台風に備える

 台風が日本にやってくるシーズンに入りました。
 今年もかなり暑いので、やってくる台風は勢力がさほど落ちずに来るのでは無いかと思っていますが、台風に備えた準備はできていますか。
 台風で備えるのは風と雨。いつ頃襲来するのかは分かっていますから、そういう意味では非常に対応がしやすい災害だと思っています。
 大きな台風が来たとき、最終的にどのような被害を被るのかは正直なところわからないところがありますが、それでも備えておくことで、ある程度までの被害を防ぐことが可能です。
 今日は台風シーズンに入る前にやっておいた方がいいことについて考えてみたいと思います。

1.台風対策、まずは掃除から

 台風がやってきて問題になるのは、溢れてくる水とそれに流されるもの、そして風で飛ばされてくるあれこれです。
 ですので、水を可能な限り排水させるために側溝や水路の掃除をしておきましょう。また、周囲に側溝などに詰まりそうなものがあれば、あらかじめ撤去しておくことも大切です。
 それから家の雨樋。ここの掃除もしっかりとしておくことで、排水能力の確保や貯まった水による雨樋の破壊を防ぐことが可能です。
 あと、見落としがちなのがテレビアンテナ。強い風雨にさらされると、劣化したテレビアンテナが壊れて落下したり飛んだりすることが起きます。
 筆者の家でも、何度かの台風でテレビアンテナがぼろぼろに壊れてしまったことがありますので、シーズン前に電気屋さんに点検してもらい、破損が起きないようにしておくことが大切です。
 家の周囲にも注意を向けておきましょう。
 風が吹くと落ちたり飛んだりしそうな場所に、物干し竿や植木鉢、プランターなどは置いていませんか。
 大風が吹くと、一見大丈夫そうな場所に置いてあるものでも簡単に飛んでしまいます。物干し竿などは飛びそうにないように見えますが、過去には物干し竿が飛んでよその家の窓ガラスを割ったというような礼もあります。
 飛びそうなものは、屋内に入れておくか、もしくは風が通らない場所に置いてください。
 家庭ゴミなども同じで、飛んだり散ったりするとあちこちでトラブルが起きます。これらも屋内または風や雨の当たらないところにおいてください。

2.おうちの対策をしておく

 瓦屋根のお宅では、風で瓦が飛んだりしないように点検をしてもらっておきましょう。またトタン屋根などではめくれている部分や破損している部分がないかどうかを点検しておき、できれば修繕しておきましょう。
 窓は飛散防止フィルムが張ってあればいいのですが、そうでない場合には、ガラス窓にはガムテープなどで飛散防止対策をしたうえで厚手のカーテンを引き、ガラスが飛散しないようにしてください。
 側溝や水路に面しているお宅では、状況によりますが土のう袋が必要な場合もあるかもしれません。あふれそうな場所があらかじめ分かっているときには、土のうを作って置いておくのもいいと思います。
 停電に備えて、乾電池式のランタンや懐中電灯、およびそれらに使う乾電池も準備しておきましょう。また、オール電化のおうちでは、念のためにカセットガスコンロも準備しておいた方がよさそうです。
 非常用持ち出し袋の点検をし、着替えや靴なども準備しておきましょう。また、断水に備えてお風呂などに水をためておくことも忘れずにやっておきましょう。

3.台風の進路の情報収集しておく

 台風の進路は、昔に比べると読みづらくなってきています。そのため、前の日の予想進路と今日の予想進路が変わっていることが起こりえますので、天気予報は定期的に見ておいてください。
 台風の強さと家の状況によっては、台風の勢力圏に入る前に安全と思われる避難所に避難してしまうことも検討しておきましょう。
 また、状況によっては学校や会社に行けても帰れなくなる可能性がありますので、天気予報を見た上で、場合によっては自主休業・自主休校することも視野にいれておいてください。
 どうしても出社や登校しなければならない場合には、職場や学校で待機しなくてはならないことを想定して非常食を用意しておくことをお勧めします。
 台風そのものは、1日程度あれば勢力圏から抜けることが殆どですから、その期間が凌げるだけの準備をしてあれば大丈夫です。

