冬の災害とカセットガス

屋内用カセットガスストーブの「風暖」(イワタニ製)。ファンヒーター方式のため、暖かくて安全に使えるがカセットガス1本で2時間は持たないため、ガスの補充が課題。軽くて楽に持ち運べるのもメリット。

寒くなってきました。とはいえ、災害はいつ起きるかわかりません。
あなたは寒いときに災害が起きたら、どのようにして暖を取るかを考えていますか。
最近はやっているのはカセットガスを使ったガスストーブ。カセットコンロと燃料が共用できて保管も容易、取り扱いも簡単と言うことでいろいろなものが販売されています。
元々は屋外用のみ取り扱いだったように記憶していますが、最近では屋内でも使えるように安全性にも配慮したものもたくさん登場しています。
ただ、カセットガスストーブはいくつかの問題点があります。取り扱いに際してはその問題点を充分に理解した上で使うようにしてください。
また、できればたまに動かしてみて、実際に自分の生活スタイルに合っているのかについて確認しておくことをお勧めします。

1.燃料を大量に必要とする

 カセットガスストーブはカセットガス1本でおよそ1時間から2時間程度しか使えません。
 もちろん機種や燃焼効率によっても異なりますので一概には言えないのですが、カセットコンロに比べるとかなり燃料を使いますので、カセットガスを備蓄する時にはそのことを計算に入れて準備する必要があります。

2.換気に気をつける

 カセットガスストーブに限らず、燃焼機関を持っている暖房器具全てに言えることですが、充分な換気をしなければ一酸化炭素中毒になることがあります。
 特に高断熱住宅といわれるような建物の場合には、しっかりと換気を意識しておかないと危険な状態になりかねませんので一時間に一回程度は換気を行うように気をつけることが必要です。

3.やけどに気をつける

 カセットガスストーブは燃焼部分や吹き出し口が非常に熱くなりますので、触るとやけどをすることがあります。
 高齢者の方や乳幼児のいるご家庭では特にカセットガスストーブに近づかないように配慮しておく必要があります。

4.暖まるエリアが狭い

 カセットガスストーブは暖まるまでが早いのですが、構造上暖まる範囲が石油ストーブなどに比べるとかなり狭いです。
 ファンヒーター装備のものもありますが、思ったほど暖かくはならないことを意識しておいてください。

 繰り返しになりますが、カセットガスストーブには屋内用と屋外用があります。
 屋内用は屋外用に比べるといろいろと安全に配慮された作りになっていますので、屋内で使うのであれば必ず屋内用を選んでください。
 屋外用のものを屋内で使うことのないように、充分気をつけてください。
 カセットガスストーブは、取り扱いが簡単で燃料の保管も容易で危険が少ない便利なものです。
 特にオール電化住宅の停電などの場合には、非常に威力を発揮してくれる道具だとも思います。
 もし備えるのであれば、問題点をしっかりと考えた上で、どうやったら適正に暖を取る方法を使って考えてみてくださいね。

