普段から災害について考えている人は、あまりいないと思います。
でも、災害発生時にもそれではちょっと困りもの。非常時には非常時に備えた準備や行動をとることが重要となりますが、常時と非常時の切り替え、あなたはどの時点でスイッチを切り替えていますか。
このスイッチをいつ切り替えるかによって、災害時に生き残れるかそうでないかが決まってくるので、普段からこのスイッチ切り替えについては意識するようにしてください。
具体的には、スイッチを切り替える基準を作っておくといいと思います。
例えば、「近所の川の水の水位が2/3を超えた時」や「裏山の〇〇から水が噴き出したら」、「家の向かいの側溝から水が溢れてきたら」など、身近にあるものを基準にするのがコツです。
切り替える基準を複数作っておくのもいいことですし、行政の避難レベルに頼らない自分の中の基準を作っておきましょう。
さて、自分のスイッチが非常時に切り替えたら、行動も考え方も非常時のものに従うことで、より安全に早く行動をすることができるようになります。
例えば、水害などで作ることが推奨されているマイタイムラインなどは、このスイッチ切り替えのタイミングで開くことになると思います。
慣れていないと、そういったスイッチは簡単に切り替えることができません。
日常生活でもオン・オフを意識しておくことで、常時と非常時のスイッチも切り替えやすくなるのではないかという気がしますので、自分の中のいろいろなスイッチの切り替え、ちょっとだけ意識してみてください。
カテゴリー: BCP
危険を見つけよう
災害が発生すると、普段はなんでもないような場所がものすごい危険な場所になっていたりすることがあります。
よくあるのがアンダーパスで、普段は何も意識せずに通行していても、短時間に大雨が降ったようなときだと、いきなり池になっていたりします。そういうときには、大抵道路管理者が通行禁止措置を取る前に、多くの車が突っ込んで水に沈むことになっていると思います。
でも、大雨のときにはアンダーパスは水がたまるかもしれないと意識しておくとどうでしょうか。もしくは、雨の時にはアンダーパスは通らない、できれば普段から使わないといった行動をしていると、冠水時にも自分は被害を受けなくてもすむかもしれません。アンダーパスは危険な場所ということが意識できれば、行動が変わるのです。
同じようなことが、谷が集まる場所にも言えます。
普段はなんともなくても、山で大雨が降ると、それが谷筋に流れ、谷が集まる場所では大水が出てしまうことがあります。
困ったことに、これらはハザードマップでは表示されないケースがよくあり、浸水しない場所のはずなのに床下浸水してしまったりすることがよくあります。
そのことを知っていると、普段から降ってくる雨の量が気になってくると思います。
普段から降っている雨の量を意識するようになると、普段の雨と普段と違う雨にも気づけるようになります。
普段と異なる雨に早くから気づくことができれば、被害が発生する前に避難するなどの対応策も可能になります。
危険は普段の生活のあちこちに潜んでいますが、毎日の生活ではそれを意識しなくてもいいような環境が作り出されています。
でも、何かの拍子に意識していなかった危険がいきなり牙をむくことがありますので、普段から「ここはどうなると危険なのか?」といったことを意識するようにしましょう。
危険を見つけ、そしてその対処法を考えて実行すること。
災害だけでなく、普段の生活の安全確保でも使えるのではないでしょうか。
判断基準は自分で持つ
2023年6月2日から3日の大雨、前線と台風の相乗効果でかなり強い雨が降った地域がありますが、あなたのお住いの地域は大丈夫でしたか?