4.情報共有しておく

 家族のいらっしゃる方は、当日は誰がどこにいるのかをお互いに確認しておきましょう。
 いざというときにどんな行動を取るのかについて確認しておき、例えば最悪家に子どもだけしかいなくても大丈夫なような準備をしておくことが大切です。
 非常食、避難所に行けない場合どうするのか、連絡手段をどうするかなど、しっかりと詰めておきましょう。

 災害対策はいくら準備をしてもしすぎるということはありません。
 幸い、台風は進路予測ができますから、それに対応して準備をすることが可能ですから、直撃したときに自分や周囲に被害がないように、あらかじめしっかりと準備しておきましょう。

要支援者ほど早く避難しろという意味

 風水害の警戒レベル3は「避難準備・高齢者等避難開始」ということになっています。レベル4には「避難勧告」と「避難指示(緊急)」が同居していて訳がわからなくなっているということでどうやら修正がされるという話も聞いていますが、ともあれレベル3が発令されると「高齢者等」は準備ができ次第安全な場所、例えば避難所等に避難を開始することになります。
 この「高齢者等」には、高齢者だけで無く妊婦や乳幼児を含む家族、障がいを持っている人、その他避難する準備がかかる人達、いわゆる要支援者のことで、手間のかかる人は早く準備して早く避難しろというのがこのレベル3の趣旨です。
 ではなぜ普通の人よりも早く避難した方がいいとされているのでしょうか。
 何かあったときにすぐ避難できないから避難するというのは大きな理由ですが、それ以上に「早く避難して自分のスペースを確実に確保しておけ」という意味があります。
 過去に起きた様々な災害では、声の大きく元気な人ほど避難所で生活しやすい良い場所を占拠し、支援品や補給品を優先して受け取るという傾向が一貫してみられます。
 そうすると、本来は支援が必要な人達は避難所の片隅または避難所から追い出されてしまって、車や倒壊した家屋などで生活することを余儀なくされてしまうのが現状です。
 支援の必要な人が先に避難所に入って条件の良い場所を使っている場合には、いくら元気な人でも押しのけてその場所を奪い取ることはなかなか難しそうなのですが、実際には後から来た人の方がいろいろな意味で本人の状況が悪くなっているので、それを盾にして先住者を追い出すということが発生したりしています。
 大きな街ほどそういった傾向が見られるので、本当のことを考えると支援がいる人は支援がいる人専用の避難所を作ってしまった方がいいと思うのですが、いろいろと理屈をつけてそこまではしないというのが現在の行政の限界でもあります。
 そうすると、普段の生活に何らかの支援がいる人、支援があった方がいい人は早めに避難して避難所を占拠するくらいの行動力を見せないと自分たちが路頭に迷うことになってしまいます。
 実のところ、他人様に迷惑はかけられないと避難を渋る人達が大勢いるのですが、収容先のない要支援者が路頭に迷うことの方がよっぽど迷惑ですから、ひどくなりそうな気配を感じたらさっさと非常用持ち出し袋を持って避難所に避難し、良い場所を占拠してしまいましょう。
 避難所運営スタッフからスペースとして使って良い場所を確認しておけば、あとは安心して事態が収まるのを待てば良いのです。
 普通の人と同じように行動していると、要支援者はかならずひどい目に遭います。
 普通の人よりも早く動くことで、自分の安全を早く確保することができますから、準備ができたらそのまま避難するようにしましょう。
 なお、特殊な医療用設備が必要な要支援者のかたもいらっしゃいますが、そう言った人は避難所では無く、できれば被災しないであろう地域まであらかじめ避難しておく方が無難です。
 そういった事態に備えて、かかりつけのお医者様といざというときに支援してもらえる医者を決めて準備してもらうようにしておきたいですね。
 繰り返しになりますが、状況を見て早めに避難し、自分の居場所を確実に確保することが、要支援者が生き残る道です。
 他の人の動向など気にすること無く、自分が決めた避難計画に従って避難してくださいね。