避難所のニーズと避難者のニーズ

 災害で開設される避難所は、災害で住む場所を失った人にとって生活の核となる場所です。
 また、支援物資や情報の集積地であり、場合によっては復旧支援の拠点ともなる、非常に多機能な場所でもあります。
 最近はコロナ渦で在宅避難が推奨されていますが、それでもさまざまな事情で住むところを失い、避難所へ逃げ込む人がいなくなるということは考えにくいことです。
 その時に少し注意をしなければいけないことは、避難所における支援物資の要求を始めとするさまざまな支援要請の仕方です。
 避難所での避難者が多いほど必要とされる物資やサービスは多岐におよぶことになりますが、その際にその避難所でそれを必要とする人が多いほど要求の優先順位があがるということが起こります。
 逆に言うと、そのアイテムがないと生活が立ちゆかなくなる人であっても、そのアイテムを必要とする人が少数であれば、避難所としての優先順位は下がると言うことです。例えば、乳児用のおむつが欲しいと思っても、その避難所で多くの人が必要としているのが大人用おむつであれば、届くのは大人用おむつが優先されて乳児用はいつまでも届かないことになります。
 また、避難所では避難所を運営するための運営委員会が結成されますが、その委員達が不要と判断すれば支援物資の要求さえされないということになり、過去には生理用品を始めとする衛生用品が運営委員により不要とされてしまってその避難所で生活する人達が困ったというようなことが起きています。
 こういった隠れてしまうさまざまな要求を発掘するためには避難者から直接意見を確認できる場が必須となりますが、行政はどうしても平等という部分に拘って後手に回ってしまうため、NPOや支援団体がそれぞれに立ち入ってそれぞれの対象者からニーズを引き出すという作業を行っています。
 これはどちらがいいというわけではなく、避難所としてのニーズと、避難者としてのニーズが異なっているだけですから、対応が異なってくるのも仕方が無い部分があります。
 最近ではSNSで避難所で不足しているものの支援要求をすることも増えていますが、そのSNSでの発信は「避難所のニーズ」なのか「避難者個人のニーズ」なのかをしっかりと見極めないと、SNSを見た人が一斉に支援に動くと避難所に同じものが大量に届いて逆に困ったと言った事態も起きます。
 支援要求をする際には、それが誰のニーズなのか、いつ時点のニーズなのかをはっきりさせ、具体的に必要とする数量もあわせて発信する必要があるということを情報を出す側も受け取る側もしっかりと考えておく必要があると思います。
 一番いいのは、できるだけ避難者のニーズは自分の非常用持ち出し袋に詰めておき、ある期間は自分のニーズを出さなくても大丈夫なようにしておくことです。わかっているものはあらかじめ避難所にある程度ストックしておくことも一つの方法でしょう。
 避難所のニーズと避難者のニーズは異なり、それぞれに分けた対応が必要なのだと言うことを前提にして、支援物資やサービスを届けたいですね。
 余談になりますが、避難所の支援でもっとも問題となってくるのが水です。避難した時点では確かに不足しているものなのですが、給水車や行政の支援物資として真っ先に供給されるのも水ですから、遠方で飲料水を買って宅配便などで送ったとしても届く頃には充足していることが殆どです。
 もし送るのであれば、それが本当に支援になるのか、現地の場所取りになってしまうのではないかを充分に考えた上で送られることをお勧めします。
 また、避難所支援といって古着を大量に送る人もいますが、被災者はほとんど着ません。逆の立場になってもらえればわかると思うのですが、さまざまな形で新品が供給されることが多いので、古着はただのゴミです。
 災害ゴミを処分しなければならない環境にさらなるゴミを追加することは絶対に止めましょう。

乳幼児のいるご家庭で用意して欲しい避難所グッズ

避難所では着替えや授乳などできるだけ人目を避けたいものがいろいろとあるが、避難所運営計画ができていないと忘れられることが殆ど。写真は益田市子育て支援センターのもの。

 乳幼児のいるご家庭では、災害時には自宅待機が一番お勧めですが、さまざまな状況によってどうしても避難所に避難しなくてはいけないケースも出てきます。
 その際に問題になるのが、乳幼児への授乳やおむつ交換、就寝場所の確保です。
 だだっぴろい避難所の中で、乳幼児がたくさんいれば配慮してもらえるかもしれませんが、年寄りばかりの地域だとそういった配慮はなされない場合が多いです。
 誤解のないように書いておきますが、年寄りの多い地域であっても、避難所の設置計画がきちんとなされていて乳幼児がいることが認識されていれば、そういった配慮はしてもらえる場合が殆どです。
 ただ、避難所の設置計画がなくなし崩しに避難所が設置された場合には、どうしても声の大きなものや数の多い人に運営の意見が振り回されてしまい、乳幼児のいるご家庭だけでなく、障害者や要支援者など、俗に言われる「生活弱者」は切り捨てられてしまう傾向が強いと言うことです。
 そんななかで避難を継続するためには、早めの避難で場所を確保することと、乳幼児への授乳やおむつ交換の風景を物理的に他者から見えなくする日よけテントを持って行くことをお勧めします。

