災害時に備えていろいろと準備するように言われていますが、気をつけないといけないことがあります。
それは災害によって備えるべきパターンをわけておくこと。
より具体的には、地震とそれ以外の災害にわけて考えることが大切になります。
地震は来た時には勝負がついています。つまり、建物やブロック塀などの耐震補強や逃げ込める場所の確保といった、どれくらい事前の準備ができているかで結果が決まります。
対して、それ以外の災害ではある程度予測や予兆がありますので、対策をする時間があります。
「マイタイムライン」はまさにこの予測できる災害に備えた災害時行動計画になり、これを整備しておくことで自分が助かる可能性が上昇します。さらには、状況に応じてさまざまな行動パターンが作れるのも予測ができる災害対策の利点です。
いきなり来ると言われる火山の噴火でも、さまざまな映像を見る限りは噴火の開始から1分~数分の猶予はありますのから、その間にできる限りの退避行動をとることはできます。また、事前の準備である程度生存率を上昇させることもできると思います。
さまざまなところがやっている災害の研修会では、結構この部分がごっちゃになって説明されているので、なかなか理解してもらうのが難しいのではないかと思っています。
地震は事前準備と発生時から治まるまでを分けて考え、それ以外の災害では時系列で行動を整理していく。
これをわけるだけでも考えるのにかなり楽になります。
もしも何から手を付けていいのかわからない人がおられるのなら、地震とそれ以外でまずは切り分け、それぞれにどのような対策がいるのかについて考えてみてください。
カテゴリー: BCP
避難先はどこですか?
災害で最優先されるべきは人の命であり、ハードもソフトもその前提で対策をとっています。
ただ、いろんな大人の事情があるみたいなので「避難=避難所」という図式を変えずに表現しようとして、「自宅避難」などという不思議な言葉が登場してきています。
「避難」という言葉の意味は「難を避ける」ということなので、「自宅避難」という表現でも問題はないという見解をしているみたいですが、「避難=屋外退避」ということを言い続けていたのが行政だったわけで、その見解を変えずに無理やりつじつま合わせをしているような、なんともいえない気分に「自宅避難」という言葉を聞くたびになってしまいます。
言葉遊びをするのではなく、前提条件として、そもそも「避難」は自宅にいると何らかの命の危険がある場合に自宅以外の場所に逃げるのだということをはっきりと言わなければなりません。
過去には自宅は安全だったのに、避難勧告が出たので避難を開始してその途中で遭難してしまった人がいます。
まずは安全なら自宅待機。自宅が危険だという人だけが避難行動をとらなければいけないということをあらゆる機会に言わなければいけません。
ともすれば、防災関係者でも簡単に「避難所に避難しましょう」などと言ってしまっていますが、その結果として、避難所は人であふれかえって収容ができなくなり、いくつもの避難所をめぐる避難所難民が誕生します。
もともと流域人口を考えずにテキトーに割り振られているのが避難所や避難場所なので、避難所難民が出てくるのは当たり前なのですが、それらの人たちの命も当然守られなければなりません。
ではどうするかといえば、まずは「自宅が安全であるかどうかを確認する」ことから始めて、安全であれば自宅で待機、危険であれば、そこで初めて避難するという選択肢が登場するのだと考えてください。
避難でも、例えば親せきや友人が安全な場所に住んでいるのなら、そこに移動するのが一番確実です。普段から良い関係であるなら、あらかじめお願いしておくことでトラブルを防ぐこともできるでしょう。
予算に余裕のある方は、被害地域から出てしまうのも手です。影響のないところに移動して、状況が収まってから戻れば、心身ともに元気な状態で復旧作業に入ることができます。
また、安全な場所にある宿泊施設などに移動して、そこで過ごすのもいいと思います。経費はかかりますが、避難所と違って宿泊するための設備があるので、かなり快適に避難生活を送れると思います。
最後に、何らかの理由で今まで書いてきた避難先が確保できない人だけが避難所に避難する。こうすることで、避難所に集中する人数はそれなりに減ると思います。
「避難=避難所」ではなく、避難所は「どうにもならない場合の最後の砦」という意識で、避難所以外の避難先を平時から探しておくことをお勧めします。
【活動報告】救急救命講習会を開催しました
2023年5月21日に益田市あけぼの西町にある(株)益田スイミング様を会場に、日本赤十字社島根県支部の方を講師にお招きして救急救命講習会を開催しました。
当日は14名の方にご参加いただき、水難事故で気を付ける点や心肺蘇生法、AEDの使い方を3時間にわたってしっかりと講習をすることができました。