溺れそうなときは浮いて待つ

両手両足を広げて背浮きすると、泳げない人でもなぜか浮く。でも練習していないと溺れてしまう。写真は去年当研究所で実施した着衣水泳体験での一コマ。

 まだまだ水の事故が多いようですが、少し前にはライフジャケットは必須であることを書きましたが、今回は溺れたときにどうやって助かるか、ということを考えてみたいと思います。

1.まずは慌てない

 溺れると、とにかく意識だけが助かろうと慌てますが身体がそれについてきません。
 まずは慌てないこと。これが実は一番難しいのですが、助かるのはそんなに難しいことではありません。
 溺れた人のうち、子どもは75%、大人で50%の人は助かっています。

2.なるべく早く背浮きの姿勢になる

 とにかく助かるためには浮いていることが絶対条件です。そして、鼻や口が水面上に出ていなければ呼吸ができなくて死んでしまいます。
 慌てずに背中を水底にしましょう。人間には肺という身体に備わった浮きがありますから、空気が入っていれば必ず浮きます。
 また、浮力を稼ぐために両手両足を広げます。頭を水の上に出すと鼻や口が沈んでしまいますので、頭は水に浸けておきます。

3.服は脱がない

 溺れたら速やかに服や靴を脱ぐ、ということを教わった人も多いと思いますが、状況が落ち着いて救助が望めない場合以外は服を脱ぐのは止めた方が無難です。
 身体にまとわりついてる服は浮力を持っていますので、身体が浮くのを助けてくれます。
 服や靴は濡れていて身体に貼り付いていますから、これを脱ぐとなったらかなりの体力と泳力が必要です。
 浮いているだけであれば大きな邪魔にはなりませんから、服や靴は身につけたままにしておきましょう。

4.足が流れに向くようにしておく

ちょっとした流れに巻かれたとき、足を怪我することが多いので、流れが速くなってきたら気持ちだけ足を上げておくようにしたい。揚げすぎると頭が水に沈むので注意!

 川や海の離岸流では水の流れがありますから、水の流れる方向に足をむけて流れるようにしてください。
 浮くときにはお尻を浮かせ、流れが急な場所では足を浮かせて流れることで、大きな怪我を防ぐことができます。

5.助けてもらえることを信じて待つ

 最後は、必ず助けてもらえることを信じて待ちましょう。見ている人がいれば必ず助けてもらえます。
 助けてもらえることを信じて、とにかく浮くことに注意を向け続けましょう。

 テトラポットや何かの下に潜ってしまわない限り、浮力を常に発生させてくれるライフジャケットは生命線です。
 ただ、ライフジャケットがもし無い状態で助かるためにはどうしたらいいのか。
 最近では着衣水泳を教えてくれる水泳教室や学校も増えてきました。
 残念ながら大人向けはまだまだ少ないのですが、水で溺れるのはこどもに限った話ではありません。
 今年はコロナ禍で、当研究所も含めてそういった水難事故対策の教室がされているところは少ないようですが、機会があれば積極的に受講していざというときに命を守る練習をしておいてくださいね。

参考資料
令和元年夏期における水難の概況(警察庁生活安全局生活安全企画課のPDFファイルが見られます)

