災害後のトイレ、使えるか使えないか。

 唐突ですが、あなたのいる場所のトイレはどういった汚物処理をしているかご存じですか。
 大きく分けると、くみ取り型、浄化槽型、そして下水型にわかれると思いますが、それぞれの処理方法によって災害後に使う方法が異なるので注意が必要です。

 いちばんシンプルなのはくみ取り型で、この場合には例えばくみ取り槽に水や汚泥が溜まってしまうような水害でも、くみ取り槽に溜まった汚泥や水を吸い出せばすぐに使えるようになります。
 また、他の災害でも水があればくみ取り槽へ流すことが可能なので、トイレに関して受けるダメージは少なくて済みます。
 もちろん最終的な点検は必要になりますが、とりあえず水さえあれば簡易トイレなどを使わなくてもトイレを使うことが可能です。

 次は浄化槽型。水害で汚泥などに浸かった場合には浄化槽の整備と点検が必要になりますので、それが終わるまでは使うことはできないと思ってください。
 浄化槽自体が水に浸からなければ、曝気槽のポンプに通電することで浄化槽の機能事態は維持することが可能ですので、流す水とポンプを動かす電源があればトイレを使うことは可能です。

 最後に下水型ですが、これは基本どんな災害でも使えなくなっていると思ってください。
 下水管は非常に詰まりやすいので、水で汚物を流し込むと途中で詰まってしまいます。そうすると大規模な修繕が必要となってしまうので、下水管の点検が終わるまでは全面的に使用禁止になります。
 また、マンホールトイレなどもありはしますが、下水処理の構造上あまり汚物を落としすぎると詰まってしまうので、マンホールトイレを設置する場合には設置しても良い場所をあらかじめ選定しておく必要があることを覚えておいてください。
 被災後、点検が終わるまでは携帯トイレや簡易トイレを使うようにしましょう。

 おまけですが、集合住宅のトイレでは、2階以上のトイレは使用不可です。もしも上層階でトイレを使った場合、途中の汚水管が破損していると破損した場所から汚物が噴き出して大惨事が起こります。
 そういった事態になった場合、汚物が噴き出した場所の住人から汚物を送り込んだ住人が訴えられたりすることがありますので、集合住宅の場合は処理方法を問わず、点検完了まではトイレは使用禁止です。
 トイレに関するさまざまな情報はありますが、まずは自分の住んでいる場所や普段でいるしている場所の環境を確認し、災害後に自分が汚物で二次被害を出さないように充分気をつけてくださいね。

誰でもできる感染症対策

 新型コロナウイルス感染が広がっているようで、連日マスコミが騒いでいますが、新型コロナウイルスに限らず、感染症対策の基本は手洗いになります。
 石けんと流水を使って手をしっかり洗うこと。これが感染症対策の基本となります。
 あとはマスクの着用。これは周囲にウイルスをまき散らさないために必要なものです。また、気休めですが防除できるかもしれません。
 この二つがしっかりとされるとどうなるのかを表した図があります。
 国立感染症研究所のインフルエンザ流行レベルマップの2018~2019年と2019~2020年(現時点では「今シーズンの動き」にあります)の流行状況を比較してみてください。
 新型コロナウイルス対策が叫ばれ始めてから、インフルエンザの感染者数が明らかに減っており、収束も早くなっていました。
 このことを考えると、手洗いをしっかりとすること、そしてマスク着用が有効であることがわかると思います。感染対策としては、できればフェイスシールドで顔を覆えば、飛んでくるウイルスの顔への付着を防ぐことができますのでより安全になるのではないかと思います。
 また、飲み会の席で酒が入ればどうしても大声で騒いでしまうことになりますので、飲み会では無く食事会にし、食べている間は静かに食べて、それから、マスクをつけてゆっくりおしゃべりをするようなスタイルだと安心できると思います。
 これからまたインフルエンザや感染性胃腸炎などが流行る季節になります。
 新型コロナウイルス対策だけで無く、冬に流行するさまざまなウイルス対策として、石けんと流水での手洗い、マスク着用、できればフェイスシールドの着用をして感染しないようにしたいですね。

参考:インフルエンザ流行レベルマップ(国立感染症研究所のウェブページへ移動します)

