けておくようにしてください。
 水、携帯トイレ(もしくは簡易トイレ)、食料、着替え、布団、ポータブル電源、テレビやラジオなどの情報が確認できるもの、そして暇つぶしのできるものなどを用意しておくといいと思います。
 ただし、垂直避難できるのはその地域の水没する水の高さが1階の高さ以内に収まることが前提となりますので、二階以上が水没するようなハザードマップが出ている場合には、危険だと思ったらすぐに域外へ避難することです。
 一番いいのは安全な場所にいますぐに引っ越しをすることですが、それができない人は、雨には十分に警戒するようにしましょう。
 最近は精度の高い雨雲レーダーの情報(リンク先は日本気象協会)や気象庁のキキクルなどもありますので、自分できちんと情報を集めてどうするかの判断をするようにしてください。
 そして、自分で判断が難しい場合には、そういったことが得意な人に注意を促してもらうようにしておくといいでしょう。
 いずれにしても、垂直避難は決して安全な避難ではありません。
 もし垂直避難するのなら、避難後に困らないような準備を、二階以上に備えておいてくださいね。

体温調整には血管を使う

 体温の調整システムがうまく機能しなくなると、体にさまざまな障害が発生します。代表的なものだと、熱中症は体の排熱調整がうまくいかなくなって熱がたまってしまい発生するものですし、低体温症は体の熱生成機能がうまく働かなくなって熱を作れなくなってしまい発生するものです。
 どちらもそのまま放っておくと死に至ってしまうかもしれない危険な状態なので対処をしなければいけないのですが、すぐに病院に搬送ができないときには、血管を使って体温の調整をしてみてください。
 体の中のおおきな血管を冷やしたり温めたりすることで、体の体温がある程度調整できますので、緊急時に打つ手の一つとして知っておいて損はありません。
 大きな血管は首やわきの下、鼠径部といった場所で体表に近いところに露出しています。そこに向けて熱中症であれば冷たいものを、低体温症であれば暖かいものを置いてやることで、外部から効率的に体温の調整ができます。
 もちろん体内の温度は簡単に変動しませんので、冷たいものや暖かいものを飲む必要はありますが、外部からと内部からの両方で体温調整をしてやることで、本来持っている体の恒常性を取り戻すことができるのです。
 余談ですが、低体温時には体で熱を作ることが難しくなっていますので、例えばエマージェンシーシートや毛布などで体を覆っても体温は上がりません。
 もしも体が濡れていればすぐに乾いたものに着替えさせること、そして外部から暖かな熱を与えることが必要になりますので、対処するときには気を付けてください。