普段からよく観察しておく

 災害が発生したあと、「なぜ?」と思うような被害が出ていることがあります。
 例えば水害発生時のアンダーパスでの水没などは、より低いところに流れていく水の性質を知っていれば危険だと分かりそうなものですが、車が突っ込んで水没してしまう事故が後を絶ちません。
 普段道路よりも低い場所を走っていることは理解できていても、それと水の性質を結びつけて考えることは難しいのだと思います。
 ブロック塀はどうでしょうか。ある場所はなんとなく覚えていても、それがどんな状態なのかまでは意識していないのではないでしょうか。
 マンホールはどうでしょうか。普段使っている道のどこにマンホールがあるのか、現地を見なくても位置がわかりますか。
 もしも地震が来たり、洪水が起きたとき、あなたは安全に避難できる経路を意識していますか。これらの危険なものや場所を把握しておくことで避難の時の安全度を上げることができます。
 例えば地域の防災マップ作りなどをすると、その危険なものや危ない場所をを可視化することができ、それを利用する人達で情報を共有すれば、より安全に過ごすことができます。
 普段から何気なく使っている道をしっかりと観察し、危なさそうな場所はなるべく避けられるように意識しておきましょう。

家具を固定する理由

野島断層記念館メモリアルハウス内の台所の写真。阪神淡路大震災の野島断層のすぐそばにあった家の震災直後の状況を再現したもの。食卓を食器棚が直撃している。

 災害対策として優先することの一つに「家具を固定する」というのがあります。
では、なぜ家具を固定するのでしょうか。
 一つには倒れてきて下敷きになったり破片で怪我したりすることを防ぐため。
 それから倒れたり壊れたりした家具が避難経路をふさいだりするのを防ぐためです。
 家具に限らず、振動や衝撃で動き出すものは凶器になりますから、複数の固定手段でしっかりと固定し、少々のことでは動き出さないようにしておかなければいけません。
そして、固定する向きにも注意が必要です。幅が広く、奥行きが短い側に家具はよく転倒します。これは揺れや振動に対して奥行きが短い方が先に耐えられなくなってしまうからで、万が一に備えて倒れるときには人のいない方向に倒れるように固定しておきましょう。
 また、家具の扉や引き出しが飛び出さないようにロックや固定をしておきましょう。それらや中身が飛び散るとやっぱり凶器と化します。
 普段使いでいちいちロックは面倒という方には、揺れや振動でロックされるような装置もありますので、それらを活用してください。
 家具が動き出さなければ、怪我をする可能性は低くて済みます。
 また、家具の固定は地震だけで無く、水害時にもこれらの流出や流出による家屋やその他のものを破壊することを止めることができます。
 固定不可の賃貸住宅でも無い限り、あらゆるものは固定しておくことが一番です。
 またどうしても固定できない場合には、固定できないものを集めた部屋を一つ作ることで家具の転倒で下敷きになったり怪我したりする可能性を下げることができます。
 災害対策というと最初に水や食料の心配をするのですが、それよりなにより生き残ることができなければそれ以降の備えが無駄になってしまいます。
 生き残るためには生き残る確率を少しでも上げる準備をすること。
 完璧な対応を取ることは難しいですが、だからといって何もしなければ、あなたが死んだり怪我したりします。そうすると、あなたの救出や安否確認を行うために不要な人手や資機材が投入されることになり、その数が増えれば救出する人手が足りなくなって助かる命も助からなくなります。
 まずは何か一つを固定してみてください。無理なら、せめて倒れてくる方向に人がいない状態を作り上げるようにしてください。
 ほんのちょっとでも作業を行えば、それだけ助かる確率は上がります。
 今からでも遅くはありません。まずは最初の一歩を踏み出して、災害で死なない環境作りに取り組んでくださいね。