心肺蘇生とAEDはほとんどセットでされることが多いので、今回の講習でも一連の流れとして行ったのですが、実際にやってみると非常に疲れてしまい、1分間でも圧迫する力が緩んでいくような大変さがありました。できる限りその場にいる人たちで交代で負担を軽くしながら命をつなぐことが重要だと感じました。
今回の講習会でも、参加してくださった方からはさまざまな質問が出て、「夏の道路で短パン履いてる状態で膝立ちするのは難しい」とか「実際にどれくらい出くわす頻度があるのか」「心肺蘇生法をした相手が亡くなったら訴えられるのか」などといった質問も出て、講師の方も「周囲の協力を仰いでできるだけ怪我しないようにする」「講師自身はそういった現場には出会ったことはない」「心肺蘇生した相手が亡くなっても刑事訴訟にはならない」といった具体的な回答を一つ一つ丁寧に行ってくれました。
毎回ご好評をいただいているこの講習会ですが、一年もたつと忘れてしまうというご意見も多く、できれば年内にもう一度やってみたいと考えていますので、興味のある方はぜひご参加ください。
今回の講習会に参加してくださった皆様、そして丁寧に分かりやすい講習をしてくださった日本赤十字社島根県支部の講師の皆様にこころからお礼申し上げます。
スマートフォン用の充電池を持っていますか
好き嫌いにかかわらず、最近ではさまざまな情報を得るのに使われているツールがスマートフォンです。
電話、といいながら、さまざまなアプリで情報交換したり、音楽を聴いたり、写真を撮ったり、ゲームをしたりと、一台で何役も仕事をしてくれる優秀なアイテム。
ないと困るという人も多いと思います。
ところで、災害が起きると問題になるのがこのスマートフォンの充電方法。
スマートフォンを大規模災害後もそのまま使えるようにするためには、スマートフォンを充電できる充電池を持ち歩いておくほうがよいでしょう。
中には大容量のバッテリーを持つスマートフォンもありますが、そういったものでもない限りは、大規模災害後に電源を入れっぱなしにしておくと、びっくりするくらい電池を消耗します。
これは基地局を探すためにアンテナの出力を自動的に上げることで起きるものだそうで、対策としては使わないときには機内モードにするか、あるいは電源を切っておくことが有効です。
ともあれ、情報を集めるにしても安否確認するにしても暇つぶしするにしても、バッテリーが切れてしまってはただの箱。
そうならないように、充電池を一緒に持ち歩くようにしてください。
ちなみに、避難所では避難所にあるコンセントを勝手に使って充電することはできません。大規模災害の場合には、手持ちの電池で何とかするしかありませんので、充電池だけでなく、可能であれば太陽光発電装置なども用意しておいた方がよさそうです。
自分のスマートフォンのバッテリーをどうやって持たせるのか、普段から意識して準備するようにしてください。
【活動報告】高津小防災クラブで「経口補水液を作ろう」を開催しました
去る5月17日に益田市の高津小学校で今年初めての防災クラブを開催しました。
本来は初回なので「災害ってなんだ?」というタイトルで災害の定義や種類について考えてみる回なのですが、前日から気温30度超えで熱中症が心配されたことから、急遽熱中症対策と経口補水液づくりをやってみることにしました。
熱中症対策としては、まずは暑さに体を慣らしてしっかりと汗をかくようにすることと、こまめに水分補給をすること、できれば水や麦茶がよいというお話をし、経口補水液は脱水症状を起こしているときや起こしかけのときに使ってほしいという説明をしました。
実際に経口補水液を作ってみたのですが、飲んでみた感想は全員「まずい!」でした。これがおいしく感じると脱水症状が始まっていますので、とりあえずは一安心。次にレモン果汁を加えて飲んでもらうと、感想がいろいろと変わって「ポカリみたい」とか、「よくわからん」「さっきよりまし」といった感じで、「まずい!」ではなくなりました。脱水症状を防止するために経口補水液を使うときには、ある程度何か味がついているほうが飲みやすいようです。
最後は、もし熱中症で倒れたらということで、急速冷却材の説明と、冷やすのは大きな血管が肌に近いところにある場所ということで、わきの下や足の付け根、首の下などを冷やすことをお話し、意識がはっきりしていない場合には、点滴が必要となるのですぐに救急車を呼ぶことを重ねて説明し、終了しました。
今年度初めての子ばかりで、17名中過去に参加したことのある子が1名だけという、なんとも捉えどころのない今年の防災クラブですが、そのうちには今年の個性が出てくるのかなと楽しみにしています。
次回は改めて「災害ってなんだ?」というお話をしたいと思っていますが、状況によっては、またメニューが変わるかもしれません。