避難レベル4の避難指示や避難レベル5である緊急安全確保が出された場所も多くありましたので、眠れぬ夜を過ごされた方もおられると思います。
また、被害に遭われた方にはこころからお見舞い申し上げます。日常が早く取り戻せることを願っております。
ところで、大きな災害が起きると、避難レベル3から4、5という順番で避難に関する情報が出されるということになっていますが、実際の運用ではすべてをすっ飛ばしていきなり避難レベル5の緊急安全確保になることがあります。毎回発表が遅いとお叱りを受けるこの避難情報の発表、自治体の中で何が起きているか考えてみたことがあるでしょうか。
こういう事態が発生する理由、実はすごく単純なもので、災害が発生しそうなとき、多くの人が自分では判断せずに行政に対応や救助をさせようとします。
一人二人ならともかく、それが何十、何百という数になると、電話対応だけで手いっぱいになり、気が付いたら緊急安全確保を出さなければいけない状態になっていることが多いのです。
情報提供はありがたいのですが、「だからなんとかしろ」と後につくと、一件の電話はとても長くなります。長いこと各自治体は人が多すぎるとして減らされ続けた結果として、電話にかかってしまうと他のことができなくなるくらい職員の数が減っています。また、「なんとかしろ」という電話の件数は年々増えていますから、そちらにかまけてしまって、本来業務ができなくなっているというのが実際のところです。
それと、一つ知っておいてほしいのは、避難レベルはあくまでもその地域全体を面で見た時に発表されるということです。
その地域全体が危険だと判断されて初めて出されるのがこの避難レベルですから、発表されるときにはすでに場所によっては災害が発生していることも十分に考えられます。つまり、自治体が出す避難レベルはあなたがいる地域という「面」であって、あなたがいる場所という「点」ではないのです。
自分の安全を守るためには、自治体の出す情報は頼りになりません。自分を守るのは、あくまでも自分の判断であることを忘れないようにしてください。
例えば、家の裏の川の水位が〇〇まで上がったら逃げる、とか、裏山の普段出ないところから水が出始めたら逃げるとか、自分の周りの環境で起きるちょっとした変化を避難判断にしましょう。
自分で決めた避難判断は、恐らくは自治体が出す判断よりも早くなります。
つまり、より安全に確実に避難を開始できるということになり、空振りは増えるかもしれませんが、自分の命は確実に守ることができます。
避難判断の基準は自分で持つ。そのために、家や近所の周りの普段の様子をしっかりと確認するようにしてください。
【活動報告】乳幼児救急救命法講習会を開催しました
2023年6月1日に益田市のすみれ保育園様で乳幼児救急救命法の講習会を開催しました。
当日は日本赤十字社島根県支部の講師さんの指導のもと、8名の保育士の先生方にご参加いただき、約1時間半に渡ってみっちりと乳児・幼児の一次救命措置について実技をしました。
当研修会はすみれ保育園様の研修会の一つとして開催されたもので、保育士の先生方は普段の保育園の活動を考えながら、時間いっぱい、一生懸命受講されていました。
講習会後には、定期的に受講しないとできないねというお話もいただき、やらなければできないということを体感していただけたのではないかと思います。
日本赤十字社島根県支部様では、こういった乳幼児救急救命法や一般向けの一次救命といった研修会について職域・地域での開催も受けておられるそうなので、10人程度のまとまった参加者が確保できたら、一度相談してみるといいと思います。
今回講師派遣を快諾してくださった日本赤十字社島根県支部の皆様、そして救急法講習会にご参加いただきました保育士の先生方にお礼申し上げます。
日本赤十字社島根県支部(日本赤十字社島根県支部のウェブサイトへ移動します)
災害に対応する職員の衣食住
災害が発生すると、あらゆる機関が非常態勢に入って非常時の活動を開始します。
周囲は被災しているため、基本的にあるもので何とかしなければいけない状態になるのですが、現時点に至るまで、被災者の中の一般人の食料や水は確保されていますが、災害対応をする職員のものは確保されているという話はほとんど聞きません。
企業はともかく、施設や行政機関ではほとんど日常の延長戦で非常時への対応を行っているのではないでしょうか。
目まぐるしく変わる状況の中では、しっかりと食べ、しっかりと飲み、そしてしっかりと睡眠をとることが事故を防ぐのにとても重要なことなのですが、自分の手持ちにあるもので何とかしろというのが今の日本の現状です。
では、職員に対して支援物資が来るのかというと、支援物資は被災した一般住民が最優先。災害対応する職員にはまず届きません。
自衛隊やよそから派遣されてくる応援部隊も、自分たちのものは当然持ってきていますが、最初から対応に当たっている職員の分までは当然考えられてはいません。
災害対応している職員が披露し衰弱すると、最終的にその地域の復旧や復興が遅れる上にいらない事故が発生します。
非常時に待ったなしで対応しなければいけない施設、例えば行政、警察、消防、施設、学校といったところは、一般被災者よりも災害対応にあたる人に対する備蓄をしっかりと整えておくことが、その後の対応に大きな差が出るということを知っておいてください。
「頑張れ!」という精神論ではお腹は膨れませんし、疲労も取れません。災害対応は長期戦です。食事、給水、睡眠、衛生といったものは、本来は最優先で対応されるべきものです。
防災計画は、被災後に起きる長期的な生活部分のことをしっかりと決め、食べ、飲み、出し、寝ることがきちんと計画的に運用されるためにこそ作成すべきものです。
残念ながら、そういった点に目が向いている組織のトップはまだまだ少ないので、できる人に仕事が集中して潰してしまうという状況は変わらないのかもしれませんが、災害対応する職員ができる限り生活レベルを落とさなくてもすむように、被災後の対応計画についてしっかりと設計しておいてほしいと思います。
ペットたちも自助共助?