川遊びにライフジャケットを

 連日暑い日が続くようになりました。海や川など、水遊びの季節です。
 今年は新型コロナウイルスの影響で仲間達と海や川へ遊びに出かけて大騒ぎはできませんが、家族でこじんまりと楽しく水遊びというのもいいのではないかと思います。
 ところで、川遊びの時にライフジャケットはつけていますか。
 どういうものか、川遊びをしている人はライフジャケットを着けていない人が多い気がします。
 海に比べれば波も無くて安全と言うことなのかなとも思いますが、浮力に関して言えば、海よりも川の方が浮力は低いですので沈みやすいですし、堰堤や橋脚の周囲では川の流れ方が変わって川底へ沈むような水流が発生していることもあり、流れが速いと吸い込まれてしまうこともあります。
 浅い場所でも油断はできません。足のつく場所でも川の上側と下側で流れが異なり、足を取られておぼれてしまうことがあるからです。
 ライフジャケットは身体に浮力を与えてくれる安全装置です。泳いだり遊んだりするのに邪魔にはなりますし陸にいると非常に暑いですが、浮力の足りない川で安全に遊ぶためには絶対に必要なものだと筆者は考えています。
 ただ、ライフジャケットを着けていても、堰堤や橋脚の周りで水中に空気分が多いと浮力を失うこともありますから、ライフジャケットをつけているから完璧というわけではなく、自分たちで安全に遊べる場所も考えなければいけません。
 そういった知恵を巡らせながらの川遊びは、普段とは違った楽しみ方ができると思います。
 海や川で遊べる期間は短いですが、ライフジャケットを着けて安全を確保し、楽しい水遊びをしてほしいなと思っています。

お鍋でご飯を炊いてみよう

お鍋でご飯を炊くのはそれほど難しくない。慣れてくると直火でも炊けるようになる。
こうなるとおいしいお焦げも楽しめることがある。

 先日、ご家族の災害備蓄品についてどのようなものがいるのかについてご質問をいただきました。
 さまざまな場所で非常用持ち出し袋や備蓄品についてのお話を聞いておられる方は多いと思いますが、具体的な準備と言うことでさまざまなお話をさせていただきました。
 その中でキーポイントとなるのが水とご飯です。副食は缶詰やレトルト、食べられる山野草や野菜があるのでなんとかなるとして、水の備蓄とご飯の備蓄についてどの程度必要なのだろうかということになり、少し考えてみました。
 その方のご家族は3名ですので、飲料水の分量を考えると一日6リットル。3日で18リットル、7日だと42リットルが必要となります。市販品のペットボトルの2リットルの水が一箱6本ですので2日分。4箱あれば間に合うという計算になります。
 次にご飯、つまりお米をどうするかという話になり、アルファ米で計算すると一日3食食べるとして3人で9食。3日では27食、7日で63食が必要となります。
 ただ、アルファ米は日常生活ではあまり登場しないということとお金がかかるということで、備蓄を2日分、残りは普通のご飯を炊くという提案をしてみました。
 電気がないのにご飯が炊けるのかと聞かれましたのでお鍋でご飯を炊けますよと説明したところ、登山用品の鍋や飯ごう、メスティンなどの特殊な道具を用意した方がいいのかを尋ねられました。
 水害や土砂災害に遭う確率が殆ど無く、地震でも地盤改良してある最近建てた平屋建てということなので、建物が倒壊する可能性はないと判断して普通の土鍋や鍋でご飯は炊けますよと言ったらかなり驚かれてしまいました。
 確かにやったことがなければできるかどうかもわかりません。本番で初めてやって失敗したら間違いなく気力が無くなりますので、何も無い平穏なときに自分が普段使うお鍋でご飯を炊いてみることをお勧めしました。
 災害時には電気やガス、水道は止まってしまって復旧に時間がかかることが多いです。でも、とりあえず数日から1週間程度電気やガス、水道がなくても何とかなる状態を作っておけば、気分的には安心できるのではないかと思いましたので、一度カセットガスを使った卓上コンロでご飯を炊いてみることを体験してもらうことにしました。
 普段はなかなか時間がとれなくていろいろな文明の利器に頼ってしまうことも多いのですが、たまには昔に戻って料理をしてみるのも面白いのでは無いかと思います。
 おうちでできる防災訓練の一つとして、ぜひ試してみてください。なお、ご飯の炊き方はさまざまな流派があるのでyoutubeなどを参考に確認してみてくださいね。