参加してくれた児童の皆さん、そして担当の先生にこころから感謝いたします。
我が家のBCPを作ろう
防災用語として割と定着した感じのあるBCP、事業継続化計画といわれますが、何か不測の事態が起きた時にでも事業を継続できるような段取りを可視化しておくものです。
学校や施設、企業などで作っているはずですが、行政や業者の作ったひな型に文字を入れて、内容の確認も検証もせずに備えていますというところが山ほどあります。
実態に即していないBCPはいざというときに助けにならず、逆に邪魔になることが多いのですが、今回はそれに対する文句を言いたいわけではありません。
今回は、おうち版のBCPを作ってみないかというお話です。
おうち版BCP、一時期FCP(ファミリー・コンティニュー・プラン「家族継続化計画」)と呼ぶ人もいましたが、結局定着していないようなのでおうち版BCPとしてここでは説明をします。
内容は「誰がどこにいるのか?」「どこにいるときにはどこへ避難するのか?」「災害が落ち着いたら、どこで合流するのか?」「連絡手段はどうするか?」「収入はどのようにするか?」など、被災しても家族が安心して避難し、災害後、日常生活を取り戻すまでに必要な段取りをきちんと決めておくことです。
これを作ることによって、いざというときに自分がどこへ避難するのかや他の人がどこに避難するのか、どうやって連絡を取り合うのか、どこで家族がまた一緒になるのかといった、災害後に問題になる部分が解決できます。
家族と普段から生活している場合には、災害発生時にどうしても自分以外の家族が気になるものです。
子どものいるおうちだと、子どもを引き取りに学校などに出向くということがあるかもしれませんが、迎えに行く人や迎えを待っている人が被災するかもしれません。
でも、もしも災害発生時に子どもがどこかへ避難することを決めているのであれば、子どもはそれに従って避難しますし、危険を冒して迎えにいかなくても、状況が落ち着いてから避難先に迎えにでかけてもいいのです。
BCPと避難計画が決定的に違うのは、避難計画は避難完了までが目的であるのに対して、BCPは避難完了後、日常生活を取り戻すまでの手順を作っておくことが目的であることです。
作る時には、ご家族みんなであれこれ話しながら作ってください。そうすることで、参加した人は自分のこととして受け止めることができ、いざというときにもきちんと行動をしてくれます。
我が家のBCP、作るのは結構大変ですが、ご家族の行動範囲や活動内容、生活習慣を再確認することができるので、作った後は悩んだり迷ったりする必要がかなり減ります。
作ることが難しいなと感じたら、BCPについて書かれた書物を調べたり、BCPを取り扱っている業者などに相談してみてもいいと思います。
当研究所でもお手伝いできますので、興味のある方がおられたらご連絡をください。
我が家のBCP、作ってみてくださいね。
一日一度は楽しい時間を作る
避難生活が続くと、楽しいことやにぎやかなこと、特に笑うことが不謹慎だと言われる方もいらっしゃいますが、気力を維持するためには楽しいことやにぎやかなこと、そして笑うことが何よりも大切だと筆者は考えています。
被災者となった人にこそ、一日のうちのどこでもいいのでその人が楽しいと思える時間を作ることが未来への気力を生む力だと思います。
携帯ゲーム機でも、スマホでも、麻雀でもおしゃべりでも、パチンコでもいいと思います。普段から自分が楽しいと思っていることを楽しむ時間を確保してください。
笑わなければ、だんだんと気が滅入るようになり、未来への気力も失われていきます。自分を楽しませることは、生きる力を生むことではないでしょうか。
大規模災害だと、最初は生きるので精いっぱいな状態かもしれません。でも、そういった時期をすぎたら、できるだけ自分が楽しめる時間を作る努力をしてください。
とはいえ、被災地ではできることできないことがありますから、平時に作っておいた「自分が楽しいと思うことリスト」を使って、その場でできる自分が楽しいと思ったことを片っ端からやってみてください。
どれかがはまればしめたもの。きっと夜は気持ちよく寝られますし、翌日もすっきりと目が覚めると思います。
ただ、一つだけ気を付けてほしいことは、お酒だけはダメです。お酒は自分のそのときの気分を極端化にする飲み物なので、どこか心に不安を抱えた状態で飲むと、悪酔い&深酒&からみ酒となってロクなことにはなりません。お酒は、自分が本当に楽しいと思う気分のとき、その気分をより楽しくするために飲むのだと思ってください。
不謹慎で結構。被災地だからこそ、自分が楽しまなければ気力は続きません。
自分を守ると思って、自分が楽しいこと、時間を作って楽しむことを忘れないでくださいね。