日よけテント。風通しのよい天井と床だけのものと、着替えにも使える密閉型がある。災害時の避難所で使うのは密閉型が安心。

 日よけテントは屋外で使うことが前提とされていますが、簡単に設営できて自立して建ってくれるので避難所内で外部からの視線を遮りたいときにも役立ちます。また、おむつ交換などで発生する臭いをあるていど封じ込めることもできますから、ぶしつけな視線や臭いに対する苦情を受けなくても済みます。
 余談になりますが、災害時には布おむつは洗濯できないことが殆どなので必然的に紙おむつを使うことになるのですが、交換後の臭いを抑えるために臭い抑制能力のあるビニール袋も一緒に用意しておきましょう。
 それから、避難所は防犯上完全に消灯されることはまずありません。そのため乳幼児の生活リズムに影響が出る可能性がありますが、日よけテントがあれば、タオルや毛布をかけることである程度内部を暗くすることができるので生活リズムを守ることも可能になります。
 また、母親が一緒に昼寝していても外部から見られる心配がありません。
 正直に言えば、できる限り早く被災区域外に広域避難したほうが乳幼児のためであり、授乳している母親のためにもなりますので、避難計画を作るときにはそこまで検討しておいたほうが確実です。
 大切なのは「乳幼児の健康と生活を守る」こと。そのことを前提にして、あなたの家の避難計画を立てるようにしてくださいね。

飲料水の必要量

お水のペットボトルいろいろ。この他にも大きいのから小さいのまでさまざまなサイズがある。持ちやすいサイズ、持ちやすい重さを選んでおこう。

 「飲料水は一人一日2~3リットル以上必要」と言われていて、災害が起きるたびにその分量が増えてきています。
 家庭での備蓄量も3日分から7日分、現在では一部で10日以上用意すべきと言う声も聞こえてきており、この計算に従うと、水だけで一人30リットル。素直に従うと備蓄品で一部屋埋まってしまうような状況になってきています。
 もっとも、ここで書かれている必要量は一般的な話で、実際には年齢や体の大きさ、季節や普段摂取している量などによって本当に必要な量は人によってかなり変化します。
 本気で水の量を把握したいのであれば、まずは自分や家族が一日にどれくらいの水を摂取しているのかを大ざっぱでいいので確認してみましょう。水だけで無く、お茶やコーヒー、清涼飲料水といったものも全部含めます。また、食事を作るときに使っている水もこの計算に含めて家族の人数で割れば、一日一人あたりどれくらいの水が必要なのかが把握できますので、これを基準にして準備するようにします。
 思ったよりも水を摂取していない人、思った以上に水を摂取している人、人によってかなりの個人差があることがわかると思います。
 ただ、これらを充分に満たすための水の備蓄をしようとするとお金も場所も重さもありますので現実的ではありません。そのため、水道水を確保するためのバケツやジャグなどを用意しておくと安心です。
 次に非常用持ち出し袋にいれるべき分量を考えてみます。
 先ほどの飲料水としての一日摂取量に、非常食として用意しているものに必要な水の量を加えます。。例えば、アルファ米であれば水がないと食べられませんし、缶パンなら調理に水は不要です。
 この二つを足すと非常用持ち出し袋に必要な水の量が計算できます。
 次に重量を考えます。例えば、一日3リットルと考えて3日分を持って避難しようとするとそれだけで9kg。大人でも慣れていないと持って歩くのに躊躇する重さですし、この重さだとリュックサックもかなり大型なものでないと入りません。
 では、最低量の1日2リットルだとしたらどうでしょうか。500mlのペットボトルが4本ですから、これなら持って歩けるかもしれません。
 これでも重ければ、量を減らして自分が持てる重さにします。ただ、持たないという選択肢はありません。
 考え方は「ないよりははるかにまし」なので、たとえ500mlのペットボトル1本だとしても、ないよりはずっといい。「飲むものがある」という安心感は精神安定上非常に大切です。
 筆者自身は、子どもだろうがお年寄りだろうが自分で持てるものは自分でもってもらうべきだと考えていますので、どんなに少量でもいいので必ず水を持って避難するようにしてください。食事は一週間程度抜いても生きていけますが、水は3日も飲まなければ死んでしまいます。
 最近はマイボトルを持って歩く人も多いと思いますが、それらも活用して、飲料水をしっかりと確保できるようにしてくださいね。