ペットを飼っているおうちでは、自分が避難しなければならないときにペットをどうするのかということを考えることが出てきます。
人によっては、ペットがいるから避難しないという選択をする人も出てくるので、ペットを連れて避難してもいいですよということに、最近はなりつつあります。
ただ、ここで想定されているペットは、犬や猫、せいぜい鳥くらいまで。
その他のペットについては、まったく考えられていない状況です。
最近ではさまざまな生き物がペットとして飼われていますが、最低限、ペットの種類ごとに収容場所を作らないと大きなトラブルが発生します。
その他のペット、というひとくくりにしてしまうと、例えばカエルと蛇とコオロギを同じ部屋に置くというとんでもない事態が発生してしまうのです。
避難所あるあるですが、その存在が少数であればあるほど、避難所の運用想定からは除外されることが多いです。
人間でも、身体障がい者の方や精神疾患を持つ方、補助具や装備がないと動くのに制限がある人などであっても、避難所での収容では特別な配慮はされません。
一般の人と同じ扱いになってしまうので、そういった人にとってはさまざまな困難が発生するのですが、少数意見のために「我慢しろ」で終わってしまいます。
これがあまりにひどいので、福祉避難所を最初から作って、支援のいる人や何らかの補助がいる人をそちらへ収容するという風に法律は変わりましたが、現状、ほとんどの自治体がさまざまな理由から対応していないと思います。
これと同じで、ペットも多数派である犬や猫、鳥は恐らく避難所でも飼育スペースが確保されると思います。しっかりと検討されているところなら、一緒に生活できる同伴避難になっているかもしれません。
でも、ほとんどの避難所では犬、猫、鳥くらいのくくりでしかしわけられていないので、その他の生き物はそもそも想定されていないという事実があります。
そうすると、ペットもその飼い主も避難所に避難するという選択肢はなくなります。
安全な場所にあるペットホテルや獣医など、ペットを安全に収容してくれる施設にお願いするか、あるいは知り合った同好の士が安全な場所に住んでいるなら、そこに避難するか。あるいは、キャンピングカーやワンボックスカーなどでの車中避難をするか。
かなりの自助や共助が必要となっています。
ペットも自分も、安全に災害をやり過ごしたいですから、自分たちが少数派であることを考えての、自助や共助を準備しておくようにしてください。
触覚・味覚に注意する
乳幼児のことで、災害時にどのようなものを避難用のアイテムとして用意しておけばよいのかというご質問をいただくことがあります。
そのときにご説明することの一つに、できるだけ「普段使っているものを使い続ける」というものがあります。
乳幼児は触覚や味覚が敏感です。
そのため、できるだけ普段食べたり飲んだりしているものを摂取できるようにすること、そして食べたり飲んだりする道具も普段とできるだけ違わないものを準備することが重要になります。
例えば、母乳ではなくミルクを飲んでいる子どもさんは、できるだけ普段と同じミルク、普段と同じ哺乳瓶で飲ませるようにすると、不安の中でもある程度落ち着いてくれます。
母乳であれば、無理にミルクに変えずに出なくても母乳を与えてください。一時的に止まることはあっても、焦らなければ必ずまた出ます。
幼児であれば直接口にする箸やスプーン、フォークなどはいつもと同じものを使いましょう。それだけのことですが、不安な中でも食事をしてくれることが多いです。
離乳食期の子どもさんの場合には、できるだけ普段と同じものを食べてもらうようにします。普段お手製のものを食べなれている子は、もし作れる環境にあるのならば作ってあげてください。難しければ、市販品を与えることになりますが、市販品はメーカーによって同じ品名でもかなり味が異なります。
お手製のものを食べるだけでなく、たまに市販品を混ぜて食べさせることで、その子の志向がわかりますので、そのメーカーのものを準備しておくとお子さんも食べやすいと思います。
乳幼児では、もっとも不安になってしまうのが普段と異なる食事ですから、できる限り普段と同じ食事を取れるように意識して準備をしておくようにしてください。
自分の子どもが騒がない、泣かないだけでも親のストレスは随分と減ります。
ちなみに、同じことは大人にも言えます。
アルファ化米やフリーズドライ味噌汁など、平時にたまに試しておいて、自分の好みの味を見つけて準備しておくと、少なくとも食でのストレスは相当減ります。
食べなれたもの、飲みなれたもの、使い慣れた道具は、それだけで人に安心を与えてくれます。そのあたりを意識して準備しておくようにしておいてくださいね。
避難所の準備はできているか
日本の災害でもっとも進化していない部分は、ひょっとしたら避難所なのかもしれません。