1階では寝ないようにする

 日本の一戸建の多くは平屋または二階建てだと思いますが、あなたのうちは何階建てですか。
 アパートやマンションなどのある程度の高層階はともかく、二階建ての一戸建てに住んでいる方は、寝る場所は二階にすることをお勧めします。
 足が悪かったり階段が急で上ることが困難という場合もあると思いますが、できる限り一階では寝ないようにしてください。
 最近続いている水害では、多くの高齢者の方が1階で就寝中に氾濫した川などの水に呑まれて亡くなっていますが、もしも二階で寝ていたとしたら、少なくともいきなり水に呑まれるようなことはなかったでしょう。
 水害だけではありません。地震の時に仮に建物が耐震強化していない状態でも、二階部分は割と形が残っていることが多く、助かる可能性が一階よりも格段に高くなります。
 巨大な地震試験装置であるイーディフェンスを使って耐震補強の有無で家がどうなるのかについて実験をした映像があるのですが、この映像で倒れた建物も二階部分は形が残るような倒れ方をしていました。
 むろん二階にいれば確実に助かるというわけではありませんし、普段の生活で考えると、二階に移動するのはいろいろな意味で大変になると思います。
 ただ、災害という視点で見ると生存確率を上げるためにはなるべく一階で寝ない方がいいことははっきり分かっていますから、普段の生活とのバランスを考えながら寝る場所を決めておいてほしいと思います。
 余談になりますが、災害対策を行うときの基本的な考え方の一つに、「とっさに動けない状況になる場所の補強を優先する」というのがあります。
 寝ているとき、風呂に入っているとき、トイレに入っているとき。
 これらは危険だとわかっていてもすぐに行動に移せない状態になっている場所ですから、ここにいて安全が確保できるような対策をしっかりとしておくといいと思います。
 また、備蓄品や非常用持ち出し袋は玄関や勝手口などに置くことが多いと思いますが、家がつぶれたり水没したりすると使えなくなってしまうので、一部は二階に補完しておくことをお勧めします。
 ちょっとしたコツを積み重ねて、災害なんかで死なないようにしたいですね。

低体温症を救うには

 大雨や台風の中を安全な場所へ避難しようとすると、多くの場合全身がずぶ濡れになってしまいます。
 雨風にさらされたこともありますし、道路や田畑を流れる濁流の中を移動することで、たとえ夏であっても身体は冷え切ってしまっていると思います。
 雨などの水に当たらない場所で身体の水分をしっかりと拭き取り、乾いた服に着替えれば大抵元気になっていくのですが、長時間に渡ってずぶ濡れの状態でいると、身体の熱が服についた水分の蒸発で持っていかれて体温が下がっていきます。
 身体を触ると冷たい状態が続くようであれば、低体温症を疑って対応をするようにしてください。特に高齢者や乳幼児では周囲の注意が必要です。
 がたがたと震えているようであれば、身体を動かすことで熱を作り出そうとしています。温かい飲み物を飲ませ、携帯カイロや湯たんぽを血管の集中している脇の下や鼠径部などに置いて加温してください。
 震えが止まっても意識がはっきりしない状態であれば、毛布などにくるんで周囲を暖めて安静を保ちます。
 また、低体温症が悪化すると心肺停止を招くことがあります。その場合には救急車の手配を行い、心臓マッサージをして命を繋ぐようにしてください。
 いずれにしても、可能な限り暖がとれる状態にしておく必要があります。
 よくすぐエネルギーに変わる非常食としてチョコレートがあげられていますが、低体温症の人にはチョコレートの油を溶かす熱量がないことと、分解に水分が必要とされるため脱水症状を引き起こしやすくなります。
 もし与えるのであればココアなど温かな甘い飲み物を飲ませるようにしてください。
 最後に、たばこは末梢の血管を収縮させる働きで低体温症が悪化します。アルコールも同様で皮膚の血管を広げる働きが熱を奪う効果を起こしてしまいます。
 安心すると嗜好品が欲しくなるものですが、嗜好品はしっかりと元気になってから適量を楽しむようにしてください。
 低体温症は意識していれば悪化を防ぐことのできる病気です。避難をする際にはできるだけ身体は濡らさない。もし濡れたら安全な場所ですぐに拭き取り・着替えを行うよう心がけてくださいね。