備蓄品と非常用持ち出し袋と防災ポーチ

災害に対するストックの考え方として「備蓄品」「非常用持ち出し袋」「防災ポーチ」の3種類があります。

奥の箱は備蓄品の一部。中程のリュックサック2個は非常用持ち出し袋、そして一番手前が防災ポーチ。用途によって備えが変わる。

 「備蓄品」は読んで字のごとく備蓄しているもので、家庭単位で準備しておくものです。通常の食料や水と併せて5日~7日分程度のストックがあると急場を凌げますので、普段使いのものを少し多めに備蓄しておけば間に合うと思います。
 「非常用持ち出し袋」は基本的には、老若男女問わず各個人毎に準備しておくべきものです。眼鏡や入れ歯、常備薬や電源など、人によって必要とされるアイテムは異なりますので、それぞれがそれぞれのアイテムを1~3日分持ち歩けるようにしておきます。乳幼児のいる家庭では、こどもをおんぶするとリュックサックが背負えませんので、非常用持ち出し袋に準じた防災ベストを作っておくと助かります。
 防災ポーチは、出先で災害にあったときに安全が確保されている場所まで移動するために必要な最低限のものをセットしたものです。
 これも個人によって違いますが、ポーチに入る大きさに応じて準備しておくようにしましょう。
 よく言われる非常食の準備ですが、例えばアルファ米や缶パンなどは非常用持ち出し袋にセットしてあればいいと考えます。ご家庭の備蓄品として普段使いするには値段が高いですので、数日分を数ヶ月から年に一度程度使って入れ替えるようにすればいいと思います。
 備蓄品はあくまでも普段過程で使っているものの延長線上にあるものにし、防災ポーチは移動中に消費するカロリーを補填できるようかんやあめ玉、チョコレート、ナッツ類といったものを考えておけばいいでしょう。
 似たような性格のアイテムですが、使い方や目的がそれぞれ異なっていますので、あまり無理をしない程度に準備していけばいいなと思います。
 一度に揃えられない場合には、まずは備蓄品。それから防災ポーチ、非常用持ち出し袋の順番で備えていけばいざというときにもさほど困ること無く生活ができると思います。ただ、津波などで緊急避難が必要な地域にお住まいの場合には、非常用持ち出し袋の優先順位を一番にしておいてもいいと思います。
 ともあれ、被災後の自分の命と生活を守るための備蓄品、非常用持ち出し袋、そして防災ポーチ。
 準備して、いざというときにきちんと使えるようにしておきたいですね。

あると便利な段ボール

風邪対策の定番、窓を段ボールで覆う。外側から窓に貼り付けることで飛んできた物が窓ガラスに当たって割れることを防ぐ。重量物に備えて内側からも貼るとかなり安心ではある。

 段ボールというのはいろいろなところで使われています。
 どこででも見かけるもののはずなのですが、災害時にいざ使おうとするとどこにもないものの一つです。
 家でストックしておくのも場所を取って仕方が無いのですが、それでもいざというときに備えていくつか段ボール箱をしまっておくと重宝します。
 間仕切りや目隠し、壁や窓の応急処置、組み合わせれば段ボールベッド、いす、トイレ、ダンボハウス、簡易寝袋そして最後はたき付けまで、あると便利なこと請け合いです。

段ボール箱をそのまま寝袋として試してみた。段ボールの弾力で思ったほど寝心地和悪くない。また、保温効果でかなり暖かい。乳幼児が入るサイズにすると体温を維持するのが楽。


 行政では段ボールベッドや間仕切りなどは段ボール業者さんと提携して、いざというときには持ってきてもらうような協定を結んでいるところも多いのですが、段ボール業者さんも普段からたくさんストックしてあるわけではないので、大規模災害の時などには生産が間に合わないと言ったことも起きています。

市販の災害用段ボールベッド。ベッドの下は箱になっていて、生活用具をいろいろ仕舞えて便利

 平時に必要量をストックしておくのが一番良いのですが、予算と場所の兼ね合いからなかなか難しいというのが現実みたいです。
 自宅避難を考えている場合には、どこに家の中のどこに段ボール箱があるのかを確認しておくと、必要なときに使えて便利です。普段は何かを収めておき、いざというときには防災グッズとして使うというのもいいと思います。
 保温性があって、非常に使い勝手のよい段ボール箱。非常用グッズを収めておいて、災害用品の一つとして考えるのもよさそうだなと思います。

常備薬をどうするか?