とりあえず備蓄する
災害などの非常事態に備えるために、生活に必要なものについては3日~1週間程度は備蓄するように政府は推奨しています。
ただ、普段はあまり使うことのない水のストックやアルファ化米、災害食などは長期保存できる分値段も高いですし、どうかすると使わずにそのままダメになってしまうこともあると思います。
備蓄するためには場所も必要ですが、単身の方でワンルームなどにお住いの場合などは、そもそも備蓄品を置く場所がないという場合も想定されると思います。
だからといって何も備えなければ、非常事態が発生した時にはどうにもならなくなりますので、とりあえず1日分の備えをすることをお勧めします。
1日分で考えると、例えばペットボトルは2リットルですので、500mlのボトルで4本あればいいことになります。これくらいなら、しまう場所は見つけられると思いませんか。
また、アルファ化米も3袋なら、さほど場所は必要ありません。
そして、それくらいの量なら、賞味期限が来ても使うことはさほど難しくはありません。例えば昼食で500mlの水のボトルとアルファ化米を一つ使えば、3日で消費できる計算です。
また、一口ようかんやカロリーメイトなどの栄養補助食品、スニッカーズといったチョコレートといったものがあれば、ひもじくはなりますが数日は命をつなぐことができます。
家で調理をする人なら、普段から一食分程度材料を多めに買っておくと、非常事態でもそのまま1食は確保できる計算になりますので、それもお勧めです。
肝心なことは、まず備蓄することです。備蓄があれば、消費量を調整すればある程度は持たせることができます。
備蓄がなければ何もできません。
まずはあなたの周りにある備蓄品を確認してリスト化してみてください。リスト化してみると、案外と手元にあるもので1週間くらいはなんとかなるかもしれませんよ。
日のあるうちに避難する
災害の発生が予測されるようなときや災害発生後、自分の住んでいる場所に不安がある場合には避難をすることになります。
避難先は避難所だけではなく、ホテルや旅館、友人宅などいろいろとあると思いますが、共通して言えるのは、日中、太陽が出ているうちに避難を完了することです。
避難するのを迷っているうちに周囲が真っ暗になり、そのなかで避難をしなくてはならなくなった場合、足元も周囲も見にくくて状況がつかみにくくなります。
そうすると、日中避難の何倍も危険度が増し、避難速度も遅くなるために災害に巻き込まれてしまう場合も出てきます。
数時間で一気に水かさが増すようなゲリラ豪雨などの場合は仕方のない場合もありますが、可能な限り明るいうちに安全な場所への避難を完了させてください。
そして、避難完了後は翌朝までそこにいるようにしてください。
確実に危険性がない場合には夜間の帰宅もできると思いますが、確実性がない場合には夜明けまで待ってからの帰宅をするようにしてください。
自分の安全確保を安全に行うためには、できるだけ明るい状態での避難が望まれます。夜間に地震などが起きた場合にはどうにもなりませんが、予測できる災害では、迷ったらとりあえずは避難する。日のあるうちに避難を完了する。
該当する災害で避難をする必要がある場所に住んでいる場合には、それを徹底するようにしてください。
地震のときには安全確保
能登半島を中心として大きな地震があったようで、詳細がまだわかりませんが、大きな被害がでないことを願っています。
地震では、とにかく身を守ることが最優先となります。地震そのものでは、心臓が弱い方が驚いて心停止ということでもなければ死ぬことはありませんが、地震に伴って建物倒壊に巻き込まれたり、何らかの落下物などに当たったりすると大けがをすることがありますので、耐震補強や家具などの転倒防止対策はしっかりと行わなければいけません。
そして、今回の地震でもそうですが何回か連続して地震が起きることもありますので、揺れが収まったら、まずは安全な場所に移動して状況を確認してください。建物内部のお片付けは、安全が確認されてから始めても遅くはありません。まずは安全確保ということを忘れないようにしてください。
また、万が一に備えて、普段生活しているところや寝ている場所について、誰か知っている人を最低一人作っておいてください。
もしも建物が倒壊した時、その時どこにいたのかがわかるだけで、救助の速度は格段に上がります。どこにいるのかがわからなければ、建物全体を丁寧に探さなければならないので、時間が非常にかかって助けられるものも助からなくなるので、自分が助かりたい人は自分がいそうな部屋を知っている人に伝えておきましょう。
安全確保は自分自身で行うものです。自力でする安全確保と、周囲に助けてもらって行う安全確保。
これから来るかもしれない大地震に備えて、しっかりと準備しておいてください。