水害で被災したら気をつけたいこと

 日本のあちらこちらでびっくりするくらいの量の雨が降っています。河川の氾濫や決壊でいろいろな場所で水害が発生していますが、まずは自分の命を守ることを最優先に安全確保をしていただきたいと思います。
 そして被災した方にはお見舞い申し上げます。まだ状況が治まらないとも聞きますので、どうぞ体調維持にご配慮ください。

 ところで、水害で被災した後にはどんなことに気をつけたらいいのか。
 今日はやっておいたことがいいことや、忘れがちなことについて3点だけ触れておきたいと思います。

1.片付け前に写真をたくさん撮っておこう

 被災して状況が落ち着いたらまずはお片付けになると思いますが、お片付けをする前に被災したものや場所の写真をさまざまな角度から撮影し、記録を残しておいてください。このときに写真をしっかりと撮っておくと、後で役所の発行する罹災証明書や保険会社の保険申請のときにびっくりするくらい役に立ちます。
 罹災証明書の発行や保険会社の保険適用は原則として全て現地調査を行うのですが、大規模災害になると手が回らなくなります。そのため調査が遅くなり、片付け終わった家屋や周囲の状況で罹災状況の判断がされてしまうことになり、いろいろと困ったことが発生します。
 ですが写真をしっかり撮影しておくと、申請書にその写真をつけることで現地調査が省略され、証明書や保険金の支払いが早くなることがあります。
 また、行政機関でさまざまな手続きをする際にも被災状況の写真があれば説明が非常に早くでき、損になることはありません。お手元のスマートフォンや携帯電話のカメラ機能であらゆる角度からしっかりと被災状況の写真を撮影しておいてください。コツは近くと遠くで撮影すること。全景も忘れずに撮っておいてくださいね。

2.いろんな手続きは自分でしよう

 被災地では、各種申請手続きの代行業者が言葉巧みに自分に手続きを代行させるように誘ってくることがありますが、これらの業者にお願いすると多くの場合は異常に馬鹿高い手数料を取られてしまいます。
 また、代行業者に頼んだからと言って各種手続きが早くなることもありません。
 確かに書類を書くのは面倒くさいですし間違えて怒られるのは面白くないですが、役場の人や保険会社の人に教えてもらえば1時間もかからずに申請手続きをすることができますから、面倒くさがらずに自分で手続きは行うようにしてください
 どうしても自分で作るのがいやな人は、代行業者では無く、司法書士や行政書士にお願いしてください。代行業者よりも遙かに安く確実に手続きをしてくれます。

3.家族の記録の処分はちょっとだけ待って

 最後に、家族の記録写真やデジタルデータ、絵などが被災しても、復旧できる方法があるかもしれませんから、処分するのはちょっと待ってください。
 必要なのは、早い段階でしっかりと乾かすこと。劣化が抑えられれば、写真洗浄ボランティアやデータ復旧サービスなどでなんとかなるかもしれません。
 捨てるのはいつでもできますから、お片付けのときに家族の記録については優先して乾かして復旧方法を考えるようにしてください。

 水害で被災すると、後片付けに追われてなかなかじっくりと考える時間がとれません。ですが、

1.片付け前にまず写真を撮っておく

2.各種手続きは自分自身でやるか、

  もしくは司法書士、行政書士に依頼する

3.思い出の品物は早く乾かせば救えるかも

という3つだけは覚えておいてほしいなと思います。
 被災後はあらゆることが一気におそってきます。気力をしっかりと持って、自分のペースで復旧して欲しいと思います。
 どうぞご安全に、そして無理はされませんように。