お薬手帳の表紙
よくあるお薬手帳。スマホ用アプリも出ているのでそれを使うのもいい。

 さまざまな持病を持っていて、普段の生活で薬が必要な人はそれなりにいるのではないでしょうか。
 大規模な災害が起きると、医療設備が破壊されたり使えなくなったりします。
 医療者はいても資機材がなければ医療処置はできませんから、本格的な医療行為は資機材がそれなりに手当てされてからのことになります。
 さまざまな薬の流通が再開されるまではそれなりに時間がかかるので、その間に薬により病気の重篤化が防げていた人の病状はどんどん悪化していくことになります。
 そんなことにならないように、持病を持っている人は自分が避難するときに備えて薬を1週間程度備蓄しておくことと、万が一に備えてお薬手帳のコピーを持っておくことをお勧めします。

 筆者も持病を持っていますが、あらかじめかかりつけ医に相談をして、1回だけ1週間分多めに処方してもらっておき、薬をもらうたびに入れ替えていくローリングストックで使用期限を維持しています。
 もしも薬が切れた場合でも、お薬手帳を見ればどのような薬が処方されていたかわかるので、逆説的にその人の病気がわかることになり、医師であれば適切な処方をすることが可能になります。
 最近ではスマホなどのアプリでも電子お薬手帳がありますから、そういうのを利用すれば荷物を増やさずに自分の医療情報を持ち歩くこともできます。

 特殊な薬が必要だったり、特定の医師が診た方がよい病気だったりするなら、平時にかかりつけ医以外でその病気を見ることのできそうな医師をかかりつけ医に確認しておくことが大切です。
 持病のある人やさまざまな理由で医療支援が生活の一部になっている人は、被災したら速やかに被災地域外に広域避難して、自分の病気が悪化しないために被災していない医療機関に支援をしてもらってください。
 そうすることで、自分の命を守ることができるだけでなく、被災で医療体制が悪化している被災地の病院の負荷を減らすことができます。
 今の日本ではなかなか広域避難という発想にならないかもしれませんが、万が一に備えて、準備だけはしておくようにしたいですね。

要支援者ほど早く避難しろという意味

 風水害の警戒レベル3は「避難準備・高齢者等避難開始」ということになっています。レベル4には「避難勧告」と「避難指示(緊急)」が同居していて訳がわからなくなっているということでどうやら修正がされるという話も聞いていますが、ともあれレベル3が発令されると「高齢者等」は準備ができ次第安全な場所、例えば避難所等に避難を開始することになります。
 この「高齢者等」には、高齢者だけで無く妊婦や乳幼児を含む家族、障がいを持っている人、その他避難する準備がかかる人達、いわゆる要支援者のことで、手間のかかる人は早く準備して早く避難しろというのがこのレベル3の趣旨です。
 ではなぜ普通の人よりも早く避難した方がいいとされているのでしょうか。
 何かあったときにすぐ避難できないから避難するというのは大きな理由ですが、それ以上に「早く避難して自分のスペースを確実に確保しておけ」という意味があります。
 過去に起きた様々な災害では、声の大きく元気な人ほど避難所で生活しやすい良い場所を占拠し、支援品や補給品を優先して受け取るという傾向が一貫してみられます。
 そうすると、本来は支援が必要な人達は避難所の片隅または避難所から追い出されてしまって、車や倒壊した家屋などで生活することを余儀なくされてしまうのが現状です。
 支援の必要な人が先に避難所に入って条件の良い場所を使っている場合には、いくら元気な人でも押しのけてその場所を奪い取ることはなかなか難しそうなのですが、実際には後から来た人の方がいろいろな意味で本人の状況が悪くなっているので、それを盾にして先住者を追い出すということが発生したりしています。
 大きな街ほどそういった傾向が見られるので、本当のことを考えると支援がいる人は支援がいる人専用の避難所を作ってしまった方がいいと思うのですが、いろいろと理屈をつけてそこまではしないというのが現在の行政の限界でもあります。
 そうすると、普段の生活に何らかの支援がいる人、支援があった方がいい人は早めに避難して避難所を占拠するくらいの行動力を見せないと自分たちが路頭に迷うことになってしまいます。
 実のところ、他人様に迷惑はかけられないと避難を渋る人達が大勢いるのですが、収容先のない要支援者が路頭に迷うことの方がよっぽど迷惑ですから、ひどくなりそうな気配を感じたらさっさと非常用持ち出し袋を持って避難所に避難し、良い場所を占拠してしまいましょう。
 避難所運営スタッフからスペースとして使って良い場所を確認しておけば、あとは安心して事態が収まるのを待てば良いのです。
 普通の人と同じように行動していると、要支援者はかならずひどい目に遭います。
 普通の人よりも早く動くことで、自分の安全を早く確保することができますから、準備ができたらそのまま避難するようにしましょう。
 なお、特殊な医療用設備が必要な要支援者のかたもいらっしゃいますが、そう言った人は避難所では無く、できれば被災しないであろう地域まであらかじめ避難しておく方が無難です。
 そういった事態に備えて、かかりつけのお医者様といざというときに支援してもらえる医者を決めて準備してもらうようにしておきたいですね。
 繰り返しになりますが、状況を見て早めに避難し、自分の居場所を確実に確保することが、要支援者が生き残る道です。
 他の人の動向など気にすること無く、自分が決めた避難計画に従って避難してくださいね。