ダンゴムシのポーズをやってみよう

 いろいろ言われることも多いのですが、地震の時に身を守るための「ダンゴムシのポーズ」は理にかなっていると思っています。
 頭と首、お腹、そして手首、足首、ももの付け根の太い血管を守り、揺れにも転がらなくて済むポーズなのですが、正しくポーズを取らないと逆に怪我をするかもしれません。
 身体が硬いととっさにできないポーズでもありますので、まずはゆっくりと練習を兼ねてやってみるといいと思います。

机の下でダンゴムシ
机の下でダンゴムシはお約束です


 最初は正座をします。
 それから背中を丸めながら前に倒れます。
 頭は片手で後頭部、反対側の手で首筋を隠します。その時、手首が露出しないしないように注意してください。
 足首はくじかないように気をつけてください。
 この姿勢は縦揺れにも横揺れにも耐えられる非常に安定した姿勢ですので、素早くできるように練習しておくといいと思います。
 一つ注意しておきたいのは、この姿勢を取っても屋根や天井が落ちてきたり、家具が倒れてきたりすると怪我をしてしまったり死んでしまったりします。ダンゴムシのポーズはあくまでも小さなものの落下などから身を守るためのポーズですので、家具の固定や耐震補強が必要なことは言うまでもありません。
 ところで、足の不自由な人や身体が動かしにくい人はダンゴムシのポーズを取るのが難しいかもしれません。
 そういったときは、とにかく重心を下げることです。

身体が振られないようにすることが大切。場所があるなら「メタボパンダのポーズ」(当研究所命名)をとると転がらなくて済むかも?

 具体的には、座ったりしゃがんだり、なるべく頭を地面に近い位置に下げること。
 頭は体重の1/10の重さがあり、首という細い部分で支えられているので揺れで振られると転倒しやすくなりますので、身体が振られないような姿勢を考えておくとよいでしょう。
 地震はいつどこで遭遇するかわかりません。とっさの時に自分の命を守れるのは自分自身ですから、とっさの時に身体が動かせるように練習しておいてくださいね。

支援物資の物流について考える

 災害後の復旧が速やかに進むかどうかは被災者の安心をいかに獲得するかにかかっています。
 必要なものがきちんと手に入る、衛生環境が確保できるといった条件が満たせれば、とりあえずの混乱は防ぐことが可能です。
 そのためには、支援物資を輸送するための物流網を確保する必要があります。
 大量に支援物資を運び込み仕分けをして被災地へ輸送する物資集積拠点、そして被災地内で小分けし、各避難所へ配送する物資集積基地、最後は避難所にできるデポ。
 これらが上手につながることが必要となってきますが、こういった物流網を行政が設計・管理することは、人的にもノウハウ的にもほぼ無理です。
 立て続けの災害のおかげで、物資集積拠点や物資集積基地の指定や運用は運送業者さんに任せた方が効率的だと言うことが認識されてきたようですが、物資集積基地からもよりのデポ、そしてデポから被災地の住民に物資が渡る部分が現在うまくつながっていないところが多いです。
 運送屋さんが避難所まで持ってきた物資をいかに早く確実に必要とされる人の手に届けられるのかというところは、被災前にどれくらい物流について真剣に考えてきたかに比例しますから、避難所運営委員会がそこまで考えて運営設計をしているかどうかが鍵になります。
 避難所は物資と情報の両方が集積する場所ですから、それらを避難所への避難者だけではなく、被災地域の人達に物資や情報を届ける必要があります。
 災害対策のラストワンマイルと呼ばれる避難所から地域の被災者への物資や情報の伝達方法を、一度検討してみて欲しいと思います。