写真や絵が残っている1888年の磐梯山噴火の写真と、1959年の伊勢湾台風、そして2011年の東日本大震災、それぞれを比較すると、ほとんど同じ状況であることがわかると思います。
体育館などの広い施設に避難者が雑魚寝。プライバシーもなく、情報も生活用品の配布もでたらめ。トイレは汚くて衛生環境もかなり劣悪。
新柄コロナウイルス感染症の蔓延によってソーシャルディスタンスという言葉が生まれ、初めて避難所がすし詰めにならない状況が生まれましたが、今度は避難所に避難できない避難所難民が発生している事態になっています。
最近では自宅避難が前提だということになって、できるだけ避難所への避難者を減らす方向で国も広報を進めていますが、自宅避難できない地域もたくさんありますので、避難所にどのように収容するのか、そして避難所での生活環境をどれくらい快適なものにできるのかは引き続きの課題になっていると思います。
人によっては避難所を快適にすると避難所から出ないという人もいますが、災害という非常事態で、さらにプライバシーがなく、生活用品や生活リズムが自分の思うようにできない環境では、心身ともに疲弊してしまうのは、災害からの復旧には大変なマイナスになるということを忘れないでほしいと思っています。
海外では、大規模災害が起きるとすぐに仮設住宅などが設置され、長期にわたって避難所での生活を余儀なくされるケースは年々少なくなっています。
これは災害からの復旧にはその人が疲弊しない生活環境の確保が必要だと考えられているからではないでしょうか。
避難所を現状のまま長期間運用する気であるなら、それなりの生活環境を維持できるような整備が必要となります。
避難所の準備、当事者も管理者も、平時にしっかりと考えて準備しておく必要があるのではないでしょうか。
被災者と支援者
行政の職員や地域の民生委員、消防団、自治会役員、電力会社やガス会社など、普段から地域に住んでいてさまざまな役をしている人たちがいます。
災害が起きると、そういった人たちは被災者や被災地域の復旧・復興に東奔西走することになりますが、多くの人が忘れている事実があります。
それは、そういった人たちも地域の被災者であるということ。
他の人たちが家族の安否確認や家の片づけをしている間、役についている人たちは自分のことは置いておいて、まずは他の被災者や地域のために奔走しています。
でも、それは当たり前のことではありません。
誰だって家族のことが気になりますし、家の片づけだってしたいはずで、それを仕事だからということで後回しにして他の人のために仕事をしてくれているのです。
本来は、できるだけ早く他地区から仕事が代われる人を送り込んで、被災した人は家に戻してやることが必要です。
ここのところ災害が続いていて、だいぶ動きは早くなってきました。それでも、まだまだ遅いなという印象です。
行政や地域で活動している人全てが一斉に自分のことをするのは難しいと思いますが、他地区からの応援が入れば、順番に自分のことをやれる時間を作ることができます。自分のめどが立てられれば、精神的には落ち着きますので、かなりよいコンディションで仕事を行うことができるようになるでしょう。
それを行うためには、各応援部隊は数日で入れ替わるのではなく、1週間や10日くらいは被災地に腰を落ち着けて、地元の人がいなくてもしっかりと支援を行うくらいの気持ちが必要です。
これからまだまだ災害は増えてくると思いますので、今のうちに自治体同士の相互支援協定や民生委員、消防団、自治会などの受援体制をしっかりと固めておきましょう。
電力会社やガス会社はその辺はかなりしっかりとやられていますが、今後は現在のような維持管理体制を継続することも難しいのではないかと思います。
しっかりとした支援体制が組めるように、他地区の同業者と調整をしておく必要があるでしょう。
そして、支援者は短期、中長期でそれぞれ支援ができるような体制づくりをしていく必要があります。軌道に乗れば被災地に業務をお返しできると思いますが、支援者もある程度腹を決めて被災地に入ってほしいと思います。
被災地では、その地域でさまざまな仕事をしている人がすべて被災者になります。そのことを忘れずに、災害復旧をしていきたいですね。
【終了しました】外あそびごはんの会inみと自然の森を開催します
2023年6月25日に益田市美都町にある「みと自然の森」で防災ディキャンプ「外あそびごはんの会」を開催します。
ファイアスターターを使ったたき火体験やご飯炊き、自然観察など、さまざまなプログラムを用意しています。
また、現地までが遠く、途中の道が悪いので、益田市内の集合場所からバスもご用意しました。
6月10日締め切りで、事前申し込み制。雨天時は中止となりますが、前日昼までには開催の可否を判断いたします。
参加者は抽選ですが、益田市内限定などはありませんので、広く興味のある小学生・中学生の参加をお待ちしております。
内容について詳しくは、別添のチラシをご覧ください。
実際にどうなったのかはこちら