手洗いと衛生概念

 災害時に避難所で衛生的な環境を維持するのは非常に困難です。
 ですが、通常時よりも人が密集して集団生活を行う環境であることから、災害時の避難所は通常時以上に衛生的な環境を維持するための努力をしなければなりません。
 ただ、こういった非常時にはその人の行動が先鋭化してくることに注意が必要です。
 特に衛生的な環境を維持するための基本である手洗いを見るとよくわかります。普段あまり手洗いしていない人はこれ幸いと手洗いをしなくなりますし、これでもかと手洗いする人は消毒液を持ち歩くような状態になってきます。
 衛生的な環境を維持することで、避難所内での感染症の流行をできるかぎり押さえるようにすることは、避難所運営の中でかなり上位に位置する仕事です。地域医療に過度な負担をかけないためにも、衛生管理は徹底しなければなりません。
 清潔な水を確保することはもちろんですが、石けんや消毒液の準備、ドアノブや手すりなどの定期的な消毒、トイレ掃除など、衛生管理はいろいろとあるのですが、手洗いという点で考えると、どんな人でも手洗いをしなければならないような仕掛けを作っておく必要があります。
 例えば、避難所に出入りする動線上に必ず手洗い場があるように設計しておくことや、出入り口に大きな手洗いの掲示をしておくこと、館内放送で手洗いをするように働きかけることなど、その避難所に応じてさまざまな方法があると思います。
 一つ有効なのは、子ども達に手洗いをしっかりとさせること。大人というのは不思議なもので、子どもが正しいことをやっているとなぜかそれをまねする人がたくさん出てきます。
 それを利用して手洗いを習慣づけるようにしていくのです。
 最近はやっている新型コロナウイルス対策でも、手洗いは最上位にくるような感染対策になっていますし、手洗いをしっかりするだけでかなりの感染症を減らすことが可能だと言うことを、マスクの入手が困難となった今回のコロナウイルス騒動は教えてくれました。
 避難所において感染症の大流行を防ぐためにも、手洗いだけは徹底しておきたいものです。

【参考】上手な手洗いの方法(厚生労働省のウェブサイトに移動します)

新型コロナウイルス騒動と避難所の環境改善

 各地の災害発生によって避難所が開設されていますが、新型コロナウイルス感染や蔓延を警戒して収容する人数を絞っているという話を聞きます。
 ソーシャルディスタンスを確保しようと思うと、従来のような詰め込めるだけ詰め込めという感じの避難者受け入れはできなくなるわけで、今後は自分が避難所に避難すべきなのか自宅避難すべきなのか、それともどこか違う別の場所へ避難すべきなのかについてしっかりと考えておく必要が出てきていると言ってもいいと思います。
 現在の避難所の設計は一人あたり横1m×縦2mのスペースが確保できればという感じでなされていますが、ソーシャルディスタンスを確保しようとすると、避難者同士の距離を2m開けることになります。
 その結果、避難者同士のプライバシーの保護もしやすくなり、人の視線も気にすることが少なくなって避難所ストレスが軽減できるような事態が発生しています。
 おかしな話になるのですが、新型コロナウイルスの影響で避難所の収容状況が改善されるという状況になっているのです。
 この先、喉元過ぎれば熱さを忘れるにならないように、あなたの避難計画についてしっかりと見直しをかけてみてください。
 どのようになったら避難所へ避難するのか、それとも自宅避難でいいのか、はたまた被災地域外に高飛びするのか、それぞれケースバイケースだと思いますので、災害が起きる前にしっかりと行き先を複数決めておいてください。
 また、その行動を起こすための鍵についてもしっかりと整理して決めておくようにしたいですね。