防災マップは見えるところに貼っておこう

 あなたは防災マップを作っていますか。
 防災マップというのはハザードマップのことではありません。ハザードマップに地域の安全な場所や危険な場所、避難経路、避難先などを記入して作るあなたの命を守るための防災マップです。
 この防災マップを一度作っておくと、自分のいる場所の情報が一目で確認できるため、現在の安全度や避難についてイメージがしやすくなります。
 もしも作っていないのであれば、一度DIGをやって作成してみてください。
 そして、それができるまではとりあえずのつなぎとしてハザードマップを見やすいところに貼っておきましょう。
 見やすいところに貼ってあると、いざというときにすぐに確認ができます。また、普段から見るところに貼ってあれば、無意識に周辺の状況を覚えていたりするものです。
 ハザードマップにしても防災マップにしても、見てすぐに片付けてしまうのでは何の役にも立ちません。
 こういった地図は使い込んでこそ価値が出てきますから、例えば玄関やトイレ、廊下や居間など、普段から目につきやすいところに必ず貼っておいて、いざというときに大切にしすぎてしまったところがわからないというようなことがないようにしたいものですね。
 余談ですが、災害対策に意識のある地域では、例えば居酒屋のトイレや駅、地域の掲示板などさまざまなところにハザードマップが貼ってあることに気づくと思います。
 災害対策については、知らなかったということを正当化できる理由はありませんから、普段からの意識付けの一つとして、自宅の中だけでなく、さまざまなところに貼っておくといいと思います。

耐震化する意味

 各自治体が耐震補強に対する補助を行っているようですが、なかなか耐震補強が進んでいない現実があります。
 一般住宅に限らず、会社や古いビルなどでも耐震化が進んでいないのですが、予算がないからといって後回しにしていい問題ではないことに気づいている方がどれくらいいるのかなと考えます。
 震度6強以上の地震に遭った場合、古い家や会社、ビルなどは倒壊する危険性があります。
 石西地方でもいつ揺れてもおかしくないと言われている弥栄断層が存在していますが、これが動くと最大でマグニチュード7.7程度の地震が起きる(政府地震調査研究推進本部)と予測されています。
 情報が少ないためにいつ頃動くかは不明ですが、いつ動いても不思議ではないということでもあるので、今この瞬間にも揺れるかもしれません。
 でも、もし地震が発生したら、その時になって慌てて地震対策をしようとしても手遅れです。地震で生き残るためには、とにかくものの下敷きにならないことですが、古い家屋に人がいて倒壊した場合、かなりの確率で圧死することになってしまます。これは運が悪かったでは済みません。耐震補強しておけば助かったわけですから、想定外では無く人災になるわけです。
 特に会社やビルなどで倒壊が起きたとしたら、耐震補強にかかる経費以上にさまざまな出費を強いられた上に信用まで無くなるという、ある意味では致命的なダメージを負いかねない状況になります。幸い建物全てを耐震補強しなくても一部を補強したり一室だけを補強するなど、最近ではいろいろな方法がありますので、いくらかお金をかければ対策は充分に取ることが可能な時代になっています。
 地震の怖いところはいつ来るか分からないところですが、地震は地面が揺れるだけですから、対策さえきちんとできていれば死ぬ可能性を下げることができます。
 繰り返しになりますが、地震で倒壊した家屋の下敷きになって圧死することは想定外ということができません。
 耐震補強は高く感じるかもしれませんが、あなたや従業員、関係する人のの命の値段と考えてみたら、それでも高いと感じますか。
 かけた費用の分だけは確実に安全が確保できる。そういう意味では、地震は相手にしやすい災害なのかもしれませんね。

ハザードマップの検証をしていますか

DIGの風景
地域の強み弱みを知って考えよう

 各自治体ではハザードマップを作成して自治体内の世帯に配布していますが、あなたは見たことがありますか。
 ハザードマップは特定の条件下での被災状況を図化したもので、自治体や地域の避難計画作成の基礎となる資料の一つです。
 これには地震や浸水害、土砂崩れの危険性が色分けで表示されていて、とりあえずの危険な場所がわかるようになっており、あなたが避難計画を作るときには必ずこれを見ているはずです。
 ハザードマップの検証では、自宅からの避難だけでは不十分です。勤務先や通学先、途中の経路、よく買い物や遊びに行くところ、そして自分が避難すべき避難所の災害対応状況といったものも確認しておかなければいけません。
 避難所は災害から身を守るために避難するところなので、避難すべき避難所がどのような災害に対応しているのかを正確に把握しておかなければ、避難した避難所で被災したと言うことになりまねません。
 想定される災害のハザードマップに、地域の災害伝承の情報を追加すると、より安全な避難を行うことができるようになりますので、分かる範囲で確認して追加しておきましょう。
 避難経路は状況や環境の変化によって常に見直しが必要ですし、地域としての防災マップ作りも必要となるでしょう。
 今住んでいる場所だけでなく、自分が行きそうな場所の経路と安全性を確認しておいて、いざというときに備えたいですね。

企業や施設におけるBCPで考えておくべきこと

 大きな災害が続くと、企業や施設などの防災対策に注目がされるようになります。
 その中でも、BCPと呼ばれる事業継続化計画についてはある程度までは簡単にお金をかけずにできることからそれぞれの企業や施設で準備されてきているようです。
 ただBCPを作成するときによく忘れられているものの一つに「利用者にいかに不便を感じさせないか?」というものがあります。
 企業や施設において、利用者がいなくなることは致命的な問題を生じさせますから、利用者の確保は通常時、被災時を問わず大切な問題となっています。
 利用者を確保し、利用し続けてもらうために作成するのがBCPの重要な役割の一つであることは間違いありません。
 そして、自分のところの復旧を急いで利用を再開してもらうことは重要ですが、利用者が可能な限り早く利用再開ができる手段も講じておく必要があるのです。
 利用者目線で見れば、あくまでも利用が再開できることが重要なのであって、利用先がどこなのかということはそこまで大きな問題にはなりません。もし利用先にこだわっている人であれば、説明できれば再開まできちんと待ってくれています。

 自分のところの復旧が遅れそう、もしくは再開の目処が立たないときに利用者をどのようにするのか。つまり利用者の扱いを決めておくかどうかでその後の流れが変わってきます。
 企業や施設が利用者よりも先に自分のところの状況を説明し、代替手段を提供できれば、利用者が自分のところが再開したときには戻ってきてくれる可能性が高くなります。でも、利用者自身が新たな利用先を見つけて動いた場合、自分のところが再開しても利用者が帰ってきてくれないでしょう。
 利用者は放置されたという負のイメージに加えて、新しいところを見つけるという自分がかけた手間が正しいと感じるからです。
 もし自分のところが利用先を紹介し、再開時にはまた案内すると言っておけば、利用者も納得しますし紹介した利用先もそれなりに配慮してくれるはずなので、誰も不幸にならない選択肢が選べます。
 つまり、BCPの中には自分のところの復旧、復興用件だけで無く利用者に対してどのように情報提供し、どのように利用再開してもらうのかという視点も必要になると言うことです。

 災害対策に関して言えば、ライバル企業やライバル施設であってもお互いに協力できる体制作りをしておかなければいけません。
 自分のところを守るためにライバルと協調するというのは不思議な気がするかもしれませんが、大切なのは利用者の利益を確保することです。
 そこのところに注意してBCPを作成しておきたいですね。

可能な限り体験してみる

 今年度はコロナ禍でさまざまな行事やイベントが中止の憂き目に遭っています。
 災害関係のイベントも例外では無く、コロナウイルスの流行が始まってから9月くらいまではほぼ全てといっていいくらい中止の話ばかり耳にしていました。
 10月に入って少しずついろいろな防災の研修会やイベント、体験会が増えてきてはいますが、必須ではありますが見方によっては不要不急な内容でもあり、ちょっとずつ様子を見ながらの開催になっていくのかなと感じています。
 ところで、防災に限りませんが、さまざまな行動が可能になるのは頭だけで無く実際に身体にしみこませているからだと考えています。実際に災害を体験した人は、しばらくは素早く動くことができることから考えても、しっかりと身についていると考えて良いと思います。
 そのため、体験型の研修会が増えてきているのですが、あなたはこれまでにどれくらいの防災関係の研修会に参加されたことがあるでしょうか。
 「対策しても役に経たない」「訓練に参加するのはかっこわるい」「必要だと思わない」「理解できているからやらなくていい」など、やらない理由はさまざまですが、やることを知っているのと実際にやってみるのとではかなり感じが異なります。
 やってみないとできるかどうかがわからないというのが、さまざまな防災の研修会や訓練に参加してきた筆者の乾燥です。
 例えば火事のとき「なるべく低い姿勢で呼吸は浅く移動しましょう」ということは消防署などの研修では必ず教わります。でも、そこで理解できたことと、人為的に作った「煙避難トンネル」を実際に経験してみるのとでは感じることが全く異なります。
 幸いにして、防災訓練は殆どがただかただに近い値段で開催されるものです。
 もし見かけたら、全部出なくて良いので少しでも参加してみてください。知っていることを行動に移すことがどれ位大変か、一度やってみると理解が可能だと思います。
 災害対策はやろうと思えば一人でもできます。ある部分はキャンプみたいなものなので、ハイキングやキャンプと同じ感覚でやってみればいいと思います。
 思わぬものが必要になったり、必要だと思っていたものが全く必要なかったりと、一度やるだけでもいろいろと出てきます。
 訓練や研修を重ねていくと、自分にとって必要な防災対策がわかってくるので無駄な備えや作業をしなくても済むようになります。せっかくあちこちで開催されている防災訓練なのですから、できる範囲で構いませんから、参加していろいろなことに気づいて欲しいと思います。

災害時には最初の行動を一つの流れに決めておく

防災計画では、行動をどこまで単純化できるかが使ってもらえるかどうかの鍵になる

 学校や施設での防災計画ではさまざまな災害に対して対応する行動を決めています。
 特に火災と地震に対する計画は、殆どの施設や学校でしっかりと定めているのでは無いかと思います。
 ただ、拝見する学校や施設の防災計画の中の火災と地震の行動計画でちょっと気になる部分があり、なんとなくすっきりしないので、今回は少しそれに触れてみたいと思います。

 火災や地震が発生したときにどのような行動を取るのかというと、まずは安全確保となります。
 では、その次はというと、多くの場合にはなぜか「指示に従って避難を行うこと」とされています。
 それまでは「安全を確保しながら指示を待つ」という時間の浪費が行われてしまい、場合によっては避難できなくなる恐れが発生します。これは「不用意な混乱を防ぐ」ことが目的とされているようですが、安全な場所への移動は行動開始の時間が早ければ早いほど安全に避難完了ができるものです。
 責任者の指示により確実に避難できることの条件として、全体に確実な連絡が行き届き一糸乱れぬ行動がとれることが必要ですが、果たして作られている避難計画書でそのような理想が実現できているでしょうか。
 火災や地震の時に使う避難計画書を作ったことがある方ならイメージができるかもしれませんが、火災や地震の発生時には、責任者は短時間の間に非常にたくさんの判断をし、指示を下さなければいけない計画になっていることが非常に多いです。これは可能な限り状況を制御しようとして起きるもので、例えば軍艦などで行われるダメージコントロールなどの考え方がベースになっています。
 しっかりと訓練されている人達ならばそれでいいのですが、多くの場合には訓練はせいぜい年に一度、多い人でも数回程度では、どんな人であれ複雑な行動を取ることはまず無理だと考えなければなりません。
 ではどうすればいいか。
 答えは簡単で「発生条件に対する行動を単純化すること」です。
 例えば、学校の場合で考えてみると、地震が来て治まったら「とりあえず校庭へ全員避難させる」ことにします。この場合、震度の大小は関係なくそう行動することを決めておくのです。そうすると、何も指示がなくても校庭への避難までは自動化されますから、その間に情報を収集し、次の手順を考える時間が作れます。
 情報を集めた結果、もしもすぐに津波が来るのであれば校庭から高台や校舎の屋上に避難するようにすればいいのです。また、津波発生から到達までの時間が短いと考えられている地域であれば、避難先を高台や屋上にしておいてもいいでしょう。
 火災ではどうでしょうか。
 火災の場合にはどこで起きているのかが問題になります。火災警報器は管制板を見ればどこで火災を検知したかはわかりますから、火災発生箇所だけを放送するようにします。それが事実であるか誤報であるかは後で確認すればいいことなので、まずは避難する。その際に火災発生場所が分かっていればそこを避けて避難経路を選べばいいのです。
 優先すべきは「各自の身の安全の確保」であって「無駄な行動をしないこと」ではありません。
 誰でも安全を確保できるようにするためには、とにかく行動を単純化すること。そうすればとりあえずは何も考えずに行動をすることができます。
 「○○の場合には」というような選択肢は、各自の安全が確保されてから責任者が考えればいいことです。最初の行動が自動化されていれば、その間に責任者は次の安全確保のための行動を決める時間が作れますから最終的により確実な安全が確保されます。
 災害時における安全のための行動は大げさすぎるくらいでちょうどいいと思っています。
 各自の最初の行動が一つに決められている防災計画は、誰もが理解しやすいのではないかと思います。少なくとも、被災時に読み直さないと理解できない難しい防災計画よりもずっと現実的なのではないかと思うのですが、あなたはどう思いますか。